[初級者のための入門解説]

後継者ごとの対処法 ~ゼロから学ぶ「事業承継 超入門」②~

 

事業承継の基本ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『事業承継 超入門』」シリーズです。

今回は、「後継者ごとの対処法」として、それぞれのケースにおいて、どの様な対処法を取るべきなのかを解説していきます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

 

前回、解説したとおり事業承継は、後継候補者の属性によって区分すると、親から子などへの「親族承継」、役員や従業員への「社内承継」、外部に譲渡する「M&A」の3つの類型のいずれかになりますが、それぞれのケースにおいて何をしたらよいのか、と相談を受けることが少なからずあります。

 

特例事業承継税制の内容やM&Aに関する解説本は多々ありますが、どういうときに何を利用したらよいのかがイマイチわからないといわれます。

 

そこで、本稿では、どういうときに、どういう処方をしたらよいかを、シンプルに「後継者ごとの対処法」として整理してみました。

 

単純化した分だけ、相違することもありえますが、どうしたらよいかがわかりやすくなったかと思います。

 

 

 

 

 

1.切り口1


後継候補者が誰であっても、まずは、事業の承継が可能か、可能でないかを検討します。

その際のメルクマールは、事業が健全か、健全でないかです。

 

いわゆる健全な事業とは、事業の営業利益、または営業キャッシュフローが黒字かそうでないかによって判別します。仮にその時点の貸借対照表が債務超過であったとしても、数年(一般的には3年程度)で回収できる位の営業利益があれば、健全の範疇に入ると考えてもよいと思います。

 

事業が健全であれば、後継候補者への承継M&Aによる売却(切り口2)の検討をします。

 

他方で、事業が健全でない場合は、事業磨き上げ(事業再生)によって健全化できないか、できない場合は廃業・清算を検討することになります。

 

万が一、事業が健全でないと判断した場合でも、早期に判断することで無駄な赤字の垂れ流しを避けることができるので、このような分析を行うことには意味があります。

 

2.切り口2


事業が健全な場合、あるいは、事業の磨き上げによって健全化できる場合、次に後継候補者の属性に従い、それぞれ次のような対処をします。

 

(1)親族承継

子供や兄弟などの親族を後継者とする場合は、無償での承継、すなわち、贈与や相続によって承継するのが通常です。相続か贈与のどちらが適してるかというと、承継計画に沿った実行が可能な贈与の方が優れていると思います。

 

なぜかというと、事業承継のメインテーマは事業自体の円滑な承継にあるわけですが、承継すべき経営理念やコアコンピタンスの明確化、後継者教育、従業員や取引関係者・金融機関の協力取り付け、個人保証など多くの課題解決を同時並行的に進めるに際して、計画できない相続でなく、計画可能な贈与がマッチするためです。

 

事業承継時の税金(相続税・贈与税)も課題のひとつなので、税負担を軽減するために株式に対する税金が無税となる特例事業承継税制を利用すべきでしょう。しかし、特例事業承継税制は手間とコストがかかるので、すべてのケースにおいて利用すべきではありません。個人的には純資産が1億円以上の規模で相続税や贈与税が数千万円かかるようなケースで利用すべきかと思います。他方で、それよりも規模が小さい場合は、持株会を使って対象株式数を抑えたり、株式評価の低減を図ったりといった税対策を中心に行った方が良いと思います。

 

 

(2)役員・従業員承継

親族後継者がいない場合は、役員や従業員に後継候補者がいないかを探ることになります。

 

役員・従業員承継の場合、通常は有償取引となるでしょうから、特例事業承継税制は利用できません。極めて稀でしょうが、無償で行う場合は、親族承継と同様に特例事業承継税制が利用できます。その場合、特例事業承継税制には、後継者は自身の同族関係者(親族等)で過半数の議決権を有するという要件があるので、必要に応じて先代経営者と養子縁組するなどの対策が必要になる場合があります。(後継者の同族関係者で議決権の過半数を所有できない場合)

 

役員・従業員承継の場合の最大の課題は、株式買い取り代金の資金調達と金融機関借入金の個人保証、そして経営者としての適格性です。株式購入対価が高いと個人資金では足りず金融機関からの借入で賄う必要があります。また、金融機関借入金の個人保証に関しては後継候補者本人にやる気があっても家族の反対で破談になるケースはよく耳にします。更に、従業員としては超がつくほど有能な方でも経営者として優秀とは限りません。

 

このように役員・従業員承継はそれなりにハードルが高いので、それほど成功例が多くないというのが現実です。

 

 

(3)近親者に後継者不在

親族や会社内部に後継候補者がいない場合は、M&Aによる売却を検討することになります。M&Aで売却しようとする場合、M&A仲介業者、マッチングサイト、日本税理士会連合会、事業引継支援センターなど、どの機関を利用するかを検討します。

 

その際の一番大きな問題は費用と言われます。M&A仲介会社に依頼すると最低500万円かかりますが、マッチングサイトなら売り手数料がかからないなど大きな違いがあります。他方、M&A仲介会社に頼めば仲介会社が有する豊富なマーケットが利用できますし、法務面や会計面の専門家も利用できますが、マッチングサイトは自分自身で対応するのが基本です。

 

このような違いを十分理解したうえで、M&Aを進めることになりますが、時間を優先したい場合は複数の機関を利用することも検討したらよいと思います。

 

 

次回は、それぞれの内容について、深堀してみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「子が事業を引き継いだ場合の引き継いだ資産に係る減価償却」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】税理士事務所の事業承継と一時払金の処理

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

個人事業主の父が廃業して息子が事業を引き継ぎました。父が事業で使用していた機械装置をそのまま息子が使用しているのですが、この場合、使用貸借の扱いで、息子がその機械を減価償却して経費にすることは可能でしょうか。
※息子の機械引継ぎの仕訳 機械装置(帳簿価額)/事業主借(帳簿価格)

 

[回答]

所得税法第56条は、「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が、居住者の営む・・・・・・事業から対価の支払を受ける場合には、・・・・・・その親族の対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る・・・・・・所得の金額の計算上、必要経費に算入する。」と規定していることから、その親族が対価の支払を受けていない場合には、形式的には、配偶者その他の親族の有する資産に係る必要経費に算入されるべき金額は、事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費にされないことになります。

 

しかしながら、所得税法第56条の規定が事業に係る所得における世帯単位課税を考慮した規定であることに着目し、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族の有する資産を事業主が無償で使用している場合であっても、その対価の授受があったものとしたならば所得税法第56条の規定により事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入される金額(その親族の各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額)を事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することができることとされています(所基通56-1)。

 

したがいまして、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が所有する資産を事業主が無償で事業の用に供している場合であっても、その資産に係る固定資産税、修繕費、減価償却費等については、事業主の事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することができることになります。

 

ご照会の事例につきましては、父親と息子が生計を一にするか否かが明らかではありませんが、父親と息子が生計を一にしているのであれば、父親の所有する機械装置を息子が使用貸借(無償)で事業の用に供している場合には、その機械装置に係る減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができると考えられます。

 

一方、父親と息子が生計を一にしていないのであれば、所得税法第56条及び所得税基本通達56-1の適用がありませんので、その機械装置に係る減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと考えられます。

なお、上記の検討は、息子が父親の事業を引き継いだが、父親の所有していた機械装置は息子に引き継がれず、息子は父親から使用貸借で事業の用に供している場合を想定しています。ご照会には、「息子の機械引継ぎの仕訳 機械装置/事業主借」と記載されていますので、事業の引継ぎに際して機械装置も引き継がれている(息子が購入している)のであれば、息子の所有する機械装置を息子が事業の用に供していることになりますので、その機械装置の減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができると考えられます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年4月9日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

相続税の個人版事業承継税制の対象資産(「特定事業用資産」)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

 1.相続税の個人版事業承継税制の概要


相続税の個人版事業承継税制とは、下記2の特定事業用資産を所有し、事業(不動産貸付業等を除く。以下同じ。)を行っていた先代事業者として一定の者(被相続人)から、後継者として一定の者(特例事業相続人等)が、2019年1月1日から2018年12月31日までの相続又は遺贈(相続等)により、その事業にかかる特定事業用資産の全部を取得した場合に、その特定事業用資産にかかる相続税について、担保の提供その他一定の要件を満たすことにより納税が猶予され、後継者の死亡等により猶予されている相続税の納付が免除される税制をいいます(租税特別措置法(措法)70条の6の10第1項)。

 

2.特定事業用資産の意義


(1)特定事業用資産の範囲

「特定事業用資産」とは、先代事業者の事業の用に供されていた次の資産です。ただし、その贈与または相続等の日を含む年の前年分の事業所得にかかる青色申告書(措法25条の2第3項に規定する65万円の青色申告特別控除にかかるものに限る。)の貸借対照表に計上されていたもの限ります(措法70条の6の10第2項1号、同施行規則23条の8の8第2項等)。

 

①宅地等
事業の用に供されていた土地または土地の上に存する権利で、建物または構築物の敷地の用に供されているもののうち、棚卸資産に該当しないもので、面積が400㎡以下の部分。

 

②建物
事業の用に供されていた建物で、棚卸資産に該当しないもののうち床面積の合計が800㎡以下の部分。

 

③減価償却資産
②以外の減価償却資産のうち、構築物、機械装置、器具備品、船舶等、一定の自動車等、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形減価償却資産。

 

(2)先代事業者の生計一親族の所有する資産

上記(1)の「先代事業者」には、先代事業者と生計をーにする配偶者その他の親族が含まれます(措法70条の6の10第2項1号かっこ書)。したがって、先代事業者が配偶者の所有する土地の上に建物を建て、事業を行っていた場合におけるその土地など、先代事業者と生計をーにする親族が所有する資産のうち上記(1)①~③のいずれかに該当するものについても、特定事業用資産に該当します。

 

ただし、先代事業者と生計をーにする親族が所有する資産が特定事業用資産に該当するためには、(1)の下線部の通り、その資産が先代経営者の一定の青色申告書にかかる貸借対照表に計上されている必要があります(措法70条の6の10第2項1号)。所得税の青色申告にかかる貸借対照表に、同一生計親族名義の資産を計上する処理を通常は行わないので、今後の取扱いについては国税庁通達等を確認する必要があります。

 

3.小規模宅地等の特例の適用を受ける者がいる場合


2(1)①の宅地等につき、先代事業者および先代事業者と生計を一にする親族(以下「先代事業者等」)から相続等により取得した宅地等について、措法69条の4の小規模宅地等の特例の適用を受ける者がいる場合には、その適用を受ける小規模宅地等の区分に応じ相続税の個人版事業承継税制の適用が次のとおり制限されます(措法70条の6の10第2項1号イ、2号へ、同施行令40条の7の10第7項)。

 

 

上図①のとおり、特定事業用宅地等にかかる小規模宅地等の特例と相続税の個人版事業承継税制については併用できず、どちらかを選択することになります。

 

相続税の個人版事業承継税制は100%納税猶予・免除が可能ですが、後継者が納税猶予を継続し、免除に至るまでには、原則として終身の事業継続や資産保有が求められます(措法70条の6の10第3項、第15項等)。小規模宅地等の特例に比べて要件が厳しいため、後継者が相続等による取得する特定事業用資産の価額のうち宅地等がその大半を占める場合には、通常は小規模宅地等の特例を選択するケースが多いと思われます。

 

 

 

 

 

 

 

士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/07/08)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。今回は、事業承継税制(特例措置)の適用要件の一つである「先代経営者等である贈与者」の要件についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~

■【Q&A】相続税・贈与税の事業承継税制について~資産保有型会社の判定で採用する基準~

 

 

 


[質問]

事業承継税制におけるこのたびの特例措置を適用したく、作業を進めています。その適用要件のなかで、「先代経営者等である贈与者」の要件について以下の3つを定めています。

 

(1) 会社の代表権を有していたこと
(2) 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係が有る者で総議決権数の50%超の議決権を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと。
(3) 贈与時において、会社の代表権を有していないこと。

 

当社は、「先代経営者等である贈与者」にあたる者が、取締役に就任しているものの、代表取締役に過去に一度も就任しておりません。
そのため、これから代表取締役になるべく定款変更(共同代表取締役)し、就任しようと思っています。このスキームで(1)の要件を満たすでしょうか。

 

[回答]

1 租税特別措置法第70条の7の5(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例)に規定する「特定贈与者」について、同法施行令第40条の8の5第1項第1号は「・・・特例認定贈与承継会社(略)の代表権(制限が加えられた代表権を除く。イ及びロにおいて同じ。)を有していた個人で、・・・」と規定しています。

 

2 したがって、贈与の前に会社の定款を変更して贈与予定者を共同代表取締役に就任させ、その旨を登記した後に、特例承継計画を都道府県に提出して経営承継円滑化法の確認を受け、その後、株式等の贈与前に共同代表を辞任すれば適用要件の「会社の代表権を有していたこと」に該当します。この場合、定款等において贈与予定者の代表権に制限を加えないことが必要です。

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年6月15日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「親族内承継の物的対策・人的対策」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?④~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した4回目として、田中信宏先生(公認会計士/税理士法人髙野総合会計事務所)に、事業承継対策における具体的な検討事項について、親族内承継を前提に、お金の対策及び人の対策に分けて解説していただきます。なお、次回は親族外承継のケースをご紹介いたします。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 田中信宏/公認会計士

 

 


【親族内承継 物的対策(モノ・カネ)】

親族内承継を考える時に、承継する会社の財務的健全性の高低により、自社株式及び納税資金に関する承継対策に相違が生じてきます。

 

<健全性が高い場合>
親族間取引の場合、通常相続税評価額を基に会社の株価算定が行われます。とりわけ、健全性が高い会社については、承継する会社の株式の相続税評価額が高く、移転に伴う贈与税・相続税負担が高額になることから、当該税負担に関する対策を準備する必要があります。例えば生前贈与、自社株評価単価引き下げ、事業承継税制(納税猶予)の適用等の対策があります。

 

<健全性が低い場合>
健全性が低い場合、例えば、承継会社が債務超過のケースでは、株式の相続税評価額が低額又はゼロとなり、相続税負担が発生しない可能性が高いため、自社株式の移転に伴う納税対策は不要となります。一方で、承継会社の業績及び資金繰りの問題が発生するため、後継者にスムーズに引き継ぐために、現経営者が後継者への完全な移行までに、経営及び財務基盤の改善(いわゆる事業再生)を果たすことが望ましいです。
【親族内承継 人的対策(ヒト)】
親族内承継の場合、後継者を選定し、後継者の人材育成を実施していくことになります。
この点、事業承継は経営の根幹に関わるため、親族内であるからといってすぐに経営権を全権移譲することは不可能であり、ある程度時間をかけて現経営者が後継者に経営理念の伝承、教育指導、権限移譲を実行していくことが必要となります。また、従業員や取引先への後継者の紹介など、人脈の後継者に対する承継も重要な引継事項となります。

 

 

 

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年1月21日)より再編集のうえ掲載

[初級者のための入門解説]

個人版事業承継税制 超入門ガイド(その2)~適用後の手続と注意点~

 

〈解説〉

税理士 村本政彦(税理士事務所クオリス)

 

 

 

前回に引き続き、個人版事業承継税制を、ざっくり、やさしく、わかりやすく解説します。今回のテーマは、「適用後の手続きと留意点」です。「適用後の手続きは?」「取消事由とは?」「どのような方におススメなの?」など、皆さまの素朴な疑問にお答えします。

 

適用後の手続きは?


相続税・贈与税の申告が終わった後は、「3年おき」に、「税務署に届け出」が必要です。

これは取消事由に引っかかっていないかどうかを確認するための届け出です。

 

取消事由??


この制度は、あくまで納税の”猶予”なので、相続や贈与のタイミングで要件を満たしていればよいだけでなく、その後も「要件を満たし続けること」が必要です。

 

次のようなときには、猶予は取消しになります。

・事業をやめたとき

・届け出を忘れたとき

・対象となった事業用資産を売ったり、廃棄したとき(詳しくは後程)

 

取り消しになったらどうなるの?


取り消しになったら、猶予されていた相続税・贈与税を一括で支払わなければなりません。それに加えて、猶予されていた期間の利息も支払う必要がありますが、これも結構な金額となります。

 

えっ!!それは怖いですね。やめたほうがよいのでしょうか?


ケースバイケースですね。

 

猶予税額が少額であれば、他の方法を考えたほうがよいと思います。

 

猶予税額が高額であれば、取消事由に該当するリスクや届け出の事務負担、猶予される税額などを吟味して、熟考です。高額の相続税・贈与税が支払わなくてよくなるのは、大きなメリットだからです。

 

注意点は?


なかなか癖のある制度なので、注意点は結構多いです。

 

~注意点①~

猶予されている間、「担保」が必要です。

 

~注意点➁~

対象の事業資産「買い替える」ときには、あらかじめ手続きが必要です。

 

この制度は、事業を続けていること、対象の資産を使い続けることが猶予を受け続けられる要件ですので、対象資産を売ってしまうと、適用を受けられなくなってしまいます。

なので、買い替えるときは、ちゃんと代わりの資産を買いますよ、という手続きが必要です。

 

また、対象資産が陳腐化して「廃棄」するときにも手続きがあります。

 

~注意点➂~

一番の注意点は、先ほどもありましたが、この制度は、あくまで納税の”猶予”なので、相続や贈与のタイミングで要件を満たしていればよいだけでなく、その後も「要件を満たし続けること」が必要です。

 

細かく言うと、取消要件はとてもたくさんの項目があるのですが、普通の事業者が該当するかもしれない項目はそれほど多くはありません。

 

とはいえ、猶予期間が極めて長期間に及びますし、取消しになってしまうと猶予されている税額の全額を、利息も付けて支払わなければならないことになってしまいますので、適用を受けた後も、この制度に精通した税理士のサポートを継続して受けることは必須です。

 

なんだかいろいろ難しそうですが、この制度は、どんな人におススメ?


まずは、適用マップを見てみましょう。

 

マップを見ると、中小企業の事業承継税制は基本的に会社全体が対象になるのに対して、個人版の事業承継税制は、対象となる「資産が限定」されていることがわかります。そのため、法人成りした上で中小企業の事業承継税制の適用を受けたほうが、一般的には有利です。

 

ただ、中小企業の事業承継税制の適用を受けられない病院・診療所士業の方の利用は考えられます。特に、CTやMRIなどの高額な医療機器がある場合や、比較的新しい建物がありその評価が高い場合などは、有効な場合が多いでしょう。

 

また、何らかの事情で法人成りが難しい場合にも、活用を検討されるとよいと思います。

 

 

 

【個人版事業承継税制 適用マップ】

 

 

 

 

うちは個人病院なんだけど、適用は受けた方がいいの?


これまで見てきた通り、この制度は、手間もかかり、いろいろ注意点も多くある制度です。

それに対し、この制度の唯一のメリットは、相続税・贈与税の納税が猶予されることです。

なので、適用を受けるかどうかを考えるときには、まずは、メリットである猶予税額がいくらなのかを計算することがとても大事です。

その上で、メリットとデメリットを天秤にかけて、慎重に判断していくことになります。

専門家の助言も必ず参考にしましょう。

[初級者のための入門解説]

事業承継の進め方いろいろ ~ゼロから学ぶ「事業承継 超入門」①~

 

事業承継の基本ポイントを、植木康彦先生(Ginza会計事務所/公認会計士・税理士)に分かりやすく解説していただきます。第1回目は、事業承継を検討するうえで、最初に考えなければいけない「事業承継の進め方」について承継方法ごとにメリットやデメリットを踏まえて確認していきます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

事業承継の進め方はひとつではない

従前、事業承継というと「親から子」のイメージが強かったと思いますが、最近は「M&Aによって外部者に承継するケース」「役員や従業員に承継するケース」、伝統的な「親族に承継するケース」など、承継の方法が多様化しております。

 

 

以下、ケースごとの特徴やメリット・デメリットについて見ていきたいと思います。

 

①M&Aによって外部者に承継するケース

これまで、M&Aで事業を取得する方は、ファンドや事業会社主役でした。しかし、最近は、起業家M&Aの担い手となるケースが増えております。ゼロから事業を始めるのに比べて、顧客や資産を承継できるため、事業を軌道に乗せやすいこと、マッチングサイトの普及で安価に売り先を探すことが可能になったことなどが背景事情としてあるものと思われます。M&Aマーケットの広がりにより、従来は事業承継をあきらめて廃業していたケースでも、事業意欲旺盛な起業家などに事業を承継することが可能となっており、我が国経済全体への影響から見ても好ましいことです。

 

M&Aによる事業承継のメリットは、従業者の引継ぎができるケースが多いこと、売主は株式(事業)売却の対価が得られることでしょう。反面、売却後に契約内容などを巡って争いが起こることもあるので、売買に際しては多少のコストを負担しても専門家に関与してもらう用心が必要といえます。

 

②役員・従業員承継のケース

役員・従業員承継は、親族承継の次に検討されるのが一般的です。事業内容を知り尽くした役員や従業員は、事業承継の適任者といえます。また、取引先や金融機関の理解が得やすいのもメリットです。

 

しかし、ネックは金融機関の個人保証です。本人にヤル気はあっても、後継予定者家族の反対で後継者になれなかったという話は枚挙にいとまがありません。また、従業員は資金力が乏しいケースがあるので株式(事業)買取り資金で苦労するケースも多いといえます。それから、使用人の立場が体に染み付いていると、使用人としては優秀でも経営者としてはそうでないケースも少なくありません。

 

③親族承継のケース

親族承継は従前から事業承継の王道です。従業員や取引先・金融機関の理解が得やすく先代からの帝王学教育も期待できます。また、基本的に無償での承継となるので、特例事業承継税制を利用すれば、一定の要件を満たす必要がありますが相続税や贈与税無税での承継も可能です。反面、血のつながりを優先した場合、不適格な後継者が誕生する恐れがあります。

 

 

3つの事業承継方法の主なメリット・デメリットを比較すると、以下のとおりです。

 

 

進める際のポイントは?

事業承継の課題の一丁目一番地は、早く着手することです。

そして2番目は、先代経営者がしっかり責任を持って承継を全うすることです。

 

以下、それぞれについて説明します。

 

①事業承継は早めに

事業承継の手続には、それなりに時間がかかります。

上記の“進め方の選定”に際しても、親族内に後継者がいるかいないか、いたとして適任者かどうか、役員・従業員はどうかなどの見極めには時間を要します。進め方が決まったとしても、次号以下で説明するそれぞれの阻害要因の拾い出しや環境づくりなど、事業のバトンタッチには年単位の時間がかかるのが普通です。

 

先代経営者も加齢によって段々と気力・体力に支障が生ずるでしょうから、年齢で言えば60~65歳になったら着手するのがよいと思います。先代経営者はそこで引退するというよりも、後継者教育や指導・監督にシフトしてゆくのが理想的かと思います。

 

②しっかり責任を持って全うする

面倒なことは先送りにしたいのは理解できます。俺が死んだら後は好きなようにしてくれという人は意外に多くいらっしゃいます。遺言の場合もそうですが、それでは残された方はたまりません。個人財産の相続の場合でも相続人は大変になることが多いのですが、事業承継は企業規模が大きくなればなるほど影響を受ける従業員や取引先も多くなるので、先送りはあまりにも不誠実な対応です。

 

自分が創業した事業、あるいは、承継した事業は、きちんと自分の手で事業承継をやり遂げてこそ、立派な経営者といえるのではないかと思います。

 

事業承継において大切なことは何か?

事業承継において何が一番大切かと聞かれたら、“創業の精神”と“変革を恐れないマインド”を承継することではないか、と私は思います。

 

①創業の精神

創業の精神は、経営理念にほかなりません。

 

朝礼で毎日復唱したり、会議室や目に入る場所に掲示したり、経営理念の浸透には様々な方法があり、歴史ある企業ほど経営理念の浸透にあたっている感があります。

なぜ自社が存在するのか、その答えは創業の精神にあり、社会に必要とされる存在意義があるはずですから、その精神を承継せずに事業承継は成り立たないと思います。

 

②変革を恐れないマインドを承継すること

どんな事業にもライフサイクルがあります。

その期間は30年とか50年とか言われますが、起業時には新しいタイプの事業であっても、そのままではやがて終焉を迎えます。長く続いている企業は、変革し、時代の環境変化にうまく適合している企業です。花札からゲーム会社に変革した任天堂、パソコンから通信事業に変革したアップルなど代表例でしょう。しかし、多くは変革できずに消滅してしまう事業が多いのも事実で、それくらい変革は難しいということなのでしょう。

 

過去の成功体験を棚に上げて、新しい事柄に如何にチャレンジしてゆけるか、創業の精神と共に変革を恐れないマインドを承継することが大切です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ワンポイント解説]

事業承継税制の特例 ~『後継者要件』について解説~

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 深川雄/税理士

 

 

平成30年度税制改正により「事業承継税制の特例措置」において、後継者の要件が緩和されました。これまでの「一般措置」では、納税猶予の対象となる後継者は1名しか認められておりませんでしたが、「特例措置」では、最大3人の後継者への承継が可能になりました。その結果、会社の実情に合わせた多様な承継方法が選べるようになりました。

 

1.後継者の要件

具体的な後継者の要件は下記になります。

 

2.注意点

贈与より特例措置の適用を受ける場合、贈与の日まで継続して3年以上にわたり役員である必要があるため、計画的に後継者を役員に選任する必要がございます。株式は贈与又相続により取得することが要件となっておりますので、売買による承継は納税猶予の対象とならない点ご注意ください。複数人の後継者を会社の代表者にすることで、後々の運営に問題が生ずることもあります。将来の会社運営について十分な検討を行ったうえで、後継者を選ぶ必要がございます。

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年1月11日 )より再編集

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

事業承継税制の注意点~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


シリーズ事業承継の活用手法として、中小企業の事業承継や財産の分散防止に効果的な信託などを解説していますが、今回は「事業承継税制の注意点」をお送りします。

 

一般の事業承継税制と特例事業承継税制の違いは以下の通りです。

 

・対象株式:2/3 → 全株
・相続猶予対象:80% → 100%(従来は実質53%→100%へ)
・雇用確保要件:5年平均80%維持 → 実質撤廃
・贈与者:先代経営者のみ → 複数株主(一般も同時に改正)
・受贈者:後継経営者1人 → 後継経営者3名まで(代表権&株10%以上)
・相続時精算課税:推定相続人等 → 推定相続人等以外も適用可
・株価減免要件:民事再生等のみ → 譲渡・合併・解散時を加える

 

など大幅に拡充されています。

 

 

いままでは、50%減免だったものが”100%減免”になり、先代経営者→後継者への1対1にしか使えなかったものが “先代経営者+配偶者+その他”後継者へと贈与者も大幅に拡充されていますのでかなり使い勝手のいい制度となったと言えます。

 

 

 

しかし、いくつかの注意点がありますので下記に記します。

 

 

(1)事業承継税制はあくまでも“納税猶予”です。取消要件に当てはまった場合には課税されます。特に資産保有型会社や資産運用型会社に該当した場合には猶予が取り消され課税されます!

 

(2)その為、いつ猶予が取り消されてもいいように株価対策はしっかりし、株価を引き下げてから実施すべきでしょう!

 

(3)資産保有型会社資産運用型会社にならないためには5名以上の従業員がいるなどいくつかの要がありますので確認しておきましょう

 

(4)後継者が複数も可能ですが、後年で主導権争い起きないようもう一度考えることをお勧めします。

 

(5)推定相続人以外にも事業承継可能ですが、相続人に税負担のしわ寄せが行きますので注意しましょう

 

(6)種類株等を承継後に後継者以外が保有している場合には納税猶予は使えません。

 

(7)後継者にはいい制度ですが、後継者以外にも目を配る必要があります。特に遺留分を侵害していないかなど確認しましょう。

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/08/20号)」より一部修正のうえ掲載

 

[ワンポイント解説]

事業承継税制の特例 ~『特例承継計画』について解説~

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 高中恵美/税理士

 

 

平成30年度税制改正により「事業承継税制の特例措置」が創設されました。「特例措置」はこれまでの事業承継税制を抜本的に見直した10年間限定の時限立法で、株式の贈与や相続に係る税負担が100%猶予されます。特例措置の適用を受けるためには、「特例承継計画」を都道府県庁に提出し、確認を受ける必要があります。特例承継計画を提出することができる期間は平成30年4月1日~令和5年3月31日までの5年間に限られますので注意が必要です。

1.特例承継計画の作成

特例承継計画には、次の事項を記載します。記載内容について認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受ける必要があります。

 

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2.実務上のポイント
特例承継計画を提出しても、その後、必ずしも事業承継税制の適用を受けなければならない訳ではありません。適用の可能性がある場合には、令和5年までに特例承継計画を提出することをお勧めします。特例後継者が事業承継税制の適用を受けた後は、その後継者を変更することはできませんが、特例後継者を二人又は三人記載した場合で、まだ株の贈与・相続を受けていない後継者については変更をすることができます。

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2018年12月11日)より再編集のうえ掲載

[初級者のための入門講座]

個人版事業承継税制 超入門ガイド(その1)~簡単な仕組みと適用を受けるまで~

 

〈解説〉

税理士  村本政彦(税理士事務所クオリス)

 

 

 

「個人版事業承継税制」という制度ができました。

平成31年度税制改正の目玉の一つです。

個人事業主の方の中には、事業承継を考えられていて、どんな制度なのか?使った方がいいのか?興味関心がある方がいるのではないでしょうか。

そんな方のために、この制度をざっくり、やさしく、わかりやすく解説します。

どんな制度なんですか?

個人事業主が事業承継、例えば、息子さんや娘さんに継がせたいとき、事業で使っている土地や建物、機械などを、どこかの時点で渡さないといけません。

 

普通は、継がせるときにあげるか、自分が死んだときに相続させるか、ですよね。そのときに問題になるのが、贈与税や相続税です。

 

事業で使っている土地や建物や機械などが高額だと、多額の税金がかかってくることがあります。その負担が重いと事業に支障が出てくることもあるかもしれません。

 

この制度を使うと、後継者が事業を続けている限り、必要な手続きをしている限り、その納税が猶予されます。

最終的に、後継者が亡くなったときや、この制度を使って次の後継者に継がせたときに、免除になります。

 

 

 

 

相続税がかからないってこと?

まずは納税が猶予されます。事業をちゃんと続けられたら、最終的に後継者が亡くなったときや、この制度を使って次の後継者に継がせたときに、免除になります。

 

誰でも受けられるの?

青色申告をしている個人事業主(事業所得者)であれば、対象になります。

後継者の方は、すでにその事業に従事している必要があります(例外あり)。

それに加えて、贈与の場合には、3年以上従事していて、20歳以上であることも必要です。

 

どんな業種でもOK?

不動産賃貸業など一部の業種は受けられません。

 

 

事業に使っている資産なら、なんでもOK?

なんでもではないです。受けられる資産は決められています。

 

・土地(400㎡まで)

・建物(800㎡まで)

・構築物、機械装置、工具、器具備品、船舶など

・営業車(青ナンバーや黒ナンバー)、貨物運送用の一定の自動車

・乳牛、果樹、特許権など

 

適用までの手続きは?

まずは「個人事業承継計画」という計画書を作って、都道府県に提出します。

(令和6年3月31日まで)

 

実際に、贈与を受けたり、相続で受けたりしたときに、申告期限までの間に、都道府県にこの制度の適用を受けたい旨の認定申請書を提出します。

 

別途、税務署に、開業届や青色申告の承認申請も、それぞれの期限までにしておく必要があります。

 

都道府県から認定を受けたら、申告期限までに、その認定書などを申告書と一緒に税務署に提出します。別途、税務署へ担保の提供も必要です。

 

 

 

 

この制度は注意点が多い制度なので、必ず専門家の指導やサポートを受けてください。

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「承継対策はヒト、モノ、カネの視点で」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?③~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した3回目として、事業承継対策における具体的な検討事項について、田中新也先生(公認会計士/税理士法人髙野総合会計事務所)に解説していただきます。なお、次回以降は事業承継においてコンサルティングが活躍する場面を、会社のタイプ別に(健全性の高低、後継者の有無の観点からの分類)ご紹介いたします。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 田中新也/公認会計士

 


【承継対策はヒト、モノ、カネの視点で総合的な検討が必要!】
事業承継対策という言葉はよく耳にするものの、具体的に何を対策・検討すればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。事業承継対策には、大きく分けて人的対策(ヒト)と物的対策(モノ・カネ)と呼ばれる2本の柱があります。どちらかに偏った対策では満足いく事業承継が達成されず、事業承継成功のためには2本の柱のバランスが非常に重要となってきます。
【人的対策(ヒト)とは?】
人的対策で第一に重要となるのが、後継者の選出・育成です。オーナー型企業の場合、現経営者のカリスマ性に依存している場合が多々あります。偉大な経営者の威厳とオーラに、従業員ばかりか社外の関係者(取引先、金融機関等)も圧倒され、支持されている場合には、後継者への経営権の承継時期の見極めも重要となるでしょう。また、事業承継においては、親族間でのトラブル(財産承継をめぐっての「争族」)もつきものです。親族や、関係者が納得できる承継を実現することも、人的対策における欠かせないポイントとなります。
【物的対策(モノ・カネ)とは?】
物的対策における代表的な「モノ」として、自社株が挙げられます。自社株を後継者に承継するにあたり、相続税・贈与税の問題は避けられず、自社株の評価額の引き下げや、納税資金の確保等が事業承継対策のメインテーマと言えます。しかし、自社株の評価額引き下げを目的に対策を講じた結果、会社の財務状況や収益力が低下してしまっては、本末転倒です。税務面の対策ももちろん重要ですが、中長期的な観点から言えば、会社の事業に磨きをかけ、健全な財務体質で後継者へ引き継ぐことも重要なポイントと言えます。

 

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所「TSKニュース&トピックス」(2018年12月21日)より再編集のうえ掲載

[新事業承継税制を理解する!]

「株式等の一括贈与要件の注意点」~新事業承継税制 ポイント解説④~

 

北澤淳先生(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)に、新事業承継税制の実務上の留意点を、Q&A形式にてわかりやすく解説していただきます。今回のテーマは「株式等の一括贈与要件の注意点」です。

 

〈解説〉

 北澤淳(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)

 

 

 

Q.株式等の一括贈与要件の注意点について教えてください。

 

A. 事業承継税制(特例)の適用を受ける贈与を行う場合、後継者の数に応じ、それぞれに定められた数以上の株式等を一括して贈与する必要があります。端数処理の誤り等により、要件を充足していないケースが見受けられましたので贈与する株式等の数には十分注意する必要があります。

 

 

1. 後継者が一人の場合

(1) 贈与者と後継者の保有議決権数が合わせてその会社の総議決権数の2/3以上である場合
⇒贈与後の後継者の議決権数が2/3以上となるように贈与

(2) 贈与者と後継者の保有議決権数が合わせてその会社の総議決権数の2/3未満である場合
⇒贈与者が保有する議決権株式等のすべてを贈与

 

【注意点】
発行済み株式総数の3分の2に端数がある場合には、その端数は切り上げて計算することに注意が必要です。
(例)
発行済株式総数が100株の場合、その3分の2は66株ではなく67株です。

 

 

2. 後継者が二人又は三人の場合

贈与後に、それぞれの後継者の議決権数が10%以上であり、かつ、贈与者よりも多くの議決権数を有するように贈与

 

【注意点】
贈与者よりも後継者が多くの議決権数を有するように贈与する必要があるため、贈与者と後継者の議決権数が同数の場合には要件を充足しません。

 

一方、同族内筆頭要件の判定にあたっては、後継者と議決権数が同数の者がいてもそれぞれ筆頭として取り扱うこととされており、一括贈与要件と取り扱いが異なりますので注意が必要です。

 

<一括贈与要件>
後継者の議決権数 > 贈与者の議決権数
<同族内筆頭要件>
後継者の議決権数 ≧ 贈与者の議決権数

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「承継対策は入り口が重要」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?②~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した2回目として、今回は事業承継への取り組みの入り口について、髙木融先生(公認会計士/税理士法人髙野総合会計事務所)にご紹介いただきます。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 髙木融/公認会計士


【承継対策は入り口が重要!】

事業承継対策というと、ともすれば納税対策やスキームの検討といったテクニカルな議論になりやすい側面がありますが、本来の実務的な事業承継対策というのはかなり広い概念を含んでいます。文字どおり、適切に「事業を承継」することが最終目的であり、その課題の一つが納税対策という位置づけになります。そして、この事業を承継するというミッションに取り組む初期段階において、事業承継にあたって整理・クリアすべき課題を明確にすることが極めて重要です。

 

承継対策の良くない例としては、納税負担の最小化など定量的な部分を重視してスキームを組み立てたものの、実行するにあたって関係者の合意が得られなかったり、中長期的な事業の継続に不安が残るような承継スキームになってしまうことがあります。あくまで、「事業の承継」という大きな目的を念頭に置きながら、広い視野と幅広い選択肢を持つことが入り口段階としては重要になってきます。

 

このような大きな視点による初期の具体的な取り組みが「タイプの識別」です。前回ご紹介したとおり、事業承継に直面した会社には様々なタイプ(A~D)が存在しており、ご自身の会社がどのタイプに当てはまるのかという識別を行う必要があります。「会社の健全性が高く後継者もいる会社(タイプA)」「健全性は高いものの後継者がいない会社(タイプB)」「後継者はいるものの健全性が低い会社(タイプC)」「健全性も低く後継者もいない会社(タイプD)」といった識別です。

 

このようなタイプ識別を適切に行うためには、承継しようとする事業が現在置かれている状況を正確に把握・評価する必要があります。そのためには事前の財務的な分析も必要ですし、現在の経営の担い手の特徴、従業員の特徴、取引先との関係性、外部環境の見通しなど、検討すべきテーマが多岐にわたります。しかし、これらの初期分析を丁寧に行わなければ、タイプの識別を誤ってしまい、結果として承継した事業の継続が危ぶまれてしまうこともあり得ます。

 

コンサルティングという視点でみると、事業承継対策というものは、非常に総合力が求められるテーマであり、単なる相続税対策の延長とは異なる趣があるものと言えるでしょう。

 

 

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税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2018年11月21日)より再編集のうえ掲載

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

無議決権株式と属人株式の活用(その2) ~事業承継に活用したい手法~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、前回のコラムで取り上げました「属人株の活用事例」についてご解説いただきます。事業承継や株主対策にぜひご参考にしてみてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


 

属人株とは会社法109条に規定されているもので(詳しくは前回のコラムを参照下さい)なんと、株主ごとに異なる取り決めを定款変更でできちゃうんですね!
さらに登記事項にもなっていないため登記も必要ありません!!

 

では、どんなことが規定できるかというと
株主の権利のうち“剰余金配当請求権” “残余財産請求権” “議決権”が会社法105条に規定されています。

 

つまり、配当とか議決権とかが決められるんですね!

 

当社でも属人株を使った事業承継や株主対策を行っています!

 

 

例えば

 

(1)XXさんの持っている株式を優先配当にしてしまうとか、配当はXX円と決めてしまうということができてしまいます。

 

(2)議決権もですので、XXさんの持っている株式は配当高いけど、議決権は無し

 

それを応用すると

 

「代表者が持っている株式の議決権は5倍とする」
「畑中さんが持っている株式の議決権は10倍にします」

 

ということができます。

 

 

GOOGLEさんとか日本ではサイバーダイン社が使っている
ような特定の株式の議決権を増やすということが可能です。

 

「株式数は15%しか持ってなくても議決権は2/3を抑えている!!」

 

といった事業承継対策にも使えますね!

 

そのまま15%しか持っていないと、重要な決定ができなく会社の運営ができない!
でも株式を増やそうとすると多額の金銭が必要といった場合にも活用できますね!!

 

また、「持株会の配当は多めにする代わりに無議決権とする」といったように、
議決権をなくす代わりにインセンティブを多めにするということも可能になります!

 

「属人株はわかると大変活用できる優れものです!!」
AIに負けないよう知恵を使っていきたいものです!

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/03/10号)」より一部修正のうえ掲載

[新事業承継税制を理解する!]

「議決権数の考え方の留意点」~新事業承継税制 ポイント解説③~

 

 

北澤淳先生(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)に、新事業承継税制の実務上の留意点を、Q&A形式にてわかりやすく解説していただきます。今回のテーマは「議決権数の考え方と留意点」です。

 

〈解説〉

税理士 北澤淳(税理士法人山田&パートナーズ)

 

 

 

 

Q.事業承継税制(特例措置)には、「同族過半数要件」「同族内筆頭要件」といった「議決権数」に着目している要件があります。これらの考え方の留意点を教えてください。

 

 

A、同族過半数要件、同族内筆頭要件といった要件は、保有している株式数ではなく、行使できる議決権の数を基準に要件を充足しているかどうかを判定しております。下記のようなケースに当てはまる会社は、発行済み株式総数=議決権総数とはならない会社ですので、要件を充足しているかどうかを判断する際に慎重に検討する必要があります。

 

1、自己株式を有している会社

自己株式は、議決権を有しないこととされています(会社法308②)。したがって、発行済み株式総数から自己株式数を除いた数が議決権総数となります。下記のケースにおいては、議決権総数は1,200個(1,600個-400個)であるとして、要件の判定を行います。

 

 

2、株式の持ち合いをしている会社

事業承継税制の適用を受けようとする会社(A社)が他社(B社)の議決権総数の25%以上を有する場合、B社はA社について議決権行使することができません(会社法308①)。この場合、A社の発行済み株式総数からB社が保有する数を除いた数が議決権総数となります。下記のケースにおいては、議決権総数は1,100個(1,300個-200個)であるとして、要件の判定を行います。

 

 

3、単元株制度を導入している会社

定款で定めた一単元ごとに議決権を有することとされていますので、単元未満株式については議決権を有しないものとして取り扱います。下記のケース(10株を一単元としている。)においては、議決権総数は497個であるとして、要件の判定を行います。

 

 

4、種類株式を発行している会社

種類株式のうち、議決権の一部に制限がある株式なのか、議決権の全部に制限のある株式なのかによって、下記の表のとおりに取り扱います。たとえば、一部制限株式を贈与・相続により取得した場合であっても事業承継税制の適用を受けることは出来ませんが、同族過半数要件や同族内筆頭要件の判定にあたっては総議決権数に含めて要件の判定を行うこととなります。なお、いわゆる黄金株は議決権に制限のない株式ですので、完全議決権株式等に含まれることになります。

 

 

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「タイプ別による事業承継対策」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?①~

 

企業経営者にとって、事業承継の問題はいつの時代も悩みの種となっているようです。「次の世代へスムーズに経営権を移譲したい。」経営者であれば誰もが思われることでしょう。

 

ただし、会社の状況によっては「うちは、事業承継を考えるほど儲かってもいないし、後継者もいないから関係ない」とお考えになられてはいないでしょうか。

 

一口に『事業承継』といっても様々なタイプの事業承継が存在し、実はどのようなタイプの会社であっても事業承継の問題には直面する可能性があります。

 

今後、複数回にわたって”コンサルティングという観点からみたタイプ別の事業承継”について、税理士法人髙野総合会計事務所の専門家の皆様にご解説いただきます。

 

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 鈴木哲史/公認会計士・税理士

 

 


【中小企業の事業承継は喫緊の課題!】

今後10年の間に70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定といわれています。

 

事業承継の問題は、会社の健全性が高く、後継者もいる会社(下表のタイプA)以外にも、健全性は高いものの後継者がいない会社(タイプB)や、後継者はいるものの健全性が低い会社(タイプC)、健全性も低く後継者もいない会社(タイプD)のそれぞれにおいて、顛末・方向性は異なるものの直面する問題といえます。

 

そして、事業承継対策は単に相続税を抑えるための対策に留まらず、健全性の低い会社をご子息に引き継がせることのないように健全性を高める、健全性の高い会社をM&A等の手法を用いて外部に高く売却するといったコンサルティング業務も事業承継対策の一環と言えるのです。

 

 

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税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2018年10月22日)より再編集のうえ掲載

 

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

無議決権株式と属人株式の活用(その1) ~事業承継に活用したい手法~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、中小企業の事業承継に活用したい手法について、お伝えしていただきます。今回は、「無議決権株式」「属人株」です。ぜひご参考にしてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 

 


まず、「無議決権株式」ですが、議決権を与えたくないとか、議決権には興味がないといった場合に使われます。よく見かけるのは従業員持株会など社員へのインセンティブに使うパターンですね!
「会社に逆らうことはできないし、配当貰えればいいしといった感じで使われます。」
会社も「インセンティブを上げたいけど、これ以上株主増やしたくないし・・・」
といった形で 言わば相思相愛の形で使われます。
議決権がない代わりに配当は優先的に出るなどという取り決めをする場合も多いですね!

 

もう一つは「種類株式」に似たもので「属人株」というものがあります。会社法に規定されているもので

 

会社法第109条
1.株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2.前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。

 

となっています。

 

なんと、株主ごとに異なる取り決めを定款変更でできちゃうんですね!
さらに登記事項にもなっていないため登記も必要ありません!!

 

では、どんなことが規定できるかというと

 

株主の権利のうち“剰余金配当請求権” “残余財産請求権” “議決権”が会社法105条に規定されています。

 

つまり配当とか議決権とかが決められるんですね!

当社でも属人株を使った事業承継や株主対策を行っています!

 

次回は実際の活用事例をお伝えしましょう!!
「属人株はわかると大変活用できる優れものです!!」

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/02/20号)」より一部修正のうえ掲載

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

事業承継の失敗事例 ~その解決策は?~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、事業承継の失敗事例とその解決策の糸口をご提示していただきます。ぜひご参考にしてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


(事例1)平等に相続させたため、後継者の経営権の確保ができず何も決められなくなった!

(事例2)納税資金の確保ができず、自社株の買い取り請求=会社の財務基盤が大幅に毀損!

(事例3)会長派と社長派に分裂、後継者が追い出されてしまう!

(事例4)社長派と専務派に分裂、専務派の追い出しに多額の資金が!

(事例5)後継者への株式の移転が早すぎて先代社長が追い出される事態に!

(事例6)金融機関に持株会社設立を提案され、多額の借入を起こして後継者に会社を設立させる!

 

 

(事例1)平等に相続させたため、後継者の経営権の確保ができず何も決められなくなった!

〔ケース〕

・相続対策のため、子供にはある程度、平等に相続させた。
・会社に関係のない相続人(主に配偶者)から相続した株式の買い取り請求がきた。
議決権が33%しかないため常にほかの株主の賛成がないと運営できず、後継者の運営に支障が出た。

→何も決められず、M&Aも役員選任も主体的に決められないまま運営に支障が・・・

 

【解決策】

事前に株式の集約や、属人株式や種類株式などで議決権の集約をしておくべき

(事例2)納税資金の確保ができず、自社株の買い取り請求=会社の財務基盤が大幅に毀損!

〔ケース〕

・企業オーナーが、遺言を作成せずに急逝。(妻、長男、長女)
・事前対策が不十分のため、相続財産の大半を自社株と事業資産が占めることに。
・長女が法定相続分での遺産分割を主張
・長男は、無議決権株式の発行を提案するが、長女は現金を要求。
・長男は、代償分配金・納税資金支払いのため自社株の買取を会社請求せざるを
得なくなり、結果として財務内容が急速に悪化することになった。

 

【解決策】

事前に遺言を作成するとともに、相続対策の中での納税資金を生命保険等で確保しておくべきでは?

(事例3)会長派と社長派に分裂、後継者が追い出されてしまう!

〔ケース〕

・社長が急死、後継者の息子が株式の35%しか相続できなかった。
・そもそも社長自身が、会社の株式の40%しか保有していなかった。
・残りの株式は、会長である社長の兄の相続人及び専務である社長の弟と役員及び取引先が保有していた。
・死後専務が会長の遺族・取引先等を取り込み社長に就任。
・最終的に、専務が経営するものの、派閥争いの結果従業員の離反を招くこととなった。

 

【解決策】

兄弟の間で事業承継の道筋をつけ、決めておかないと、叔父甥の関係になった段階では急にもめることも・・・。議決権は少なくとも生前に確保しておくべき

(事例4)社長派と専務派に分裂、専務派の追い出しに多額の資金が!

〔ケース〕

・社長と専務(弟)で、会社の株式をそれぞれ60%と40%の比率で保有
・その後、それぞれの息子が会社に入社。
・社長より専務の方が会社の成長に貢献している状況。
・社長が強硬に自らの息子を社長にしたため、専務は反発しは退任するとともに退職金と株式の買取りを要求した。
・結局純資産価額に近い金額で買い取りをせざるを得なくなり、数億円ものお金が会社から流出し財務内容が大幅に悪化

 

【解決策】

兄弟の間で事業承継の道筋をつけ、決めておかないと、叔父甥の関係になった段階では急にもめることも・・・このケースでは事前に会社分割でそもそも会社を分けることも検討しておくべきでは

(事例5)後継者への株式の移転が早すぎて先代社長が追い出される事態に!

〔ケース〕

・社長が、息子に事業承継しようと社長に据えて経営を任せ、株式の40%を徐々に贈与していった。
・ところが、経営方針をめぐる対立が激しくなり、会長は息子を解任し社長に復帰。
・解任された息子は、社長への復権を要求。
・そのうちM&A案件による事業買収のため第3者割当増資を計画
息子が40%の株式を保有していたため、否決される。
事業拡大のチャンスと対外的な信用を失う

 

【解決策】

財産としての株式は相続対策で事前に渡しても、議決権株式や種類株式で決定権は完全に委譲するまでは確保しておくべき 金の切れ目が…にならないように

(事例6)金融機関に持株会社設立を提案され、多額の借入を起こして後継者に会社を設立させる

〔ケース〕

・業績好調のA社は相続対策を金融機関から薦められ、資産管理会社を設立した。
・資産管理会社は息子名義で、現社長は資産管理会社に時価10億円で株式を売却した。
・売却に際し、持株会社組成費用2000万円、株式の譲渡に対する譲渡所得税2億円を払う。

 

【解決策】

資産管理会社の設立は相続対策として有効ではあるが、譲渡や贈与をするのは株価が下がったタイミングで行うなどタイミングを見計らうことが重要。資産をわざわざ高値でつかませ、必要以上に後継者に借入・返済負担・金利負担を負わせる必要はないと思われます。

 

 

 

全てのパターンに言えますが、今回のコラムのテーマでもあります株式「財産としての株式」「支配権としての株式」という考え方で分けてとらえ「支配権」の確保をどのように実現するかということです。株式自体を動かすことにこだわらず、議決権の確保をし運営権を確保したうえで、株式の移転はその次に考える。もちろん両方を確保できればそれが一番いいのですが・・・。
また、現在の社長が元気のうちには、親族みんな文句を言わないのですが、死後突然不満が爆発ということもありますので、やはり事前の対策が重要ですね。

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2017/06/15号)」より一部修正のうえ掲載

[新事業承継税制を理解する!]

「中小企業の範囲等」~新事業承継税制 ポイント解説②~

 

新事業承継税制の実務上の留意点を、制度創設に関わった中小企業庁元担当官の北澤淳先生(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)に、Q&A形式にてわかりやすく解説していただきます。

 

〈解説〉

税理士 北澤淳(税理士法人山田&パートナーズ

 

 

 

Q.事業承継税制(特例措置)の適用を受けることができるのは中小企業の株式等ですが、そもそもの「中小企業」の範囲について教えてください。士業法人や医療法人はどのような取り扱いになるのでしょうか。

 

 

A. 事業承継税税制(特例措置)の対象となる「中小企業」は、経営承継円滑化法において規定されています。

 

 

1. 原則

中小企業者の判定は、その会社の資本金又は従業員の数が、業種ごとに定められた資本金の額又は従業員の数以下であるかどうかにより行います。なお、資本金又は従業員数のいずれかの基準を満たしていれば中小企業者と判定します。

 

2. 有限会社の取り扱い

会社法施行前に設立された有限会社については、会社法上の会社とみなすこととされています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2①)。したがって、有限会社であっても、その他の要件を充足していれば事業承継税制(特例措置)の適用を受けることができます。

 

3. 士業法人の取り扱い

税理士法人や弁護士法人といった士業法人は会社法の合名会社の規定を準用しているものの、会社法に定める「会社」(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)ではないため、事業承継税制(特例措置)の適用を受けることができません(租税特別措置法第70条の7①二)。

 

(参考)租税特別措置法第70条の7①二
二 非上場株式等 次に掲げる株式等をいう。
イ 当該株式に係る会社の株式の全てが金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されていないことその他財務省令で定める要件を満たす株
ロ 合名会社、合資会社又は合同会社の出資のうち財務省令で定める要件を満たすもの

 

4. 医療法人の取り扱い

医療法人は、会社法に定める「会社」(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)ではありませんので、適用を受けることは出来ません。