Q-12 M&Aと廃業はどちらが良いのでしょうか?

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Q-12 M&Aと廃業はどちらが良いのでしょうか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】
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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!
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Q-12 M&Aと廃業はどちらが良いのでしょうか?
A
事業を廃業するかどうかを検討する際に、M&Aという別の選択肢が存在します。廃業を選ぶ主な理由としては、経営者の高齢化に伴う後継者の不在問題や業績悪化に伴う先行き不安など様々な理由があると思いますが、あらためてM&Aと廃業はどのような点が異なるのか、それぞれのメリット、デメリットを中心に整理してみたいと思います。
■廃業を選ぶメリット・デメリット
廃業を選ぶ主なメリットは次の2点です。
・会社関係者への悪影響の限定化
業績悪化に伴い資金繰りが悪化している状況において廃業を選択せずに事業継続をした場合では、取引先に対する債務や従業員に対する給与や退職金を支払えないという状況が発生したうえで、倒産に至ってしまう最悪のケースが考えられます。そのため、早期に廃業を選択することで、会社の資金流出を最小限に抑え、会社関係者に対する債務の支払いを優先させることができます。
・経営者の精神的負担の軽減
経営者は将来の会社を取り巻く環境の変化、従業員の雇用や資金繰りの問題など日々様々な課題や重圧に直面しています。そのため、廃業を選択することによりそのような課題や重圧から解放され、精神的負担を軽減することになります。
他方、廃業を選ぶ主なデメリットは次の2点です。
・会社関係者にマイナスの影響を及ぼす
廃業することにより、従業員の雇用が継続出来なくなったり、取引先にとっても代わりとなる取引先を新たに探す必要が出てきたりと会社関係者にマイナスの影響を与えることとなります。
・蓄積されたノウハウ、技術力や人的ネットワークが消滅する
廃業により、これまでの事業継続により社内に蓄積されてきたノウハウ、技術力や人的ネットワークといった目に見えない知的資産が消滅もしくは従業員の転職により社外に流出することになります。
■M&Aを選ぶメリット・デメリット
M&Aを選ぶ主なメリットは次の3点です。
・雇用および取引先との関係維持
買い手が売り手の事業を引き継いで行うことになるため、従業員の雇用や取引先との取引が継続可能となります。
・事業の継続
第三者に事業を譲渡・売却することで、社内に蓄積されたノウハウや技術力などの知的資産を譲渡先でも引き続き活用できるとともに、自社よりも規模の大きい企業グループの傘下に入った場合には、既存の成長よりも大きな成長を遂げることが可能となります。
・売却による金銭的収入
譲渡の対象となるのは会社が保有する資産・負債だけではなく、今まで築き上げてきたブランド的価値(いわゆる「のれん」と呼ばれるもの)を加えた企業価値が買収金額となるため、廃業と比べて経営者はより多くの金銭を得ることが可能となります。
他方、M&Aを選ぶ主なデメリットは次の2点です。
・時間的制約
M&Aを実施したくてもなかなか条件に合った買い手が見つからない場合や、交渉が難航する場合には、成約に至るまでに1年以上要するケースがあります。
・資金繰りの圧迫
M&Aによって得られる金銭的収入が、条件交渉の過程で期待通りの金額にならない可能性や、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)や専門家との契約の内容によっては着手金や中間金といった手数料が成約の有無に関わらず発生する可能性があります。
以上のことから、M&Aや廃業の選択肢にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、会社関係者に与える影響を鑑みた場合にはM&Aを選択する方が有利であると考えられます。資金繰りや時間的に十分な余裕がある場合には、安易に廃業を選択するよりもM&Aという選択肢も並行して検討されることをおすすめします。
(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)
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風間啓哉(かざま けいや)
税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)
2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。
監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。
(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)
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