[解説ニュース]

土地の地目等は、相続時の利用状況をもとに判断すべきとした裁決

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■低未利用地等を譲渡した場合の100万円特別控除の適用状況

■不動産所得の計算で争いになった最近の事例

 

1、相続税の土地評価の単位とは?


相続財産である土地を金銭価値で見積もる評価をする場合には、土地は、(1)宅地、(2)田、(3)畑、(4)山林、(5)原野、(6)牧場、(7)池沼、(9)鉱泉地及び(10)雑種地の地目の別に評価することとされています。なお、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとされます。

 

このうち宅地については、利用の単位となっている1画地の宅地ごとに評価することになっています。必ずしも1筆ごとではないところがポイントです。
もっとも贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」とするルールがあります。

 

さて、建物の建築確認を受ける際に、その敷地とされていた土地の利用状況が、建物の敷地以外の用途にも利用されることがあります。その場合、土地の評価単位の判定はどのようになるのでしょうか?今回は、そんな問題を孕んだ最近の裁決事例を紹介します。

 

 

2、事例の概要


問題となった相続財産の土地は、次のような土地でした(国税不服審判所 令和4年3月9日裁決)。

 


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被相続人は平成15年に共同住宅の新築に際し概ね本件1土地を敷地として建築確認申請を行いました。その後相続が開始し、相続人Aが本件1土地及び共同住宅を、相続人Bが本件2土地を遺産分割により相続しました。相続開始時点の土地の利用状況は、本件1土地の点線部分の南側を含む本件2土地が月極駐車場となっていましたが、共同住宅入居者専用ではありませんでした。本件1土地の南側道路に接する部分にはフェンスが設置され、当該通路部分を通って南側道路に出ることはできない状況でした。

 

相続人らは本件1土地については、共同住宅の敷地である宅地で不整形地として当初申告しました。

ところが税務署は、本件1土地の北側共同住宅の敷地部分(宅地)と駐車場となっている南側部分(雑種地)は一体性がないとして、評価単位を分けて更正処分をしたことから、国税不服審判所(以下、審判所という)の判断を求めることになったものです。

 

争点は、本件1土地北側部分と、本件1土地南側部分に分けて評価すべきか。具体的には、本件1土地の地目につき、本件1土地北側部分は宅地、本件1土地南側部分は雑種地として、それぞれの評価単位ごとに土地の価額を評価すべきか否か。

 

 

3、審判所の判断


審判所は、本件1土地の点線部分に柵が設置されていたことや、植栽などがあって事実上、共同住宅の敷地から駐車場側へ通りぬけられなかったこと等を確認し、本件1土地の南側部分は、共同住宅の敷地の効用を果たすための必要な土地とは認められないと判断しました。そのうえで審判所は、最終的に「本件1土地北側部分の地目は宅地、本件1土地南側部分の地目は雑種地と判定すべき」としました。

 

この点、相続人が次のように主張していました。「本件1土地南側部分は、①避難通路として本件共同住宅の敷地の効用を果たすために必要な土地であること、②建築確認申請における建蔽率及び容積率の計算上、本件共同住宅の敷地に含まれていることから、本件共同住宅の敷地として本件1土地北側部分と一の評価単位とすべき」。

 

これに対し審判所は「土地の地目の判定においては、土地の現況及び利用目的に重点を置くこととされるものであり、その利用目的については、課税時期における利用状況を基に判断すべき」と述べ、「建築確認における申請内容いかんは、上記の結論を左右するものではない」として、相続人の言い分を退けています。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/09/20)より転載

[解説ニュース]

譲渡所得の金額の計算上、総収入金額を契約効力発生日基準により確定させる場合の留意点

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■建物の取壊費用等が土地の取得費になるかどうかで争った事例

■区分所有建物の敷地への小規模宅地特例の適用巡り争いになった裁決事例

 

 

1.譲渡所得の金額の申告時期の原則


(1)譲渡所得の計算

個人が宅地を譲渡した場合、所得税の譲渡所得の金額は、その年中の譲渡に係る総収入金額(譲渡代金)から譲渡した宅地の取得費や譲渡費用を控除して計算します(所得税法33条1項、3項、租税特別措置法31条、32条)。

(2)収入すべき時期の判定における引渡日基準と契約効力発生日基準

各年の譲渡所得の金額の計算においては、「その年中の譲渡に係る総収入金額」を確定させる必要があり、これは所得税法36条により、「その年において収入すべき金額」とされています。つまり、譲渡の対価である総収入金額が、「その年において収入すべき金額」に当たるかどうかの判断が必要であり、その判断のための基準を示しているのが、所得税基本通達36-12です。この通達では、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日(「引渡日基準」)を原則としていますが、納税者の選択により、当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日(「契約効力発生日基準」)によることも認めています。

 

 

2.契約効力発生日基準を選択する場合の注意点


(1)不動産の売買契約が成立しているかどうか

1(2)の「契約効力発生日基準」は、一般に「契約日基準」と呼ばれますが、「契約の効力発生の日」を総収入金額(譲渡代金)の収入すべき時期とするものであり、「契約日」又は「契約書作成日」が無条件に「契約の効力発生の日」となる訳ではありません。宅地等の不動産の譲渡について「契約の効力発生」に至っているというためには、不動産の売買契約が私法(民法)上成立している必要があります。

 

一般に、売買契約は両当事者の合意によって成立する(民法555条)とされています。しかし、不動産の売買については、昭和50年6月30日東京高裁判決では、「売買契約書を作成し、手付金若しくは内金を授受するのは相当定着した慣行であることは顕著な事実である。契約当事者が慣行に従うものと認められるかぎり、(略)売買契約書を作成し、内金を授受することは、売買契約の成立要件をなすと考えるのが相当である。」とされています。つまり、判例では不動産の譲渡について、売買契約書が作成されたものの、売買契約書で定められた手付金(内金)の授受がされていない場合には、売買契約の成立要件が満たされておらず、契約が私法上成立していない、という考え方が示されています。

 

契約が私法上成立していない状態であれば、「契約の効力発生」に至っていることにはなりません。独立当事者間における不動産の売買等の慣行に従い、その契約の締結(契約書の作成・調印)と同時の買主による手付金の支払義務の履行が契約書に定められている場合は、手付金の支払が履行されていることを前提として、その契約書の調印日が契約の効力発生の日ということになります。契約の効力発生の日の判定に当たっては、契約書の存在とその契約日とされている日だけを確かめるのではなく、手付金の支払条項の有無、その支払条項が有る場合はその履行の有無を確認することも必要です。

(2)手付金の支払条項がない売買契約書の性質

手付金の支払条項がない売買契約書が作成されるケースは、一般に売主・買主間に親族関係等の密接・特殊な関係がある場合の譲渡が想定されます。このような場合、第三者間の譲渡に比べるとそのような条件自体が異例であることから、売買につき真に合意があるのかどうか疑いを生むおそれがあります。

 

しかし、契約書に手付金の支払条項がなく、その授受がない場合であっても、契約書作成後すみやかに代金を全額支払い、登記関係書類等の交付等を経て引渡しが完了しているときは、売買につき真に合意があると考えるべきでしょう。また、手付金の支払条項がない契約書に、契約の効力発生の日を契約書の調印日とする旨の取り決めがあるような場合は、手付金の授受と無関係に効力の発生を合意している以上、その授受がないことが契約の成立に影響しないことになるので、契約書に定められた契約の効力発生の日を否定することはできないと思われます。

(3)契約効力発生日基準選択時の注意点

譲渡所得の金額の計算上、契約効力発生日基準を選択する場合には、極力2 (1)で示した独立当事者間における不動産売買等の慣行に従い、契約締結と同時の手付金の支払義務を定めた契約書を作成のうえ、その授受を完了させ契約の成立について疑いがないようにしておくべきです。

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/08/22)より転載

[解説ニュース]

特定事業用資産の買換特例を巡る最近の税金トラブル

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

 

1、買換特例の要件を満たしてない・・・


所得税の特定事業用資産の買換特例(以下、買換特例という。)は、個人が特定の事業用資産を譲渡して、特定の資産(買換資産)を取得し1年以内に事業の用に供した場合に、譲渡益に対する課税を繰り延べる税制上の特例です。含み益の大きい事業用不動産を買い換える場合、この特例の活用はおすすめです。もっとも売却資産と買換資産には所定の組合せがあり、これに従うのが特例適用の前提です。

 

今回は、亡き父親により取得された買換資産が、買換特例の適用要件を満たしていないことが判明したケースで、相続人が税務署と争った事例(東京高裁令和3年9月19日判決、請求棄却)を基に、そのエッセンスを紹介します。

 

具体的には相続人は、買換資産である賃貸住宅等の取得価額について買換特例画適用されない場合は買入代金ベースになるため、その後の不動産所得の減価償却や譲渡所得課税で控除される取得費でも高くなりもっと節税になるはずだと考えたのです。そして相続人が税務署に被相続人の所得税の修正申告をしたのですが、税務署は、買換資産の取得価額につき引継価額で計算すべきとして争いになったものです。

 

 

 2、買換え資産の取得価額


買換特例は、課税の繰り延べが特徴です。たとえば、譲渡資産を売った金額より買換資産の買い換えにかかった金額が高いケースでは、現行制度上、課税割合が20%の場合、譲渡資産の譲渡益の80%に相当する金額について譲渡所得課税が先送りされる仕組みです。

 

その代わり買換資産の取得価額は、①売却資産の(取得費と譲渡経費)の80%分と、②売った金額の20%分、③買い換えた資産の購入金額と売却資産の売った金額の差額を合計した金額です。いわゆる取得価額の引継ぎが行われています。
仮に売却資産の取得費が2,000万円、譲渡費用が200万円、売却代金が1億円の場合で、買換え資産の取得価額が1億2,000万円だったら、①(2,000万円+200万円)×80%=1,760万円、②1億円×20%=2,000万円、③1億2,000万円-1億円=2,000万円となり、「買換え資産の取得価額(引継価額)」は①+②+③で、5,760万円となります。

 

もし買換特例の適用がなかったら、買換資産の取得価額は、当然、買った金額とその他取得に要した費用の合計額(1億2,000万円)となります。
買換特例の適用がある場合と、そうでない場合の買換資産の取得価額には、大きな違いがあります。結果、買換資産の減価償却費の計算や、売った場合の譲渡所得課税の計算もその違いが反映されることになるのです。

 

 

  3、裁判所の判断等


この裁判で、中心的な争点となったのは、買換えに係る特定の事業用資産の譲渡の場合の取得価額の計算等について定めた措置法37条の3第1項の「第37条第1項(括弧内略)の規定の適用を受けた者(括弧内略)」の内容です。

 

裁判所は「一般に、「適用」との文言は、法令の規定を対象となる者、事項、事件等に対してあてはめ、これを働かせることを意味するものである。そして同法37条の3第1項柱書きは、当該文言に続けて、それ「を受けた者」と定めており、それ「を受けることができる者で、その適用を受けたもの」などとは定めていない。このような文理等に照らすと、自ら同法37条1項の規定を当てはめて同項に規定する要件を満たすとする確定申告書を提出し、これを働かせて同項の規定の適用による課税の繰延べという効果を享受した者は、これに係る修正申告書の提出又は更正処分がされない限り、客観的にみて当該要件を満たしていたか否かにかかわらず、「第37条第1項(括弧内略)の規定の適用を受けた者(括弧内略)に該当することになると解される」と判示しました。

 

また「課税の繰延べという効果を享受した者は、これに係る修正申告書の提出又は更正処分がされない限り、当該確定申告書の提出時から客観的にみて当該要件を満たしていなかったとしても、その効果を享受していることになるところ、それにもかかわらず、以上で述べた解釈とは異なり、(中略)同法37条の3第1項の規定が適用されないことになると解すると、(中略)すなわち繰り延べられたキャピタル・ゲインに対する課税を実現しようとする趣旨に反する結果となるから、この点でも、以上で述べた解釈が採用されるべきもの」と説示しています。

この判断は、東京高裁令和4年5月18日判決でも維持されている状況です。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/08/08)より転載

[解説ニュース]

評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地や家屋を有する場合の純資産価額方式の計算

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い②

■同族株主が相続等により取得した非上場株式の相続税評価

 

 

1.純資産価額方式による株式評価計算の原則


純資産価額方式は、非上場会社が課税時期(個人が相続、遺贈又は贈与により財産を取得した日をいう。)に清算した場合に株主に分配される正味財産の価値(純資産価額)を、その会社の発行株式の相続税法上の評価額とする評価方法です。具体的には、非上場会社(以下「評価会社」)が所有する資産を財産評価基本通達(以下「財基通」)に基づき評価し、その評価額の合計額から、負債金額の合計額及び資産の含み益に対する法人税額等相当額を差し引くことにより純資産価額を計算します(財基通185)。

 

2.課税時期前3年以内に取得した土地や家屋の評価


(1)通常の取引価額による評価

 

純資産価額の計算上、資産は財基通に基づいて計算することから、会社が所有する土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基に評価するのが原則です。ただし、課税時期前3年以内に取得又は新築した土地や家屋の価額は、課税時期における通常の取引価額相当額(注)で評価します(財基通185かっこ書)。(注)その土地等や家屋等の帳簿価額が課税時期における「通常の取引価額」に相当すると認められるときには、帳簿価額(取得価額)に相当する金額によって評価できます(同)。

 

このような取扱いをする理由は、①純資産価額の計算において、評価会社が所有する土地の時価を算定する場合に、個人が所有する土地の評価を行うことを念頭においた路線価等によって評価替えすることが唯一の方法ではなく、適正な株式評価の見地からは、通常の取引価額によって評価すべきとも考えられること、②課税時期の直前に取得や新築をし、時価が明らかにわかっている土地や家屋についても、わざわざ路線価等によって評価替えを行うことは、時価の算定上、適切でないと考えられることによるものです(令和2年版財基通逐条解説682~683頁)。

 

 

 

(2)「取得」の意義

 

上記(1)における「取得」には、評価会社が土地や家屋を交換、買換え、現物出資、合併等により取得する場合が含まれます(令和2年版財基通逐条解説683頁)。合併や会社分割等の組織再編行為により評価会社が土地や家屋を取得した場合についても、(1)の「取得」に含まれるので注意が必要です。

 

 

 

(3)土地や家屋を課税時期前3年以内に取得したかどうかの判定時期

 

純資産価額の評価は、課税時期現在における評価会社の資産及び負債に基づき計算することが原則ですが、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債の金額について著しく増減がないと認められる場合には、直前期末の資産及び負債を基として評価することが認められています(「取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等」12頁)。

 

この取扱いは、課税時期における仮決算を組むのが煩雑であるため、課税上弊害がない範囲で、直前期末の資産等を課税時期現在の資産等に置き換えることを認めたものであり、直前期末を課税時期とみなすものではありません。

 

したがって、評価会社の所有する土地及び家屋が3年以内に取得したものかどうかは、直前期末の資産等を基に評価する場合であっても、課税時期から遡って判定します(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」224~225頁)。

 

 

 

(4)家屋とその敷地を取得後に家屋を賃貸した場合

 

評価会社が課税時期前3年以内に取得した家屋と敷地を所有している場合において、その家屋を取得後に自用から賃貸に利用区分を変更しているときは、その家屋と敷地の評価をどのように行うかが問題となります。上記の場合には、課税時期において家屋を賃貸していることから、家屋とその敷地を貸家及び貸家建付地としての通常の取引価額に相当する金額により評価することになります。

 

この場合、取得時の利用区分(自用家屋、自用地)と課税時期の利用区分(貸家、貸家建付地)が異なることから、前述(1)(注)のように取得価額そのものを評価額とすることはできません。そこで実務上、取得時の利用区分と課税時期の利用区分が異なり、その取得価額等から課税時期における通常の取引価額を算定することが困難である貸家及び貸家建付地の評価は、まず(1)によりその貸家と敷地が自用家屋と自用地であるとした場合の通常の取引価額を求め、次にその価額を財基通93の貸家の評価の定めと26の貸家建付地の評価の定めを適用して減額して計算することが認められています(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」226頁)。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/07/25)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】新築した住宅に転居後、転居時まで居住した住宅を譲渡した場合の3,000万円控除

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■個人が共有持分を分割した場合の所得税の取扱い

■被相続人から相続開始の年に贈与を受けた相続人の課税関係

 

 

【問】

Aさんは、平成28年に亡父から相続により取得した東京都中野区の区分所有マンションに居住していましたが、令和2年4月に杉並区に戸建て住宅を新築し、令和3年3月に転居しました。Aさんは令和4年6月に中野区のマンションを譲渡し、譲渡益が生じることから、租税特別措置法(措法)35条第1項の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(以下「3,000万円控除」)の適用を検討しています。

 

Aさんは、中野区のマンションを譲渡した時には杉並区に所有する住宅に居住していることから、同マンションが3,000万円控除の適用要件とされる「(自分が)主としてその居住の用に供している家屋」に該当せず、適用を受けられないのではないかと心配しています。この場合において、Aさんは3,000万円控除の適用が認められますか。

 

【回答】

中野区のマンションは、居住の用に供されなくなった令和3年3月の時点で「主としてその居住の用に供している家屋」であり、これを居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡しているので、他の要件を満たす限り3,000万円控除の適用が認められます。

 

【理由】

(1)3,000万円控除の概要

個人が自己の居住用の不動産を譲渡した場合は、譲渡所得の金額の計算上、最高3,000万円が控除できる特例が設けられています。これが3,000万円控除です。3,000万円控除の適用対象とされる不動産には、次のようなものがあります(租税特別措置法第35条第2項)。

 

①現に自己が居住している家屋

②居住用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した家屋

③①又は②の家屋とともに譲渡したその敷地

④①の家屋が災害により滅失した場合において、その家屋に住まなくなった日から3年目の年の12月31日までの間(原則)に譲渡したその敷地

 

 

(2)「主としてその居住の用に供している家屋」の判定時期

個人が居住の用に供している家屋を二以上所有する場合、3,000万円控除の適用対象となる上記(1)①または②の家屋は、その者が主として居住の用に供していると認められるーの家屋に限られます(措法施行令20条の3第2項)。

この場合、譲渡した家屋が「主として居住の用に供している家屋」に該当するかどうかの判定時点が問題になります。

 

Aさんの場合、中野区のマンションの譲渡時点で判定すると、譲渡時に主として居住の用に供している杉並区の住宅を有していることから、マンションはAさんが主として居住の用に供している家屋には該当せず、その譲渡について3,000万円控除は適用されません。一方、マンションを居住の用に供さなくなった時点で判定すると、マンションを居住の用に供さなくなった時にAさんは他に居住の用に供している家屋を有していないので、他の要件を満たす限り3,000万円控除の適用が認められることになります。

 

この「主としてその居住の用に供している家屋」の判定時点について、国税庁の通達では「居住の用に供されなくなった時」とされています(措法通達31の3−9(2)、35−6)。したがって、譲渡した家屋が「その者が主としてその居住の用に供していると認められるーの家屋」に該当すると判定された場合には、その譲渡の時において譲渡した者が他にその居住の用に供している家屋を有している場合であっても、その譲渡した家屋は、上記(1)①または②の家屋に該当します。

 

 

(3)本件へのあてはめ

上記(2)より中野区のマンションは「主としてその居住の用に供している家屋」に該当し、Aさんはこれを令和4年6月、すなわち居住の用に供されなくなった日(令和3年1月)から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡していることから、他の要件を満たす限り、3,000万円控除の適用が認められます。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/06/27)より転載

[解説ニュース]

低未利用地等を譲渡した場合の100万円特別控除の適用状況

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■滞納固定資産税の”相続”問題にご用心

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

 

 

1.創設初年度(令和2年)は2,501件


低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除(租税特別措置法35条の3、以下「100万円控除特例」という)の適用状況が、国税庁の最新資料(資産税事務処理状況表)で分かりました。

 

それによると、制度発足の令和2年7月から年末までの令和2年分の適用件数は、全国で2,501件でした。12ある国税局別の適用件数は次の通りです(申告者住所地ベース)。

 

 

100万円控除特例の適用に必要な土地所在地の市区町村の確認書交付実績(国土交通省令和3年7月公表)によると、確認書交付実績は全国で2,060件。この中の約2割は共有だったとされています。国税庁のデータは国土交通省のデータをほぼ裏付けるものとなっています。

 

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001469388.pdf

 

ただ、国土交通省の公表によると、都道府県1団体当たり平均で確認書は44件とのこと。また、公表されたグラフを見ると、例えば東京国税局管内の東京・神奈川、千葉、山梨の確認書交付実績に比べ、明かに申告件数の方が上回っており、申告者の地元の物件ではなく、他の道府県の土地を譲渡している状況が見えてきます。

 

 

2.特例の概要


100万円控除特例は、個人が所定の低未利用土地等を譲渡し、譲渡の後の当該低未利用土地等の利用について、市区町村長の確認がされたものの譲渡であって、その対価の額の合計が500万円以内である場合に、譲渡所得の計算上100万円を控除する制度です。

 

この場合の譲渡対価500万円以内の判定は、例えば、土地が共有であれば所有者ごとに判定します(措置法通達35の3-2)。たとえば、兄弟2人で持分2分の1ずつ共有の土地を900万円で譲渡した場合は、兄弟で500万円ずつの枠があるため、2人合わせて1000万円以内となり、100万円控除特例の要件をクリアしたことになります。

 

 

3.低未利用土地とは


低未利用地等とは、都市計画区域内にある土地基本法第13条第4項に規定する低未利用土地とされています。具体的には、居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、又はその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地や、その低未利用土地の上に存する権利のことです。

 

国土交通省が確認書を交付するにあたって出した文書「低未利用土地等の譲渡に係る所得税及び個人住民税の特例措置の適用に当たっての要件の確認について」によると、「低未利用土地とは、具体的には、空き地(一定の設備投資を行わずに利用がされている土地を含む。)及び空き家・空き店舗等の存する土地とする。

 

ただし、コインパーキングについては、一定の設備投資を行い、業務の用に供しているものではあるが、譲渡後に建物等を建ててより高度な利用をする意向が確認された場合は、従前の土地の利用の程度がその周辺の地域における同一の用途又はこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っており低未利用土地に該当すると考えて差し支えない。」とされています。低未利用土地等に該当するかどうかは、これで判断するのがよさそうです。

 

 

4.その他の要件等


ただし、親族等所定の特別関係者への譲渡ではないこと、譲渡の前3年間に譲渡した土地を分筆して100万円控除特例の適用を受けている等所定の譲渡所得課税の特例を受けていないことが適用の要件です。

 

手続きは、確定申告書に計算明細書、譲渡した土地が低未利用土地等であること及びその利用について市区町村長が確認した確認書、その土地が分筆等され同特例の適用を受けていないこと等がわかる書類を付けて申告します。

 

適用期限は2022年12月31日まで。もっとも「空地・空き家」の増加を抑制する制度創設趣旨からすると、制度の適用期限延長も考えられます。しかし利用していない不動産に係る固定資産税等の固定費を削減し、保有財産のリストラをするには、活用しがいのある特例になっているので、チャンスがあるうちに検討したいところです。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/06/13)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】相続開始直前に被相続人が老人ホームに入所していた場合の小規模宅地等の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■被相続人から相続開始の年に贈与を受けた相続人の課税関係

■生前贈与がある場合の相続税申告の留意点

 

【問】

甲さんは令和4年5月に死亡しました。甲さんの相続人は子のAさん1人であり、Aさんは甲さんの遺産を全て相続しています。甲さんは平成30年に要介護認定を受けた後、自宅を離れて介護付き老人ホームに入所し、相続開始まで退所せずにそこで暮らしていました。甲さんの自宅はしばらく空き家となっていましたが、Aさんが令和元年に甲さんの旧自宅に転居し、甲さんの相続開始まで居住していました。またAさんは、甲さんが老人ホームに入所する直前において甲さんと生計を別にしていました。
上記の場合において、甲さんに係る相続税の計算上、Aさんは租税特別措置法(措法)69条の4の特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下「本特例」)の適用を受けることができますか。

 

【結論】

甲さんの自宅だった建物(旧自宅)は、甲さんが老人ホームに入所後、別生計のAさんの居住の用に供されていることから、その敷地は相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地に該当せず、本特例の適用を受けることができません。

 

【理由】

(1)本特例の概要

個人が相続又は遺贈により、相続開始の直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。)を取得する場合、一定の要件の下で、その宅地等のうち限度面積(330㎡)までの部分について相続税の課税価格に算入すべき価額を80%減額できる制度をいいます(措法69条の4第1項)。

(2)被相続人の居住の用に供されていたかどうかの判定の原則

本特例の対象となる「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」の判定は、被相続人が、その宅地等の上に存する建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより行います。

 

具体的には、被相続人の日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造や設備の状況、生活の拠点となる他の建物の有無その他の事実を総合的に考えて、居住の用に使用されていたかどうかを判定します(措法69条の4第1項、第3項2号、国税庁HP「質疑応答事例」)。

(3)被相続人が老人ホームに入所したことにより自宅が空き家であったときに、その敷地について本特例の適用が認められる場合

被相続人が居住していた建物を離れて老人ホームに入所し、一度も退所せずに死亡した場合は、その建物の敷地を特定居住用宅地として本特例の適用を受けられるかどうかが問題となります。被相続人が居住していた建物を離れて老人ホームに入所したような場合は、一般的にはそれに伴い被相続人の生活の拠点も老人ホームへ移転したものと考えられます。

 

しかし、被相続人が老人ホームに入所したことにより、相続開始の直前においてそれまで居住していた建物を離れていた場合であっても、次の①と②の要件を満たすときには、被相続人が居住していた建物の敷地は、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地に該当するものとして、相続税の計算上、本特例を適用することが認められます。

 

①介護保険法に規定する要介護認定又は要支援認定を受けていた等の被相続人が、有料老人ホーム等の施設又は住居に入居又は入所していたこと(措法施行令40条の2第2項)。

 

②被相続人の居住の用に供されなくなった後に、あらたにその宅地等を次の用途に供していないこと(同条第3項)。

イ.事業(貸付けを含む。)の用
ロ.【被相続人又は老人ホームへ入所する直前において同一生計であり、かつ、被相続人の自宅に引き続き居住している親族】以外の者の居住の用

 

(4)本件へのあてはめ

甲さんの旧自宅は、相続開始の直前においてAさんが居住しており、Aさんは甲さんの老人ホーム入所直前において甲さんと別生計であったことから、上記(3)②の要件に該当しません。よって(3)の場合には該当せず、本特例の適用を受けることができません。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/05/30)より転載

[解説ニュース]

リストラで借換えた賃貸不動産の借入金の利子が必要経費になる範囲

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■不動産所得の計算で争いになった最近の事例

■借地人の建物を地主が取壊した際の費用をめぐる税金トラブル

 

 

1. 借入金の借換え後に相続


賃貸不動産経営のリストラに伴って、不動産の一部
売却と借入金圧縮を経て事業を継いだ相続人が、借入金利子の必要経費算入をめぐって、税務署とトラブルになった事案があります(千葉地裁令和2年6月30日判決・棄却・完結)。

 

判決によると、Xさんは平成元年に16億5千万円を借入して、SRC造7階建ての建物を新築し、その後賃貸用建物設備資金と運転資金、その他設備資金併せて1億5千万円を上乗せしました。

 

しかし平成20年になって、事業をリストラするため、Xさんの息子YさんとYさん自身が運営する会社(Y社)に賃貸不動産の持ち分4分の3を譲渡するとともに、譲渡資金と借換えの借入金で、元の借入金を全額返済し、借入金総額を約6億2,500万円に圧縮しました。その後、Xさんが亡くなり、Yさんが残りの賃貸不動産の持ち分と借入金残高約5億3千万円を相続し、事業を承継しました。

 

 

 

 

 

 

そこでYさんは、不動産所得の計算上、借換えした金融機関に支払った利子を全額必要経費に算入して申告したところ、税務署が支払利子の一部を必要経費に認めないとして否認しました。

税務署によると、Xさんが生前リストラでYさんやY社に建物の持ち分4分の3を売っていたから、それに対応する借入金の借換部分に相当する金額の利子は必要経費と認めるわけにはいかないというのです。

 

Yさんは最終的に借入金利子の全額を必要経費に認めてもらうため、裁判所に訴えました。

 

税務署は、借入金約10億4,431万円のうち、一括返済直前の建物の取得に係る2つの借入金残高の4分の1の金額とXさん(母)の不動産貸付業務の借入金の残高の合計額の占める割合=業務関連割合29.67%として、この割合を支払利子に乗じた金額に限り必要経費になるとしています。

 

2. 争点と判断


争点は「不動産所得の必要経費に算入すべき借換借入金に係る支払い利子は、業務関連割合29.67%を乗じた金額に限られるか」です。

裁判所は、まず、不動産所得の計算上必要経費に算入すべき金額について所得税法37条1項で「その年分の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他不動産所得を生ずべき業務について生じた費用の額」と規定されていることを確認。

 

次に、借入金利子の必要経費該当性について、「借入金が不動産所得を生ずべき業務についての費用として当該業務との関連性が認められる場合、その借入金についてある年中に支払われた借入金利子は不動産所得を生ずべき業務についての費用に充てる資金の融通を受けていることについてその年中に支出された対価であるから、その年における不動産所得を生ずべき業務について生じた費用として当該業務との関連性が認められ、一般対応(期間対応)に必要経費に該当するというべき」と説示。

 

そして借入金の位置づけについて「借入金が不動産所得を生ずべき業務についての費用である場合とは、(中略)借入金が不動産所得を生ずべき業務についての費用に充てられるものである場合をいうと解される」としました。

 

具体的には税務署や国税不服審判所で業務関連があるとされた借入金①②の4分の1、③④(ここまで業務関連割合29,67%)このほか借換時に追加された母親の業務の運転資金の借入金192万円余りも業務関連性を認め、業務関連割合を29.88%と認定しました。

 

しかしこの業務関連割合に基づいて計算し直しても更正時の税額を上回ったため、納税者の請求を棄却しています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/04/27)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】相続不動産に信託契約を締結し、信託受益権として譲渡した場合の取得費加算の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

■地価動向の曲がり角:住宅譲渡損をカバーする特例について再確認

 

【問】

Aさんは、令和2年1月に兄から相続により賃貸用建物とその敷地(以下「本件不動産」)の全部を取得し、同10月にその相続に係る相続税について申告書の提出と納税を行いました。

 

Aさんは高齢で、自ら本件不動産の管理運用を行うことが難しいため、令和3年1月に㈱Xとの間で、本件不動産を賃貸用として㈱Xに管理運用させることを目的として、委託者兼受益者をAさん、受託者を㈱X、本件不動産を信託財産とし、建物の維持管理、家賃の管理、賃借人の募集等の不動産賃貸に係る業務を委託する信託契約(以下「本件信託」)を締結しました。

 

その後Aさんは、令和4年4月に本件信託に係る信託受益権を㈱Yに譲渡(以下「本件譲渡」)しています。
この場合、Aさんは、本件譲渡について租税特別措置法(措法)第39条の「相続税額の取得費加算の特例」(以下「本件特例」)の適用が認められますか。

 

【結論】

本件特例の適用が認められるものと考えます。

 

【理由】

(1)信託とは

「信託」については、信託法第2条第1項に定義規定が定められています。関連する他の規定を併せて同項が規定する信託の意義をわかりやすく言えば、信託とは不動産などの資産を所有する人が「委託者」となり、信託契約等の信託行為により、その信頼できる人(「受託者」)にそれらの資産を移転し(その移された資産を「信託財産」といいます。)、受託者が、信託行為で定めれたー定の目的に従って、同じく信託行為で定められた「受益者」のために、信託財産の管理や処分等を行うしくみをいいます。

 

 

(2)本件特例とは

相続又は遺贈により資産を取得し、その相続等につき相続税がある個人が、その相続等により取得した資産で、その相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入されたものを、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限(相続開始のあったことを知った日の翌日から10ヶ月以内。

 

以下「相続税の申告期限」という。)の翌日以後3年以内に譲渡した場合、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に、その者の相続税のうち一定額が加算されます(措法第39条)。

 

本件特例の適用を受けることにより、相続税のうち取得費に加算された金額だけ譲渡所得の金額が少なくなり、結果として課税される譲渡所得の金額が小さくなります。

 

 

(3)本件特例の適用が認められると考える理由

本件特例の適用対象となる譲渡とは、(2)のとおり相続等により資産を取得した個人で、その相続等につき相続税額のあるものが、一定の期間内にその相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産について行った譲渡です。

 

しかし、本件譲渡は相続により取得した資産(本件不動産)の譲渡ではなく、信託受益権の譲渡であることから、本件特例の適用があるのか疑問が生じるところです。

 

この点について所得税法第13条第1項では、信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は、集団投資信託等の一部の信託を除いて、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなす旨を規定しており、所得税基本通達13−6は、同項に規定する受益者が受益権の譲渡を行った場合には、その権利の目的となっている信託財産に属する資産及び負債が譲渡されたこととする旨を定めています。

 

さらに措法通達31・32共-1の3は、信託財産に属する資産が分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産である場合における当該権利の譲渡による所得は、原則として分離課税とされる譲渡所得となり、措法第31条又は第32条の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する旨を定めています。

 

以上により、Aさんは本件譲渡につき本件信託の信託財産である本件不動産を譲渡したものとなります。本件不動産はAさんが兄から相続により取得した資産で、兄の相続に係る相続税の課税価格に算入されており、Aさんは兄の相続税を納付後、本件不動産を相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡していることから、その譲渡所得の金額の計算上、本件特例の適用が認められるものと考えます(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」213~215頁)。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/04/11)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】対象会社の代表者経験のない人から株式贈与を受けた場合の贈与税の特例措置の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■【Q&A】贈与を受けた金銭を全て敷地の対価に充てた場合の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税の適用

■【Q&A】2回以上にわたって取得した同一銘柄の株式の取得費の計算

 

【問】

㈱Xは発行済株式(すべて議決権あり)の80%を乙(甲の妻)、20%を同社代表取締役の丙(甲の長男)が保有していました。乙はX社の株主ですが、同社の取締役を務めたことがありません。乙は、2012年に死亡した甲(死亡当時X社代表取締役でその株式を全て保有)から、相続税の配偶者の税額軽減の適用を受けるためにX社の発行済株式の80%を相続しています。

 

後継者である丙は、甲からX社の発行済株式の20%を相続しており、2012年以降、同社の代表取締役です。乙と丙は、甲から相続により取得したX社株式について、非上場株式等に係る相続税の納税猶予及び免除(租税特別措置法(措法)70条の7の2)の適用を受けていません。

 

乙は、2022年に保有するX社株式を全て丙に贈与しました。この場合、乙からの贈与により取得したX社株式について、丙は非上場株式等に係る贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70条の7の5・以下「贈与税の特例措置」)の適用を受けることができますか。なおX社は、贈与税の特例措置の適用対象とされる特例認定贈与承継会社(以下「対象会社」)に該当します。

 

【結論】

X社株式を贈与した乙は、後述の解説の通り「特例贈与者」に該当しないことから、その贈与を受けた丙は、贈与税の特例措置の適用を受けることができません。

 

【解説】

贈与税の特例措置の適用を受けるためには、その非上場株式の贈与をした者が「特例贈与者」に該当する必要があります(措法70条の7の5第1項)。特例贈与者とは、措法施行令(措令)40条の8の5第1項(以下「政令」)第1号または第2号の場合の区分に応じ、それぞれに定める者をいいます。

 

この政令において、第1号は「第2号に掲げる場合以外の場合」と定められているので、まず、乙から丙に対するX社株式の贈与が、「政令第2号に掲げる場合」に該当するかどうかを検討します。

 

乙によるX社株式の贈与が「政令第2号に掲げる場合」に該当するのは、その贈与の直前において次のイ、ロ又はハのいずれかの者がいる場合です(措令40条の8の5第1項2号)。

 

イ.対象会社・X社の株式について、既に贈与税の特例措置、非上場株式等に係る相続税の納税猶予及び免除の特例(措法70条の7の6。以下「相続税の特例措置」)又は非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除の特例(同70条の7の8)の適用を受けている者

 

ロ.その贈与の時前に、政令第1号に定める者(同号の場合で、対象会社・X社の代表権を有していたなど一定の要件を満たす者をいう。)から、贈与税の特例措置の適用に係る贈与によりX社株式を取得している者(イに掲げる者を除く。)

 

ハ.その相続の開始前に特例認定承継会社(相続税の特例措置の対象会社をいう。)の代表権を有していた者から、相続税の特例措置に係る相続または遺贈により対象会社・X社の会社の株式を取得している者(イに掲げる者を除く)。

 

ご質問の場合、乙から丙へのX社株式の贈与の直前において、X社株式につき贈与税の特例措置等の適用を受けている者がいないので、イの要件を満たすことができません。

 

この贈与の時前にX社の代表権を有していた者から、贈与税の特例措置の適用に係る贈与によりX社株式を取得している者がいない(乙から丙へのX社株式の贈与は、乙がX社の代表権を有していたことがないので、「政令第1号に定める者」からの贈与には該当しません。)ので、ロの要件を満たすこともできません。

 

さらに相続税の特例措置に係る相続または遺贈によりX社株式を取得している者もいないので、ハの要件を満たすこともできません。以上により、イ~ハに該当する者がいないので、乙の贈与は「政令第2号に掲げる場合」には該当しません。

 

上記より乙の贈与は、「政令第1号の場合」に該当することになりますが、政令第1号の場合、乙が対象会社・X社の代表権を有していたことが特例贈与者の要件とされ、乙は代表権を有していたことがないので、特例贈与者には該当しません。このため、丙は贈与税の特例措置の適用を受けることができません。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/03/28)より転載

[解説ニュース]

利用価値が著しく低下している宅地(忌み施設近接)評価の現在

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

■譲渡所得税の最近のトラブル事例集

 

 

1、土地評価の10%減が適用される場合


土地の相続税評価の取扱いで認められている「10%評価減」は、付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下している土地の部分に適用できるものとされています。国税庁のホームページでは例示として次のように記載があります。

 

(1)道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(2)地盤に甚だしい凹凸のある宅地
(3)震動の甚だしい宅地
(4)(1)から(3)までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

 

ただし、こうしたマイナス要因が路線価又は固定資産評価額又は倍率に反映されている場合には、重ねて減額が認められることはありません。

 

 

2、最近の事例から


最近、相続税評価の対象となった土地の近隣にお墓があったケースで、上記の10%評価減の適用の是非が問われた事例がありました(国税不服審判所令和3年8月30日裁決)。取引金額への具体的な影響が細かく問われるため、なかなか適用を認めてもらえないケースが少なくないようです。

 

ここでは、上記の10%評価減の適用を巡る争点に絞ってお伝えします。問題となった土地は、間口が約24m、奥行きが約52mの長方形状の土地で、東側に大きな通りがあるほか、南側に幅員2.5mの里道を隔てて、約600㎡の墓地があったというものです。

 

この土地は相続の開始時点で、駐車場と賃貸住宅の敷地として利用されていました。賃貸住宅は全12戸のうち3戸空室でした。相続人(納税者)は、こうした事情を踏まえ上記10%評価減の適用があるものとして相続税の減額を求める「更正の請求」を経て審査請求に及びました。

 

 

3、納税者の主張


納税者の主な主張は次の通りです。

 

(1)問題の土地の目前に墓地がまとまって存在しているため、心理的嫌悪感等により、取引金額に影響を受けることは明らか。
(2)建物は、本件相続開始当時、その空室率は25%であった。予定している賃料収入の25%が得られない状況が取引金額に影響を及ぼさないとはいえない。

 

 

4、審判所の判断


審判所は、まず、納税者が更正の請求で減額を求める場合の立証責任について「一旦申告書を提出した以上、その申告に係る財産の評価に誤りがあることは、最終的に納税義務者の責任において明らかにすべきもの」として、土地の取引金額に影響を及ぼす事情の立証責任が納税者側にあることを示しました。

 

その上で審判所は「忌み等を理由とする減額評価が認められるためには、忌み施設が存すること等の事情による当該宅地の取引金額への影響が、当該宅地の減額評価を正当化する程度に具体的なもので(中略)あることを要する」と判断基準を提示、次のような事実関係を追加的に確認しました。

 

(1)墓地は明治時代から村民の墓地として使用。
(2)問題の土地の固定資産評価において、固定資産評価基準にある「所要の補正」として墓が近接していることによる減額はされていない。納税者は固定資産評価に対する審査申出をしていない。

 

審判所は検討を経て「墓地の存在を理由に売買契約の締結に至らなかった事例の有無や土地及び墓地の周辺に存する宅地の売出価格及び売買契約の成約価格の状況、土地及び墓地の周辺に存する賃貸物件の空室率やその推移といった事情は明らかではなく、墓地の存在が宅地の取引金額や賃貸状況に影響していることを具体的に認めるに足りる事情はうかがわれず、当審判所の調査によっても、墓地の存在が土地の取引金額に影響しているというべき具体的事情は認められない」としました。

審判所は最終的に「忌み施設である墓地の存在が隣接宅地の取引金額に影響する一般的抽象的可能性は否定できない」としながらも、10%減の補正は必要でないと判断しています。

 

納税者には、①忌み施設が近接し心理的嫌悪感があり、受忍限度を超えていること、②周辺の他の土地に比べ土地の価格が下がっていること、③路線価等にその事情が織り込まれていないことの立証が求められていました。最近の事例としてより精緻な立証が求められた事例だったといえそうです。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/03/15)より転載

[解説ニュース]

建物の取壊費等が土地の取得費になるかどうかで争った事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■貸家建築のため既存建物を取壊した場合の取壊し損失等に係る所得税の取扱い

■譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

 

 

1、不動産所得の必要経費それとも…


貸付の事業用などとして土地とともに買っていた建物を後で取壊した場合、建物の価額と取壊費用は、不動産所得の計算上、必要経費になる場合があります。それは、居住者の「事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて、取りこわし、除却、滅失その他の事由により生じた損失の金額はその者のその損失の生じた日の属する年分の(中略)必要経費に算入する」(所法51)との規定によるものです。

 

一方、建物の取得費と取壊費用が、土地の取得費になる場合もあります。それは、土地と建物等と共に取得した場合で、「その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるとき」です(所基通38-1)。
節税の観点からすると、土地の取得費になってしまうのは不利です。その点につき、税務署と争った裁判例が下記の通りです(山形地裁令和3年3月9日判決)。

 

 

2、事案の概要


事案の概要、経過は次の通りです。

 

(1)土地所有者Aさんは、平成27年4月頃、事業者B社から、Aさんの保有土地とともに「倉庫・店舗などの建っている隣地Cも一緒に借り受けたいと話を持ち掛けられました。

 

(2)ただ、隣地Cは他人の土地です。そこでこの際、B社はAさんに、隣地Ⅽも買うことを勧めました。B社は、隣地Cの倉庫などにつき自前で取壊す方針であったということです。

 

(3)Aさんは、同年7月、隣地Cを持つDさんを相手に買取交渉に入り、相場より高い9,000万円で話をまとめました。

 

(4)ところが隣地C土地の売買契約の決済日である8月5日以前に、B社が土地を借り受ける話が壊れてしまいました。

 

(5)Aさんは、仕方なく賃借人の募集を開始しました。ただし、倉庫・店舗の建物は、20年近くテナント入居がなく、屋根や壁の修繕が必要だったため、募集広告には「大幅な修繕が必要」と記載していました。

 

(6)同年11月にE社から借受の申し込みがあり、E社の要望で建物を取り壊すことにしました。

 

(7)Aさんは、平成27年・28年分の不動産所得の計算上、隣地Cの上にあった建物の取得費と取壊費用を必要経費として申告しました。

 

(8)これに対し税務署が上記の必要経費を否認しました。

 

 

 

3、裁判所の判断


裁判は、上記以外の争点もありますが、ここでは、建物の取得費・取壊費用が土地の取得費になるかどうかに絞って述べます。

 

裁判所は、まず、概ね1年以内に取壊した場合の取扱を示した通達(所基通38-1)に関し、「当初から建物を取り壊し、土地を利用する目的であることが明らかか否かについては、土地の取得目的、取得金額、土地の更地としての相場価格、建物の建築年数、現況、老朽度や利用価値、建物の取壊時期や取壊目的等の諸事情を総合し、客観的に判断するのが相当である。

 

また、本件通達は、土地及び建物の所有権を取得した場合と規定しているから、所有権を取得した日を基準として判断するのが相当である」と判断基準を示しました。

 

その上で裁判所は、Aさんが当初の計画とは異なる計画で結局建物を取り壊すことになった場合でも「土地及び建物の取得時に土地のみの価額に着目していたと認められる場合には本件通達が適用される」と考え方を示しました。

 

これは、Aさんが通達(所基通38-1)について「取得の際に計画されていた取壊しが実現した場合に限られるのではないか」との主張に反論したものです。

 

裁判所は事実関係を整理し、最終的に「原告(A)はB社が出店して本件土地のみを利用するために、これを貸し出す目的で、又は、仮にB社が出店しない場合であっても、専ら本件土地を自己の事業に利用する目的で、本件土地を取得しているといえ、また、本件建物は、その建築年数や現状、老朽度からしてそのまま利用できる物件ではなく、利用価値が極めて乏しいものであり、さらに、原告(A)は、本件建物の所有権を取得した後4か月しか経過していない時点で,本件建物を自己資金で取り壊しているのであって、(中略)原告は、専ら本件土地の価値に着目し、本件土地建物を取得したと認められる」として、税務署の処分を支持しています。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/03/01)より転載

[M&A動向レポート](2022年2月)

■IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A件数は過去最多も金額は3番目に

 

IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A発表件数は20件で、1月としては2013年以降の10年間では、2020年(13件)を上回り過去最多となった。IT人材の不足や企業の合従連衡などを背景に、M&A市場が活発だった。

 

 

取引金額は137億7300万円で、こちらは1月としては2013年以降の10年間では、2019年(1229億2500万円)、2020年(439億1100万円)に次ぐ3番目となった。100億円を超える案件がなく、金額を公表した10件中8件が10億円未満だったため、件数ほどには金額が伸びなかった。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

金額トップはGMOインターネットの92億円

 

取引金額のトップは、ネット事業を手がけるGMOインターネットが、サイバーセキュリティー事業のイエラエセキュリティ(東京都渋谷区)の株式50%を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は92億6200万円。既存の電子認証、印鑑事業に加え、新たにサイバーセキュリティー事業に本格参入するのが狙い。

 

金額の2番目は、ネット事業のスカラが、システム開発のエッグ(鳥取県米子市)などグループ4社の全株式を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は10億600万円。グループの中核会社のエッグは、ふるさと納税制度に関する自治体側の基幹システムを初めて開発した企業で、導入自治体数は全国の3分の1にあたる約680に達するという。同社の子会社化で、地方創生、高齢者の健康といった社会課題を解決する取り組みを推進する。

 

金額の3番目は、電子書籍取り次ぎのメディアドゥが英現地法人を通じ、出版社向けWebサイト構築やEC(電子商取引)サービスの提供を手がける英国Supadü Limited(ロンドン)の全株式を取得し子会社化した案件で、取得価格は8億7400万円。出版、コンテンツ関連の海外ビジネスを強化するのが狙い。

 

このほかに8億円台、6億円台、3億円台がそれぞれ1件ずつと、2億円台、1億円台がそれぞれ2件ずつあった。金額非公表などは10件だった。

 

 

 

【IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A】

 

 

 

 

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2022年2月)

■1月M&A、前年比10件増の64件 過去2番目の高水準

 

2022年1月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比10件増の64件だった。1月として過去10年で2020年(74件)に次ぐ2番目の高水準。前年1月は新型コロナウイルス感染拡大を受けた2回目の緊急事態宣言と重なり、20件の大幅減となったが、2022年は好調な出足となった。一方、取引金額は2317億円(公表分を集計)で、前年(4374億円)のほぼ半分にとどまった。

 

 

上場企業の適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。
金額首位は日本製鉄が最大880億円を投じて、タイの電炉メーカー大手のGスチール、GJスチールの2社を子会社化する案件。これまで半製品を輸出して現地で加工していたが、今回の買収で東南アジアにおける一貫生産体制が整う。鉄スクラップを原料とする電炉は鉄鉱石から鉄を取り出す高炉に比べてCO2(二酸化炭素)の排出が抑えられ、脱炭素化を推し進める狙いもある。

 

金額2位は通信工事大手のミライト・ホールディングス(HD)。西武ホールディングス傘下で西武鉄道の直系子会社の西武建設(東京都豊島区)の株式95%を620億円で取得し、子会社化する。西武HDは経営改革としてアセットライト(資産圧縮)な事業運営を推進中で、グループで保有するホテルも売却を進め、運営に特化する姿勢を明確にしている。
ドラッグストア業界は今年も年初からM&Aが活発化している。最大手のウエルシアホールディングスが関西を地盤に約190店舗を展開するコクミン(大阪市)を子会社化すると発表した(金額は未確定)。また、クスリのアオキホールディングスは生鮮品の取り扱い強化を目的に、岩手県の地場食品スーパーの吸収合併を決めた。買付代金が最大714億円に上る片倉工業のMBO(経営陣による買収)は1月上旬、不成立に終わった。投資ファンドが関与しない過去最大規模のMBOとして注目されていたが、予定数まで株式を取得できず、株式の非公開化を断念し、一転、上場を維持することになった。

 

 

 


①日本製鉄

タイの電炉メーカー大手のGスチールとGJスチールを子会社化 (880億円)

 

②ミライト・ホールディングス

西武ホールディングス傘下の西武建設(東京都豊島区)を子会社化(620億円)

 

③ミニストップ

コンビニ事業の韓国子会社をロッテに譲渡(304億円)

 

④愛三工業

デンソーからフューエルポンプモジュール事業を取得(190億円)

 

⑤GMOインターネット

サイバーセキュリティー事業のイエラエセキュリティ(東京都渋谷区)を子会社化(92.6億円)

 

⑥リンテック

米Spinnakerからラベル用粘着紙・粘着フィルム事業を取得(46.6億円)

 

⑦ワールドホールディングス

J.フロントリテイリング傘下で人材サービス事業のディンプル(大阪市)を子会社化(37.8億円)

 

⑧ソラスト

都内で認可保育所を運営する「こころケアプラン」(東京都千代田区)を子会社化(33.4億円)

 

⑨ワールド

子供服大手のナルミヤ・インターナショナルをTOBで子会社化(33億円)

 

⑩トランコム

シンガポール物流会社Starlink Resourcesなど2社を子会社化(11.4億円)

 

 

 

 

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[解説ニュース]

【Q&A】譲渡所得の計算上、概算取得費で申告後に実際の取得費が判明した場合の更正の請求

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

【問】

Bさんは、土地の譲渡に係る譲渡所得の申告において、確定申告期限までにその取得価額を明らかにする契約書が見つからなかったため、やむなく下記2(2)の概算取得費により所得税の申告をしました。その所得税の確定申告期限後に、譲渡した土地の取得時の契約書が見つかり、その契約書に記載の買入金額が概算取得費よりも大きいので、譲渡所得の金額の計算をやり直すため更正の請求をしようと考えているのですが、認められるでしょうか。

 

【結論】

当初の申告において概算取得費により譲渡所得の金額の計算を行い、その後、取得時の契約書の発見により真の控除すべき取得費が分かった時点で、その真の取得費を主張して更正の請求を行うことは認められると考えます。

 

【解説】

(1)取得費の原則

土地に係る譲渡所得の金額上控除する取得費は、土地の取得に要した金額(例えば土地の取得にかかる買入代金や宅地建物取引業者に支払った仲介手数料等)及び改良費(例えば土盛り、地ならし等)の合計額とされます(所得税法38条第1項)。

 

(2)概算取得費の特例

昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、上記(1)の金額よりもその譲渡に係る収入金額の5%相当額の方が多い場合には、その譲渡に係る収入金額の5%相当額をもって、土地の取得費とすることができます(租税特別措置法31条の4)。

 

なお、昭和28年1月1日以後に取得した土地について、取得費がわからない場合や、実際の取得費が収入金額の5%相当額を下回る場合については、その取得費は譲渡に係る収入金額の5%相当額とすることができます(租税特別措置法通達31の4-1)。

(3)所得税の更正の請求とは

所得税の申告書を提出した人が、その申告書に記載した課税標準等や税額等の計算について、所得税法等の規定に従っていなかったこと、または計算に誤りがあったことにより、所得税を納めすぎたときは、法定申告期限(所得税の場合、原則としてその年の翌年3月15日の確定申告期限)から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等または所得税額等につき減額更正の請求をすることができます(国税通則法23条第1項)。

 

(4)更正の請求が認められると考える理由

国税通則法第23条第1項第1号は、更正をすべき旨の請求をすることができる場合として、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときを定めています。この点について、ご質問でのBさんは租税特別措置法第31条の4第1項等の規定等に基づき取得費を計算していることから、上記(3)に規定する「計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当せず、更正の請求ができないのではないか、という疑問が生じるところです。

 

しかし租税特別措置法31条の4第1項は、その本文で「取得費は、(中略)当該収入金額の100分の5に相当する金額とする」と規定しているものの、そのただし書において、「当該金額(=概算取得費)がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする」とし、その1号において、「その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額」としています。

 

つまり、概算取得費は、譲渡した土地等の取得に要した金額に満たないことが証明されていない場合に適用するものであり、Bさんの場合はそのことが証明されています。よって、概算取得費ではなく、土地等の取得に要した金額である買入価額により取得費を計算することが正しい処理となります。
したがって、Bさんは、当初申告で行った譲渡所得の金額(取得費)の計算の誤りにより所得税を納めすぎたものとして、国税通則法第23条第1項の規定により、更生の請求を行うことができると考えます(参考:東京国税局「令和3年8月資産税審理研修資料」211頁)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/02/14)より転載

[M&A動向レポート]

■2021年TOB、3年連続で増加

 

 

2021年のTOB(株式公開買い付け)件数は前年比10件増の70件と、3年連続で増加した。リーマン・ショック後では2009年の79件、2008年の78件に次いで3番目に多かった。新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、先行き不透明な中でTOBによる経営規模の拡大や新規事業への進出を狙う企業が増加。日銀の金融緩和などを背景に企業がTOBの費用を調達しやすい環境が続き、件数増を後押しした。

 

一方、取引金額は同73.3%減の1兆7100億円にとどまった。これは前年に3兆円を超えるNTTのNTTドコモに対する超大型TOBがあった反動減。前年は10件あった1000億円を超える大型TOBが3件と少なかったこともあり、金額は伸びなかった。敵対的TOBは過去最高だった前年と同じ5件となっている。

 

MBO(経営陣による企業買収)は前年比8件増の19件と、3年連続の増加となった。10件を超えたのは2年連続で、2008年以降では過去最高の2011年(21件)に次ぐ高水準。経営陣が株主の意向や短期的な株価の動向に左右されない成長戦略を採用したり、TOBによる敵対的買収を回避したりするため、MBOによる上場廃止を目指す動きが出ている。

 

TOBの総プレミアム平均は同3.46ポイント減の37.31%と、2年連続の減少に終わった。一方、ポジティブプレミアム平均は同3.39ポイント増の46.08%と4年連続で増加している。最もプレミアムが高かったのはTCSホールディングス(旧東京コンピュータサービス、東京都中央区)が11月15日に露出計の大手メーカーであるセコニックの非公開化を目的にTOBを実施すると発表した228.19%だった。

 

 

 

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[解説ニュース]

区分所有建物の敷地への小規模宅地特例の適用(生計一が問われる場合)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■区分所有建物の敷地への小規模宅地特例の適用巡り争いになった裁決事例

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

 

1、はじめに


小規模宅地等の特例を適用する場面で、被相続人と宅地を相続する親族が生計一であることが問われる場合があります。生計一なら、被相続人が「事業の用」または「居住の用」に供していた宅地等のみならず、その親族が「事業の用」または「居住の用」に供していた宅地等も、所定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例の適用が認められるからです。しかも特例の対象となった宅地の相続税課税対象額の減額割合は最大80%、その面積の330㎡(「事業の用」に供していた場合には400㎡)までが特例の対象です(措法69の4)。

 

したがって親の宅地等を子が居住の用等に供している場合には、生計一であると認められるかどうかが適法な相続税の節税に大きな影響があるといえます。

 

今回は、本連載の11月22日号の事例を基に、被相続人と子である相続人が生計一であるかどうかが問われた争点について整理します。

 

2、事例の概要


事例は、父親が建てた1棟の区分所有建物で、1階に子供夫婦が住み、2階にその親夫婦が住んでいたケースにおいて、父親が亡くなって開始した相続で、子が相続した建物1階部分の敷地権につき、「小規模宅地等の特例」の適用があるかどうかが問われたものでした(国税不服審判所(以下、審判所といいます)、令和3年6月21日)。

 

3、建物と敷地


裁決書によると、建物の状況は次のとおりです。

 

ア、建物は被相続人が建てた区分所有建物である旨の登記をされた建物
イ、1階と2階でそれぞれ玄関、リビング、寝室、台所、洗面所、風呂場、トイレがあり、建物の内部では1階と2階で行き来することができず、外階段によって行き来する構造。
ウ、建物の新築から、被相続人の死亡に至るまで、建物1階部分には子らとその子(被相続人の孫)が居住。
エ、建物2階部分には被相続人とその妻が居住していた。
オ、建物の電気、ガス、水道のメーターは建物1階部分と建物2階部分とでそれぞれ分かれており、被相続人が死亡するまでの間、建物1階部分については請求人である子が契約して使用料を支払っており、建物2階部分については被相続人が契約して使用料を支払っていた。
カ、相続開始後、母親(2階に居住)と子(1階に居住)は、遺言通りに相続し、それぞれ居住する敷地権について小規模宅地等の特例を適用して申告。
ところが税務署から子の相続した敷地権部分について特例適用を否認され、最終的に審判所での争いとなったものです。

 

4、審判所の認定・判断


審判所は、この特例について「被相続人の居住の用に供されていた宅地等のほかに、当該被相続人と生計をーにしていた当該被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等についても、その適用の対象としている」と確認。

 

そのうえで、審判所はこの場合の「生計」について、「暮らしを立てるための手立てであって、通常、日常生活の経済的側面を指すものと解すべきもの(中略)、一棟の建物において被相続人の居住の用に供されていた部分以外に居住していた親族が「生計」を一にしていたと認められるためには、親族が被相続人と日常生活の資を共通にしていたと認められることを要し、その判断は社会通念に照らして個々になされるところ、これが認められるためには、少なくとも、居住費、食費、光熱費その他日常の生活に係る費用の主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要するものと解するのが相当」との判断基準を示しました。

 

審判所は、事実として、被相続人とその妻の生活費は、被相続人の年金収入等で賄われていることを指摘し、「居住費、食費、光熱費 その他日常の生活に係る費用の主要な部分について独立した資によっていたものと認められるから、請求人ら(子)と日常生活の資を共通にしていた関係にあったと認めることはできない」と判断しています。

 

また、子である請求人が「共用部分の電気代・水道代及び単一の契約となっているケープルテレビやインターネットの料金を支払っていたことからも、本件被相続人と生計を一にしていた親族に該当する」と主張したことに対し、審判所は「共用部分の光熱費等の負担をしていたとしても、これは日常生活に係る費用の主要な部分の負担とまではいえない」として言い分を退けています。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/01/31)より転載

[M&A動向レポート](2021年)

■IT・ソフトウエア業界の2021年のM&A件数は4年連続で過去最多を更新 金額も過去最高に

 

2021年のIT・ソフトウエア業界のM&A発表件数は163件で、2012年以降の10年間では、4年連続で過去最多を更新し、2021年の全業種のM&A件数877件の20%近くに達した。取引金額も大きく膨らみ、2012年以降の10年間で最高だった2016年の1兆2200億円強を大きく上回る2兆2400億円ほどに達し、過去最高を更新した。IT人材の不足に加えて、企業の選択と集中の動きが強まったことが背景にある。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

金額トップは日立の1兆422億円

 

2021年のIT・ソフトウエア業界の取引金額のトップは、日立製作所が米IT企業のグローバルロジック(カリフォルニア州)を子会社化するのに投じた1兆422億円で、全業種でも取引金額のトップになった。

 

グローバルロジックは、顧客企業の競争力強化のためのソフトウエアの設計や開発などを手がけており、世界14カ国に約2万人の従業員を抱える。日立は同社の子会社化で、ITやエネルギー、鉄道、モビリティー(移動手段)、ヘルスケアなどの先進的な社会インフラのDXを世界規模で加速するという。

 

金額の2位はパナソニックが、サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダー(アリゾナ州)の子会社化に投じた7830億円で、こちらは全業種の4位に入った。

 

ブルーヨンダーは3000社を超える顧客基盤を持ち、AI(人工知能)やML(機械学習)をベースとしたサプライチェーンマネジメント(SCM)サービスを提供している。パナソニックは、ブルーヨンダーの子会社化で、顧客企業の生産性向上などに向けたSCMサービスを強化し、世界規模で事業拡大につなげる計画だ。

 

 

MBO3件が金額上位10位内に

 

株式の非公開化を目的にしたMBO(経営陣による買収)は、4件(1件は不成立、2020年のMBOは1件)あり、このうち3件が取引金額上位10位までに入った。

 

最も取引金額が高かったのは、マッチングアプリ運営のイグニスが米投資会社のベインキャピタルと組んで実施するTOB(株式公開買い付け)に投じた262億円。

 

イグニスが主力とするスマートフォン向けアプリの開発や運営を巡る競争環境は目まぐるしく変化するため、非公開化して、機動的で柔軟な意思決定を可能にすることにした。MBOは成立し、同社は6月に上場廃止になった。

 

 

 


①日立製作所

米IT企業のグローバルロジックを子会社化 (1兆422億円)

 

②パナソニック

サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダーを子会社化 (7830億円)

 

③ソニーグループ

米国子会社のゲーム部門「GSN Games」を米スコープリーに売却 (1100億円)

 

④野村総合研究所

DXサービス大手の米Core BTSを子会社化 (523億円)

 

⑤ブリヂストン

車両運行管理サービスの米アズーガ・ホールディングスを子会社化 (428億円)

 

⑥楽天グループ

通信ネットワーク用ソフトウエア企業の米アルティオスター・ネットワークスを子会社化 (400億円)

 

⑦電通グループ

ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスを子会社化 (326億円)

 

⑧イグニス

米ベインキャピタルと組みMBOで株式を非公開化 (262億円)

 

⑨AOI TYO Holdings

米カーライル・グループと組んでMBOで株式を非公開化 (213億円)

 

⑩[不成立]パイプドHD

MBOで株式を非公開化 (143億円)

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年12月)

■12月M&A74件、飯田グループが600億円買収

 

021年12月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比4件減の74件となり、2カ月連続で前年を下回った。前月(11月)比では3件減った。1~12月累計では877件と前年比28件の大幅増で、2年ぶりのプラスに転じるとともに、2008年のリーマン・ショック(870件)後の最多となった。

 

12月の取引金額は1416億円。100億円を超える大型案件が3件にとどまったことから、7月(488億円)に次ぐ低水準に。年間金額は8兆7121億円と前年を約2兆4500億円下回った。

 

上場企業に義務づけられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&Aについて、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

 

 

12月の金額首位は約600億円を投じて、ロシア最大級の林産企業を傘下に置く持ち株会社ロシア・フォレスト・プロダクツ(RFP、英領バージン諸島)を買収する飯田グループホールディングスの案件。株式譲渡と第三者割当増資引き受けで株式75%を取得する。木材の安定的な調達体制を確立し、戸建分譲住宅事業の競争力を高めるのが狙いだ。

 

飯田グループは戸建分譲住宅で約3割の国内販売シェアを持つ業界最大手で、年間に4万6000戸以上を供給する。RFPはロシア極東のハバロフスク地方に約400万ヘクタール(九州の1.08倍)の林区を持つ。

 

12月は金額非公表ながら、注目される売却案件が少なくなかった。その一つは東急不動産ホールディングスによる傘下の生活雑貨大手、東急ハンズ(東京都新宿区)の売却発表。売却先はホームセンター最大手のカインズ(埼玉県本庄市)。カインズは地方の大型店を主力とし、都市型店舗の東急ハンズとの補完性を見込んでいる。

 

オリックスはクラウド会計ソフト「弥生シリーズ」で知られる弥生(東京都千代田区)を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却することを決めた。売却額は2500億円程度とみられる。オリックスが投資事業の一環として弥生を買収したのは2014年。投資資金を回収するイグジット(出口)の段階と判断したようだ。

 

オリンパスは生物顕微鏡、工業用顕微鏡など祖業の「科学事業」の売却を検討すると発表した。科学事業の直近売上高は958億円とそれなりの規模。同社は内視鏡と治療機器を中心とする医療分野に経営資源を集中させる方針に基づき、2020年にはデジタルカメラなどの映像事業を手放した。

 

 


①飯田グループホールディングス

ロシア最大級の林業グループを傘下に置く持ち株会社Russia Forest Products(英領バージン諸島)を子会社化 (600億円)

 

②東和薬品

米カーライル・グループ傘下で健康食品・医薬品受託製造の三生医薬(静岡県富士市)を子会社化 (476億円)

 

③三井住友建設

海上・水上杭工事のシンガポールAntara Kohを子会社化 (76億円)

 

④トランスジェニック

検査・解析事業子会社のジェネティックラボ(札幌市)をEurofinsの傘下企業に譲渡 (32.1億円)

 

⑤アダストリア

外食のゼットンを第三者割当増資とTOBで子会社化 (28.7億円)

 

⑥ラクスル

ダンボール・梱包材の受発注サイト運営のダンボールワン(金沢市)を子会社化 (20億円)

 

⑦鴨川グランドホテル

MBOで株式を非公開化 (17億円)

 

⑧オウケイウェイヴ

音楽・映像制作のアップライツ(東京都港区)を子会社化 (9.9億円)

 

⑨ヨシムラ・フード・ホールディングス

ソフトふりかけ「梅の実ひじき」製造の十二堂(福岡県太宰府市)を子会社化 (7.5億円)

 

⑩フィードフォースグループ

ブランディング戦略策定などのフラクタ(東京都渋谷区)を子会社化 (6.1億円)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[解説ニュース]

【Q&A】被相続人から相続開始の年に贈与を受けた相続人の課税関係

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■相続税の債務控除の対象とされる債務の範囲

■遺産分割による配偶者居住権の設定と相続税の小規模宅地等の特例の適用

 

 

 

【問】

Aさん(35歳)の父親(享年70歳)は、令和3年12月に急死しました。父親の相続人はAさんと兄の2人です。Aさんは、起業に伴う開業資金として令和3年4月に父親から現金2,000万円の贈与を受けており、また父親の事業の後継者である兄がその事業に係る多額の債務を承継することから、父親の遺産については相続をしないつもりです。この場合において、Aさんに対する贈与税や相続税の取扱いはどのようになるのでしょうか。

 

なおAさんは父親から令和3年の現金2,000万円以外に贈与を受けておらず、令和3年中に父親以外の人から財産の贈与を受けたことはありません。またAさんの父親は、生前に遺言を作成していません。

 

 

【回答】

1.贈与年に贈与者が死亡した場合における、受贈者の税務の取扱い


財産の贈与をした人(贈与者)が、その贈与をした年に死亡した場合、贈与により財産を取得した人(受贈者)の税務は、受贈者が贈与者から相続または遺贈により財産を取得したかどうかにより、次の通りに取扱われます。

 

(1)受贈者が贈与者から相続または遺贈により財産を取得した場合

相続または遺贈により財産を取得した者が、相続の開始年にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得した場合、その財産の価額は相続税の課税価格に加算されます。この場合、相続税の課税価格に加算されるものの価額は贈与税の課税価格には算入されず、贈与税の申告は不要です(相続税法(相法)21条の2第4項)。

 

(2)受贈者が贈与者から相続または遺贈により財産を取得しなかった場合

相続の開始した年に被相続人から贈与により財産を取得した個人が、被相続人から相続または遺贈により財産を取得しなかった場合には、その贈与財産の価額は、その贈与があった年の受贈者の贈与税の課税価格に算入されるのが原則です(相法基本通達21の2-3(1))。

 

ただし、被相続人からの贈与につき相続時精算課税制度の適用を受ける場合、その贈与により取得した財産の価額は贈与税の課税価格に算入されるものの(相法21条の10)、贈与税の申告書の提出は不要とされます(相法28条第4項、相法基本通達21の2-3(2))。この場合、その贈与により取得した財産は、贈与者より相続により取得したものとみなされ、贈与財産の価額は相続税の課税価格に算入されます(相法21条の15第1項、21条の16第1項)。相続開始の年に被相続人から贈与を受けた財産について相続時精算課税制度の適用を受けるためには、贈与者(被相続人)に係る相続税の申告期限または受贈者に係る贈与税の申告期限のいずれか早い日(本問の場合、Aさんの令和3年分贈与税の申告期限の令和4年3月15日)までに、被相続人(=父親)の所轄税務署長に対し相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります(相法施行令5条第3項、第4項、相法基本通達21-9-2(1))。

 

2.結論


ご質問の場合、Aさんが父親から相続により財産を取得せず、かつ、令和3年中に父親から贈与を受けた現金2,000万円について、令和4年3月15日までに相続時精算課税選択届出書を提出して相続時精算課税制度の適用を受ける場合、前述1(2)より、その2,000万円が贈与税の課税価格に算入されますが、特別控除額2,000万円を控除することにより、Aさんの令和3年分の贈与税は生じません。一方、Aさんが父親から贈与を受けた現金2,000万円は相続税の対象となり、その現金の額と兄が相続する父親の相続財産の価額(債務控除後)との合計額が、遺産に係る基礎控除額以下であるときには、相続税も発生しません。

 

なお、上記の場合において、Aさんが令和4年3月15日までに相続時精算課税選択届出書を提出しないときは、相続時精算課税制度の適用を受けることができません。相続時精算課税制度の適用を受けず、かつ父親から相続により財産を取得しない場合は、前述1(2)前段より、父親から贈与を受けた現金2,000万円に贈与税が課税され、Aさんは贈与税額585万5,000円を納めることになりますので、注意が必要です。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/01/17)より転載