住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税制度における取得要件と居住要件

[解説ニュース]

住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税制度における取得要件と居住要件

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

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1.住宅取得等資金の非課税制度の概要


その年の1月1日において一定の要件を満たす個人が、令和5年12月31日までの間に父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、受贈者ごとに、非課税限度額(新築等をした住宅用家屋が省エネ等住宅(注)の場合は 1,000万円、それ以外の住宅の場合は 500万円)までの金額について、贈与税が非課税となります(租税特別措置法(措法)70条の2第1項。以下、本税制を「非課税制度」という)。
(注)省エネ等住宅とは、省エネ等基準に適合する住宅用家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます(措法70条の2第2項6号イ、措法施行令40条の4の2第8項)。

 

 

2.非課税制度における居住要件


非課税制度の適用を受けるためには、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することが要件とされます。贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住しない場合であっても、取得した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれる場合には、一定の書類の添付により特例の適用ができます(措法70条の2第1項)。ただし、贈与を受けた年の翌年の12月31日(以下「居住期限」)までに受贈者の居住の用に供されていない場合は、特例の適用ができないため、修正申告書の提出が必要となります(同法第4項)。

 

 

3.非課税制度における取得要件


(1)概要

非課税制度の適用を受けるためには、贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日(以下「取得期限」)までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態として一定のものを含む)もしくは取得をすることが要件とされます。

 

(2)請負契約により住宅用家屋を新築する場合

(1)の場合において、請負契約により住宅用家屋を新築するときは、取得期限において屋根を有し、土地に定着した建造物と認められる時以降の状態であれば、上記(1)の「新築に準ずる状態」とされ、完成した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、一定の書類の添付により非課税制度の適用を受けることができます(措法70条の2第1項1号、措法施行規則23条の5の2第1項)。

 

(3)住宅用家屋を取得するときの取得要件

前記(1)の住宅用家屋の取得とは、売主から住宅用家屋の引渡しを受けたことをいいます。したがって、建売住宅や分譲マンションについては、売買契約が締結されている場合や、これらの建物が前記(2)に規定する新築に準ずる状態にある場合であっても、その引渡しを受けていない限り、住宅用家屋の取得には該当せず、非課税制度の適用を受けることができません(措法通達70の 2−8、70の3−8)。

 

4.災害等を受けた場合の居住・取得期限の延長等


(1)居住期限の1年延長

贈与により金銭の取得をした人が、その金銭を住宅用家屋の新築等の対価に充てて新築等をする場合に、その贈与を受けた年の翌年3月15日後遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより、非課税制度の適用を受けたものの、災害に基因するやむを得ない事情により贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住することができなかったときには、居住期限が1年延長【贈与を受けた年の翌々年12月31日】されます(措法70条の2第10項)。

 

(2) 取得期限の延長

贈与により金銭の取得をした人が、その金銭を住宅用家屋の新築等の対価に充てて新築等をする場合に、災害に基因するやむを得ない事情により贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅用家屋の新築等ができなかったときには、取得期限と居住期限が1年延長されます(措法70条の2第11項)。

 

(3)居住要件の免除

住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築等をした人が、その贈与を受けた年の翌年3月15日後、遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより、非課税制度の適用を受けた場合において、その住宅用家屋が災害により滅失(通常の修繕では原状回復が困難な損壊を含む。)をしたため、居住することができなくなったときには、居住要件が免除され、非課税制度の適用を受けることができます(措法70条の2第9項)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/9/25)より転載