[解説ニュース]

評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地や家屋を有する場合の純資産価額方式の計算

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い②

■同族株主が相続等により取得した非上場株式の相続税評価

 

 

1.純資産価額方式による株式評価計算の原則


純資産価額方式は、非上場会社が課税時期(個人が相続、遺贈又は贈与により財産を取得した日をいう。)に清算した場合に株主に分配される正味財産の価値(純資産価額)を、その会社の発行株式の相続税法上の評価額とする評価方法です。具体的には、非上場会社(以下「評価会社」)が所有する資産を財産評価基本通達(以下「財基通」)に基づき評価し、その評価額の合計額から、負債金額の合計額及び資産の含み益に対する法人税額等相当額を差し引くことにより純資産価額を計算します(財基通185)。

 

2.課税時期前3年以内に取得した土地や家屋の評価


(1)通常の取引価額による評価

 

純資産価額の計算上、資産は財基通に基づいて計算することから、会社が所有する土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基に評価するのが原則です。ただし、課税時期前3年以内に取得又は新築した土地や家屋の価額は、課税時期における通常の取引価額相当額(注)で評価します(財基通185かっこ書)。(注)その土地等や家屋等の帳簿価額が課税時期における「通常の取引価額」に相当すると認められるときには、帳簿価額(取得価額)に相当する金額によって評価できます(同)。

 

このような取扱いをする理由は、①純資産価額の計算において、評価会社が所有する土地の時価を算定する場合に、個人が所有する土地の評価を行うことを念頭においた路線価等によって評価替えすることが唯一の方法ではなく、適正な株式評価の見地からは、通常の取引価額によって評価すべきとも考えられること、②課税時期の直前に取得や新築をし、時価が明らかにわかっている土地や家屋についても、わざわざ路線価等によって評価替えを行うことは、時価の算定上、適切でないと考えられることによるものです(令和2年版財基通逐条解説682~683頁)。

 

 

 

(2)「取得」の意義

 

上記(1)における「取得」には、評価会社が土地や家屋を交換、買換え、現物出資、合併等により取得する場合が含まれます(令和2年版財基通逐条解説683頁)。合併や会社分割等の組織再編行為により評価会社が土地や家屋を取得した場合についても、(1)の「取得」に含まれるので注意が必要です。

 

 

 

(3)土地や家屋を課税時期前3年以内に取得したかどうかの判定時期

 

純資産価額の評価は、課税時期現在における評価会社の資産及び負債に基づき計算することが原則ですが、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債の金額について著しく増減がないと認められる場合には、直前期末の資産及び負債を基として評価することが認められています(「取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等」12頁)。

 

この取扱いは、課税時期における仮決算を組むのが煩雑であるため、課税上弊害がない範囲で、直前期末の資産等を課税時期現在の資産等に置き換えることを認めたものであり、直前期末を課税時期とみなすものではありません。

 

したがって、評価会社の所有する土地及び家屋が3年以内に取得したものかどうかは、直前期末の資産等を基に評価する場合であっても、課税時期から遡って判定します(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」224~225頁)。

 

 

 

(4)家屋とその敷地を取得後に家屋を賃貸した場合

 

評価会社が課税時期前3年以内に取得した家屋と敷地を所有している場合において、その家屋を取得後に自用から賃貸に利用区分を変更しているときは、その家屋と敷地の評価をどのように行うかが問題となります。上記の場合には、課税時期において家屋を賃貸していることから、家屋とその敷地を貸家及び貸家建付地としての通常の取引価額に相当する金額により評価することになります。

 

この場合、取得時の利用区分(自用家屋、自用地)と課税時期の利用区分(貸家、貸家建付地)が異なることから、前述(1)(注)のように取得価額そのものを評価額とすることはできません。そこで実務上、取得時の利用区分と課税時期の利用区分が異なり、その取得価額等から課税時期における通常の取引価額を算定することが困難である貸家及び貸家建付地の評価は、まず(1)によりその貸家と敷地が自用家屋と自用地であるとした場合の通常の取引価額を求め、次にその価額を財基通93の貸家の評価の定めと26の貸家建付地の評価の定めを適用して減額して計算することが認められています(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」226頁)。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/07/25)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】新築した住宅に転居後、転居時まで居住した住宅を譲渡した場合の3,000万円控除

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■個人が共有持分を分割した場合の所得税の取扱い

■被相続人から相続開始の年に贈与を受けた相続人の課税関係

 

 

【問】

Aさんは、平成28年に亡父から相続により取得した東京都中野区の区分所有マンションに居住していましたが、令和2年4月に杉並区に戸建て住宅を新築し、令和3年3月に転居しました。Aさんは令和4年6月に中野区のマンションを譲渡し、譲渡益が生じることから、租税特別措置法(措法)35条第1項の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(以下「3,000万円控除」)の適用を検討しています。

 

Aさんは、中野区のマンションを譲渡した時には杉並区に所有する住宅に居住していることから、同マンションが3,000万円控除の適用要件とされる「(自分が)主としてその居住の用に供している家屋」に該当せず、適用を受けられないのではないかと心配しています。この場合において、Aさんは3,000万円控除の適用が認められますか。

 

【回答】

中野区のマンションは、居住の用に供されなくなった令和3年3月の時点で「主としてその居住の用に供している家屋」であり、これを居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡しているので、他の要件を満たす限り3,000万円控除の適用が認められます。

 

【理由】

(1)3,000万円控除の概要

個人が自己の居住用の不動産を譲渡した場合は、譲渡所得の金額の計算上、最高3,000万円が控除できる特例が設けられています。これが3,000万円控除です。3,000万円控除の適用対象とされる不動産には、次のようなものがあります(租税特別措置法第35条第2項)。

 

①現に自己が居住している家屋

②居住用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した家屋

③①又は②の家屋とともに譲渡したその敷地

④①の家屋が災害により滅失した場合において、その家屋に住まなくなった日から3年目の年の12月31日までの間(原則)に譲渡したその敷地

 

 

(2)「主としてその居住の用に供している家屋」の判定時期

個人が居住の用に供している家屋を二以上所有する場合、3,000万円控除の適用対象となる上記(1)①または②の家屋は、その者が主として居住の用に供していると認められるーの家屋に限られます(措法施行令20条の3第2項)。

この場合、譲渡した家屋が「主として居住の用に供している家屋」に該当するかどうかの判定時点が問題になります。

 

Aさんの場合、中野区のマンションの譲渡時点で判定すると、譲渡時に主として居住の用に供している杉並区の住宅を有していることから、マンションはAさんが主として居住の用に供している家屋には該当せず、その譲渡について3,000万円控除は適用されません。一方、マンションを居住の用に供さなくなった時点で判定すると、マンションを居住の用に供さなくなった時にAさんは他に居住の用に供している家屋を有していないので、他の要件を満たす限り3,000万円控除の適用が認められることになります。

 

この「主としてその居住の用に供している家屋」の判定時点について、国税庁の通達では「居住の用に供されなくなった時」とされています(措法通達31の3−9(2)、35−6)。したがって、譲渡した家屋が「その者が主としてその居住の用に供していると認められるーの家屋」に該当すると判定された場合には、その譲渡の時において譲渡した者が他にその居住の用に供している家屋を有している場合であっても、その譲渡した家屋は、上記(1)①または②の家屋に該当します。

 

 

(3)本件へのあてはめ

上記(2)より中野区のマンションは「主としてその居住の用に供している家屋」に該当し、Aさんはこれを令和4年6月、すなわち居住の用に供されなくなった日(令和3年1月)から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡していることから、他の要件を満たす限り、3,000万円控除の適用が認められます。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/06/27)より転載

[解説ニュース]

低未利用地等を譲渡した場合の100万円特別控除の適用状況

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■滞納固定資産税の”相続”問題にご用心

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

 

 

1.創設初年度(令和2年)は2,501件


低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除(租税特別措置法35条の3、以下「100万円控除特例」という)の適用状況が、国税庁の最新資料(資産税事務処理状況表)で分かりました。

 

それによると、制度発足の令和2年7月から年末までの令和2年分の適用件数は、全国で2,501件でした。12ある国税局別の適用件数は次の通りです(申告者住所地ベース)。

 

 

100万円控除特例の適用に必要な土地所在地の市区町村の確認書交付実績(国土交通省令和3年7月公表)によると、確認書交付実績は全国で2,060件。この中の約2割は共有だったとされています。国税庁のデータは国土交通省のデータをほぼ裏付けるものとなっています。

 

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001469388.pdf

 

ただ、国土交通省の公表によると、都道府県1団体当たり平均で確認書は44件とのこと。また、公表されたグラフを見ると、例えば東京国税局管内の東京・神奈川、千葉、山梨の確認書交付実績に比べ、明かに申告件数の方が上回っており、申告者の地元の物件ではなく、他の道府県の土地を譲渡している状況が見えてきます。

 

 

2.特例の概要


100万円控除特例は、個人が所定の低未利用土地等を譲渡し、譲渡の後の当該低未利用土地等の利用について、市区町村長の確認がされたものの譲渡であって、その対価の額の合計が500万円以内である場合に、譲渡所得の計算上100万円を控除する制度です。

 

この場合の譲渡対価500万円以内の判定は、例えば、土地が共有であれば所有者ごとに判定します(措置法通達35の3-2)。たとえば、兄弟2人で持分2分の1ずつ共有の土地を900万円で譲渡した場合は、兄弟で500万円ずつの枠があるため、2人合わせて1000万円以内となり、100万円控除特例の要件をクリアしたことになります。

 

 

3.低未利用土地とは


低未利用地等とは、都市計画区域内にある土地基本法第13条第4項に規定する低未利用土地とされています。具体的には、居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、又はその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地や、その低未利用土地の上に存する権利のことです。

 

国土交通省が確認書を交付するにあたって出した文書「低未利用土地等の譲渡に係る所得税及び個人住民税の特例措置の適用に当たっての要件の確認について」によると、「低未利用土地とは、具体的には、空き地(一定の設備投資を行わずに利用がされている土地を含む。)及び空き家・空き店舗等の存する土地とする。

 

ただし、コインパーキングについては、一定の設備投資を行い、業務の用に供しているものではあるが、譲渡後に建物等を建ててより高度な利用をする意向が確認された場合は、従前の土地の利用の程度がその周辺の地域における同一の用途又はこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っており低未利用土地に該当すると考えて差し支えない。」とされています。低未利用土地等に該当するかどうかは、これで判断するのがよさそうです。

 

 

4.その他の要件等


ただし、親族等所定の特別関係者への譲渡ではないこと、譲渡の前3年間に譲渡した土地を分筆して100万円控除特例の適用を受けている等所定の譲渡所得課税の特例を受けていないことが適用の要件です。

 

手続きは、確定申告書に計算明細書、譲渡した土地が低未利用土地等であること及びその利用について市区町村長が確認した確認書、その土地が分筆等され同特例の適用を受けていないこと等がわかる書類を付けて申告します。

 

適用期限は2022年12月31日まで。もっとも「空地・空き家」の増加を抑制する制度創設趣旨からすると、制度の適用期限延長も考えられます。しかし利用していない不動産に係る固定資産税等の固定費を削減し、保有財産のリストラをするには、活用しがいのある特例になっているので、チャンスがあるうちに検討したいところです。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/06/13)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】相続開始直前に被相続人が老人ホームに入所していた場合の小規模宅地等の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■被相続人から相続開始の年に贈与を受けた相続人の課税関係

■生前贈与がある場合の相続税申告の留意点

 

【問】

甲さんは令和4年5月に死亡しました。甲さんの相続人は子のAさん1人であり、Aさんは甲さんの遺産を全て相続しています。甲さんは平成30年に要介護認定を受けた後、自宅を離れて介護付き老人ホームに入所し、相続開始まで退所せずにそこで暮らしていました。甲さんの自宅はしばらく空き家となっていましたが、Aさんが令和元年に甲さんの旧自宅に転居し、甲さんの相続開始まで居住していました。またAさんは、甲さんが老人ホームに入所する直前において甲さんと生計を別にしていました。
上記の場合において、甲さんに係る相続税の計算上、Aさんは租税特別措置法(措法)69条の4の特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下「本特例」)の適用を受けることができますか。

 

【結論】

甲さんの自宅だった建物(旧自宅)は、甲さんが老人ホームに入所後、別生計のAさんの居住の用に供されていることから、その敷地は相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地に該当せず、本特例の適用を受けることができません。

 

【理由】

(1)本特例の概要

個人が相続又は遺贈により、相続開始の直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。)を取得する場合、一定の要件の下で、その宅地等のうち限度面積(330㎡)までの部分について相続税の課税価格に算入すべき価額を80%減額できる制度をいいます(措法69条の4第1項)。

(2)被相続人の居住の用に供されていたかどうかの判定の原則

本特例の対象となる「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」の判定は、被相続人が、その宅地等の上に存する建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより行います。

 

具体的には、被相続人の日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造や設備の状況、生活の拠点となる他の建物の有無その他の事実を総合的に考えて、居住の用に使用されていたかどうかを判定します(措法69条の4第1項、第3項2号、国税庁HP「質疑応答事例」)。

(3)被相続人が老人ホームに入所したことにより自宅が空き家であったときに、その敷地について本特例の適用が認められる場合

被相続人が居住していた建物を離れて老人ホームに入所し、一度も退所せずに死亡した場合は、その建物の敷地を特定居住用宅地として本特例の適用を受けられるかどうかが問題となります。被相続人が居住していた建物を離れて老人ホームに入所したような場合は、一般的にはそれに伴い被相続人の生活の拠点も老人ホームへ移転したものと考えられます。

 

しかし、被相続人が老人ホームに入所したことにより、相続開始の直前においてそれまで居住していた建物を離れていた場合であっても、次の①と②の要件を満たすときには、被相続人が居住していた建物の敷地は、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地に該当するものとして、相続税の計算上、本特例を適用することが認められます。

 

①介護保険法に規定する要介護認定又は要支援認定を受けていた等の被相続人が、有料老人ホーム等の施設又は住居に入居又は入所していたこと(措法施行令40条の2第2項)。

 

②被相続人の居住の用に供されなくなった後に、あらたにその宅地等を次の用途に供していないこと(同条第3項)。

イ.事業(貸付けを含む。)の用
ロ.【被相続人又は老人ホームへ入所する直前において同一生計であり、かつ、被相続人の自宅に引き続き居住している親族】以外の者の居住の用

 

(4)本件へのあてはめ

甲さんの旧自宅は、相続開始の直前においてAさんが居住しており、Aさんは甲さんの老人ホーム入所直前において甲さんと別生計であったことから、上記(3)②の要件に該当しません。よって(3)の場合には該当せず、本特例の適用を受けることができません。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/05/30)より転載

[解説ニュース]

リストラで借換えた賃貸不動産の借入金の利子が必要経費になる範囲

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■不動産所得の計算で争いになった最近の事例

■借地人の建物を地主が取壊した際の費用をめぐる税金トラブル

 

 

1. 借入金の借換え後に相続


賃貸不動産経営のリストラに伴って、不動産の一部
売却と借入金圧縮を経て事業を継いだ相続人が、借入金利子の必要経費算入をめぐって、税務署とトラブルになった事案があります(千葉地裁令和2年6月30日判決・棄却・完結)。

 

判決によると、Xさんは平成元年に16億5千万円を借入して、SRC造7階建ての建物を新築し、その後賃貸用建物設備資金と運転資金、その他設備資金併せて1億5千万円を上乗せしました。

 

しかし平成20年になって、事業をリストラするため、Xさんの息子YさんとYさん自身が運営する会社(Y社)に賃貸不動産の持ち分4分の3を譲渡するとともに、譲渡資金と借換えの借入金で、元の借入金を全額返済し、借入金総額を約6億2,500万円に圧縮しました。その後、Xさんが亡くなり、Yさんが残りの賃貸不動産の持ち分と借入金残高約5億3千万円を相続し、事業を承継しました。

 

 

 

 

 

 

そこでYさんは、不動産所得の計算上、借換えした金融機関に支払った利子を全額必要経費に算入して申告したところ、税務署が支払利子の一部を必要経費に認めないとして否認しました。

税務署によると、Xさんが生前リストラでYさんやY社に建物の持ち分4分の3を売っていたから、それに対応する借入金の借換部分に相当する金額の利子は必要経費と認めるわけにはいかないというのです。

 

Yさんは最終的に借入金利子の全額を必要経費に認めてもらうため、裁判所に訴えました。

 

税務署は、借入金約10億4,431万円のうち、一括返済直前の建物の取得に係る2つの借入金残高の4分の1の金額とXさん(母)の不動産貸付業務の借入金の残高の合計額の占める割合=業務関連割合29.67%として、この割合を支払利子に乗じた金額に限り必要経費になるとしています。

 

2. 争点と判断


争点は「不動産所得の必要経費に算入すべき借換借入金に係る支払い利子は、業務関連割合29.67%を乗じた金額に限られるか」です。

裁判所は、まず、不動産所得の計算上必要経費に算入すべき金額について所得税法37条1項で「その年分の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他不動産所得を生ずべき業務について生じた費用の額」と規定されていることを確認。

 

次に、借入金利子の必要経費該当性について、「借入金が不動産所得を生ずべき業務についての費用として当該業務との関連性が認められる場合、その借入金についてある年中に支払われた借入金利子は不動産所得を生ずべき業務についての費用に充てる資金の融通を受けていることについてその年中に支出された対価であるから、その年における不動産所得を生ずべき業務について生じた費用として当該業務との関連性が認められ、一般対応(期間対応)に必要経費に該当するというべき」と説示。

 

そして借入金の位置づけについて「借入金が不動産所得を生ずべき業務についての費用である場合とは、(中略)借入金が不動産所得を生ずべき業務についての費用に充てられるものである場合をいうと解される」としました。

 

具体的には税務署や国税不服審判所で業務関連があるとされた借入金①②の4分の1、③④(ここまで業務関連割合29,67%)このほか借換時に追加された母親の業務の運転資金の借入金192万円余りも業務関連性を認め、業務関連割合を29.88%と認定しました。

 

しかしこの業務関連割合に基づいて計算し直しても更正時の税額を上回ったため、納税者の請求を棄却しています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/04/27)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】相続不動産に信託契約を締結し、信託受益権として譲渡した場合の取得費加算の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

■地価動向の曲がり角:住宅譲渡損をカバーする特例について再確認

 

【問】

Aさんは、令和2年1月に兄から相続により賃貸用建物とその敷地(以下「本件不動産」)の全部を取得し、同10月にその相続に係る相続税について申告書の提出と納税を行いました。

 

Aさんは高齢で、自ら本件不動産の管理運用を行うことが難しいため、令和3年1月に㈱Xとの間で、本件不動産を賃貸用として㈱Xに管理運用させることを目的として、委託者兼受益者をAさん、受託者を㈱X、本件不動産を信託財産とし、建物の維持管理、家賃の管理、賃借人の募集等の不動産賃貸に係る業務を委託する信託契約(以下「本件信託」)を締結しました。

 

その後Aさんは、令和4年4月に本件信託に係る信託受益権を㈱Yに譲渡(以下「本件譲渡」)しています。
この場合、Aさんは、本件譲渡について租税特別措置法(措法)第39条の「相続税額の取得費加算の特例」(以下「本件特例」)の適用が認められますか。

 

【結論】

本件特例の適用が認められるものと考えます。

 

【理由】

(1)信託とは

「信託」については、信託法第2条第1項に定義規定が定められています。関連する他の規定を併せて同項が規定する信託の意義をわかりやすく言えば、信託とは不動産などの資産を所有する人が「委託者」となり、信託契約等の信託行為により、その信頼できる人(「受託者」)にそれらの資産を移転し(その移された資産を「信託財産」といいます。)、受託者が、信託行為で定めれたー定の目的に従って、同じく信託行為で定められた「受益者」のために、信託財産の管理や処分等を行うしくみをいいます。

 

 

(2)本件特例とは

相続又は遺贈により資産を取得し、その相続等につき相続税がある個人が、その相続等により取得した資産で、その相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入されたものを、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限(相続開始のあったことを知った日の翌日から10ヶ月以内。

 

以下「相続税の申告期限」という。)の翌日以後3年以内に譲渡した場合、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に、その者の相続税のうち一定額が加算されます(措法第39条)。

 

本件特例の適用を受けることにより、相続税のうち取得費に加算された金額だけ譲渡所得の金額が少なくなり、結果として課税される譲渡所得の金額が小さくなります。

 

 

(3)本件特例の適用が認められると考える理由

本件特例の適用対象となる譲渡とは、(2)のとおり相続等により資産を取得した個人で、その相続等につき相続税額のあるものが、一定の期間内にその相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産について行った譲渡です。

 

しかし、本件譲渡は相続により取得した資産(本件不動産)の譲渡ではなく、信託受益権の譲渡であることから、本件特例の適用があるのか疑問が生じるところです。

 

この点について所得税法第13条第1項では、信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は、集団投資信託等の一部の信託を除いて、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなす旨を規定しており、所得税基本通達13−6は、同項に規定する受益者が受益権の譲渡を行った場合には、その権利の目的となっている信託財産に属する資産及び負債が譲渡されたこととする旨を定めています。

 

さらに措法通達31・32共-1の3は、信託財産に属する資産が分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産である場合における当該権利の譲渡による所得は、原則として分離課税とされる譲渡所得となり、措法第31条又は第32条の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する旨を定めています。

 

以上により、Aさんは本件譲渡につき本件信託の信託財産である本件不動産を譲渡したものとなります。本件不動産はAさんが兄から相続により取得した資産で、兄の相続に係る相続税の課税価格に算入されており、Aさんは兄の相続税を納付後、本件不動産を相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡していることから、その譲渡所得の金額の計算上、本件特例の適用が認められるものと考えます(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」213~215頁)。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/04/11)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】対象会社の代表者経験のない人から株式贈与を受けた場合の贈与税の特例措置の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■【Q&A】贈与を受けた金銭を全て敷地の対価に充てた場合の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税の適用

■【Q&A】2回以上にわたって取得した同一銘柄の株式の取得費の計算

 

【問】

㈱Xは発行済株式(すべて議決権あり)の80%を乙(甲の妻)、20%を同社代表取締役の丙(甲の長男)が保有していました。乙はX社の株主ですが、同社の取締役を務めたことがありません。乙は、2012年に死亡した甲(死亡当時X社代表取締役でその株式を全て保有)から、相続税の配偶者の税額軽減の適用を受けるためにX社の発行済株式の80%を相続しています。

 

後継者である丙は、甲からX社の発行済株式の20%を相続しており、2012年以降、同社の代表取締役です。乙と丙は、甲から相続により取得したX社株式について、非上場株式等に係る相続税の納税猶予及び免除(租税特別措置法(措法)70条の7の2)の適用を受けていません。

 

乙は、2022年に保有するX社株式を全て丙に贈与しました。この場合、乙からの贈与により取得したX社株式について、丙は非上場株式等に係る贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70条の7の5・以下「贈与税の特例措置」)の適用を受けることができますか。なおX社は、贈与税の特例措置の適用対象とされる特例認定贈与承継会社(以下「対象会社」)に該当します。

 

【結論】

X社株式を贈与した乙は、後述の解説の通り「特例贈与者」に該当しないことから、その贈与を受けた丙は、贈与税の特例措置の適用を受けることができません。

 

【解説】

贈与税の特例措置の適用を受けるためには、その非上場株式の贈与をした者が「特例贈与者」に該当する必要があります(措法70条の7の5第1項)。特例贈与者とは、措法施行令(措令)40条の8の5第1項(以下「政令」)第1号または第2号の場合の区分に応じ、それぞれに定める者をいいます。

 

この政令において、第1号は「第2号に掲げる場合以外の場合」と定められているので、まず、乙から丙に対するX社株式の贈与が、「政令第2号に掲げる場合」に該当するかどうかを検討します。

 

乙によるX社株式の贈与が「政令第2号に掲げる場合」に該当するのは、その贈与の直前において次のイ、ロ又はハのいずれかの者がいる場合です(措令40条の8の5第1項2号)。

 

イ.対象会社・X社の株式について、既に贈与税の特例措置、非上場株式等に係る相続税の納税猶予及び免除の特例(措法70条の7の6。以下「相続税の特例措置」)又は非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除の特例(同70条の7の8)の適用を受けている者

 

ロ.その贈与の時前に、政令第1号に定める者(同号の場合で、対象会社・X社の代表権を有していたなど一定の要件を満たす者をいう。)から、贈与税の特例措置の適用に係る贈与によりX社株式を取得している者(イに掲げる者を除く。)

 

ハ.その相続の開始前に特例認定承継会社(相続税の特例措置の対象会社をいう。)の代表権を有していた者から、相続税の特例措置に係る相続または遺贈により対象会社・X社の会社の株式を取得している者(イに掲げる者を除く)。

 

ご質問の場合、乙から丙へのX社株式の贈与の直前において、X社株式につき贈与税の特例措置等の適用を受けている者がいないので、イの要件を満たすことができません。

 

この贈与の時前にX社の代表権を有していた者から、贈与税の特例措置の適用に係る贈与によりX社株式を取得している者がいない(乙から丙へのX社株式の贈与は、乙がX社の代表権を有していたことがないので、「政令第1号に定める者」からの贈与には該当しません。)ので、ロの要件を満たすこともできません。

 

さらに相続税の特例措置に係る相続または遺贈によりX社株式を取得している者もいないので、ハの要件を満たすこともできません。以上により、イ~ハに該当する者がいないので、乙の贈与は「政令第2号に掲げる場合」には該当しません。

 

上記より乙の贈与は、「政令第1号の場合」に該当することになりますが、政令第1号の場合、乙が対象会社・X社の代表権を有していたことが特例贈与者の要件とされ、乙は代表権を有していたことがないので、特例贈与者には該当しません。このため、丙は贈与税の特例措置の適用を受けることができません。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/03/28)より転載

[解説ニュース]

利用価値が著しく低下している宅地(忌み施設近接)評価の現在

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

■譲渡所得税の最近のトラブル事例集

 

 

1、土地評価の10%減が適用される場合


土地の相続税評価の取扱いで認められている「10%評価減」は、付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下している土地の部分に適用できるものとされています。国税庁のホームページでは例示として次のように記載があります。

 

(1)道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(2)地盤に甚だしい凹凸のある宅地
(3)震動の甚だしい宅地
(4)(1)から(3)までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

 

ただし、こうしたマイナス要因が路線価又は固定資産評価額又は倍率に反映されている場合には、重ねて減額が認められることはありません。

 

 

2、最近の事例から


最近、相続税評価の対象となった土地の近隣にお墓があったケースで、上記の10%評価減の適用の是非が問われた事例がありました(国税不服審判所令和3年8月30日裁決)。取引金額への具体的な影響が細かく問われるため、なかなか適用を認めてもらえないケースが少なくないようです。

 

ここでは、上記の10%評価減の適用を巡る争点に絞ってお伝えします。問題となった土地は、間口が約24m、奥行きが約52mの長方形状の土地で、東側に大きな通りがあるほか、南側に幅員2.5mの里道を隔てて、約600㎡の墓地があったというものです。

 

この土地は相続の開始時点で、駐車場と賃貸住宅の敷地として利用されていました。賃貸住宅は全12戸のうち3戸空室でした。相続人(納税者)は、こうした事情を踏まえ上記10%評価減の適用があるものとして相続税の減額を求める「更正の請求」を経て審査請求に及びました。

 

 

3、納税者の主張


納税者の主な主張は次の通りです。

 

(1)問題の土地の目前に墓地がまとまって存在しているため、心理的嫌悪感等により、取引金額に影響を受けることは明らか。
(2)建物は、本件相続開始当時、その空室率は25%であった。予定している賃料収入の25%が得られない状況が取引金額に影響を及ぼさないとはいえない。

 

 

4、審判所の判断


審判所は、まず、納税者が更正の請求で減額を求める場合の立証責任について「一旦申告書を提出した以上、その申告に係る財産の評価に誤りがあることは、最終的に納税義務者の責任において明らかにすべきもの」として、土地の取引金額に影響を及ぼす事情の立証責任が納税者側にあることを示しました。

 

その上で審判所は「忌み等を理由とする減額評価が認められるためには、忌み施設が存すること等の事情による当該宅地の取引金額への影響が、当該宅地の減額評価を正当化する程度に具体的なもので(中略)あることを要する」と判断基準を提示、次のような事実関係を追加的に確認しました。

 

(1)墓地は明治時代から村民の墓地として使用。
(2)問題の土地の固定資産評価において、固定資産評価基準にある「所要の補正」として墓が近接していることによる減額はされていない。納税者は固定資産評価に対する審査申出をしていない。

 

審判所は検討を経て「墓地の存在を理由に売買契約の締結に至らなかった事例の有無や土地及び墓地の周辺に存する宅地の売出価格及び売買契約の成約価格の状況、土地及び墓地の周辺に存する賃貸物件の空室率やその推移といった事情は明らかではなく、墓地の存在が宅地の取引金額や賃貸状況に影響していることを具体的に認めるに足りる事情はうかがわれず、当審判所の調査によっても、墓地の存在が土地の取引金額に影響しているというべき具体的事情は認められない」としました。

審判所は最終的に「忌み施設である墓地の存在が隣接宅地の取引金額に影響する一般的抽象的可能性は否定できない」としながらも、10%減の補正は必要でないと判断しています。

 

納税者には、①忌み施設が近接し心理的嫌悪感があり、受忍限度を超えていること、②周辺の他の土地に比べ土地の価格が下がっていること、③路線価等にその事情が織り込まれていないことの立証が求められていました。最近の事例としてより精緻な立証が求められた事例だったといえそうです。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/03/15)より転載

[解説ニュース]

建物の取壊費等が土地の取得費になるかどうかで争った事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■貸家建築のため既存建物を取壊した場合の取壊し損失等に係る所得税の取扱い

■譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

 

 

1、不動産所得の必要経費それとも…


貸付の事業用などとして土地とともに買っていた建物を後で取壊した場合、建物の価額と取壊費用は、不動産所得の計算上、必要経費になる場合があります。それは、居住者の「事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて、取りこわし、除却、滅失その他の事由により生じた損失の金額はその者のその損失の生じた日の属する年分の(中略)必要経費に算入する」(所法51)との規定によるものです。

 

一方、建物の取得費と取壊費用が、土地の取得費になる場合もあります。それは、土地と建物等と共に取得した場合で、「その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるとき」です(所基通38-1)。
節税の観点からすると、土地の取得費になってしまうのは不利です。その点につき、税務署と争った裁判例が下記の通りです(山形地裁令和3年3月9日判決)。

 

 

2、事案の概要


事案の概要、経過は次の通りです。

 

(1)土地所有者Aさんは、平成27年4月頃、事業者B社から、Aさんの保有土地とともに「倉庫・店舗などの建っている隣地Cも一緒に借り受けたいと話を持ち掛けられました。

 

(2)ただ、隣地Cは他人の土地です。そこでこの際、B社はAさんに、隣地Ⅽも買うことを勧めました。B社は、隣地Cの倉庫などにつき自前で取壊す方針であったということです。

 

(3)Aさんは、同年7月、隣地Cを持つDさんを相手に買取交渉に入り、相場より高い9,000万円で話をまとめました。

 

(4)ところが隣地C土地の売買契約の決済日である8月5日以前に、B社が土地を借り受ける話が壊れてしまいました。

 

(5)Aさんは、仕方なく賃借人の募集を開始しました。ただし、倉庫・店舗の建物は、20年近くテナント入居がなく、屋根や壁の修繕が必要だったため、募集広告には「大幅な修繕が必要」と記載していました。

 

(6)同年11月にE社から借受の申し込みがあり、E社の要望で建物を取り壊すことにしました。

 

(7)Aさんは、平成27年・28年分の不動産所得の計算上、隣地Cの上にあった建物の取得費と取壊費用を必要経費として申告しました。

 

(8)これに対し税務署が上記の必要経費を否認しました。

 

 

 

3、裁判所の判断


裁判は、上記以外の争点もありますが、ここでは、建物の取得費・取壊費用が土地の取得費になるかどうかに絞って述べます。

 

裁判所は、まず、概ね1年以内に取壊した場合の取扱を示した通達(所基通38-1)に関し、「当初から建物を取り壊し、土地を利用する目的であることが明らかか否かについては、土地の取得目的、取得金額、土地の更地としての相場価格、建物の建築年数、現況、老朽度や利用価値、建物の取壊時期や取壊目的等の諸事情を総合し、客観的に判断するのが相当である。

 

また、本件通達は、土地及び建物の所有権を取得した場合と規定しているから、所有権を取得した日を基準として判断するのが相当である」と判断基準を示しました。

 

その上で裁判所は、Aさんが当初の計画とは異なる計画で結局建物を取り壊すことになった場合でも「土地及び建物の取得時に土地のみの価額に着目していたと認められる場合には本件通達が適用される」と考え方を示しました。

 

これは、Aさんが通達(所基通38-1)について「取得の際に計画されていた取壊しが実現した場合に限られるのではないか」との主張に反論したものです。

 

裁判所は事実関係を整理し、最終的に「原告(A)はB社が出店して本件土地のみを利用するために、これを貸し出す目的で、又は、仮にB社が出店しない場合であっても、専ら本件土地を自己の事業に利用する目的で、本件土地を取得しているといえ、また、本件建物は、その建築年数や現状、老朽度からしてそのまま利用できる物件ではなく、利用価値が極めて乏しいものであり、さらに、原告(A)は、本件建物の所有権を取得した後4か月しか経過していない時点で,本件建物を自己資金で取り壊しているのであって、(中略)原告は、専ら本件土地の価値に着目し、本件土地建物を取得したと認められる」として、税務署の処分を支持しています。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/03/01)より転載

[M&A動向レポート](2022年2月)

■IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A件数は過去最多も金額は3番目に

 

IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A発表件数は20件で、1月としては2013年以降の10年間では、2020年(13件)を上回り過去最多となった。IT人材の不足や企業の合従連衡などを背景に、M&A市場が活発だった。

 

 

取引金額は137億7300万円で、こちらは1月としては2013年以降の10年間では、2019年(1229億2500万円)、2020年(439億1100万円)に次ぐ3番目となった。100億円を超える案件がなく、金額を公表した10件中8件が10億円未満だったため、件数ほどには金額が伸びなかった。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

金額トップはGMOインターネットの92億円

 

取引金額のトップは、ネット事業を手がけるGMOインターネットが、サイバーセキュリティー事業のイエラエセキュリティ(東京都渋谷区)の株式50%を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は92億6200万円。既存の電子認証、印鑑事業に加え、新たにサイバーセキュリティー事業に本格参入するのが狙い。

 

金額の2番目は、ネット事業のスカラが、システム開発のエッグ(鳥取県米子市)などグループ4社の全株式を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は10億600万円。グループの中核会社のエッグは、ふるさと納税制度に関する自治体側の基幹システムを初めて開発した企業で、導入自治体数は全国の3分の1にあたる約680に達するという。同社の子会社化で、地方創生、高齢者の健康といった社会課題を解決する取り組みを推進する。

 

金額の3番目は、電子書籍取り次ぎのメディアドゥが英現地法人を通じ、出版社向けWebサイト構築やEC(電子商取引)サービスの提供を手がける英国Supadü Limited(ロンドン)の全株式を取得し子会社化した案件で、取得価格は8億7400万円。出版、コンテンツ関連の海外ビジネスを強化するのが狙い。

 

このほかに8億円台、6億円台、3億円台がそれぞれ1件ずつと、2億円台、1億円台がそれぞれ2件ずつあった。金額非公表などは10件だった。

 

 

 

【IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A】

 

 

 

 

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2022年2月)

■1月M&A、前年比10件増の64件 過去2番目の高水準

 

2022年1月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比10件増の64件だった。1月として過去10年で2020年(74件)に次ぐ2番目の高水準。前年1月は新型コロナウイルス感染拡大を受けた2回目の緊急事態宣言と重なり、20件の大幅減となったが、2022年は好調な出足となった。一方、取引金額は2317億円(公表分を集計)で、前年(4374億円)のほぼ半分にとどまった。

 

 

上場企業の適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。
金額首位は日本製鉄が最大880億円を投じて、タイの電炉メーカー大手のGスチール、GJスチールの2社を子会社化する案件。これまで半製品を輸出して現地で加工していたが、今回の買収で東南アジアにおける一貫生産体制が整う。鉄スクラップを原料とする電炉は鉄鉱石から鉄を取り出す高炉に比べてCO2(二酸化炭素)の排出が抑えられ、脱炭素化を推し進める狙いもある。

 

金額2位は通信工事大手のミライト・ホールディングス(HD)。西武ホールディングス傘下で西武鉄道の直系子会社の西武建設(東京都豊島区)の株式95%を620億円で取得し、子会社化する。西武HDは経営改革としてアセットライト(資産圧縮)な事業運営を推進中で、グループで保有するホテルも売却を進め、運営に特化する姿勢を明確にしている。
ドラッグストア業界は今年も年初からM&Aが活発化している。最大手のウエルシアホールディングスが関西を地盤に約190店舗を展開するコクミン(大阪市)を子会社化すると発表した(金額は未確定)。また、クスリのアオキホールディングスは生鮮品の取り扱い強化を目的に、岩手県の地場食品スーパーの吸収合併を決めた。買付代金が最大714億円に上る片倉工業のMBO(経営陣による買収)は1月上旬、不成立に終わった。投資ファンドが関与しない過去最大規模のMBOとして注目されていたが、予定数まで株式を取得できず、株式の非公開化を断念し、一転、上場を維持することになった。

 

 

 


①日本製鉄

タイの電炉メーカー大手のGスチールとGJスチールを子会社化 (880億円)

 

②ミライト・ホールディングス

西武ホールディングス傘下の西武建設(東京都豊島区)を子会社化(620億円)

 

③ミニストップ

コンビニ事業の韓国子会社をロッテに譲渡(304億円)

 

④愛三工業

デンソーからフューエルポンプモジュール事業を取得(190億円)

 

⑤GMOインターネット

サイバーセキュリティー事業のイエラエセキュリティ(東京都渋谷区)を子会社化(92.6億円)

 

⑥リンテック

米Spinnakerからラベル用粘着紙・粘着フィルム事業を取得(46.6億円)

 

⑦ワールドホールディングス

J.フロントリテイリング傘下で人材サービス事業のディンプル(大阪市)を子会社化(37.8億円)

 

⑧ソラスト

都内で認可保育所を運営する「こころケアプラン」(東京都千代田区)を子会社化(33.4億円)

 

⑨ワールド

子供服大手のナルミヤ・インターナショナルをTOBで子会社化(33億円)

 

⑩トランコム

シンガポール物流会社Starlink Resourcesなど2社を子会社化(11.4億円)

 

 

 

 

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[解説ニュース]

【Q&A】譲渡所得の計算上、概算取得費で申告後に実際の取得費が判明した場合の更正の請求

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

【問】

Bさんは、土地の譲渡に係る譲渡所得の申告において、確定申告期限までにその取得価額を明らかにする契約書が見つからなかったため、やむなく下記2(2)の概算取得費により所得税の申告をしました。その所得税の確定申告期限後に、譲渡した土地の取得時の契約書が見つかり、その契約書に記載の買入金額が概算取得費よりも大きいので、譲渡所得の金額の計算をやり直すため更正の請求をしようと考えているのですが、認められるでしょうか。

 

【結論】

当初の申告において概算取得費により譲渡所得の金額の計算を行い、その後、取得時の契約書の発見により真の控除すべき取得費が分かった時点で、その真の取得費を主張して更正の請求を行うことは認められると考えます。

 

【解説】

(1)取得費の原則

土地に係る譲渡所得の金額上控除する取得費は、土地の取得に要した金額(例えば土地の取得にかかる買入代金や宅地建物取引業者に支払った仲介手数料等)及び改良費(例えば土盛り、地ならし等)の合計額とされます(所得税法38条第1項)。

 

(2)概算取得費の特例

昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、上記(1)の金額よりもその譲渡に係る収入金額の5%相当額の方が多い場合には、その譲渡に係る収入金額の5%相当額をもって、土地の取得費とすることができます(租税特別措置法31条の4)。

 

なお、昭和28年1月1日以後に取得した土地について、取得費がわからない場合や、実際の取得費が収入金額の5%相当額を下回る場合については、その取得費は譲渡に係る収入金額の5%相当額とすることができます(租税特別措置法通達31の4-1)。

(3)所得税の更正の請求とは

所得税の申告書を提出した人が、その申告書に記載した課税標準等や税額等の計算について、所得税法等の規定に従っていなかったこと、または計算に誤りがあったことにより、所得税を納めすぎたときは、法定申告期限(所得税の場合、原則としてその年の翌年3月15日の確定申告期限)から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等または所得税額等につき減額更正の請求をすることができます(国税通則法23条第1項)。

 

(4)更正の請求が認められると考える理由

国税通則法第23条第1項第1号は、更正をすべき旨の請求をすることができる場合として、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときを定めています。この点について、ご質問でのBさんは租税特別措置法第31条の4第1項等の規定等に基づき取得費を計算していることから、上記(3)に規定する「計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当せず、更正の請求ができないのではないか、という疑問が生じるところです。

 

しかし租税特別措置法31条の4第1項は、その本文で「取得費は、(中略)当該収入金額の100分の5に相当する金額とする」と規定しているものの、そのただし書において、「当該金額(=概算取得費)がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする」とし、その1号において、「その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額」としています。

 

つまり、概算取得費は、譲渡した土地等の取得に要した金額に満たないことが証明されていない場合に適用するものであり、Bさんの場合はそのことが証明されています。よって、概算取得費ではなく、土地等の取得に要した金額である買入価額により取得費を計算することが正しい処理となります。
したがって、Bさんは、当初申告で行った譲渡所得の金額(取得費)の計算の誤りにより所得税を納めすぎたものとして、国税通則法第23条第1項の規定により、更生の請求を行うことができると考えます(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」211頁)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/02/14)より転載

[M&A動向レポート]

■2021年TOB、3年連続で増加

 

 

2021年のTOB(株式公開買い付け)件数は前年比10件増の70件と、3年連続で増加した。リーマン・ショック後では2009年の79件、2008年の78件に次いで3番目に多かった。新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、先行き不透明な中でTOBによる経営規模の拡大や新規事業への進出を狙う企業が増加。日銀の金融緩和などを背景に企業がTOBの費用を調達しやすい環境が続き、件数増を後押しした。

 

一方、取引金額は同73.3%減の1兆7100億円にとどまった。これは前年に3兆円を超えるNTTのNTTドコモに対する超大型TOBがあった反動減。前年は10件あった1000億円を超える大型TOBが3件と少なかったこともあり、金額は伸びなかった。敵対的TOBは過去最高だった前年と同じ5件となっている。

 

MBO(経営陣による企業買収)は前年比8件増の19件と、3年連続の増加となった。10件を超えたのは2年連続で、2008年以降では過去最高の2011年(21件)に次ぐ高水準。経営陣が株主の意向や短期的な株価の動向に左右されない成長戦略を採用したり、TOBによる敵対的買収を回避したりするため、MBOによる上場廃止を目指す動きが出ている。

 

TOBの総プレミアム平均は同3.46ポイント減の37.31%と、2年連続の減少に終わった。一方、ポジティブプレミアム平均は同3.39ポイント増の46.08%と4年連続で増加している。最もプレミアムが高かったのはTCSホールディングス(旧東京コンピュータサービス、東京都中央区)が11月15日に露出計の大手メーカーであるセコニックの非公開化を目的にTOBを実施すると発表した228.19%だった。

 

 

 

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[解説ニュース]

区分所有建物の敷地への小規模宅地特例の適用(生計一が問われる場合)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■区分所有建物の敷地への小規模宅地特例の適用巡り争いになった裁決事例

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

 

1、はじめに


小規模宅地等の特例を適用する場面で、被相続人と宅地を相続する親族が生計一であることが問われる場合があります。生計一なら、被相続人が「事業の用」または「居住の用」に供していた宅地等のみならず、その親族が「事業の用」または「居住の用」に供していた宅地等も、所定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例の適用が認められるからです。しかも特例の対象となった宅地の相続税課税対象額の減額割合は最大80%、その面積の330㎡(「事業の用」に供していた場合には400㎡)までが特例の対象です(措法69の4)。

 

したがって親の宅地等を子が居住の用等に供している場合には、生計一であると認められるかどうかが適法な相続税の節税に大きな影響があるといえます。

 

今回は、本連載の11月22日号の事例を基に、被相続人と子である相続人が生計一であるかどうかが問われた争点について整理します。

 

2、事例の概要


事例は、父親が建てた1棟の区分所有建物で、1階に子供夫婦が住み、2階にその親夫婦が住んでいたケースにおいて、父親が亡くなって開始した相続で、子が相続した建物1階部分の敷地権につき、「小規模宅地等の特例」の適用があるかどうかが問われたものでした(国税不服審判所(以下、審判所といいます)、令和3年6月21日)。

 

3、建物と敷地


裁決書によると、建物の状況は次のとおりです。

 

ア、建物は被相続人が建てた区分所有建物である旨の登記をされた建物
イ、1階と2階でそれぞれ玄関、リビング、寝室、台所、洗面所、風呂場、トイレがあり、建物の内部では1階と2階で行き来することができず、外階段によって行き来する構造。
ウ、建物の新築から、被相続人の死亡に至るまで、建物1階部分には子らとその子(被相続人の孫)が居住。
エ、建物2階部分には被相続人とその妻が居住していた。
オ、建物の電気、ガス、水道のメーターは建物1階部分と建物2階部分とでそれぞれ分かれており、被相続人が死亡するまでの間、建物1階部分については請求人である子が契約して使用料を支払っており、建物2階部分については被相続人が契約して使用料を支払っていた。
カ、相続開始後、母親(2階に居住)と子(1階に居住)は、遺言通りに相続し、それぞれ居住する敷地権について小規模宅地等の特例を適用して申告。
ところが税務署から子の相続した敷地権部分について特例適用を否認され、最終的に審判所での争いとなったものです。

 

4、審判所の認定・判断


審判所は、この特例について「被相続人の居住の用に供されていた宅地等のほかに、当該被相続人と生計をーにしていた当該被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等についても、その適用の対象としている」と確認。

 

そのうえで、審判所はこの場合の「生計」について、「暮らしを立てるための手立てであって、通常、日常生活の経済的側面を指すものと解すべきもの(中略)、一棟の建物において被相続人の居住の用に供されていた部分以外に居住していた親族が「生計」を一にしていたと認められるためには、親族が被相続人と日常生活の資を共通にしていたと認められることを要し、その判断は社会通念に照らして個々になされるところ、これが認められるためには、少なくとも、居住費、食費、光熱費その他日常の生活に係る費用の主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要するものと解するのが相当」との判断基準を示しました。

 

審判所は、事実として、被相続人とその妻の生活費は、被相続人の年金収入等で賄われていることを指摘し、「居住費、食費、光熱費 その他日常の生活に係る費用の主要な部分について独立した資によっていたものと認められるから、請求人ら(子)と日常生活の資を共通にしていた関係にあったと認めることはできない」と判断しています。

 

また、子である請求人が「共用部分の電気代・水道代及び単一の契約となっているケープルテレビやインターネットの料金を支払っていたことからも、本件被相続人と生計を一にしていた親族に該当する」と主張したことに対し、審判所は「共用部分の光熱費等の負担をしていたとしても、これは日常生活に係る費用の主要な部分の負担とまではいえない」として言い分を退けています。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/01/31)より転載

[M&A動向レポート](2021年)

■IT・ソフトウエア業界の2021年のM&A件数は4年連続で過去最多を更新 金額も過去最高に

 

2021年のIT・ソフトウエア業界のM&A発表件数は163件で、2012年以降の10年間では、4年連続で過去最多を更新し、2021年の全業種のM&A件数877件の20%近くに達した。取引金額も大きく膨らみ、2012年以降の10年間で最高だった2016年の1兆2200億円強を大きく上回る2兆2400億円ほどに達し、過去最高を更新した。IT人材の不足に加えて、企業の選択と集中の動きが強まったことが背景にある。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

金額トップは日立の1兆422億円

 

2021年のIT・ソフトウエア業界の取引金額のトップは、日立製作所が米IT企業のグローバルロジック(カリフォルニア州)を子会社化するのに投じた1兆422億円で、全業種でも取引金額のトップになった。

 

グローバルロジックは、顧客企業の競争力強化のためのソフトウエアの設計や開発などを手がけており、世界14カ国に約2万人の従業員を抱える。日立は同社の子会社化で、ITやエネルギー、鉄道、モビリティー(移動手段)、ヘルスケアなどの先進的な社会インフラのDXを世界規模で加速するという。

 

金額の2位はパナソニックが、サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダー(アリゾナ州)の子会社化に投じた7830億円で、こちらは全業種の4位に入った。

 

ブルーヨンダーは3000社を超える顧客基盤を持ち、AI(人工知能)やML(機械学習)をベースとしたサプライチェーンマネジメント(SCM)サービスを提供している。パナソニックは、ブルーヨンダーの子会社化で、顧客企業の生産性向上などに向けたSCMサービスを強化し、世界規模で事業拡大につなげる計画だ。

 

 

MBO3件が金額上位10位内に

 

株式の非公開化を目的にしたMBO(経営陣による買収)は、4件(1件は不成立、2020年のMBOは1件)あり、このうち3件が取引金額上位10位までに入った。

 

最も取引金額が高かったのは、マッチングアプリ運営のイグニスが米投資会社のベインキャピタルと組んで実施するTOB(株式公開買い付け)に投じた262億円。

 

イグニスが主力とするスマートフォン向けアプリの開発や運営を巡る競争環境は目まぐるしく変化するため、非公開化して、機動的で柔軟な意思決定を可能にすることにした。MBOは成立し、同社は6月に上場廃止になった。

 

 

 


①日立製作所

米IT企業のグローバルロジックを子会社化 (1兆422億円)

 

②パナソニック

サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダーを子会社化 (7830億円)

 

③ソニーグループ

米国子会社のゲーム部門「GSN Games」を米スコープリーに売却 (1100億円)

 

④野村総合研究所

DXサービス大手の米Core BTSを子会社化 (523億円)

 

⑤ブリヂストン

車両運行管理サービスの米アズーガ・ホールディングスを子会社化 (428億円)

 

⑥楽天グループ

通信ネットワーク用ソフトウエア企業の米アルティオスター・ネットワークスを子会社化 (400億円)

 

⑦電通グループ

ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスを子会社化 (326億円)

 

⑧イグニス

米ベインキャピタルと組みMBOで株式を非公開化 (262億円)

 

⑨AOI TYO Holdings

米カーライル・グループと組んでMBOで株式を非公開化 (213億円)

 

⑩[不成立]パイプドHD

MBOで株式を非公開化 (143億円)

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年12月)

■12月M&A74件、飯田グループが600億円買収

 

021年12月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比4件減の74件となり、2カ月連続で前年を下回った。前月(11月)比では3件減った。1~12月累計では877件と前年比28件の大幅増で、2年ぶりのプラスに転じるとともに、2008年のリーマン・ショック(870件)後の最多となった。

 

12月の取引金額は1416億円。100億円を超える大型案件が3件にとどまったことから、7月(488億円)に次ぐ低水準に。年間金額は8兆7121億円と前年を約2兆4500億円下回った。

 

上場企業に義務づけられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&Aについて、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

 

 

12月の金額首位は約600億円を投じて、ロシア最大級の林産企業を傘下に置く持ち株会社ロシア・フォレスト・プロダクツ(RFP、英領バージン諸島)を買収する飯田グループホールディングスの案件。株式譲渡と第三者割当増資引き受けで株式75%を取得する。木材の安定的な調達体制を確立し、戸建分譲住宅事業の競争力を高めるのが狙いだ。

 

飯田グループは戸建分譲住宅で約3割の国内販売シェアを持つ業界最大手で、年間に4万6000戸以上を供給する。RFPはロシア極東のハバロフスク地方に約400万ヘクタール(九州の1.08倍)の林区を持つ。

 

12月は金額非公表ながら、注目される売却案件が少なくなかった。その一つは東急不動産ホールディングスによる傘下の生活雑貨大手、東急ハンズ(東京都新宿区)の売却発表。売却先はホームセンター最大手のカインズ(埼玉県本庄市)。カインズは地方の大型店を主力とし、都市型店舗の東急ハンズとの補完性を見込んでいる。

 

オリックスはクラウド会計ソフト「弥生シリーズ」で知られる弥生(東京都千代田区)を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却することを決めた。売却額は2500億円程度とみられる。オリックスが投資事業の一環として弥生を買収したのは2014年。投資資金を回収するイグジット(出口)の段階と判断したようだ。

 

オリンパスは生物顕微鏡、工業用顕微鏡など祖業の「科学事業」の売却を検討すると発表した。科学事業の直近売上高は958億円とそれなりの規模。同社は内視鏡と治療機器を中心とする医療分野に経営資源を集中させる方針に基づき、2020年にはデジタルカメラなどの映像事業を手放した。

 

 


①飯田グループホールディングス

ロシア最大級の林業グループを傘下に置く持ち株会社Russia Forest Products(英領バージン諸島)を子会社化 (600億円)

 

②東和薬品

米カーライル・グループ傘下で健康食品・医薬品受託製造の三生医薬(静岡県富士市)を子会社化 (476億円)

 

③三井住友建設

海上・水上杭工事のシンガポールAntara Kohを子会社化 (76億円)

 

④トランスジェニック

検査・解析事業子会社のジェネティックラボ(札幌市)をEurofinsの傘下企業に譲渡 (32.1億円)

 

⑤アダストリア

外食のゼットンを第三者割当増資とTOBで子会社化 (28.7億円)

 

⑥ラクスル

ダンボール・梱包材の受発注サイト運営のダンボールワン(金沢市)を子会社化 (20億円)

 

⑦鴨川グランドホテル

MBOで株式を非公開化 (17億円)

 

⑧オウケイウェイヴ

音楽・映像制作のアップライツ(東京都港区)を子会社化 (9.9億円)

 

⑨ヨシムラ・フード・ホールディングス

ソフトふりかけ「梅の実ひじき」製造の十二堂(福岡県太宰府市)を子会社化 (7.5億円)

 

⑩フィードフォースグループ

ブランディング戦略策定などのフラクタ(東京都渋谷区)を子会社化 (6.1億円)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[解説ニュース]

【Q&A】被相続人から相続開始の年に贈与を受けた相続人の課税関係

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■相続税の債務控除の対象とされる債務の範囲

■遺産分割による配偶者居住権の設定と相続税の小規模宅地等の特例の適用

 

 

 

【問】

Aさん(35歳)の父親(享年70歳)は、令和3年12月に急死しました。父親の相続人はAさんと兄の2人です。Aさんは、起業に伴う開業資金として令和3年4月に父親から現金2,000万円の贈与を受けており、また父親の事業の後継者である兄がその事業に係る多額の債務を承継することから、父親の遺産については相続をしないつもりです。この場合において、Aさんに対する贈与税や相続税の取扱いはどのようになるのでしょうか。

 

なおAさんは父親から令和3年の現金2,000万円以外に贈与を受けておらず、令和3年中に父親以外の人から財産の贈与を受けたことはありません。またAさんの父親は、生前に遺言を作成していません。

 

 

【回答】

1.贈与年に贈与者が死亡した場合における、受贈者の税務の取扱い


財産の贈与をした人(贈与者)が、その贈与をした年に死亡した場合、贈与により財産を取得した人(受贈者)の税務は、受贈者が贈与者から相続または遺贈により財産を取得したかどうかにより、次の通りに取扱われます。

 

(1)受贈者が贈与者から相続または遺贈により財産を取得した場合

相続または遺贈により財産を取得した者が、相続の開始年にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得した場合、その財産の価額は相続税の課税価格に加算されます。この場合、相続税の課税価格に加算されるものの価額は贈与税の課税価格には算入されず、贈与税の申告は不要です(相続税法(相法)21条の2第4項)。

 

(2)受贈者が贈与者から相続または遺贈により財産を取得しなかった場合

相続の開始した年に被相続人から贈与により財産を取得した個人が、被相続人から相続または遺贈により財産を取得しなかった場合には、その贈与財産の価額は、その贈与があった年の受贈者の贈与税の課税価格に算入されるのが原則です(相法基本通達21の2-3(1))。

 

ただし、被相続人からの贈与につき相続時精算課税制度の適用を受ける場合、その贈与により取得した財産の価額は贈与税の課税価格に算入されるものの(相法21条の10)、贈与税の申告書の提出は不要とされます(相法28条第4項、相法基本通達21の2-3(2))。この場合、その贈与により取得した財産は、贈与者より相続により取得したものとみなされ、贈与財産の価額は相続税の課税価格に算入されます(相法21条の15第1項、21条の16第1項)。相続開始の年に被相続人から贈与を受けた財産について相続時精算課税制度の適用を受けるためには、贈与者(被相続人)に係る相続税の申告期限または受贈者に係る贈与税の申告期限のいずれか早い日(本問の場合、Aさんの令和3年分贈与税の申告期限の令和4年3月15日)までに、被相続人(=父親)の所轄税務署長に対し相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります(相法施行令5条第3項、第4項、相法基本通達21-9-2(1))。

 

2.結論


ご質問の場合、Aさんが父親から相続により財産を取得せず、かつ、令和3年中に父親から贈与を受けた現金2,000万円について、令和4年3月15日までに相続時精算課税選択届出書を提出して相続時精算課税制度の適用を受ける場合、前述1(2)より、その2,000万円が贈与税の課税価格に算入されますが、特別控除額2,000万円を控除することにより、Aさんの令和3年分の贈与税は生じません。一方、Aさんが父親から贈与を受けた現金2,000万円は相続税の対象となり、その現金の額と兄が相続する父親の相続財産の価額(債務控除後)との合計額が、遺産に係る基礎控除額以下であるときには、相続税も発生しません。

 

なお、上記の場合において、Aさんが令和4年3月15日までに相続時精算課税選択届出書を提出しないときは、相続時精算課税制度の適用を受けることができません。相続時精算課税制度の適用を受けず、かつ父親から相続により財産を取得しない場合は、前述1(2)前段より、父親から贈与を受けた現金2,000万円に贈与税が課税され、Aさんは贈与税額585万5,000円を納めることになりますので、注意が必要です。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/01/17)より転載

[M&A動向レポート](2021年12月)

■IT・ソフトウエア業界の2021年12月のM&A件数、過去2番目の高水準

 

IT・ソフトウエア業界の2021年12月のM&A発表件数は13件で、12月としては2012年以降の10年間では、2018年(15件)に次ぐ2番目(2013年と同数)となった。IT人材の不足や企業の選択と集中の動きなどがM&A件数を押し上げた。

 

一方、取引金額は7億500万円で、こちらは12月としては2012年以降の10年間では、2015年(12億3000万円)を下回る過去最低となった。10億円を超える案件がなく、13件中10件が金額非公表や未確定だったため、金額が伸びなかった。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

金額トップはみらいワークスの3億7000万円

 

取引金額のトップは、みらいワークスが人材分野のリード(見込客)獲得を支援するプラットフォーム「FIND CAREERS」を運営するAnd Technologies(東京都港区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は3億7000万円。主力事業のビジネスマッチングサービスにおける新規登録者の獲得拡大を見込む。

 

金額の2番目は、エムティーアイがAI(人工知能)関連サービスのAI Infinity(東京都港区)の持ち株比率を17.55%から51.56%に引き上げ、子会社化することを決めた案件で、取得価格は2億円。AI事業の強化が狙いだ。

 

金額の3番目は、アピリッツがWebシステムやスマートフォンアプリを開発するムービングクルー(東京都千代田区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は1億3500万円。ムービングクルーが得意とするエンターテインメント領域の開発ノウハウやデジタル人材を迎え入れ、デジタル事業の拡大につなげる。

 

 

 

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2022年1月)

■コロナ禍の「M&Aへの悪影響ある」がやや増加~ストライクが経営者アンケート

                           オミクロン株が影響か

 

 

M&A(合併・買収)仲介を手掛けるストライクが2022年1月に実施した経営者アンケートによると、新型コロナウイルスの感染拡大が「M&A市場にマイナスの影響を及ぼしている」と回答した中小企業経営者の比率が全体の36%となり、前回調査(21年7月、32%)からやや上昇していることが明らかになった。新型コロナウイルスの一種で、感染力の強い「オミクロン株」の感染が広がりつつあることが背景にあるとみられる。

 

調査はストライクが22年1月5~7日に実施し、329件の回答を得た。回答した経営者の業種は、建設業、卸売・小売業、運輸業、製造業、情報通信業、不動産業、サービス業などが多い。

 

アンケート(複数回答)によると、M&Aの買い手は18%(前回は16%)、売り手は31%(前回は39%)が「コロナ禍はM&Aにマイナスの影響を及ぼしている」と回答した。事業承継を検討している経営者が「コロナ禍がM&Aにマイナスの影響を及ぼしている」と答えた比率は44%に達した。前回調査は35%だった。具体的な影響については「計画を延期した」が31%でトップ。「内容を再検討することになった」が30%で続いた。

 

「コロナ禍による影響はない」との回答は39%と前回(48%)と比べると低下した。ただ、「マイナスの影響がある」との回答をなお3%ポイント程度上回っており、経営者の間で、コロナ禍への悪影響への懸念が和らいできていることに変わりはなさそうだ。「影響はない」との回答の理由を聞いたところ、「コロナが経営環境にそれほど影響を及ぼしていない」との答えが72%に達した。

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&Aニュース](2021年12月13日〜2021年12月24日)

◇東京センチュリー<8439>、小型建機・樹木整備機器販売の米国Fiber Marketing Internationalを子会社化、◇MITホールディングス<4016>、アプリ開発やネットワーク構築のエーピーエスを子会社化、◇トレンダーズ<6069>、化粧品・美容機器販売のクレマンスラボラトリーを子会社化、◇日本ピストンリング<6461>、救急災害用器材輸入販売のノルメカエイシアを子会社化、◇神戸製鋼所<5406>、銅管子会社のコベルコマテリアル銅管を三菱商事<8058>傘下の丸の内キャピタルに譲渡、◇三菱製紙、60人の希望退職者を募集、◇加藤製作所、100人程度の希望退職者を募集、◇三井住友建設<1821>、海上・水上杭工事のシンガポールAntara Kohを子会社化、◇共同ピーアール<2436>、インフルエンサーマーケティング事業のVAZを子会社化、◇日本ハウズイング<4781>、三井E&Sホールディングス<7003>傘下で総合サービス業のMESファシリティーズを子会社化、◇みらいワークス<6563>、リード獲得支援プラットフォーム事業のAnd Technologiesを子会社化、◇Robot Home<1435>、不動産賃貸・売買仲介業のアイ・ディー・シーを子会社化 ほか

 

 

 

 

東京センチュリー<8439>、小型建機・樹木整備機器販売の米国Fiber Marketing Internationalを子会社化
2021/12/24

東京センチュリーは米国現地法人を通じて、小型建設機械や樹木整備機器の販売・アフターサービスを手がける現地Fiber Marketing International, Inc.(FMI、ワシントン州)の全株式を取得し子会社化した。従来のリース・ファイナンスの提供に加え、販売・アフターサービスも一体化した「ワンストップ・サービス」拡充の一環。FMIは1991年に設立。取得価額、取得日は非公表。

東京センチュリーは2019年に中小型トラックや樹木整備機器を主な取扱品とするリース・ファイナンス会社AP Equipment Financing Inc.(オレゴン州)を、2021年5月に中小型トラック・樹木整備機器販売のWork Truck Direct, Inc.(オレゴン州)をそれぞれ傘下に収めた。

MITホールディングス<4016>、アプリ開発やネットワーク構築のエーピーエスを子会社化
2021/12/24

MITホールディングスは、アプリケーション開発やサーバー・ネットワーク構築を手がけるエーピーエス(東京都千代田区。売上高2億5600万円、営業利益△2900万円、純資産476万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。システム構築サービスにおける新たな顧客層の獲得や開発体制の充実を目指す。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月1日。

エーピーエスは2005年設立で、NECグループを主要顧客とする。タブレットやスマートフォンのアプリ開発にも強みを持つという。

トレンダーズ<6069>、化粧品・美容機器販売のクレマンスラボラトリーを子会社化
2021/12/24

トレンダーズは、化粧品や健康食品、美容機器を企画・販売するクレマンスラボラトリー(東京都中央区。売上高538万円、営業利益△118万円、純資産97万3000円)を株式交付の手続きで子会社化することを決めた。美容領域の事業拡大につなげる。クレマンスラボラトリーは美容医療・再生医療施術の開発に長年携わってきた平野香奈絵氏が2019年に創業した。トレンダーズは株式取得の対価として現金2165万円と自社株式1万株(835万円)を割り当てる。取得予定日は2022年2月7日。

日本ピストンリング<6461>、救急災害用器材輸入販売のノルメカエイシアを子会社化
2021/12/24

日本ピストンリングは、救急災害用器材を輸入販売するノルメカエイシア(埼玉県越谷市。売上高38億1000万円、営業利益5億200万円、純資産5億1500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。重点施策の一つに医療分野での新製品事業を打ち出しており、その一環。ノルメカエイシアは1996年設立で、日本初の災害医療機器の専門商社として、国内外に救急災害時の調達、物流体制を構築している。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月11日。

神戸製鋼所<5406>、銅管子会社のコベルコマテリアル銅管を三菱商事<8058>傘下の丸の内キャピタルに譲渡
2021/12/24

神戸製鋼所は、コベルコマテリアル銅管(東京都新宿区。売上高397億円、営業利益5億1900万円、純資産110億円)の全保有株式55%を、三菱商事傘下の投資会社である丸の内キャピタル(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。不採算事業の再構築の一環。企業価値として約120億円で合意しており、運転資本や純有利子負債などを調整したうえで譲渡価額を確定する。譲渡予定日は2022年3月31日。

コベルコマテリアル銅管は2004年に神鋼と三菱マテリアルの国内・東南アジアにおける銅管事業を統合して設立し、空調用や建築・給水給湯用の製品を製造・販売している。三菱マテリアルも保有する全45%の株式を譲渡する予定。

コベルコマテリアル銅管を巡っては2019年9月に国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(東京都千代田区)に譲渡することで合意していたが、その後のコロナ禍の影響で実行予定日を延期し、最終的に2020年12月に譲渡の中止にいたっていた。

三菱製紙、60人の希望退職者を募集
2021/12/23

三菱製紙は23日、60人の希望退職者を募集すると発表した。対象は40歳以上の正社員スタッフ職(現業職を除く)で、募集期間は2022年6月1日~6月13日(退職日は7月20日付)。紙需要の減退に原燃料価格の高騰が重なり、厳しい環境が続いている。新規ビジネスによる事業構造転換、コスト削減施策を進めているものの、今後も既存事業の市場縮小が継続するとみて、人員の適正化が不可欠と判断した。2022年3月期業績予想は売上高7.8%増の1750億円、営業利益10億円(前期は17億円の赤字)、最終利益5億円(同25億円の赤字)。

応募者には通常の会社都合退職金に加算金を上乗せ支給し、再就職を支援する。

加藤製作所、100人程度の希望退職者を募集
2021/12/23

加藤製作所は22日、100人程度の希望退職者を募ると発表した。対象は45歳以上65歳未満の正社員のうち勤続10年以上、65歳未満の正社員以外の社員。募集期間は2022年1月24日~2月18日(退職日は3月31日)。建機の国内需要減少が続く中、新型コロナ禍の影響が重なり、2021年3月期まで3年連続の減収、2期連続で営業、経常、最終の各損益で赤字を計上。さまざまな経営努力を行ううえで人件費の削減は不可避と判断した。応募者には特別退職金を支給する。

三井住友建設<1821>、海上・水上杭工事のシンガポールAntara Kohを子会社化
2021/12/23

三井住友建設は、海上・水上杭工事を主力とするシンガポールAntara Koh Private Limited(AKPL、売上高50億2000万円、純資産49億7000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。海外における大型橋梁分野の事業拡大の一環。AKPLは三井住友建設が手がける海外橋梁工事で主に基礎工事を担当するパートナーとして長年信頼関係を築いてきた。取得価額は約76億円。取得予定日は2022年2月15日。

三井住友建設はAKPLが保有する船舶や杭基礎技術の活用、施工管理体制の連携などによる競争力向上に向けてメリットが大きいと判断した。AKPLは1974年に創業。

共同ピーアール<2436>、インフルエンサーマーケティング事業のVAZを子会社化
2021/12/23

共同ピーアールは、インフルエンサーマーケティング事業のVAZ(東京都中央区。売上高8億円、営業利益△1億400万円、純資産2億1500万円)の株式を追加取得し、連結子会社化することを決めた。現在3.66%の持ち株比率を40.19%に引き上げる。VAZは若年層向けマーケティングに強みを持つ。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月14日。

日本ハウズイング<4781>、三井E&Sホールディングス<7003>傘下で総合サービス業のMESファシリティーズを子会社化
2021/12/23

日本ハウズイングは、三井E&Sホールディングス傘下で人材派遣、自動車教習所、保険代理店、薬局、警備などを手がける総合サービス業のMESファシリティーズ(千葉県市原市。売上高82億8000万円、営業利益3億5500万円、純資産41億3000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。事業基盤の強化と関連事業の拡大につなげる。日本ハウズイングはマンション管理の大手。取得価額は非公表。取得予定日は2022年4月1日。

MESファシリティーズは旧三井造船の非製造部門の直系子会社4社が合併し、2016年4月に発足した。事業は多岐にわたり、旅行代理店、給食・レストラン、ガソリンスタンド、自動車整備なども手がける。

みらいワークス<6563>、リード獲得支援プラットフォーム事業のAnd Technologiesを子会社化
2021/12/23

みらいワークスは、人材分野のリード(見込客)獲得を支援するプラットフォーム「FIND CAREERS」を運営するAnd Technologies(東京都港区。売上高4400万円、営業利益3900万円、純資産2600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。主力事業のビジネスマッチングサービスにおける新規登録者の獲得強化を見込む。取得価額は3億7000万円。取得予定日は2022年1月4日。

マツオカコーポレーション<3611>、衣料品OEM事業の中国「宿遷茉織華服装」を子会社化
2021/12/23

マツオカコーポレーションは中国子会社を通じて、衣料品OEM(相手先ブランドによる生産)事業の宿遷茉織華服装有限公司(江蘇省宿遷市。売上高8億7200万円、営業利益0百万円、純資産4億7900万円)の持ち分を追加取得し子会社化することを決めた。現在14.9%の持ち分比率を100%に高める。マツオカにとって宿遷茉織華服装は中国における協力工場。同社を傘下に収めることで、中国での生産基盤を強固にし、増加する縫製需要を取り込む。取得価額は非公表。取得予定は2022年1月。

Robot Home<1435>、不動産賃貸・売買仲介業のアイ・ディー・シーを子会社化
2021/12/22

Robot Homeは、不動産賃貸・売買仲介業のアイ・ディー・シー(大阪府吹田市。売上高5億3800万円、営業利益1560万円、純資産9960万円)の全株式を取得し、22日付で子会社化した。グループのAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)事業、不動産コンサルティング事業などの成長促進に役立てる。取得価額は非公表。

東急不動産ホールディングス<3289>、DIYを中心とする子会社の東急ハンズをカインズに譲渡
2021/12/22

東急不動産ホールディングスは22日、DIYを中心に家具、日用品、生活雑貨などを取り扱う子会社の東急ハンズ(東京都新宿区。売上高631億円、営業利益△44億7000万円、純資産36億4000万円)の全株式を、ホームセンター最大手のカインズ(埼玉県本庄市)に譲渡すると発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年連続の最終赤字に陥るなど厳しい環境にあり、グループ内の経営資源による事業再構築では限界があると判断した。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2022年3月31日。

東急ハンズは1976年に創業。DIYを中心に新たな生活様式を提案する小売業態の先駆者的存在として知られ、現在、国内海外合わせて86店舗(フランチャイズ24店舗を含む)を展開している。PB(自社企画)商品の開発強化、EC(電子商取引)の拡大、フランチャイズ展開の加速などを通じて再建を進めてきたが、新型コロナ禍が重なり、業績が急速に悪化していた。

カインズはホームセンター最大手で、2021年2月期の売上高は4854億円。店舗数は227(12月22日現在)。東急ハンズを傘下に迎え、オリジナル商品の開発やデジタル基盤の活用などで相乗効果を期待している。

ビックカメラ<3048>、スマホなどデジタル家電買い取りの「じゃんぱら」を子会社化
2021/12/22
ビックカメラは傘下企業を通じて、スマートフォン、パソコンなどデジタル家電や情報通信機器の買い取り・販売を手がける、じゃんぱら(東京都千代田区)の全株式を取得し、22日付で子会社化した。デジタル家電リユース(中古)でのシェア拡大や店舗網の地域補完、仕入ルート拡充などの相乗効果を期待している。じゃんぱらは1997年創業で、全国で50店舗を展開する。取得価額は非公表。
すららネット<3998>、子ども向け知育アプリ開発のファンタムスティックを子会社化
2021/12/22

すららネットは、子ども向け知育アプリや学習コンテンツを開発するファンタムスティック(東京都港区。売上高1億300万円、営業利益△2700万円、純資産1億100万円)の株式39.8%を取得し、子会社化(実質支配力基準)することを決めた。すららネットはファンタムスティック取締役5人のうち3人を派遣する。国内、海外の両面でユーザーの新規獲得や顧客基盤の拡大などの相乗効果を期待している。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月14日。

グッドパッチ<7351>、Webシステム・アプリ開発のスタジオディテイルズを子会社化
2021/12/22

グッドパッチは、Webシステムやアプリ開発などの実装・開発を手がけるスタジオディテイルズ(名古屋市。売上高5億6700万円、営業利益1770万円、純資産6100万円)の全株式を取得し、22日付で子会社化した。Webデザイン領域での総合力向上が狙い。スタジオディテイルズは2009年に創業。取得価額は非公表。

IBJ<6071>、旅行子会社のかもめを個人に譲渡
2021/12/22

IBJは、旅行事業子会社のかもめ(東京都港区。売上高6億9800万円、営業利益△2800万円、純資産1億7200万円)の全株式を個人の原優二氏に譲渡することを決めた。新型コロナ禍の影響で海外への新婚旅行需要の回復には時間を要することが予想されるとの判断。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年12月29日。

IBJ<6071>、雑誌広告子会社のIBJウエディングを日本グローイング社に譲渡
2021/12/22

IBJは、雑誌広告子会社のIBJウエディング(東京都港区。売上高2億8800万円、営業利益△600万円、純資産1億1100万円)の全株式を、ウエディングフォト事業の日本グローイング社(東京都江東区)に譲渡することを決めた。新型コロナ禍の影響でブライダル関連の広告需要の回復は時間を要することが予想され、主力の婚活事業領域との相乗効果の創出が当面難しいと判断した。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年12月29日。

FRACTALE<3750>、競輪・オートレースの会員制場外車券売場を経営するサテライト名古屋を子会社化
2021/12/22

FRACTALEは傘下企業を通じて、競輪とオートレースの会員制場外車券売場を経営するサテライト名古屋(名古屋市。売上高2億1500万円、営業利益△2億8200万円、純資産△8億3300万円)の全株式を取得し、22日付で子会社化した。公営競技のメディア運営、インターネットレジャーサービス事業といった新しい運営要素を場外車券売場に導入し、これまで競輪やオートレースに触れることの少なかった世代の取り込みを目指す。取得価額は非公表。

サテライト名古屋は2012年に中部地区初の競輪会員制場外車券売場「サテライト名古屋」、2016年にオートレースの会員制場外車券売場「オートレース名古屋」をそれぞれ名古屋市内にオープンした。いずれの施設もFRACTALE傘下で不動産事業のデューイ(東京都千代田区)が所有する商業ビルに入居する関係にあった。

フマキラー<4998>、殺虫剤製造のイタリアZapiなど2社を子会社化
2021/12/22

フマキラーは、殺虫剤などを製造・販売するイタリアZapi Industrie Chimiche S.p.A.(売上高43億3000万円、純資産20億7000万円)の株式80%、不動産事業のイタリアTrezeta Immobiliare S.r.L.(売上高7500万円、純資産4億9300万円)の全株式をそれぞれ取得し、子会社化することを決めた。殺虫剤分野の海外展開を強化する狙い。TrezetaはZapiの製造工場の土地・建物を所有している。取得価額は非公表。取得予定は2022年1月~2月中。

アルコニックス<3036>、精密コネクター金属端子部品を製造するジュピター工業を子会社化
2021/12/21

アルコニックスは、精密コネクター金属端子部品のプレス加工、金型製作を手がけるジュピター工業(岩手県宮古市。売上高15億円、経常利益9500万円、純資産14億3000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。コネクター業界は自動車の電装化、5G(高速通信規格)、IoT(モノのインターネット)関連の進展で需要が大きく膨らんでいる。アルコニックスは成長分野と位置づける「電子部品」「半導体」「自動車」との相乗効果を期待している。取得価額は非公表。取得予定日は2022年4月20日。

ジュピター工業は1973年に設立。主力の精密コネクター金属端子部品はスマートフォン、タブレットなどのモバイル製品をはじめ民生用機器に使われている。中国・蘇州市に設計・生産の海外拠点を持つ。

ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>、ソフトふりかけ「梅の実ひじき」製造・販売の十二堂を子会社化
2021/12/21

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、海産物・農産物加工販売の十二堂(福岡県太宰府市。売上高6億8000万円、営業利益7000万円、純資産2億5600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。十二堂は代表商品のソフトふりかけ「梅の実ひじき」で全国的なファンを持つ。取得価額は7億5000万円。取得予定日は2022年1月17日。

ヨシムラ・フードは傘下に、わかめ・ひじきのふりかけ商品を展開する香り芽本舗(島根県出雲市)を持ち、販路の共有や原料の共同購入、商品の共同開発などの相乗効果を期待している。

ダイナパック<3947>、包装資材製造・販売の城西パックなど2社を子会社化
2021/12/21

ダイナパックは傘下企業を通じて、不動産賃貸の城西(東京都西東京市。売上高500万円)と同社子会社でダンボールなど包装資材を製造・販売する城西パック(同。売上高2億800万円)を子会社化することを決めた。関東圏での事業拡大の一助とする。城西の全株式、城西パックの35%(間接保有分を合わせ100%)の株式をそれぞれ取得する。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月20日。

ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス<3657>、サイバーセキュリティー事業のNinjastarsを子会社化
2021/12/21

ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスは傘下企業を通じて、サイバーセキュリティー事業のNinjastars(東京都品川区。売上高2560万円、営業利益154万円、純資産2850万円)の株式70%を取得し子会社化することを決めた。主力事業のゲームデバッグ(ゲームソフトの不具合検出)でセキュリティー診断を融合した新たなサービスを展開するとともに、ゲーム以外でも顧客企業のアプリやシステムの総合的な品質向上につながると期待している。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月21日。

サウジアラビア企業、KOSDAQ上場でゲームコンテンツ事業のSNKをTOBで子会社化へ
2021/12/20

サウジアラビアの投資会社エレクトロニック・ゲーミング・ディベロップメント・カンパニー(リヤド)は17日、韓国KOSDAQ上場でゲームコンテンツ事業のSNK(大阪市)の完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を始めた。エレクトロニック・ゲーミングはSNKの株式33.3%を持つ大株主。サウジアラビアは石油依存型経済からの脱却を進めるため、ゲームなどエンターテインメント・コンテンツ産業の育成を重点政策の一つに掲げる。SNKは「ザ・キング・オブ・ファイターズ」「サムライスピリッツ」「メタルスラッグ」などのゲームで知られる。

買付価格は1株につき371万9700ウォン。TOBを決議した取締役会開催日前日の終値208万5000ウォンに78.4%のプレミアムを加えた。買付予定数は14万482株、下限は所有割合17.7%にあたる3万7279株。買付代金は最大501億円。

買付期間は12月17日~2022年2月10日。決済の開始日は2022年2月18日。公開買付代理人は三田証券。

エムティーアイ<9438>、AI関連サービスのAI Infinityを子会社化
2021/12/20

エムティーアイは、AI(人工知能)関連サービスのAI Infinity(東京都港区。売上高1700万円、営業利益△2610万円、純資産142万円)の株式を追加取得し、子会社化することを決めた。第三者割当増資を引き受けて、現在17.55%の持ち株比率を51.56%に高める。AI事業の拡大が狙い。AI Infinityは2017年設立。取得価額は2億円。取得予定日は2021年12月24日。

CAICA DIGITAL<2315>、フィスコ<3807>傘下で貸金業のフィスコ・キャピタルを子会社化
2021/12/20

CAICA DIGITALは子会社を通じて、フィスコ傘下で貸金業を手がけるフィスコ・キャピタル(東京都港区。売上高4万2000円、営業利益△82万1000円、純資産7700万円)の全株式を取得し、20日付で子会社化した。暗号資産を担保にした融資など新サービスの提供を目指す。取得価額は7600万円。

CAICAは11月1日付でグループの金融事業を統括するために中間持ち株会社「カイカフィナンシャルホールディングス」(東京都港区)を設立しており、この傘下にフィスコ・キャピタルを配置する。フィスコ・キャピタルはカイカファイナンスに社名を変更する。

日機装<6376>、ポンプ製造の欧州子会社2社を譲渡へ
2021/12/20

日機装は、原油・天然ガス掘削や石油化学プラントで使われるポンプを製造・販売する欧州子会社2社を譲渡することを決めた。ドイツLEWA GmbH(売上高326億円、営業利益36億9000万円)とオランダGeveke B.V.(売上高72億8000万円、営業利益8億5000万円)で、両社の全株式を譲渡する。事業構成見直しの一環で、次世代エネルギー関連市場へ経営資源を集中し、中長期的な安定成長につなげる。譲渡先と譲渡価額は非公表。譲渡予定は2022年5月中。

クシム<2345>、ブロックチェーン関連システム開発のチューリンガムを子会社化
2021/12/20

クシムは、ブロックチェーン(分散型台帳)関連のシステム開発やコンサルティング事業を手がけるチューリンガム(東京都千代田区。売上高5200万円、営業利益△4200万円、純資産5700万円)を株式交換で子会社化することを決めた。成長が見込まれるブロックチェーン技術領域の教育(Eラーニングコンテンツ開発)、システム受託開発などへの事業転換を進める一環。株式交換予定日は2022年3月2日。株式交換比率はクシム1:チューリンガム5.26。

チューリンガムは2019年設立で、暗号資産交換所の改善計画策定、暗号資産のレンディング(貸仮想通貨)サービスプラットフォームの開発などに取り組んできた。

日本駐車場開発<2353>、駐車場事業の中国子会社「邦駐(上海)停車場管理」を現地社に譲渡
2021/12/20

日本駐車場開発は、駐車場事業を手がける中国子会社の邦駐(上海)停車場管理有限公司(上海市。売上高1億9600万円、営業利益4340万円、純資産2億1800万円)の全株式を、現地同業の北京易泊安科技有限公司(北京市)に譲渡することを決めた。海外駐車場事業の見直しの一環。邦駐は2011年に設立したが、足元ではコロナ禍の影響も重なり、当初の期待を超える利益成長が実現せず、今後も成長が見込めないと判断した。譲渡価額は1円。譲渡予定日は2021年12月31日。

東和薬品<4553>、米カーライル・グループ傘下で健康食品・医薬品受託製造の三生医薬を子会社化
2021/12/17

東和薬品は、健康食品・医薬品の受託製造を手がける三生医薬(静岡県富士市。売上高228億円、営業利益21億2000万円、純資産149億円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。三生医薬が持つ高い製剤技術や健康食品に関するノウハウを取り込み、健康関連事業の多角的な展開につなげる。三生医薬は1993年設立で、2014年に米投資ファンドのカーライル・グループの傘下に入った。取得価額は476億9400万円。2022年2月28日に株式99%超を、3月7日に残る株式を取得する予定。

オリンパス<7733>、生物顕微鏡や工業用内視鏡などの「科学事業」を分社したうえで売却へ
2021/12/17

オリンパスは17日、生物顕微鏡や工業用内視鏡などを製造、販売する「科学事業」を分社したうえで売却する方向で検討を進めると発表した。内視鏡事業と治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入するのに伴い、非中核と位置付ける科学事業を手放す。科学事業の直近業績は売上高958億円、営業利益49億4000万円。受け皿会社として新設したエビデント(長野県辰野町)に2022年4月1日付で科学事業を移管し、続いて同社の全株式を第三者に譲渡する見通し。

オリックス<8591>、傘下のクラウド会計ソフト大手の弥生を米KKRに譲渡
2021/12/17

オリックスは、業務用ソフトウエア開発を手がける子会社の弥生(東京都千代田区。売上高211億円、経常利益49億3000万円、純資産87億2000万円)を、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に譲渡することを決めた。デジタル革新の進展など事業環境が加速度的に変化する中、世界的なネットワークを持つ有力ファンドのKKRに弥生の今後の成長を託す。弥生はクラウド会計ソフト「弥生シリーズ」で知られ、オリックスが2014年に傘下に収めた。

弥生が会社分割して設立する弥生事業準備会社(新弥生)の全株式を譲渡する。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2022年3月1日。

エクシオグループ<1951>、空調・給排水衛生など管工事の光陽エンジニアリングを子会社化
2021/12/17

エクシオグループは、空調、給排水衛生などの管工事を手がける光陽エンジニアリング(静岡市。売上高16億7000万円、営業利益1億7600万円、純資産9億300万円)を株式交換で子会社化することを決めた。都市インフラ事業の拡大の一環。株式交換比率はエクシオグループ1:光陽エンジニアリング1000。株式交換予定日は2022年1月31日。

フィードフォースグループ<7068>、ブランディング戦略策定やECサイト構築支援のフラクタを子会社化
2021/12/17

フィードフォースグループは、ブランディング戦略策定やEC(電子商取引)サイト構築支援を手がけるフラクタ(東京都渋谷区。売上高4億8600万円、営業利益700万円、純資産1億900万円)の株式51.25%を取得し、子会社化することを決めた。企業のデジタル革新を支援するDX(デジタルトランスフォーメーション)事業の成長加速につなげる。フラクタは2013年設立。取得価額は6億1900万円。取得予定日は2021年12月24日。

SPK<7466>、自動車トランスミッション修理サービスのデルオートを子会社化
2021/12/16

SPKは、自動車トランスミッションの修理サービスやリビルト(再生)を手がけるデルオート(神奈川県厚木市。売上高4億3300万円、営業利益6400万円、純資産4億1900万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。国内外の自動車部品卸を主力とするSPKグループにとって相乗効果が大きいと判断した。デルオートは1980年設立。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月22日。

電算システムホールディングス<4072>、システム開発のCMCを子会社化
2021/12/16

電算システムホールディングスは、システム開発のCMC(岐阜市。売上高1億3500万円、営業利益491万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。CMCは1991年に設立で、会計システムを中心とした業務システムの導入や、ネットワーク構築支援、老朽化システムのメンテナンス対応などで実績を積んできた。取得価額は非公表。取得は2022年5月半ばまでに行う予定。

カッシーナ・イクスシー<2777>、生活雑貨販売のコンランショップ・ジャパンをMSD企業投資に譲渡
2021/12/16

カッシーナ・イクスシーは、生活雑貨・家具・食品など販売の「ザ・コンランショップ」を展開する子会社のコンランショップ・ジャパン(東京都新宿区。売上高23億1000万円、営業利益3000万円、純資産△14億3000万円)の全株式を、MSD企業投資(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。コンランショップ・ジャパンの収益改善に一定のめどが立ったのを受け、新たな株主体制のもとで再スタートさせるのが得策と判断した。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年12月27日。

譲渡先のMSD企業投資は三井物産、三井住友銀行(東京都千代田区)、日本政策投資銀行(東京都千代田区)が設立した投資会社。

ハリマ化成グループ<4410>、ドイツHenkelからはんだ付け材料事業を取得
2021/12/16

ハリマ化成グループは、ドイツの化学メーカーHenkel AG & Co. KGaA(デュッセルドルフ)から、はんだ付け材料事業を取得することを決めた。両社のはんだ事業を統合することにより、生産規模の拡大と生産効率の向上につなげる。取得対象事業の直近売上高は約36億円。Henkelの創業は1876年。取得価額は非公表。取得予定日は2022年4月1日。

Henkelから取得するのは欧、米、アジアの生産設備、生産技術、商標、特許、従業員、商権など。ハリマ化成は松由来の天然樹脂ロジン(松脂)を原料とする各種化学品を手がける。このうち、電子材料関連で金属粉とロジン誘導体を組み合わせたペースト状はんだ「ソルダーペースト」を主力商品の一つとしている。

リビングプラットフォーム<7091>、千葉県内で保育事業所2施設を運営するID・アーマンを子会社化
2021/12/15

リビングプラットフォームは、千葉県で2カ所の保育事業所を運営するID・アーマン(千葉県市川市。売上高2億円、営業利益173万円、純資産1710万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。主力の介護事業に続く柱である保育事業の成長加速が狙い。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月1日。

リビングプラットフォームは現在、認可保育所10施設、企業主導型保育事業所4施設を持つ。

GA technologies<3491>、資産運用型マンション販売・賃貸のリコルディを子会社化
2021/12/15

GA technologiesは、資産運用型マンション販売・賃貸のリコルディ(東京都千代田区。売上高69億7000万円、営業利益1億1700万円、純資産1億8000万円)を子会社化することを決めた。株式35.71%を取得したうえで、残る株式を株式交換で取得する。GAは中古マンション領域を主力とするが、上流の新築領域を取り込み、商品ラインナップの充実につなげる。リコルディは2010年設立。

株式交換比率はGA1:リコルディ7124.79。株式交換に先立つ株式の取得価額は非公表。一連の取得予定日は2022年3月1日。

ジェイフロンティア<2934>、医療人材紹介のAIGATEキャリアを子会社化
2021/12/15

ジェイフロンティアは、医療人材紹介やコールセンター事業を手がけるAIGATEキャリア(東京都渋谷区。売上高14億400万円、営業利益3400万円、純資産8100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。医師、看護師、薬剤師などの医療人材紹介サービスに参入する。将来は臨床検査技師や放射線技師、介護士、医療事務などに紹介領域を広げる。取得価額は4億円。これに加え、子会社化後の業績達成度合いに応じて2023年4月末までに最大4億円を追加で支払う。取得予定日は2021年12月28日。

ジェイフロンティアは健康食品の通信販売でコールセンター業務をAIGATEに委託するなど長年取引関係を持つ。

タナベ経営<9644>、ブランディング構築支援のジェイスリーを子会社化
2021/12/15

タナベ経営は、企業向けにブランディング構築支援などを手がけるジェイスリー(東京都港区)の株式96.2%を取得し子会社化することを決めた。既存株主からの株式取得と第三者割当増資引き受けを組み合わせる。タナベ経営は経営コンサルティングとしての長年の蓄積と、ジェイスリーが強みとするブランディングやCX(顧客体験)に関する知見・ノウハウを連携させ、経営サービスの向上につなげる。ジェイスリーは1986年に設立。取得価額、取得予定日は非公表。

日本創発グループ<7814>、広告・宣伝企画・制作のダイアモンドヘッズを子会社化
2021/12/15

日本創発グループは、広告宣伝企画・制作などのダイアモンドヘッズ(東京都港区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。クリエイティブサービスの多様化につなげる狙い。ダイアモンドヘッズは1982年設立で、ブランド戦略の立案・キャンペーンやプロモーション、グラフィック、Web、ムービーなどの制作を幅広く手がける。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月14日。

オウケイウェイヴ<3808>、音楽・映像制作や著作権管理のアップライツを子会社化
2021/12/15

オウケイウェイヴは傘下の投資ファンドを通じて、音楽・映像制作や著作権管理のアップライツ(東京都港区。売上高5億5500万円、営業利益1960万円、純資産2060万円)の第三者割当増資を引き受けて株式52.6%を取得し、子会社化することを決めた。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を見据え、クリエーターとユーザーをつなぐ新たな事業展開を模索する。オウケイウェイヴが運営する国内最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」関連ビジネスの活性化も期待している。アップライツは2006年に設立。取得価額は9億9999万円。取得予定日は2021年12月20日。

Oakキャピタル<3113>、キャッシュレス決済事業のユニヴァ・ペイキャストを子会社化
2021/12/15

Oakキャピタルは、キャッシュレス決済事業を展開するユニヴァ・ペイキャスト(東京都港区。売上高25億4000万円、営業利益△4800万円、純資産3億3800万円)を株式交換で子会社化することを決めた。金融ビジネスの多角化を推進する一環。ユニヴァ・ペイキャストは2001年に設立し、中国の銀聯カードによるインターネット上の「越境決済」や、中国人観光客が利用するAlipay、WechatPayをはじめ、他のアジア諸国のモバイル決済に日本国内でいち早く対応したことで知られる。取得予定日は2022年6月15日。株式交換比率は今後、協議のうえ決める。

アクサスホールディングス<3536>、アジアンチーク材加工・販売のウオール・デコを子会社化
2021/12/15

アクサスホールディングスは傘下企業を通じて、アジアンチーク材加工・販売のウオール・デコ(兵庫県西宮市。売上高3000万円、営業利益△1800万円、純資産△3500万円)の全事業の取得と同社の完全子会社化を決めた。ウオール・デコは1985年創業で、アジアンチーク材に関してアジア各地に独自の調達ルートを持ち、工務店や内装業者、ホームセンターなどの顧客に供給するほか、自社加工の木材インテリアも手がける。取得価額は2000万円。取得予定は2022年4月。

アクサスホールディングスは傘下のアクサス(徳島市)を通じて、化粧品、生活雑貨、酒類販売などを手がけている。

トレジャー・ファクトリー<3093>、メディアコンテンツ事業子会社のデジタルクエストを売却検討
2021/12/15

トレジャー・ファクトリーは、2019年に子会社化したデジタルクエスト(東京都千代田区。売上高3億8000万円、営業利益△1700万円、純資産1億900万円)のシステム開発事業などを分社して新会社を設立するとともに、分社後のデジタルクエストの株式について外部第三者への売却を検討する方針を決めた。分社によってデジタルクエストにはスマートフォンゲーム、ブロックチェーン(分散型台帳)ゲームなどのメディアコンテンツ事業が残るが、こうした事業はグループ内で相乗効果が見込めないとの判断による。

トレジャー・ファクトリーはシステム開発力の強化を目的にデジタルクエストを傘下に収め、現在約53%の株式を保有。BtoB(事業者間)オークション事業用などの各種システムやアプリを共同で開発してきた。今後、システム開発のスピードをさらに高めていくために、当該事業を分社して2022年2月14日付で新会社を設立する予定。

シャルレ、早期退職者の募集を今年1月に続き実施
2021/12/14

女性下着や化粧品の訪問販売を手がけるシャルレは14日、早期退職者を募るセカンドキャリア選択支援制度を実施すると発表した。50歳以上の社員と再雇用嘱託社員が対象。人数を定めず、募集期間は12月20日~2022年1月12日(退職日は3月31日付)。中長期的な人員構成の適正化などが目的。同社は今年1月にも同様の内容で早期退職を実施しており、前回は8人の応募があった。

アイケイ<2722>、法人向けモバイル事業のコミュニケーション・ブリッジを子会社化
2021/12/14

アイケイは傘下企業を通じて、法人向けモバイル事業を手がけるコミュニケーション・ブリッジ(東京都港区。売上高1億4200万円、営業利益1320万円、純資産2000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。コンタクトセンター向け有人対応チャットシステム「M-Talk」事業の強化やサービス向上につなげる。コミュニケーション・ブリッジは「M-Talk」の日本総販売代理店。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月30日。

アダストリア<2685>、外食のゼットン<3057>を第三者割当増資とTOBで子会社化
2021/12/14

アダストリアは14日、外食中堅でレストラン「アロハテーブル」などを運営するゼットンを連結子会社化すると発表した。第三者割当増資の引き受けとTOB(株式公開買い付け)を通じて、40%~51%の株式取得を目指す。取得価額は合計で約28億7000万円。カジュアル衣料店大手のアダストリアはゼットンを傘下に取り込み、ファッションビジネスと飲食ブランドの融合による新規事業を目指す。アダストリアはファッション通販サイト最大手のZOZO創業者、前澤友作氏が約7%の株式を持つ大株主として名を連ねる。ゼットンの名証セントレックスへの上場は維持される。

アダストリアは12月30日に第三者割当増資を約12億9200万円で引き受け、ゼットン株式の25.14%(162万1400株)を取得したうえで、TOBを実施する。

ゼットン株式の買付価格は1株950円で、TOB公表前日の終値885円に7.34%のプレミアムを加えた。買付予定数の上限は166万8000株(所有割合25.86%)、下限は95万8600株(同14.86%)に設定した。買付代金は最大約15億8400万円。買付期間は2022年1月4日~2月16日。決済の開始日は2月21日。公開買付代理人は三田証券。

ゼットンは1995年に創業し、飲食事業に乗り出した。主力の外食事業ではハワイ、韓国にも店舗を持つ。名証セントレックスへの上場は2006年。現在は居酒屋など外食大手のDDホールディングスが約37%の株式を持ち、ゼットンを持ち分法適用関連会社としている。

鉄人化計画<2404>、首都圏でまつ毛・ネイルサロンなど32店舗展開のビアンカグループ6社を子会社化
2021/12/14

鉄人化計画は、首都圏でまつ毛・ネイルサロン、ヘッドスパ専門店など32店舗を展開するビアンカグループ(東京都千代田区)6社の全株式を取得し、子会社化することを決めた。美容事業の拡大が狙い。鉄人化計画は首都圏でカラオケ・飲食事業を主力とするほか、美容事業として中京地区で「Rich to」ブランドでまつ毛・ネイルサロンを11店舗を運営している。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月15日。

子会社化する6社はUIM(東京都新宿区。売上高2億6200万円、営業利益△2990万円、純資産7420万円)、Bianca VENUS(さいたま市。売上高2億2800万円、営業利益3580万円、純資産7180万円)、JEWEL(東京都新宿区。売上高1億2300万円、営業利益586万円、純資産2430万円)など。

ヤマト・インダストリー、希望退職に9人応募
2021/12/13

プラスチック部品製造のヤマト・インダストリーは13日、11月に募った希望退職に9人の応募があったと発表した。40歳以上64歳未満の正社員、嘱託社員が対象で、募集人員は10人程度としていた(退職日は12月13日)。コロナ禍に伴う業績悪化を受け、子会社の事業譲渡や経費削減の徹底などの構造改革を進めており、希望退職もその一環。

ダイドーリミテッド、今度は本部勤務者を対象に20人程度の希望退職者を募集
2021/12/13

ダイドーリミテッドは13日、同社と中核子会社のダイドーフォワード(東京都千代田区)で本部勤務者を対象に20人程度の希望退職者を募ると発表した。一部ブランドの休止や不採算店舗の閉店などに伴い、現在、ダイドーフォワードの店舗勤務者(正社員ほか)について100人規模の希望退職を実施中(12月13日~24日)で、今後、ダイドーリミテッド本体を含めた追加策を講じる。

対象は両社に在籍する40歳以上の本部勤務者(正社員、契約社員、再雇用契約社員)。募集期間は2022年2月28日~3月11日(退職日は4月20日)。応募者には特別退職金を支給し、再就職を支援する。

ダイドーリミテッドは「ニューヨーカー」「バークレイ」などのブランドで知られ、トラッドスタイルを基本にビジネスウエアからカジュアルウエアまで幅広く展開する。しかし、ビジネスウエアのカジュアル化でスーツ需要が縮小しているうえ、コロナ禍を契機としたテレワーク(在宅勤務)の拡大などで衣料品を取り巻く消費行動が大きく変化し、厳しい事業環境に置かれている。

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク