[事業承継の専門家によるコラム]

株式譲渡と営業譲渡 ~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


ここ数年M&Aが一気に進み、当社のお客さんや知り合いなど
事業承継とM&Aがかなり進んできました。

 

当社でも昨年、事業承継のプランニングを5社、M&Aのデューデリジェンスを
5社(うち4社買収)、従業員へのM&Aを1社 今年に入っても
事業承継プランの作成や、M&Aのスポットのアドバイザー業務を2件、
デューデリも以前打診がかなり来ています。

 

その中で小規模案件も増加しつつあり、株式譲渡が必ずしも
しっくりこない案件も見受けられるようになっています。

 

そこで、今回は、事業譲渡手法のメリットとデメリット」
お伝えしようと思います。

 

 

[メリット]
・一部の事業や資産のみを切り出しやすい。
・株式譲渡と異なり包括的な権利義務の移転ではないので簿外債務・訴訟リスクなどを引き継ぐリスクが低い。
・資産負債の差額はのれんとして5年償却可能。

 

[デメリット]
・個別に資産負債を移動するため、許認可などは取り直しになるケースが多い。
・資産の移転(売却)を伴うため不動産取得税・登録免許税・消費税など移転コストが高い。
・譲渡益は法人税・所得税の課税となり 株式譲渡より高くなる。

 

 

特に中小企業の場合には、「簿外債務」訴訟リスク」など見えない債務を
引き継がなくていい点が大きな魅力です。

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2019/08/14号)」より一部修正のうえ掲載

[事業承継の専門家によるコラム]

事業承継事例 「子供に株式、甥には議決権」~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


今回は 当社がスキーム作りを手掛けた事業承継事例をお送りします。

 

直系親族以外への承継・甥への承継事例です。

 

 

A社の創業者は80歳になり、子供さんたちも40歳を超えていますが、
みなさん会社以外に勤務されそれぞれの道を歩んでおられます。

 

会社も継ぐつもりはないと・・・ 唯一親族で甥っ子さんが子会社の社長として
頑張られ徐々に業績も伸長し経営手腕を発揮されつつあります。

 

その状態で当社に保険会社の方を通じて相談に来られました。

 

 

社長は、「子供たちはもう立派に生活しているのだから株はいらないだろう、
会社を継ぐはずの甥っ子に相続してもらいたい」とおっしゃっていました。

 

 

しかし、なんとなく寂しさや決断しきれない様子でした。

 

・親族に継がないのであれば事業承継税制は使えない。
・単に娘に株式を上げてしまうと議決権が確保できず甥っ子さんは経営しにくいだろう
・甥っ子さんも若く数億円での買取も難しそうだ・・・

 

 

そこで社長に、「財産としての株式をお嬢さんに残し、議決権だけを甥っ子さんに

与えることができたらどうします??」と聞いてみました。

 

社長は「そんなことができるなら是非やりたい!」ということでした。
当社が司法書士先生と一緒に組み立てたスキームは下記のとおりです。

 

 

「株主間契約で議決権を甥っ子さんに預ける」

 

 

しかしお子さんたちは、契約なんて破棄できてしまうので、OO君(甥っ子)が
困るよね?きちんとした形で公正証書でやりたいとうことでした。

 

最終的には社長・お子様たち・甥っ子さんと一緒に会議を数度重ね

 

 

(1)配当と譲渡した場合の財産価値としての株式はお子さんたちに順次贈与

 

(2)議決権は民事信託によりまずは社長に信託、社長に万が一のことが
ある場合には甥っ子さんがそれを引継行使する

 

(3)社長の思いや守ってもらいたい約束事は、社長・お子様たち・
甥っ子さんの株主間契約を締結し守ってもらう。

 

 

これにより、後継者へは議決権が渡り、お子さんたちには財産権としての
株式が渡り思いに沿った事業承継ができました。また信託することにより、
受託者・委託者・受益者の全員の合意がない限り信託契約は変更できないため、
かなり強固な権利関係の固定化ができたと思います。
(誰か1名の暴走では契約変更・撤回できない)

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2019/02/10号)」より一部修正のうえ掲載

[事業承継の専門家によるコラム]

事業承継税制の注意点~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


シリーズ事業承継の活用手法として、中小企業の事業承継や財産の分散防止に効果的な信託などを解説していますが、今回は「事業承継税制の注意点」をお送りします。

 

一般の事業承継税制と特例事業承継税制の違いは以下の通りです。

 

・対象株式:2/3 → 全株
・相続猶予対象:80% → 100%(従来は実質53%→100%へ)
・雇用確保要件:5年平均80%維持 → 実質撤廃
・贈与者:先代経営者のみ → 複数株主(一般も同時に改正)
・受贈者:後継経営者1人 → 後継経営者3名まで(代表権&株10%以上)
・相続時精算課税:推定相続人等 → 推定相続人等以外も適用可
・株価減免要件:民事再生等のみ → 譲渡・合併・解散時を加える

 

など大幅に拡充されています。

 

 

いままでは、50%減免だったものが”100%減免”になり、先代経営者→後継者への1対1にしか使えなかったものが “先代経営者+配偶者+その他”後継者へと贈与者も大幅に拡充されていますのでかなり使い勝手のいい制度となったと言えます。

 

 

 

しかし、いくつかの注意点がありますので下記に記します。

 

 

(1)事業承継税制はあくまでも“納税猶予”です。取消要件に当てはまった場合には課税されます。特に資産保有型会社や資産運用型会社に該当した場合には猶予が取り消され課税されます!

 

(2)その為、いつ猶予が取り消されてもいいように株価対策はしっかりし、株価を引き下げてから実施すべきでしょう!

 

(3)資産保有型会社資産運用型会社にならないためには5名以上の従業員がいるなどいくつかの要がありますので確認しておきましょう

 

(4)後継者が複数も可能ですが、後年で主導権争い起きないようもう一度考えることをお勧めします。

 

(5)推定相続人以外にも事業承継可能ですが、相続人に税負担のしわ寄せが行きますので注意しましょう

 

(6)種類株等を承継後に後継者以外が保有している場合には納税猶予は使えません。

 

(7)後継者にはいい制度ですが、後継者以外にも目を配る必要があります。特に遺留分を侵害していないかなど確認しましょう。

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/08/20号)」より一部修正のうえ掲載

 

[事業承継の専門家によるコラム]

無議決権株式と属人株式の活用(その2) ~事業承継に活用したい手法~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、前回のコラムで取り上げました「属人株の活用事例」についてご解説いただきます。事業承継や株主対策にぜひご参考にしてみてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


 

属人株とは会社法109条に規定されているもので(詳しくは前回のコラムを参照下さい)なんと、株主ごとに異なる取り決めを定款変更でできちゃうんですね!
さらに登記事項にもなっていないため登記も必要ありません!!

 

では、どんなことが規定できるかというと
株主の権利のうち“剰余金配当請求権” “残余財産請求権” “議決権”が会社法105条に規定されています。

 

つまり、配当とか議決権とかが決められるんですね!

 

当社でも属人株を使った事業承継や株主対策を行っています!

 

 

例えば

 

(1)XXさんの持っている株式を優先配当にしてしまうとか、配当はXX円と決めてしまうということができてしまいます。

 

(2)議決権もですので、XXさんの持っている株式は配当高いけど、議決権は無し

 

それを応用すると

 

「代表者が持っている株式の議決権は5倍とする」
「畑中さんが持っている株式の議決権は10倍にします」

 

ということができます。

 

 

GOOGLEさんとか日本ではサイバーダイン社が使っている
ような特定の株式の議決権を増やすということが可能です。

 

「株式数は15%しか持ってなくても議決権は2/3を抑えている!!」

 

といった事業承継対策にも使えますね!

 

そのまま15%しか持っていないと、重要な決定ができなく会社の運営ができない!
でも株式を増やそうとすると多額の金銭が必要といった場合にも活用できますね!!

 

また、「持株会の配当は多めにする代わりに無議決権とする」といったように、
議決権をなくす代わりにインセンティブを多めにするということも可能になります!

 

「属人株はわかると大変活用できる優れものです!!」
AIに負けないよう知恵を使っていきたいものです!

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/03/10号)」より一部修正のうえ掲載

[事業承継の専門家によるコラム]

無議決権株式と属人株式の活用(その1) ~事業承継に活用したい手法~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、中小企業の事業承継に活用したい手法について、お伝えしていただきます。今回は、「無議決権株式」「属人株」です。ぜひご参考にしてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 

 


まず、「無議決権株式」ですが、議決権を与えたくないとか、議決権には興味がないといった場合に使われます。よく見かけるのは従業員持株会など社員へのインセンティブに使うパターンですね!
「会社に逆らうことはできないし、配当貰えればいいしといった感じで使われます。」
会社も「インセンティブを上げたいけど、これ以上株主増やしたくないし・・・」
といった形で 言わば相思相愛の形で使われます。
議決権がない代わりに配当は優先的に出るなどという取り決めをする場合も多いですね!

 

もう一つは「種類株式」に似たもので「属人株」というものがあります。会社法に規定されているもので

 

会社法第109条
1.株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2.前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。

 

となっています。

 

なんと、株主ごとに異なる取り決めを定款変更でできちゃうんですね!
さらに登記事項にもなっていないため登記も必要ありません!!

 

では、どんなことが規定できるかというと

 

株主の権利のうち“剰余金配当請求権” “残余財産請求権” “議決権”が会社法105条に規定されています。

 

つまり配当とか議決権とかが決められるんですね!

当社でも属人株を使った事業承継や株主対策を行っています!

 

次回は実際の活用事例をお伝えしましょう!!
「属人株はわかると大変活用できる優れものです!!」

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/02/20号)」より一部修正のうえ掲載

[事業承継の専門家によるコラム]

事業承継の失敗事例 ~その解決策は?~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、事業承継の失敗事例とその解決策の糸口をご提示していただきます。ぜひご参考にしてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


(事例1)平等に相続させたため、後継者の経営権の確保ができず何も決められなくなった!

(事例2)納税資金の確保ができず、自社株の買い取り請求=会社の財務基盤が大幅に毀損!

(事例3)会長派と社長派に分裂、後継者が追い出されてしまう!

(事例4)社長派と専務派に分裂、専務派の追い出しに多額の資金が!

(事例5)後継者への株式の移転が早すぎて先代社長が追い出される事態に!

(事例6)金融機関に持株会社設立を提案され、多額の借入を起こして後継者に会社を設立させる!

 

 

(事例1)平等に相続させたため、後継者の経営権の確保ができず何も決められなくなった!

〔ケース〕

・相続対策のため、子供にはある程度、平等に相続させた。
・会社に関係のない相続人(主に配偶者)から相続した株式の買い取り請求がきた。
議決権が33%しかないため常にほかの株主の賛成がないと運営できず、後継者の運営に支障が出た。

→何も決められず、M&Aも役員選任も主体的に決められないまま運営に支障が・・・

 

【解決策】

事前に株式の集約や、属人株式や種類株式などで議決権の集約をしておくべき

(事例2)納税資金の確保ができず、自社株の買い取り請求=会社の財務基盤が大幅に毀損!

〔ケース〕

・企業オーナーが、遺言を作成せずに急逝。(妻、長男、長女)
・事前対策が不十分のため、相続財産の大半を自社株と事業資産が占めることに。
・長女が法定相続分での遺産分割を主張
・長男は、無議決権株式の発行を提案するが、長女は現金を要求。
・長男は、代償分配金・納税資金支払いのため自社株の買取を会社請求せざるを
得なくなり、結果として財務内容が急速に悪化することになった。

 

【解決策】

事前に遺言を作成するとともに、相続対策の中での納税資金を生命保険等で確保しておくべきでは?

(事例3)会長派と社長派に分裂、後継者が追い出されてしまう!

〔ケース〕

・社長が急死、後継者の息子が株式の35%しか相続できなかった。
・そもそも社長自身が、会社の株式の40%しか保有していなかった。
・残りの株式は、会長である社長の兄の相続人及び専務である社長の弟と役員及び取引先が保有していた。
・死後専務が会長の遺族・取引先等を取り込み社長に就任。
・最終的に、専務が経営するものの、派閥争いの結果従業員の離反を招くこととなった。

 

【解決策】

兄弟の間で事業承継の道筋をつけ、決めておかないと、叔父甥の関係になった段階では急にもめることも・・・。議決権は少なくとも生前に確保しておくべき

(事例4)社長派と専務派に分裂、専務派の追い出しに多額の資金が!

〔ケース〕

・社長と専務(弟)で、会社の株式をそれぞれ60%と40%の比率で保有
・その後、それぞれの息子が会社に入社。
・社長より専務の方が会社の成長に貢献している状況。
・社長が強硬に自らの息子を社長にしたため、専務は反発しは退任するとともに退職金と株式の買取りを要求した。
・結局純資産価額に近い金額で買い取りをせざるを得なくなり、数億円ものお金が会社から流出し財務内容が大幅に悪化

 

【解決策】

兄弟の間で事業承継の道筋をつけ、決めておかないと、叔父甥の関係になった段階では急にもめることも・・・このケースでは事前に会社分割でそもそも会社を分けることも検討しておくべきでは

(事例5)後継者への株式の移転が早すぎて先代社長が追い出される事態に!

〔ケース〕

・社長が、息子に事業承継しようと社長に据えて経営を任せ、株式の40%を徐々に贈与していった。
・ところが、経営方針をめぐる対立が激しくなり、会長は息子を解任し社長に復帰。
・解任された息子は、社長への復権を要求。
・そのうちM&A案件による事業買収のため第3者割当増資を計画
息子が40%の株式を保有していたため、否決される。
事業拡大のチャンスと対外的な信用を失う

 

【解決策】

財産としての株式は相続対策で事前に渡しても、議決権株式や種類株式で決定権は完全に委譲するまでは確保しておくべき 金の切れ目が…にならないように

(事例6)金融機関に持株会社設立を提案され、多額の借入を起こして後継者に会社を設立させる

〔ケース〕

・業績好調のA社は相続対策を金融機関から薦められ、資産管理会社を設立した。
・資産管理会社は息子名義で、現社長は資産管理会社に時価10億円で株式を売却した。
・売却に際し、持株会社組成費用2000万円、株式の譲渡に対する譲渡所得税2億円を払う。

 

【解決策】

資産管理会社の設立は相続対策として有効ではあるが、譲渡や贈与をするのは株価が下がったタイミングで行うなどタイミングを見計らうことが重要。資産をわざわざ高値でつかませ、必要以上に後継者に借入・返済負担・金利負担を負わせる必要はないと思われます。

 

 

 

全てのパターンに言えますが、今回のコラムのテーマでもあります株式「財産としての株式」「支配権としての株式」という考え方で分けてとらえ「支配権」の確保をどのように実現するかということです。株式自体を動かすことにこだわらず、議決権の確保をし運営権を確保したうえで、株式の移転はその次に考える。もちろん両方を確保できればそれが一番いいのですが・・・。
また、現在の社長が元気のうちには、親族みんな文句を言わないのですが、死後突然不満が爆発ということもありますので、やはり事前の対策が重要ですね。

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2017/06/15号)」より一部修正のうえ掲載