[解説ニュース]

贈与税の個人版事業承継税制の適用対象となる贈与者の要件

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

1.贈与税の個人版事業承継税制の概要


特定事業用資産(本連載2019年7月8号参照)を所有し、事業 不動産貸付業等を除く。を行っていた先代事業者として一定の者等(以下「贈与者」)から、後継者として一定の要件を満たす個人(本連載「特例事業受贈者」2019年9月6日号参照)が、令和10年12月31日までの贈与により、その事業に係る特定事業用資産の全部を取得した場合には、その特定事業用資産に係る贈与税について、担保提供その他一定の要件を満たすことによりその納税が猶予され、贈与者の死亡等により猶予されている贈与税の納付が免除されます(租税特別措置法(措法)70条の6の8第1項)。これが「贈与税の個人版事業承継税制」(以下「本特例」)です。

 

2.贈与者の主な要件


本特例の適用対象となる贈与者とは、次の(1)又は(2)のいずれに該当するかに応じ、それぞれに定める要件を満たす個人をいいます。

 

(1)贈与者が先代事業者の場合

次の①及び②の要件の全てを満たすことは必要です(措法施行令(措令)40条の7の8第1項1号)。

 

①その贈与の時において、所得税の税務署長にその事業を廃止した旨の届出書を提出していること、又は本特例に係る贈与税の申告書の提出期限までに、その事業を廃止した旨の届出書を提出する見込みであること。

 

②その事業について、その贈与の日を含む年、その前年及びその前々年の所得税の確定申告書を、青色申告書(措法25条の2第3項に規定する65万円の青色申告特別控除に係るものに限る。)により税務署長に提出していること。

 

(2)贈与者が先代事業者以外の場合

本特例の適用対象となる贈与者には、先代事業者と生計を一にする配偶者その他の親族等のうち一定の者が含まれます(措法70条の6の8第2項1号かっこ書)。

 

先代事業者の親族が本特例の適用対象となる贈与者に該当するためには、次の①及び②の要件の全てを満たすことが必要です(措令40条の7の8第1項2号)。

 

①(1)の贈与の直前において、(1)の先代事業者と生計を一にする親族であること(注1)。

②(1)の先代事業者の本特例の適用に係る贈与の時後に、その特定事業用資産(注2)の贈与をしていること。

③本特例の適用を受けようとする者が、その贈与の時前に相続又は遺贈により取得した、本特例の適用を受けようとする特定事業用資産に係る事業と同一の事業に係る他の資産について、相続税の個人版事業承継税制(措法70条の6の10)の適用を受けようとする場合、又は受けている場合は、その先代事業者である被相続人の相続の開始の時後に、その特定事業用資産の贈与(注3)をしていること。

 

 

(注1)本特例の適用を受けようとする者(受贈者)が、その贈与の時前に相続又は遺贈により取得した、その特定事業用資産に係る事業と同一の事業に係る他の資産について、相続税の個人版事業承継税制の適用を受けようとする場合、又は受けている場合には、「その先代事業者である被相続人の相続開始の直前において、その被相続人と生計を一にしていた親族であること。」が要件とされます。

 

(注2)先代事業者と生計をーにする親族が有する資産が特定事業用資産に該当するためには、その資産が先代経営者の一定の青色申告書に係る貸借対照表に計上されている必要があります(措法70条の6の8第2項1号かっこ書)。

 

(注3)③の贈与は、平成31(2019)年1月1日から令和10(2028)年12月31日までの間の贈与で、次の[1]又は[2]に掲げる日から1年を経過する日までの贈与に限ります(措法70条の6の8第1項かっこ書、措令40条の7の8第2項)。

 

[1]本特例の適用に係る贈与の日
[2]本特例の適用を受けようとする者が、本特例に係る贈与の時前に、相続等により取得した特定事業用資産に係る事業と同一の事業に係る他の資産について、相続税の個人版事業承継税制の適用を受けようとする場合、又は受けている場合には、最初の相続税の個人版事業承継税制の適用に係る相続開始の日

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/10/07)より転載

[初級者のための入門解説]

事業承継税制の手続きの流れ ~ゼロから学ぶ「事業承継 超入門」④~

 

事業承継の基本ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『事業承継 超入門』」シリーズです。

今回は、事業承継税制の手続きの流れについて解説していきます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

2代目への生前贈与

事業承継税制は相続と贈与の両方ともに利用できますが、通常は「計画できない相続」でなく「計画が立て易い贈与」で利用するのが一般的です。

 

そういうわけで、今回は「贈与ケース」の利用の流れ=利用の全体像について、解説いたします。

 

特例事業承継税制(以下、単に「事業承継税制」といいます)を適用する場合には、都道府県への特例承継計画(様式21)の提出が必要ですが、特例承認計画の提出期限は、令和5年3月31日までとなっております。特例承継計画は対象会社が認定経営革新等支援機関(認定を受けた税理士・公認会計士等)の指導・助言を受けて作成し、通常は贈与前に都道府県に提出します。しかし、令和5年3月31日までであれば、贈与・相続後、認定申請までの提出でも認められます。(参考:中小企業庁ホームページ)

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_tokurei_yoshiki.htm

 

次に、生前贈与の実行へと進みますが、通常はXDayである贈与日を先に決め、贈与者である経営者は贈与日前に代表取締役を退任し、受贈者である先代後継者は贈与日前に代表取締役に就任しておきます。贈与日前に代表取締役の交代がすでに行われていれば交代は直前である必要はありません。また、贈与者である先代経営者は代表取締役の地位を辞すればよく、取締役として会社に残り役員報酬を受領することは可能です。

 

代表取締役交代を行った後に、株式を後継者に対して生前贈与します。

 

端的に言えば、代表取締役の地位と株式を先代経営者から後継者にバトンタッチするイメージです。

 

また、事業承継税制は、複数の株式保有者(例えば、先代経営者の妻)から後継者に対して株式を無税で贈与することも可能です。この場合、先代経営者の贈与に引き続いて贈与を実行します。このタイミングはとても重要で、先代経営者の贈与よりも先に、あるいは同時贈与するとその贈与株式については事業承継税制の適用は無いのでご注意ください。

 

贈与後に、対象会社が期限内(贈与翌年1月15日)に都道府県の担当部局に必要書類をそろえて認定申請を行います。この申請は、個人でなく対象会社が行います。

 

後継者(2代目)は、認定書の写しと共に、贈与税の申告期限内(贈与翌年3月15日)に税務署に贈与税の申告を行います。申告時に、猶予税額とこれに対する利子税に相当する担保の提供を行うと、この株式贈与についての後継者の贈与税は100%猶予されることとなります。

 

株式の贈与の際には、前回解説した入口3要件(あげる人、もらう人、対象会社)を満たしている必要があります。

 

 

 

生前贈与後の流れ

贈与税の申告期限の翌日から5年間は要件の厳しい経営承継期間です。この間、後継者(2代目)は代表者であり続け、対象となった株式は保有し続ける必要があります。その他前回解説した事後要件(5年間、5年経過後)を満たし続ける必要があります。

 

なお、先代経営者(1代目)は代表権を有することは認められませんが、有給役員として会社に在籍することが可能ですので、後継者(2代目)を支え、共に要件遵守をサポートできると理想的です。

 

申告期限の翌日から5年間は、都道府県への報告は毎年申告期限応当日の翌日から3ケ月以内に、税務署への届出書は5ケ月以内に提出が必要です。5年を過ぎると、3年を経過するごとに税務署に届出書の提出が必要ですが、都道府県への報告は不要です。

 

猶予された免除は

先代経営者(1代目)が亡くなると、後継者(2代目)が猶予されていた贈与税は全額免除されます。

 

また、後継者(2代目)が贈与を受けた株式は、贈与時の価額で後継者(2代目)が相続または遺贈により取得したものとみなされ、他の相続財産と合算して改めて相続税額が計算されます。

 

対象会社は、先代経営者(1代目)の死亡後期限内(8ケ月)に都道府県の担当部局に対して切替申請を行い、要件を満たしていることについて確認を受けると、対象株式に対して新たに発生した相続税は、相続税の猶予・免除制度の適用により引続き猶予されることとなります。この切替手続きを失念してしまい、相続税の猶予・免除制度が適用できなくなってしまうので注意が必要です。

 

3代目への承継

2代目の後継者から次の後継者(3代目)に対して事業承継税制により株式を生前贈与し、無事、次の世代へ承継できたところで2代目の後継者が猶予されていた相続税は晴れて免除となります。他方、後継者(2代目)の死亡により相続が発生した場合も同様に免除されます。

 

以上の流れを適用が可能なかぎり、代々繰り返していきますと、株式に対する承継時の税金負担が無く承継することが可能です。ただし、事業承継税制はあくまで令和9年12月31日までの制度ですので、今のところ令和10年以降は従前税制のみの適用となります。

 

なお、令和9年12月31日までに対象株式を贈与した場合のその後の事業承継税制の適用に関してですが、先代経営者が令和10年1月1日以降も生存している場合、みなし相続は令和10年1月1日以降何年先になっても事業承継税制が認められることになっています。すなわち、贈与ケース先行の場合には事実上令和9年12月31日までの期限が伸長される効果が得られます。

 

 

相続の場合

相続の場合は、事業承継税制適用には贈与ケースと同様、特例承認計画の提出が必要ですが、他の実質的な適用関係は先代経営者が亡くなり、相続が発生したところから開始となります。しかしながら、相続発生直後の不安定な状況のなか、後継者単独で5年間の経営承継期間を乗り切らなければならないのは大変なことなので、やはり計画できる贈与の方に優位性があると思います。

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

贈与税の個人版事業承継税制の対象となる後継者(特例事業受贈者)の要件

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

1.贈与税の個人版事業承継税制の概要


特定事業用資産(本連載2019年7月8日号参照)を所有し、事業(不動産貸付業等を除く。以下同じ。)を行っていた先代事業者として一定の者 (贈与者)から、後継者として一定の個人(特例事業受贈者)が、令和10年12月31日までの贈与により、その事業に係る特定事業用資産の全部を取得した場合、特定事業用資産のうちこの税制の適用を受けるものに係る贈与税について、担保提供その他一定の要件を満たすことにより納税が猶予され、贈与者の死亡等により猶予されている贈与税の納付が免除されます(租税特別措置法(措法)70条の6の8第1項)。これが、贈与税の個人版事業承継税制(以下「本特例」)です。

 

2.後継者(特例事業受贈者)の要件


本特例の適用を受けるためには、上記1のとおり後継者が「特例事業受贈者」であることが必要です。特例事業受贈者とは、贈与者から贈与により特定事業用資産の取得をした個人で、 次に掲げる要件の全てを満たす者をいいます(措法70条の6の8第2項2号)。

 

 

(1)その贈与の日において20歳以上(令和4年4月1日以後の贈与については、「18歳以上」)であること。

 

 

(2)その個人が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」)2条に規定する中小企業者に該当し、本特例の適用要件を満たすことにつき同法12条第1項の都道府県知事の認定(注1)を受けていること。

 

(注1)都道府県知事の認定の申請は、原則として、その特定事業用資産の贈与のあった年の翌年1月15日までに、後継者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対して行います(円滑化法施行規則7条第10項、第12項)。

 

 

(3)その贈与の日まで引き続き3年以上にわたり特定事業用資産に係る事業又はこれと同種もしくは類似の事業に係る業務(一定の就学を含む)に従事していたこと。

 

 

(4)その贈与の時からその贈与の日を含む年分の贈与税の申告期限まで引き続きその特定事業用資産の全てを有し、かつ、自己の事業の用に供していること。

 

 

(5)その贈与の日を含む年分の贈与税の申告期限において、所得税法の規定によりその特定事業用資産に係る事業について開業届出書を提出し、かつ所得税の青色申告の承認(所得税法143条、147条)を受けていること。

 

 

(6)その特定事業用資産に係る事業が、その贈与の時において、資産保有型事業及び資産運用型事業(注2)ならびにいわゆる風営法が規定する性風俗関連特殊営業のいずれにも該当しないこと。

 

(注2)「資産保有型事業」とは、原則として、贈与の日を含む年の前年1月1日から、その特例事業受贈者の贈与税の納税猶予税額の全額の猶予の期限が確定(猶予の終了)する日までの期間のいずれかの日において、その日におけるその事業に係る貸借対照表上の総資産の帳簿価額のうち、現預金、有価証券、自ら使用していない不動産その他の資産(特定資産)の占める割合が70%以上となる事業をいいます(措法70条の6の8第2項4号、同施行令40条の7の8第14項)。

 

「資産運用型事業」とは、原則として、特例受贈事業用資産の贈与の日を含む年の前年1月1日から、その特例事業受贈者の贈与税の納税猶予税額の全額の猶予の期限が確定(猶予の終了)する日までの期間のいずれかの年において、事業所得に係る総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の占める割合が75%以上となる事業をいいます(措法70条の6の8第2項5号、同施行令40条の7の8第17項)。

 

 

(7)都道府県知事による個人事業承継計画の確認(円滑化法施行規則17条第1項3号)を受けていること(措法施行規則23条の8の8第6項)。

 

 

なお、後継者が上記の確認を受けるためには、所定の申請書に後継者候補の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継後の事業計画等を記載し、さらに認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けた旨を記載のうえ、令和6年3月31日までに、これを先代事業者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事あてに提出する必要があります(円滑化法施行規則17条4項、中小企業庁「個人版事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の認定申請マニュアル」)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/09/06)より転載

[初級者のための入門解説]

事業承継税制の概要~ゼロから学ぶ「事業承継 超入門」③~

 

事業承継の基本ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『事業承継 超入門』」シリーズです。

今回は、事業承継税制の制度の概要や利用の仕方について解説していきます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

税制の利用の仕方は

前回、解説したとおり事業承継には、親から子などへの「親族承継」、役員や従業員への「社内承継」、外部に譲渡する「M&A」の3つの類型がありますが、このうち、「親族承継」の場合には事業承継税制の利用を検討すべきです。

 

理由は、事業承継税制の利用によって、株式の相続や贈与に係る税金が無税にできるためですが、無償の取引でないと利用できないので、通常は親族への贈与や相続が対象になります。言い方を変えると、役員・従業員、M&Aでも「無償取引」であれば事業承継税制の対象になります。

 

 

 

 

事業承継税制は、「無償」の贈与か相続で利用できます。事業承継は、事業をスムーズに後継者にバトンタッチする一連の手続です。

 

当然税金だけの問題でなく、「経営者保証の問題」「他の事業用資産の有無」「議決権の支配状況」「後継者教育」「従業員や取引関係者・金融機関の協力取り付け」などの諸課題の検討を同時並行的に進めるため、計画できない相続でなく、計画的な贈与がマッチします。そこで、通常は「XDay(贈与日)」を決めた上で、承継計画を立案します。

 

 

 

 

 

事業承継税制の主な要件

2018年4月に新しく生まれ変わった事業承継税制(以下、「新税制」といいます)は対象株式に係る相続税又は贈与税が無税(あくまで猶予です)となる画期的な制度です。

 

「株式」が対象ですが、あらかじめ個人所有資産を会社に移管してしまえば、その資産も株式に包含される形で対象にすることができます(移管には制約があります)。

 

新税制の要件としては、適用を受ける際の「入口要件」と適用を受けた後、その税が免除されるまで(死亡等まで)の期間中順守しなければならない「事後要件」によって構成されます。

 

入口要件としては、「あげる人」、「もらう人」、「その対象会社」の3つの要件を満たす必要があります。

 

(1)入口要件

新税制の適用を受けるためには、適用を受ける際に3つの要件、すなわち、「先代経営者の要件」「後継者の要件」「対象会社の要件」のすべてを満たす必要があります。簡単に言うと、あげる人、もらう人、その対象となる会社、の3要件で、それぞれの主な要件を示すと下記図のとおりです。

 

 

(2)事後要件

事業承継税制は、税がいきなり免除されるわけでなく、税の猶予からスタートします。それではいつ免除されるかと言うと、「先代経営者(贈与者)が死亡した時等」に後継者が猶予されていた贈与税が免除されます。

 

あくまでも税の猶予制度ですから、猶予期間中、守らなければならない要件、すなわち”事後要件“があり、「申告期限から5年間」守らなければならない要件と、「5年経過後も」守らなければならない要件によって構成されます。

 

当然のことながら最初の5年間の方が厳しく、「代表者でありつづけること」「株式を継続保有(すべての承継株式)し続けること」などを守る必要があります。

 

5年経過後は、代表者を退任すること、株式を売却することも可能ですが、株式を売却した場合には売却分に応じた猶予税の納付をしなければなりません。なお、経営環境変化事由に該当する場合はその時点での税の再計算が認められております。

[事業承継の専門家によるコラム]

個人版事業承継税制の創設 ~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


日本の中小企業では事業承継が喫緊の課題となっています。

 

社長の平均年齢は68歳となり、このまま何もしないと127万社もの
中小企業が消滅するかもしれないということで平成30年度税制改正で
特例事業承継税制が創設されました。

 

この特例事業承継税制は、相続税贈与税の全額猶予や雇用確保要件の緩和、
倒産廃業時の価格の引き下げなど懸案事項を大幅に改善され、
事業承継計画の申請件数は例年の約10倍と一気に事業承継税制の適用が増加しています。

 

また、特例事業承継税制の創設が契機となりM&Aなどの事業承継も
一気に加速した感じがあります。
(私の肌感覚では以前の2-3倍の案件が進捗し始めたイメージです)

 

一方で上記の対策は法人に限定されており個人事業者は置き去りにされていました。

法人と異なり事業資産と家計資産が明確に分離されていないなどの懸念点があったためです。

 

しかし、個人事業者209万人のうち150万人(73%)が
70歳以上と高齢化は法人事業者より深刻でして、それに対し平成31年税制改正では
個人版事業承継税制が創設されることになりました。

 

基本的には法人版の事業承継税制と同様のフレームワークとなっています。

 

 

・承継計画は5年間で提出

 

・贈与相続開始期間は約10年間

 

・事業用資産は、土地建物は一定面積まで、その他の減価償却資産は
 青色申告書に添付されているBSに計上されたもの

 

・中小企業経営承継円滑化法の認定が必要

 

・計画には認定支援機関の認定が必要

 

・特定事業用宅地等との併用不可

 

・法人版と異なり事業制限なし(法人版は医療法人税理士法人等は適用不可)

 

・その他全額納税猶予・減免措置などは法人版事業承継税制とほぼ同じです。

 

 

相続後の取り扱いや個人事業との線引きの難しさなどもありますし、
特定事業用宅地の特例との選択などもありますので、
法人版事業承継より若干使いにくい感じがします。

 

法人税率は30%弱まで下がっていますので、将来的な問題まで考えると
個人的には法人化のメリットがあるのではないかなと思っています。

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2019/07/09号)」より一部修正のうえ掲載

[個人版事業承継税制 入門ガイド]

個人版事業承継税制とは?制度の概要や手続きをわかりやすく解説!

 

[監修]

税理士法人山田&パートナーズ 税理士 北澤淳 氏

 

【目次】

1、個人版事業承継税制とは?

2、どういった場合に適用を受けられるの?納税が必要になる場合とは?

3、猶予税額や納税額はどのように計算するの?

4、会社の事業承継税制とは何が違う?

5、適用を受けるための手続きは?

6、個人事業承継計画とは?いつまでに?どこに提出?

7、個人版事業承継税制に関する書類などはどこで入手するの?

8、個人版事業承継税制のおすすめ書籍は?

9、特定事業用資産とは?資産保有型事業とは?

~個人版事業承継税制で出てくる用語解説~

 

1、個人版事業承継税制とは?


Q、個人版事業承継税制とは、 どのような制度ですか?制度利用のイメージを教えてください。

 

A、後継者の事業用資産取得に係る贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者がさらに次世代の後継者に当該事業用資産を承継した場合等に、その猶予された税額が免除される制度です。

 

後継者が先代事業者から特定事業用資産を贈与・相続又は遺贈により取得した場合に、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けたときは、特例受贈事業用資産(特定事業用資産のうち贈与税の納税猶予制度の適用を受けるものをいいます。)に係る贈与税又は特例事業用資産(特定事業用資産のうち相続税の納税猶予制度の適用を受けるものをいいます。)に係る相続税の100%について納税が猶予されます。

 

納税を猶予された後継者(2代目)は、さらに次世代の後継者(3代目)にその特例受贈事業用資産又は特例事業用資産(以下、まとめて「特例事業用資産等」といいます。)を承継すれば、その後継者(2代目)について猶予されていた贈与税・相続税は免除されます。

 

この個人版事業承継税制は、平成30年度税制改正により創設された非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度、いわゆる事業承継税制(特例措置)に準じて設けられています。

 

個人版事業承継税制の適用のイメージは、次のとおりです。

 

 

 

 

 

贈与により取得した場合には、まずはその特例受贈事業用資産に係る贈与税が猶予されます。

 

次に、贈与者(先代事業者)に相続が発生した場合には、その猶予された贈与税は免除されます。ただし、その事業用資産をその先代事業者からの相続により取得したものとみなして、相続税の課税対象になります。相続税の納税猶予の要件(被相続人の要件を除きます。)を満たしていることについて都道府県知事の確認を受けたうえで、相続税の申告をした場合には、その特例受贈事業用資産に係る相続税について猶予を受けることができます。

 

そして、納税を猶予された後継者(2代目)が次世代の後継者(3代目)にその特例受贈事業用資産を贈与により承継し、その次世代の後継者(3代目)が本税制の適用を受けたときや、その後継者(2代目)に相続が発生したときは、その後継者(2代目)について猶予されていた相続税は免除されます。

 

 

 

 

相続により取得した場合には、その特例事業用資産に係る相続税が猶予されます。

 

その後、贈与税の納税猶予の場合と同様に、納税を猶予された後継者(2代目)が次世代の後継者(3代目)にその特例事業用資産を承継し、その次世代の後継者(3代目)が本税制の適用を受けたときや、その後継者(2代目)に相続が発生したときは、その後継者(2代目)について猶予されていた相続税は免除されます。

 

 

 

2、どういった場合に適用を受けられるの?納税が必要になる場合とは?


Q、個人版事業承継税制の適用を受けるための条件について教えてください。また、どういった場合に納税する必要がありますか?

 

A、先代事業者に関する要件、後継者に関する要件のすべてを満たしていることが必要となります。
適用後は、事業継続している限りその納税は猶予されますが、事業を廃業した場合などには納税する必要があります。

 

(1) 個人版事業承継税制の適用要件

本税制が適用できるかどうかの判断にあたって、先代事業者の要件、後継者の要件をそれぞれ定めており、そのすべてを満たしていることが必要となります。

 

先代事業者、後継者のそれぞれの主な要件は以下の表のとおりです。

 

 

 

(2) 確定事由(納税が必要となる場合)

本税制の適用を受けた後、事業を廃止した場合や贈与・相続等により取得した資産を売却した場合などには、猶予された税額を納税する必要があります。

 

主な確定事由は以下の表のとおりです。

 

 

 

確定事由に該当した場合には、猶予された税額に加えて、利子税を納税しなければなりません。利子税は原則として年3.6%ですが、利子税の特例(貸出約定平均金利の年平均が0.6%の場合)を適用した場合には、0.7%とされます。

 

 

 

 

(3) 免除事由(納税が免除される場合)

本税制の適用を受けた後、後継者からさらに次の後継者に本税制を適用して事業用資産を贈与した場合や、適用を受けた後継者に相続が発生した場合には猶予された税額が免除されます。

 

主な免除事由は以下の表のとおりです。

 

 

 

本税制の適用を受ける贈与税・相続税の申告期限から5年経過後に、納税を猶予されている後継者(2代目)からさらに次世代の後継者(3代目)にその特例事業用資産等を贈与し、その次世代の後継者(3代目)が本税制の適用を受ける場合には、その後継者(2代目)について猶予されていた贈与税・相続税は免除されます。

 

そのため、後継者(2代目)は事業承継後、少なくとも5年間は事業を継続する必要がありますので、事業承継時に自己の強み・弱みを把握する取組みが必要となると考えます。

 

 

 

3、猶予税額や納税額はどのように計算するの?


Q、事業用資産を贈与により取得した場合の猶予税額及び納税額の計算方法を教えてください。

 

A、猶予税額及び納税額の計算にあたっては、次の3ステップにより計算します。

 

<ステップ1 >

その年分の贈与税の総額を計算します。

 

<ステップ2 >

後継者が、その年中に贈与された財産が本税制の適用を受ける資産のみと仮定した贈与税額を計算します(=猶予税額)。

 

<ステップ3 >

ステップ1の金額からステップ2の金額を差し引いた金額が納税額です。

 

なお、ステップ1及びステップ2の贈与税額については、暦年課税制度又は相続時精算課税制度のいずれかの方法により計算した金額を用います。

 

(1) 猶予税額計算(贈与)の3つのステップ

 

<ステップ1 (贈与税の総額)>
贈与を受けたすべての財産の価額の合計額に基づき贈与税額を計算します。

 

<ステップ2 (猶予税額)>
贈与を受けた財産がこの制度の適用を受ける特例受贈事業用資産のみであると仮定して贈与税額を計算します。

 

<ステップ3 (納税額)>
ステップ1により計算した贈与税額から、ステップ2により計算した贈与税額(猶予税額)を差し引いた金額が、その贈与に係る申告期限までに納付する金額となります。

 

 

(2) 負担付贈与である場合の注意点

贈与を受けた特定事業用資産のうち本税制の適用を受けるものの価額から、債務その他の負担の額を控除した金額が猶予税額の基礎とされます。

 

 

 

(3) 暦年課税制度による場合の注意点

暦年課税制度により贈与税を計算する場合、贈与税は累進税率となります。
事業用資産と非事業用資産を同じ年に贈与した場合には、非事業用資産に係る納税額が高額となるケースがありますので、注意が必要です。

 

例えば、下記のようなケースにおいては、贈与を受けた現金はいずれも500万円ですが、納税額は大きく異なります。
※贈与を受けた者は20歳以上で直系尊属からの贈与の場合

 

(例1) 現金500万円のみ贈与を受けた場合
納税額: (500万円-110万円)× 15%-10万円=48万5,000円

 

(例2) 現金500万円と事業用資産5,000万円の贈与を受けた場合
贈与税の総額: (500万円+5,000万円-110万円)×55%-640万円=2,324万5,000円

猶予税額: (5,000万円-110万円)× 55%-640万円=2,049万5,000円
納税額: 2,324万5,000円-2,049万5,000円=275万円

 

(4) 相続時精算課税制度による場合の注意点

相続時精算課税制度の特別控除額は、猶予税額を計算するうえでも考慮されます。そのため、非事業用資産について納税額が発生するケースがあります。

 

例えば、下記のようなケースにおいては、贈与を受けた現金に係る贈与税を納付する必要があります。

 

(例) 現金500万円と事業用資産5,000万円の贈与を受けた場合
贈与税の総額: (500万円+5,000万円-2,500万円)×20%=600万円
猶予税額: (5,000万円-2,500万円)×20%=500万円
納税額: 600万円-500万円=100万円

 

贈与税の納税猶予制度は、その年において生じた贈与税の支払いを猶予する制度です。したがって、特定事業用資産の価額の合計額が特別控除額相当額である2,500万円(その年の前年以前に既に相続時精算課税制度の適用を受けている場合には2,500万円から既に適用を受けた金額を控除した残額。)以下の場合には、その年において生じた贈与税額が0 円となりますので相続時精算課税制度を適用したうえでこの制度の適用を受けることは出来ません。

 

また相続時精算課税制度は一度選択したら撤回することができません。特定事業用資産の贈与年の翌年以後に同じ贈与者から贈与を受けた場合には暦年課税制度を選択することは出来ず、その贈与を受けた財産の価額の20%相当額を納税することになります。

 

4、会社の事業承継税制とは何が違う?


Q、会社の事業承継税制との相違点を教えてください。

 

A、会社の事業承継税制は納税猶予の対象資産が非上場株式等ですが、個人版事業承継税制の対象資産は事業用の土地や建物等、一定の減価償却資産である点が主な相違点です。

 

具体的な相違点は以下の表のとおりです。

 

 

 

5、適用を受けるための手続きは?


Q、個人版事業承継税制の適用を受けるための手続きを教えてください。

 

A、以下の4つのステップにより、適用を受けることができます。

 

(1) 個人事業承継計画を作成し、認定経営革新等支援機関からの指導及び助言を受けたうえで、都道府県庁への確認申請を行います。
(2) 先代事業者から後継者へ特定事業用資産の贈与・相続等を行います。
(3) (2)の後一定の期間内に、都道府県庁へ認定申請を行います。
(4) 都道府県庁から発行された確認書認定書を添付して、税務署に贈与税・相続税の申告をすることで本税制の適用を受けることができます。

 

 

本税制の適用を受けるにあたっては、基本的には「個人事業承継計画の作成」 「都道府県庁への確認申請」 「特定事業用資産の贈与・相続」「都道府県庁への認定申請」「税務署への申告」という流れになります。

 

(1) まずは先代事業者及び後継者が協力して個人事業承継計画を作成し、その個人事業承継計画について認定経営革新等支援機関からの指導及び助言を受けたうえで、先代事業者の納税地がある都道府県庁へ確認申請を行います。個人事業承継計画の提出期間は平成31年(2019年)4 月1 日から令和6年(2024年)3 月31日までの間に限られています。

 

(2) 平成31年(2019年)1 月1 日から令和10年(2028年)12月31日までの間に先代事業者から後継者へ特定事業用資産の贈与を行います(又は、後継者が相続等により取得します。)。なお、先代事業者からの贈与・相続の日以後1年間に限り、先代事業者と生計を一にする配偶者その他の親族等から特定事業用資産の贈与・相続等を受けた場合には、その贈与・相続等に係る贈与税・相続税も本税制の適用を受けることができます。

 

(3) (2)の後一定の期間内に、後継者の納税地がある都道府県庁へ認定申請を行います。
原則として、贈与税の納税猶予の適用を受ける場合には贈与があった年の10月15日から翌年1月15日までに、相続税の納税猶予の適用を受ける場合には相続開始の日の翌日から5か月を経過する日から8か月を経過する日までの間に、都道府県庁へ認定申請を行う必要があります。

 

(4) 都道府県庁から発行された確認書認定書を添付して、税務署に贈与税・相続税の申告をすることで本税制の適用を受けることができます。

 

 

なお、事業の状況や個人の状況は様々ですので、以下のような柔軟な対応が認められています。

 

● 特定事業用資産の贈与年と、個人事業承継計画の作成年が同じであれば、個人事業承継計画の確認申請と個人版事業承継税制の各種要件を満たしていることの認定申請は、同時に行うことができます。
● 個人事業承継計画が提出できる期間内であれば、先代事業者からの贈与・相続の後に個人事業承継計画を作成・提出することもできます。

6、個人事業承継計画とは?いつまでに?どこに提出?


Q、個人事業承継計画について教えてください。

 

A、本税度の適用を受けるには、「個人事業承継計画」を作成し、都道府県知事の確認を受ける必要があります。提出できる期限は令和6年(2024年)3月31日までとなっています。

 

(1) 本税制の適用を受ける場合には、個人事業承継計画を作成し、都道府県知事の確認を受ける必要があります。
(2) 個人事業承継計画には、事業承継前後の経営見通しを記載し、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受ける必要があります。
(3) 個人事業承継計画が提出できる期間は、平成31年(2019年) 4月1日から令和6年(2024年) 3月31日までとなっています。
(4) 個人事業承継計画は、都道府県知事の確認を受けた後でも、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けたうえで変更することができます。

 

(1) 対象者

本税制の適用を受けることが出来るのは、個人事業承継計画を作成し、その個人事業承継計画に記載された個人に限られています。

(2) 記載事項

先代事業者の氏名、後継者の氏名、事業承継するまでの経営見通し、事業承継をした後の経営見通しといった内容を記載します。
また、個人事業承継計画は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則」に定められているため、個人事業承継計画を提出できるのは中小企業者に限定されます。したがって、先代事業者が中小企業者に該当することを確認するため、従業員数についても記載が必要です。常時使用する従業員の数は、青色申告書の「給料賃金の内訳」等で確認します。
従業員数がゼロ人であったとしても、個人事業承継計画を提出することができます。

(3)提出期間

個人事業承継計画が提出できる期間は、平成31年(2019年) 4月1日から令和6 年(2024年) 3月31日までとなっています。
贈与・相続自体は、平成31年(2019年) 1月1 日から令和10年(2028年) 12月31日までに発生しているものが対象となりますが、個人事業承継計画は令和6 年(2024年) 3月31日までに提出する必要があります。これは、事業承継には時間がかかることから早期に事業承継に向けた準備に取り組んでもらう必要があるためです。
なお、個人事業承継計画の提出日が令和6 年(2024年) 3月31日までであれば良く、都道府県知事の確認を受ける日付は令和6年(2024年) 4月1 日以降となっても差し支えありません。

(4) 計画の変更

個人事業承継計画に記載された後継者を変更する場合には必ず変更申請を行わないといけません。変更申請を提出する際には、改めて認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受ける必要があります。なお、当初提出時とは別の認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けても構いません。
一方で、事業承継するまでの経営見通し、事業承継をした後の経営見通しについては、必ずしも変更申請を提出する必要はありません。ただし、当初は具体的な経営計画が記載されていなかった場合、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けたうえで、それを具体化するための計画の変更の手続きを行うことが求められます。

(5) 計画通りに実行できなかった場合

個人事業承継計画の確認を受けたにもかかわらず、事業用資産の贈与等を行わなかった場合においても、罰則はありません。
個人事業承継計画を提出した後も、(4)のとおり個人事業承継計画の変更は可能です。そのため、少しでも本税制の適用を受ける可能性があるのであれば、とりあえず個人事業承継計画の提出を行っておくことをおすすめします。

7、個人版事業承継税制に関する書類などはどこで入手するの?


中小企業庁ウエブサイトに以下の書類が掲載されております。

※最新の情報は必ず該当のホームページ等でご確認ください。

◇マニュアル

・「個人版事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の手続マニュアル」

 ◇申請手続関係書類

<個人事業承継計画(認定の申請にあたり必ず提出が必要です) >

・「個人事業承継計画(様式21の3)」

・「添付書類」

・「個人事業承継計画の変更届(様式24の3)」

※確認を受けた計画を変更する場合に使用します。

・「確認取消申請(様式25) 」

※確認の取消を申請する場合に使用します。

 

<認定申請(様式) >

(贈与の場合)

・「認定申請書(様式7の5)」

※先代事業者から後継者への贈与 (第一種贈与認定申請)

・「認定申請書(様式7の6)」

※生計一親族等から後継者への贈与 (第二種贈与認定申請)

 

(相続(遺贈)の場合)

・「認定申請書(様式8の5)」

※先代事業者から後継者への相続 (第一種相続認定申請)

・「認定申請書(様式8の6)

※生計一親族等から後継者への相続 (第二種相続認定申請)

 

 

<認定有効期間中の報告等>

・「随時報告書(様式第12の2) 」
※認定の有効期間中に認定の取り消し事由に該当した場合に使用します。

・「切替確認申請書(様式第17の2)」 
※贈与者の相続が開始した場合において相続税の納税猶予へ切り替えるときに使用します。

・「法人成り後の切替確認申請書(様式第17の3)」
※法人成り後、贈与者の相続が開始した場合において相続税の納税猶予へ切り替えるときに使用します。

 

 ◇申請窓口・お問い合わせ先

事業承継税制に関するお問い合わせ先・申請窓口は、申請企業の主たる事務所が所在している都道府県庁です。

「各都道府県の申請窓口・お問い合わせ先」よりご確認ください。

 ◇税務申告の際の手続きについて

贈与税・相続税の納税猶予を受けるためには、都道府県知事による認定を受けた後、税務申告の際に別途手続きが必要です。詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。

 国税庁「事業承継税制特集ページ」よりご確認ください。

 

 

中小企業庁ウェブサイト(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_kojin_ninntei.htm)を加工して作成

 

 

8、個人版事業承継税制のおすすめ書籍は?


 

「Q&Aで理解する『個人版事業承継税制の仕組みと手続き』」がおススメです。

 

この解説コラムの監修を頂いた北澤先生(税理士法人山田&パートナーズ)がご執筆した書籍です。

 

中小企業庁にて、事業承継税制(特例措置)の創設を担当し、まさに、個人版事業承継税制の草案を作成された北澤先生が、個人版事業承継税制の制度概要をわかりやすくQ&A形式で解説した書籍です。個人版事業承継税制の全体像を把握するのに最適な書籍です。ぜひ、ご参考にしてみてください。

(※実は、今回の解説コラムもこの書籍を参考に作成しております)

 

今回の解説コラムでは紹介しきれいていない「主な適用要件」「担保の提供」「小規模宅地等の選択適用」「具体的な承継パターン」「適用に関する詳細な手続き」「ケーススタディ」等々も掲載されていています。

 

Amazonまたは税務研究会サイトにて購入できます。

 

 

 

 

 

 

 

各章の主な内容は以下のとおりです。

 

第一章 制度の概要として主な適用要件や猶予税額の計算方法等を説明しています。

第二章 適用手続きについて、手続きごとに提出書類・提出先・記載内容・留意点をまとめています。

第三章 猶予税額が免除される場合又は税額が確定する場合をそれぞれ解説しています。

第四章 ケーススタディとして、個人版事業承継税制と事業用宅地等の小規模宅地等の評価減の特例のどちらの制度を適用した方が有利か、相続人が子1人又は2人だった場合など事例ごとに検討を行っています。

巻末 参考資料として承継計画等の様式を掲載しています。

 

9、特定事業用資産とは?資産保有型事業とは?


[用語解説]
(1) 特定事業用資産

贈与者又は被相続人(当該贈与者又は被相続人と生計を一にする配偶者その他の親族を含みます。)の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業を除きます。)の用に供されていた次に掲げる資産で、当該贈与者又は当該被相続人の事業所得に係る青色申告書(租税特別措置法第25条の2第3項の規定の適用に係るものに限ります。)の貸借対照表に計上されているもの(棚卸資産に該当するものを除きます。)をいいます。

 

① 宅地等(士地又は士地の上に存する権利をいい、建物又は構築物の敷地の用に供されているものとして一定のものに限ります。)
…当該宅地等の面積の合計のうち400㎡以下の部分(小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、一定の計算式により計算した面積を控除した部分)。
② 建物
…当該建物の床面積の合計のうち800㎡以下の部分
③ 減価償却資産
…機械、器具備品、車両、船舶、構築物、無形償却資産(特許権等)、生物(乳用牛等、果樹等)その他の一定の資産をいいます。

 

(2) 資産保有型事業

贈与の日又は相続の開始の日の属する年の前年の1月1日から当該贈与に係る贈与税又は当該相続に係る相続税の全部について、免除事由又は確定事由に該当することとなった日までのいずれかの日において、次の①及び③に掲げる金額の合計額に対する②及び③に掲げる金額の合計額の割合が100分の70以上となる事業をいいます。

 

① その日における当該個人の貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額の総額(事業所得に係るものに限ります。)
② その日における当該個人の貸借対照表に計上されている特定個人事業資産の金額の合計額(事業所得に係るものに限ります。)

③ その日以前5年以内において、当該個人と特別の関係がある者が当該個人から受けた給与のうち、必要経費の額に算入されなかった金額

 

(3) 特定個人事業資産

特定事業用資産に係る事業所得の貸借対照表に計上されている資産のうち、次に掲げるものが該当します。

 

① 有価証券等
② 現に自ら使用していない不動産
申請者が所有している不動産のうち、現に自ら使用していないものです。太陽光発電設備を設置している不動産や販売用として保有する不動産は、特定個人事業資産に該当します。
③ ゴルフ会員権等
④ 絵画、貴金属等
⑤ 現預金その他これらに類する資産

(4) 資産運用型事業

贈与の日又は相続の開始の日の属する年の前年の1月1日から当該贈与に係る贈与税又は当該相続に係る相続税の全部について、免除事由又は確定事由に該当することとなった日まで期間内のいずれかの年における事業所得に係る総収入金額に占める特定個人事業資産の運用収入の合計額の割合が100分の75以上となる事業をいいます。

(5) 特定申告期限

次の①又は②のうち、いずれか早い日をいいます。

 

① 後継者が初めて個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除の適用を受ける贈与に係る贈与税の申告期限
② 後継者が初めて個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除の適用を受ける相続又は遺贈に係る相続税の申告期限

 

 

【この解説を監修した税理士】


税理士 北澤淳

税理士法人山田&パートナーズ マネージャー

 

2009年慶応義塾大学経済学部卒。2011年税理士法人山田&パートナーズ入所。
2016年10月経済産業省中小企業庁事業環境部財務課(税制専門官)。事業承継税制(平成29年度、平成30年度税制改正) の改正、個人版事業承継税制の草案の作成、事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の政省令改正、マニュアル作成等をはじめ、会計検査院対応、認定等を行う都道府県庁に対する助言等を行う。

2018年10月現職。ZEIKEN LINKS専門家登録。

 

税理士法人山田&パートナーズ
〒100-0005
束京都千代田区丸の内一丁目8 番1 号丸の内トラストタワーN 館8 階
TEL : 03-6212-1660
URL : https://www.yamada-partners.gr.jp/
人員数:747名(2019年4月1日現在)
地方拠点:札幌事務所、盛岡事務所、仙台事務所、北関東事務所、横浜事務所、新潟事務所、金沢事務所、静岡事務所、名古屋事務所、京都事務所、大阪事務所、神戸事務所、広島事務所、高松事務所、福岡事務所

(2019年4月1日現在)

[解説ニュース]

相続税の個人版事業承継税制の対象資産(「特定事業用資産」)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

 1.相続税の個人版事業承継税制の概要


相続税の個人版事業承継税制とは、下記2の特定事業用資産を所有し、事業(不動産貸付業等を除く。以下同じ。)を行っていた先代事業者として一定の者(被相続人)から、後継者として一定の者(特例事業相続人等)が、2019年1月1日から2018年12月31日までの相続又は遺贈(相続等)により、その事業にかかる特定事業用資産の全部を取得した場合に、その特定事業用資産にかかる相続税について、担保の提供その他一定の要件を満たすことにより納税が猶予され、後継者の死亡等により猶予されている相続税の納付が免除される税制をいいます(租税特別措置法(措法)70条の6の10第1項)。

 

2.特定事業用資産の意義


(1)特定事業用資産の範囲

「特定事業用資産」とは、先代事業者の事業の用に供されていた次の資産です。ただし、その贈与または相続等の日を含む年の前年分の事業所得にかかる青色申告書(措法25条の2第3項に規定する65万円の青色申告特別控除にかかるものに限る。)の貸借対照表に計上されていたもの限ります(措法70条の6の10第2項1号、同施行規則23条の8の8第2項等)。

 

①宅地等
事業の用に供されていた土地または土地の上に存する権利で、建物または構築物の敷地の用に供されているもののうち、棚卸資産に該当しないもので、面積が400㎡以下の部分。

 

②建物
事業の用に供されていた建物で、棚卸資産に該当しないもののうち床面積の合計が800㎡以下の部分。

 

③減価償却資産
②以外の減価償却資産のうち、構築物、機械装置、器具備品、船舶等、一定の自動車等、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形減価償却資産。

 

(2)先代事業者の生計一親族の所有する資産

上記(1)の「先代事業者」には、先代事業者と生計をーにする配偶者その他の親族が含まれます(措法70条の6の10第2項1号かっこ書)。したがって、先代事業者が配偶者の所有する土地の上に建物を建て、事業を行っていた場合におけるその土地など、先代事業者と生計をーにする親族が所有する資産のうち上記(1)①~③のいずれかに該当するものについても、特定事業用資産に該当します。

 

ただし、先代事業者と生計をーにする親族が所有する資産が特定事業用資産に該当するためには、(1)の下線部の通り、その資産が先代経営者の一定の青色申告書にかかる貸借対照表に計上されている必要があります(措法70条の6の10第2項1号)。所得税の青色申告にかかる貸借対照表に、同一生計親族名義の資産を計上する処理を通常は行わないので、今後の取扱いについては国税庁通達等を確認する必要があります。

 

3.小規模宅地等の特例の適用を受ける者がいる場合


2(1)①の宅地等につき、先代事業者および先代事業者と生計を一にする親族(以下「先代事業者等」)から相続等により取得した宅地等について、措法69条の4の小規模宅地等の特例の適用を受ける者がいる場合には、その適用を受ける小規模宅地等の区分に応じ相続税の個人版事業承継税制の適用が次のとおり制限されます(措法70条の6の10第2項1号イ、2号へ、同施行令40条の7の10第7項)。

 

 

上図①のとおり、特定事業用宅地等にかかる小規模宅地等の特例と相続税の個人版事業承継税制については併用できず、どちらかを選択することになります。

 

相続税の個人版事業承継税制は100%納税猶予・免除が可能ですが、後継者が納税猶予を継続し、免除に至るまでには、原則として終身の事業継続や資産保有が求められます(措法70条の6の10第3項、第15項等)。小規模宅地等の特例に比べて要件が厳しいため、後継者が相続等による取得する特定事業用資産の価額のうち宅地等がその大半を占める場合には、通常は小規模宅地等の特例を選択するケースが多いと思われます。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/07/08)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。今回は、事業承継税制(特例措置)の適用要件の一つである「先代経営者等である贈与者」の要件についてです。

 


[質問]

事業承継税制におけるこのたびの特例措置を適用したく、作業を進めています。その適用要件のなかで、「先代経営者等である贈与者」の要件について以下の3つを定めています。

 

(1) 会社の代表権を有していたこと
(2) 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係が有る者で総議決権数の50%超の議決権を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと。
(3) 贈与時において、会社の代表権を有していないこと。

 

当社は、「先代経営者等である贈与者」にあたる者が、取締役に就任しているものの、代表取締役に過去に一度も就任しておりません。
そのため、これから代表取締役になるべく定款変更(共同代表取締役)し、就任しようと思っています。このスキームで(1)の要件を満たすでしょうか。

 

[回答]

1 租税特別措置法第70条の7の5(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例)に規定する「特定贈与者」について、同法施行令第40条の8の5第1項第1号は「・・・特例認定贈与承継会社(略)の代表権(制限が加えられた代表権を除く。イ及びロにおいて同じ。)を有していた個人で、・・・」と規定しています。

 

2 したがって、贈与の前に会社の定款を変更して贈与予定者を共同代表取締役に就任させ、その旨を登記した後に、特例承継計画を都道府県に提出して経営承継円滑化法の確認を受け、その後、株式等の贈与前に共同代表を辞任すれば適用要件の「会社の代表権を有していたこと」に該当します。この場合、定款等において贈与予定者の代表権に制限を加えないことが必要です。

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年6月15日回答)

 

 

[初級者のための入門解説]

個人版事業承継税制 超入門ガイド(その2)~適用後の手続と注意点~

 

〈解説〉

税理士 村本政彦(税理士事務所クオリス)

 

 

 

前回に引き続き、個人版事業承継税制を、ざっくり、やさしく、わかりやすく解説します。今回のテーマは、「適用後の手続きと留意点」です。「適用後の手続きは?」「取消事由とは?」「どのような方におススメなの?」など、皆さまの素朴な疑問にお答えします。

 

適用後の手続きは?


相続税・贈与税の申告が終わった後は、「3年おき」に、「税務署に届け出」が必要です。

これは取消事由に引っかかっていないかどうかを確認するための届け出です。

 

取消事由??


この制度は、あくまで納税の”猶予”なので、相続や贈与のタイミングで要件を満たしていればよいだけでなく、その後も「要件を満たし続けること」が必要です。

 

次のようなときには、猶予は取消しになります。

・事業をやめたとき

・届け出を忘れたとき

・対象となった事業用資産を売ったり、廃棄したとき(詳しくは後程)

 

取り消しになったらどうなるの?


取り消しになったら、猶予されていた相続税・贈与税を一括で支払わなければなりません。それに加えて、猶予されていた期間の利息も支払う必要がありますが、これも結構な金額となります。

 

えっ!!それは怖いですね。やめたほうがよいのでしょうか?


ケースバイケースですね。

 

猶予税額が少額であれば、他の方法を考えたほうがよいと思います。

 

猶予税額が高額であれば、取消事由に該当するリスクや届け出の事務負担、猶予される税額などを吟味して、熟考です。高額の相続税・贈与税が支払わなくてよくなるのは、大きなメリットだからです。

 

注意点は?


なかなか癖のある制度なので、注意点は結構多いです。

 

~注意点①~

猶予されている間、「担保」が必要です。

 

~注意点➁~

対象の事業資産「買い替える」ときには、あらかじめ手続きが必要です。

 

この制度は、事業を続けていること、対象の資産を使い続けることが猶予を受け続けられる要件ですので、対象資産を売ってしまうと、適用を受けられなくなってしまいます。

なので、買い替えるときは、ちゃんと代わりの資産を買いますよ、という手続きが必要です。

 

また、対象資産が陳腐化して「廃棄」するときにも手続きがあります。

 

~注意点➂~

一番の注意点は、先ほどもありましたが、この制度は、あくまで納税の”猶予”なので、相続や贈与のタイミングで要件を満たしていればよいだけでなく、その後も「要件を満たし続けること」が必要です。

 

細かく言うと、取消要件はとてもたくさんの項目があるのですが、普通の事業者が該当するかもしれない項目はそれほど多くはありません。

 

とはいえ、猶予期間が極めて長期間に及びますし、取消しになってしまうと猶予されている税額の全額を、利息も付けて支払わなければならないことになってしまいますので、適用を受けた後も、この制度に精通した税理士のサポートを継続して受けることは必須です。

 

なんだかいろいろ難しそうですが、この制度は、どんな人におススメ?


まずは、適用マップを見てみましょう。

 

マップを見ると、中小企業の事業承継税制は基本的に会社全体が対象になるのに対して、個人版の事業承継税制は、対象となる「資産が限定」されていることがわかります。そのため、法人成りした上で中小企業の事業承継税制の適用を受けたほうが、一般的には有利です。

 

ただ、中小企業の事業承継税制の適用を受けられない病院・診療所士業の方の利用は考えられます。特に、CTやMRIなどの高額な医療機器がある場合や、比較的新しい建物がありその評価が高い場合などは、有効な場合が多いでしょう。

 

また、何らかの事情で法人成りが難しい場合にも、活用を検討されるとよいと思います。

 

 

 

【個人版事業承継税制 適用マップ】

 

 

 

 

うちは個人病院なんだけど、適用は受けた方がいいの?


これまで見てきた通り、この制度は、手間もかかり、いろいろ注意点も多くある制度です。

それに対し、この制度の唯一のメリットは、相続税・贈与税の納税が猶予されることです。

なので、適用を受けるかどうかを考えるときには、まずは、メリットである猶予税額がいくらなのかを計算することがとても大事です。

その上で、メリットとデメリットを天秤にかけて、慎重に判断していくことになります。

専門家の助言も必ず参考にしましょう。

[ワンポイント解説]

事業承継税制の特例 ~『後継者要件』について解説~

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 深川雄/税理士

 

 

平成30年度税制改正により「事業承継税制の特例措置」において、後継者の要件が緩和されました。これまでの「一般措置」では、納税猶予の対象となる後継者は1名しか認められておりませんでしたが、「特例措置」では、最大3人の後継者への承継が可能になりました。その結果、会社の実情に合わせた多様な承継方法が選べるようになりました。

 

1.後継者の要件

具体的な後継者の要件は下記になります。

 

2.注意点

贈与より特例措置の適用を受ける場合、贈与の日まで継続して3年以上にわたり役員である必要があるため、計画的に後継者を役員に選任する必要がございます。株式は贈与又相続により取得することが要件となっておりますので、売買による承継は納税猶予の対象とならない点ご注意ください。複数人の後継者を会社の代表者にすることで、後々の運営に問題が生ずることもあります。将来の会社運営について十分な検討を行ったうえで、後継者を選ぶ必要がございます。

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年1月11日 )より再編集