[解説ニュース]

贈与を受けた金銭を全て敷地の対価に充てた場合の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

【問】

Aさんと妻のBさんは、自宅を新築することにしました。自宅の建築に先立ち、Aさん夫婦は資金を出し合い、2019年5月に土地を対価3,000万円で取得(AさんとBさんが1,500万円ずつを負担し、持分1/2の共有)しました。Bさんはこの土地の取得に際し、実父から2019年1月に現金700万円の贈与を受けています。Aさんは2019年中にその土地の上に自宅を対価2,000万円で建築(建築費用は全額Aさんが負担し、Aさんの単独所有)、引渡しを受けて同年中に居住する予定です。

 

上記の計画通りに2019年中に自宅の建築が完了し、Aさんが同年中に引渡しを受けて夫婦で居住した場合、Bさんが実父から贈与を受けた現金700万円は、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税」(租税特別措置法(措法)70条の2。以下「本特例」)の適用を受けることができますか。

 

 

【回答】

1.結論


上記の場合、贈与を受けたBさんは、実父から贈与を受けた金銭の全額を充てて自宅の敷地を取得するものの、その自宅の新築をしない(贈与があった日を含む年の翌年の3月15日までにその土地上に自宅を新築するのはAさん)ことから、後述2(2)②の要件を満たすことができないので、本特例の適用を受けることができません。

 

2.解説


(1)本特例の概要と基本的な要件

その年の1月1日において20歳以上である等の一定の要件を満たす個人(「特定受贈者」)が、父母等の直系尊属から贈与により取得した①自己の居住用の家屋(以下「自宅」)の新築もしくは取得(以下「新築等」)、②これらの自宅の新築等とともにする、その敷地として使用される土地等*の取得(その自宅を新築する場合に、それに先行してする、その敷地として使用されることとなる土地等の取得を含む)又は③一定の増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」)の全額を、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、①、②又は③の対価に充て、同日までに自己の居住用に供した等の場合には、贈与税の申告を要件に、住宅取得等資金のうち一定の限度額(自宅の取得に係る契約の締結期間や、その自宅の性能、自宅の新築等の代金等に含まれる消費税の税率に応じて300万円~3,000万円)までは贈与税が非課税とされます(措法70条の2第1項等)。
*土地及び土地の上に存する権利をいいます。

(2)自宅を新築する前にその敷地となる土地を先行して取得した場合の留意すべき要件

表題の要件としては、次の①及び②があります。

 

①一定の土地等の取得であること
(1)の下線部の通り、本特例の適用対象となる自宅の新築もしくは取得には、自宅の新築もしくは取得とともにする、その敷地として使用されることとなる土地等の取得が含まれます(措法70条の2第1項1号)。そして「土地等の取得」には、自宅の新築に先行してする、その敷地として使用されることになる土地等の取得が含まれます(同かっこ書)。

 

この「自宅の新築に先行してする、その敷地として使用されることになる土地等」の具体例は、次の通りです(措法通達(措通)70の2-3、70の3-2)。

イ.自宅の新築請負契約の締結を条件とする売買契約によって取得した土地等
ロ.自宅を新築する前に取得した、その自宅の敷地として使用されることになる土地等

 

②金銭の贈与を受けた人により、自宅の新築が行われること。
個人が贈与を受けた金銭の全額が①ロの土地等の取得に充てられ、自宅の新築の対価に充てられなかった場合でも、その贈与を受けた金銭は本特例の適用対象となる「住宅取得等資金」には該当します(措通70の3-2(注)1)。

 

ただし、贈与があった日を含む年の翌年の3月15日までに、その贈与を受けた人が自宅の新築をしていない場合には、その贈与を受けた金銭は本特例の適用を受けることができません(同ただし書)。

(3)本問へのあてはめ

ご質問の場合、Bさんは実父から贈与を受けた金銭を全て自宅の敷地の購入代金に充てる一方、自宅の建築代金を全く負担しておらず、Bさんは自宅を新築していません(新築したのはAさんです)。よってBさんは上記(2)②のただし書により、本特例の適用を受けることができません。

 

Bさんが本特例の適用を受けるためには、実父より贈与を受けた金銭の一部又は自己資金により自宅の建築代金を負担し、自宅にも相応の持分を有することが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/06/17)より転載

[M&Aニュース](2019年6月3日〜6月14日)

◇きちりホールディングス<3082>、外食フランチャイジーのインドネシアPT Kichiri Rizki Abadiを子会社化、◇青山商事<8219>、カジュアル衣料「アメリカンイーグル」事業を譲渡、◇INEST<3390>、休眠中の情報処理サービス会社のEPARKマネーライフをトリプルヘッドに譲渡、◇ヒューリック<3003>、日本ビューホテル<6097>を子会社化、◇沖電気工業<6703>、ブラジルATM子会社のサービス事業などを米NCRに譲渡 ほか

 

マネーパートナーズグループ<8732>、仮想通貨交換登録準備会社のコイネージを子会社化

◆マネーパートナーズグループは、仮想通貨交換業登録に向けて準備中のコイネージ(東京都渋谷区。売上高―、営業利益△2億8600万円、純資産5億4000万円)を子会社化することを決議した。コイネージの全株式を所有する特別目的会社・コイネージ投資(同)を100%子会社化(現在持ち株比率は50%)することにより、コイネージを傘下に取り込む。取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

コイネージの子会社化に伴い、マネーパートナーズは仮想通貨交換業登録準備を進めるために計画していた子会社の設立を取りやめる。

 

エア・ウォーター<4088>、米プラクスエアのインド事業を取得

◆エア・ウォーターは14日、産業ガス大手の米プラクスエアからインド事業の一部を取得すると発表した。対象はプラクスエアのインド東部で手がける酸素、窒素、アルゴンの製造・貯蔵・運搬・販売に関する事業(直近売上高約79億円)。プラクスエアと同業大手の独リンデが2017年に合併した際、インド当局が独占禁止政策上の理由からプラクスエアにインド事業の一部を第三者に譲渡するよう求めていた。取得価額は約238億円(152億5000万インドルピー)。取得予定日は2019年7月12日。

 

トライアンフコーポレーション<3651>、沖縄や北海道でレンタカー事業を行うルフト・トラベルレンタカーを子会社化

◆トライアンフコーポレーションは、レンタカー会社のルフト・トラベルレンタカー(沖縄県豊見城市。売上高29億4000万円、営業利益5460万円、純資産1億5600万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

ルフト・トラベルレンタカーは1995年設立で、沖縄県や北海道などの観光地を中心に営業展開し、約3000台の貸出用車両を保有する。2008年7月に現株主のLUFTホールディングス(東京都港区)傘下となり、インバウンド(訪日外国人観光客)需要に支えられて順調に業容を拡大してきた。

取得価額は8億円。取得予定日は2019年8月1日。

 

チエル<3933>、高校生向け進学説明会を手がける昭栄広報とエーアンドシーを子会社化

◆チエルは、高校生向け進学説明会を手がける昭栄広報(東京都千代田区。売上高13億円、営業利益100万円、純資産10億4000万円)、エーアンドシー(同。売上高4200万円、営業利益500万円、純資産3500万円)の2社を子会社化することを決議した。

昭栄広報は1967年、エーアンドシーは2007年に設立し、現在、瀬戸渡氏が両社の社長を務める。チエルは昭栄広報の株式60.4%、エーアンドシーの全株式をそれぞれ取得する。エーアンドシーが昭栄広報の株式39.6%を保有する資本構成になっているため、間接保有分を含めて、チエルが昭栄広報株式を100%保有する形となる。

取得価額は昭栄広報が4億5300万円、エーアンドシーが2億3000万円。取得予定日はいずれも2019年6月26日。

チエルは授業支援やデジタル教材など学校教育のICT(情報)化事業を専業とする。昭栄広報とエーアンドシーはいずれも高校生を対象とした進学説明会を主力事業とし、高校のほかに大学、専門学校と接点を持つ。チエルは両社を傘下に取り込むことで、ICT化による事業拡大が可能と判断した。

 

五洋インテックス<7519>、医療観光のMNCを子会社化

◆五洋インテックスは、旅行業のMNC(東京都港区。売上高3650万円、営業利益29万8000円、純資産579万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。多角化の一環として取り組むメディカル(医療)ツーリズム事業の早期収益化が狙い。

MNCは2017年に設立し、医療や美容に関する旅行の企画を主力とする。五洋インテックスは旅行業の登録業者である同社を傘下に取り込むことで、直接、メディカルツーリズムを目的とした観光ツアーの手配が行えるようになる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月上旬。

 

新東京グループ<6066>、手続き中の全建設共同事業組合から福島・熊本の災害復興支援事業を取得

◆新東京グループは、子会社の新東京開発(千葉県松戸市)が民事再生手続き中の全建設共同事業組合(東京都東村山市、大原彩希代表)から7月1日付で福島県と熊本県での災害復興支援事業を取得することを決めた。

全建設共同事業組合は1979年に建売住宅の建築工事を行う目的で設立。東日本大震災以降は、被災地復興支援関連工事に事業転換した。宮城県、福島県、熊本県など震災各地での受注が拡大する中、重機などの設備購入の資金負担問題から経営状況が悪化し、4月4日付で東京地方裁判所に民事再生手続きを申し立てていたが、新東京グループがスポンサー企業として名乗りを上げた。

 

ルックホールディングス<8029>、イタリア発の革製品ブランド「IL BISONTE」を買収

◆ルックホールディングス(HD)は12日、イタリアの革製品ブランド「IL BISONTE(イルビゾンテ)」を世界で展開するBisonte Italia Holding S.r.l.(本社ミラノ)を7月1日付で買収すると発表した。ルックHDは1999年から「IL BISONTE」の日本での独占輸入販売を始め、現在、全国に41店舗を展開する。「IL BISONTE」事業はルックHDにとって最大規模の収益事業に成長しているという。買収金額は約109億円(アドバイザリー費用を含む)。

 

UEX<9888>、特殊鋼専門商社の住商特殊鋼を子会社化

◆UEXは、ステンレス鋼など特殊鋼鋼材の販売を手がける住商特殊鋼(東京都千代田区)の全株式を取得し子会社化することを決議した。子会社化に先立ち、住商特殊鋼は会社分割により自動車向け構造用鋼の販売事業を同社親会社の住友商事グローバルメタルズ(東京都千代田)に移管する。そのうえでUEXは会社分割後の住商特殊鋼の全株式を29億1700万円(アドバイザー費用を含む)で取得する。取得予定日は8月1日。

会社分割の対象事業を差し引いた後の住商特殊鋼の売上高は102億円(2018年3月期)。住商特殊鋼は1956(昭和31)年に設立した。ステンレス専門の鉄鋼商社であるUEXは同社を傘下に取り込むことで、物流拠点や配送体制の相互活用などで事業の効率化や競争力向上を目指す。

 

キリン堂ホールディングス<3194>、滋賀県の調剤薬局1店舗を取得

◆キリン堂ホールディングスは10日、子会社のキリン堂(大阪市)を通じて、滋賀県にある調剤薬局1店舗を9月1日付で取得すると発表した。相手先と譲渡価額は非公表。キリン堂は関西を中心にドラッグストアと調剤薬局のチェーンを展開する。

 

きちりホールディングス<3082>、外食フランチャイジーのインドネシアPT Kichiri Rizki Abadiを子会社化

◆きちりホールディングスは、インドネシアで同社外食ブランド「いしがまやハンバーグ」「CHAVATY」をフランチャイズ展開するPT Kichiri Rizki Abadi(ジャカルタ)の株式51%を取得し子会社化することを決議した。インドネシアでの出店を進めたうえで、東南アジアでの展開を目指す。取得価額は約3900万円。取得予定日は2019年7月31日。

PT Kichiri Rizki AbadiはきちりHDが手がける外食事業のフランチャイジーとして今年2月に、現地で貿易業や不動産業を営むPT Mahanaim Sejahtera Mandiriが全額出資で設立した。今回の株式取得により合弁形式で経営にあたることになる。

 

青山商事<8219>、カジュアル衣料「アメリカンイーグル」事業を譲渡

◆青山商事は、衣料販売子会社のイーグルリテイリング(東京都渋谷区)を通じて展開している日本国内でのカジュアル衣料「アメリカンイーグル」事業を、米American Eagle Outfitters,Inc.(AEO)に12月31日を期限として譲渡することを決議した。

青山商事は2010年に住金物産(現日鉄物産)と共同出資(日鉄物産10%出資)でイーグルリテイリングを設立し、AEOのフランチャイジーとしてメンズ・レディースのアメリカンカジュアル衣料を販売してきた。今回、青山商事グループ内の事業戦略上の理由から、2022年2月の契約期限を待たずに当該事業をAEOに譲渡することにした。当該事業の直近売上高は122億9400万円。

 

INEST<3390>、休眠中の情報処理サービス会社のEPARKマネーライフをトリプルヘッドに譲渡

◆INESTは、情報処理サービス子会社で現在休眠中のEPARKマネーライフ(東京都豊島区。売上高―、営業利益△49万6000円、純資産1660万円)の株式90%を、システム開発事業を手がけるトリプルヘッド(東京都港区)に譲渡することを決議した。EPARKマネーライフは2011年設立。譲渡価額は非公表。譲渡日は2019年6月7日。

 

ヒューリック<3003>、日本ビューホテル<6097>を子会社化

◆ヒューリックは7日、日本ビューホテルを株式交換により9月1日付で完全子会社化すると発表した。日本ビューホテルはホテル事業、結婚式場事業、遊園地事業を手がけるが、人手不足に伴う人件費上昇、少子化による婚礼需要の減少、地方遊園地の集客力低下などを背景に事業環境が厳しさを増している。このため、ヒューリックは従来の資本・業務提携関係から子会社化に踏み込む。子会社化を機に、日本ビューホテルはホテル事業に経営資源を集中する。

株式交換比率はヒューリック1:日本ビューホテル1.57で、日本ビューホテル株式1株に対してヒューリック株式1.57株を割り当てる。

両社は2015年10月に資本・業務提携し、ヒューリックが日本ビューホテルを持分法適用関連会社(持株比率約26%)としていた。日本ビューホテルは8月29日付で上場(東証1部)廃止となる予定。

 

沖電気工業<6703>、ブラジルATM子会社のサービス事業などを米NCRに譲渡

◆沖電気工業は、ATM(現金自動預け払い機)を製造するブラジル子会社の金融・リテール・サービス事業を、米NCR(ジョージア州)に譲渡することを決めた。生産機能などは譲渡範囲に含まれていない。当該事業を会社分割して新会社に移管し、この新会社の全株式を譲渡する。

沖電気は2014年にブラジルのItautec社のATM事業を取得し、現地子会社「OKIブラジル」(サンパウロ州)を設立。これまで収益改善に向けて抜本的な構造改革を進めてきたが、赤字が続いており、単独での事業継続は困難と判断し、金融機関に対するサービスやサポート業務などに関する事業を譲渡する。事業譲渡後は、NCRのブラジル子会社に対してATMモジュールを供給する。

譲渡価額は非公表。譲渡予定は2019年12月。

 

サーラコーポレーション<2734>、地場住宅会社の宮下工務店を子会社化

◆サーラコーポレーションは、地場住宅会社の宮下工務店(浜松市。売上高10億8000万円、営業利益7950万円、純資産8億3100万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

サーラコーポレーションは傘下のサーラ住宅(愛知県豊橋市)を通じて、愛知県、静岡県西部、三重県北部を中心に木造軸組工法による注文住宅の請負・施工、分譲住宅・土地の販売を手がけている。宮下工務店は1988年に設立し、浜松市内の北部を営業エリアとする。

取得価額は非公表。取得日は2019年6月6日。

 

エー・ディー・ワークス<3250>、内装工事の澄川工務店を子会社化

◆エー・ディー・ワークスは、内装工事の澄川工務店(東京都多摩市)の全株式を取得し子会社化した。澄川工務店は1987年に設立した。取得価額は非公表。取得日は2019年4月25日。同日付でエー・ディー・ワークスの米津正五副社長が澄川工務店社長に就いた。

 

ツルハホールディングス<3391>、秋田県大潟村のおおがたむら調剤薬局を子会社化

◆ツルハホールディングスは、おおがたむら調剤薬局(秋田県大潟村。売上高1億7200万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。おおがたむら調剤薬局は調剤薬局1店舗を運営する。取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月4日。

 

日本ライトン<2703>、コンタクトイメージセンサー組み立てのフィリピン子会社を台湾社に譲渡

◆日本ライトンはフィリピンでコンタクトイメージセンサー組み立てや半導体部品の加工・検査を手がける子会社のL&K INDUSTRIES PHILIPPINES, INC(売上高8億5700万円、営業利益△8120万円、純資産2億5400万円)の株式65%を、台湾の傑田企業股份有限公司(南投市)に譲渡することを決議した。

L&Kは2年前からフィリピンで、多機能センサー、スキャナーなどの読み取り部分に使われるコンタクトイメージセンサーの組み立て業務を行っている。傑田企業股份有限公司はコンタクトイメージセンサー事業で20年以上の実績を持ち、フィリピンに生産拠点の確保を計画していた。

譲渡価額は45万ドル(約4870万円)。取得予定日は2019年8月中旬。

 

長瀬産業<8012>、食品素材販売・加工の米Prinova Groupを子会社化

◆長瀬産業は食品素材の販売・加工を手がけるPrinova Group,LLC(イリノイ州。売上高841億円、営業利益45億3000万円、純資産96億1000万円)の株式93.6%を取得し子会社化することを決議した。取得価額は6億2100万ドル(約680億円)。取得予定日は2019年7月上旬。

Prinovaは1978年設立で、北米、欧州を中心に食品素材販売から配合品製造、最終製品の受託製造までをトータルに手がける。長瀬産業は2011年に買収した有力バイオ企業、林原(岡山市)の食品素材事業と合わせ、日本、アジア、米州、欧州における事業拡大を目指す。

 

日機装<6376>、粒子計測機器製造子会社のマイクロトラック・ベルなど内外2社を蘭社に譲渡

◆日機装は、粒子計測機器を製造するマイクロトラック・ベル(大阪市。売上高46億9000万円、営業利益5億1200万円)など内外子会社2社の全株式を、オランダの科学機器メーカーのVerder International B.V.に譲渡することを決議した。

譲渡するのはマイクロトラック・ベルのほか、米国でマイクロトラック粒子径分布測定などの製造を手がけるMicrotrac,INC.。日機装は両社を通じて、各種粉体計測機器を中心に事業展開しているが、今回、事業ポートフォリオ見直しの一環として、グループから切り離すことにした。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2019年6月中。

 

 

情報提供:株式会社ストライク

 [解説ニュース]

 介護施設等に入所後、相続が発生した場合の居住用財産の譲渡所得と相続税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(関口正二/税理士)

 

1.概要


新しい元号となり「人生100年時代」を見据えた生き方に対する対応が必要となっています。
配偶者の死別等により単身の高齢者が増加しています。一人暮らしを続けてきたものの、体調面から介護が必要となり、家族に迷惑をかけたくはない等との理由から自宅から介護施設等に入所するケースが今後も増加していくことが予想されます。
今回は、自宅から介護施設等の入所後に相続が発生した事例での税務上の取扱いを解説します。

 

2.介護施設等入所後、自宅の売買契約中に相続が発生した場合の譲渡所得と相続税の取扱い


【事例】

母は、亡父から相続した自宅の土地建物で一人暮らしをしてきましたが、介護施設の入所(入所時に入所一時金及び敷金支払済)を機に空き家となった自宅土地建物を譲渡するため不動産売買契約を締結しました。

 

不動産売買代金       総額  9千万円
売買契約日(2019年1月) 手付金   2千万円
残金決済日(2019年4月末) 残金  7千万円

 

しかし、残金決済日直前の2019年4月中旬に母に相続が発生しました。居住用財産の譲渡特例及び相続税の取扱いはどうなりますか。

 

【回答】
(1)譲渡所得の取扱い

 

土地建物の譲渡所得の金額の計算上「総収入金額に計上すべき時期」は、納税者の選択により「資産の引き渡しがあった日」または「譲渡契約の効力発生の日」のいずれかとすることができます。

 

「譲渡契約の効力発生の日」を選択して亡母の準確定申告で譲渡所得の申告をした場合には、亡母の居住用財産(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡)として居住用財産の譲渡特例(措法35)の適用が可能となり税務上有利となります。また、譲渡所得に係る個人住民税の納税義務者は譲渡した翌年の1月1日時点で住所地がある方となります。よって、亡母の譲渡所得の住民税は発生しないことになります。

 

また、「資産の引き渡しがあった日(残金決済日)」を選択し相続人の確定申告で所得税に係る譲渡所得の申告をすることも可能です。この場合には、相続人は居住していなかったため居住用財産の譲渡特例(措法35)は適用不可です。しかし、相続財産の譲渡として相続税の取得費加算特例(措法39)の適用は可能です。

 

 

(2)相続財産、相続債務の取扱い

 

売買契約中の土地等及び建物について、売主に相続が開始した場合には、相続等により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権となります。本事例では残金の7千万円が未収入金として相続財産となります。

 

相続財産が土地等ではないため小規模宅地等の相続税の課税価格計算の特例(措法69の4)の適用の検討は不要です。

 

相続発生により介護施設は退去と同様となり、入所時に支払った入所一時金(前払金)の一部及び敷金が相続人に返還されることとなります。この返還された金額は、亡母の金銭債権として相続財産に該当しますのでご注意ください。

 

また、上記(1)において「譲渡契約の効力発生の日」を選択することで亡母の準確定申告において発生した所得税等は、亡母の債務として相続税の債務控除の対象となります。

 

3.老人ホーム入所後の自宅敷地の小規模宅地等の特例


【事例】

母は、7年前に一人暮らしの自宅から介護付の老人ホームに入所しましたが2019年2月に相続が発生しました。自宅は、3年前からマイホームを持っていなかった次男家族が居住しています。
この自宅敷地について特定居住用の小規模宅地等の特例(措法69の4)の適用は可能でしょうか。

 

【回答】

老人ホームに入所したとしても、下記の要件を満たすことにより、従前の自宅敷地は特定居住用の小規模宅地等の特例が適用できます。

 

(1)被相続人が介護保険法等の要介護認定、要支援認定を受けていたこと(措令40の2②一)。
(2)入所施設が老人福祉法、介護保険法等に規定する一定の施設であること(措令40の2②一)。
(3)介護施設等入所後に、従前居住していた家屋を事業の用又は被相続人等以外の居住の用に供していた事実がないこと(措令40の2③)。

 

本事例では、母の施設入所後に自宅が新たに他の者(次男家族)の居住の用に供されているため、上記(3)の適用要件を満たしておらず、小規模宅地等の特例の適用はできません。介護施設等入所後の自宅の用途は、相続税申告において注意を要します。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/27)より転載

[解説ニュース]

相続時精算課税を選択した非上場株式に係る贈与税の納税猶予:贈与者よりも先に受贈者が死亡した場合

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

 

1.相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税


(1)概要

相続時精算課税は、その年の1月1日時点で20歳以上である個人が、同日時点で60歳以上である父母 又は祖父母(原則)から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」その他一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる税制です(相続税法21条の9等)。

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与の贈与者(「特定贈与者」)が死亡した場合、その適用を受けた受贈者(「相続時精算課税適用者」)の相続税額は、その死亡時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の贈与時の価額と、特定贈与者から相続又は遺贈(「相続等」)により取得した財産の評価額と合わせて相続税額を計算し、既に課された相続時精算課税による贈与税を控除して算出します(同21条の14、21条の15)。

(2)相続時精算課税適用者の有していた相続税の納税に係る権利義務の承継

特定贈与者の死亡以前に、その特定贈与者に係る相続 時精算課税適用者が死亡した場合、同適用者の相続人は、同適用者が有していた[相続時精算課税の適用を受けたことによる納税に係る権利又は義務]を承継します(同21条の17第1項)。

 

例えば、特定贈与者のAの死亡前に相続時精算課税適用者の長男Bが死亡した場合、Bの相続人は、Aが死亡した時に長男の代襲相続人としてAから相続で取得した財産の価額に、Bが相続時精算課税の適用を受けたAからの贈与財産の価額(Bが贈与を受けた時の価額)を加えて、Aに係る相続税額を計算します。

 

2.非上場株式等に係る贈与税の納税猶予(一般措置)


(1)概要

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当する会社で、同法による都道府県知事の認定を受けたものの株式について、その会社の代表権を有していた先代経営者(「贈与者」)から贈与を受けた受贈者が、一定の要件を満たすその会社の後継者(「経営承継受贈者」)である場合は、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式 (一定の部分に限る。以下「特例受贈非上場株式」)に対応する額の納税が、その贈与者の死亡の日まで猶予されます(租税特別措置法(措法)70条の7第1項)。

(2)特例受贈非上場株式に係る猶予税額の免除

(1)の猶予税額は、①その贈与者の死亡より先に経営承継受贈者が死亡した場合、②経営承継受贈者より先にその贈与者が死亡した場合のいずれのときにも、その全部又は一部が免除されます(同第15項1号、2号)。

(3)(2)②の場合の特例

(2)②の納税猶予の適用を受けていた場合において、経営承継受贈者より先に贈与者が死亡するなど一定の要件を満たすときは、経営承継受贈者は、(2)②のとおり猶予税額が免除されるものの、贈与税の納税猶予の適用を受けた非上場株式を贈与者から相続等により取得したものとみなされ(措法70条の7の3第1項前段)、相続税の課税対象とされます。
なお、この規定は、(2)①の場合には適用はありません(同かっこ書)。

 

3.贈与者よりも先に経営承継受贈者が死亡した場合(=2(2)①)の相続時精算課税に係る相続税額の計算


相続時精算課税を選択して贈与税の納税猶予の適用を受けた受贈者が贈与者よりも先に死亡した場合には、同適用者(=経営承継受贈者)の相続人は1(2)の適用を受け、贈与者が死亡したときに、同適用者が負う相続時精算課税の義務(特に1(2)の下線部の計算)を負うのではないかという疑問が生じます。

 

この点については、平成31年度税制改正により贈与者よりも先に経営承継受贈者が死亡した場合、2(2)より免除を受けた猶予税額に対応する特例受贈非上場株式については、1(1)の計算規定が適用されず、贈与者に係る相続税額の計算には含まれないこととされました(措法70の7第13項9号)。ただし相続時精算課税の適用を受けた同株式以外の財産には、原則通り1(1)の規定が適用されます。

 

なお「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例措置」(措法70の7の5)においても、上記と同様の取扱いがなされます(同第10項)。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/20)より転載

[解説ニュース]

底地の相続税法上の評価 VS 不動産鑑定士による評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

 

 

1 はじめに


相続財産の中に土地(宅地)があり、それが貸地、すなわち、借地権(普通借地権とします。)がある土地である場合、その土地のいわゆる底地としての相続税法上の評価額は、「通常の自用地(=借地権がない土地)としての価額からその借地権の価額を控除した金額」(借地権価額控除方式)であると規定されています(財産評価基本通達25(1))。上記「借地権の価額」については同27が「借地権の価額は、自用地としての価額に、借地権の売買実例価額、精通者意見価格などをもとに地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する」と定めていて、地価の高い地域ほどその割合も高くなり、東京の中心的商業地では80%~90%(よって底地は20%~10%)、住宅地では60%~70%(同40%~30%)の割合の場合が多いようです。なお、借地権の割合は10%刻みで30%~90%(国税庁のホームページで公表)です。

 

2 底地の相続税法上の評価(借地権価額控除方式)VS不動産鑑定士による評価


借地権価額控除方式により算定される相続税法上の底地の評価額に対し、納税者が主張する不動産鑑定士による底地の評価額はケースバイケースですが、国土交通省が定める不動産鑑定評価基準に従いながらも、低廉な地代を基準とした収益還元価格を軸に主張されることが多く、借地権価額控除方式による評価額のせいぜい半分程度になる場合が少なくないようです。後者の評価額の方が低いので、それを相続税の評価額として採用すれば、相続税額は当然低くなります。

 

しかし、一般的に、後者の評価額による相続税の計算はほぼ認められません。評価通達に従う税務署が認めないのはもちろん、たとえ裁判で争っても、特別な事情がない限り認められない場合がほとんどです。

 

3 底地の相続税法上の評価で不動産鑑定士による評価が認められない理由


まず、納税者側の不動産鑑定士による底地の評価が、その顧客である納税者の希望に沿って評価の引き下げを追求するあまり(?)、その底地に係る鑑定評価上の要素につき、不合理なことを無理に採用して、そこを課税当局から突かれ、主張する鑑定価額の合理性に疑問を生じさせてしまう傾向があります。そのような恣意的な評価をしていないとしても、根本的には次の理由(不動産鑑定士による評価の当否が争われた平成29年3月3日東京地裁判決などの判示を整理したもの) から、収益還元法を軸とする底地の評価自体が相続税法の評価では認められ難い状況にあります。

 

すなわち、底地の市場性は、借地権のそれとは全く異なる状況にあり、底地のみが売買されることがあるとしても、それは、借地契約の当事者間=借地人と地主間での売買が通常です。第三者への底地のみの売買については市場が相当限定され、その土地の近隣において純粋な第三者による取引事例は把握できないことが通常です。そして、以上の状況から、底地については、第三者と売買を行うような一般的な市場、そこにおける相場を想定することは困難であり、売買があるとすれば将来的に借地契約の当事者間において行われることが通常であるという特性を持つ財産である、という基本的な認識が覆し難いものとしてあります。

 

このような特性をもつ財産としての底地の客観的交換価値(これが時価の一般的意義で、相続税法上の時価の意味もこれです。)の把握では、①底地の状態が当分継続することを前提に、その状態で地代収入が生じることにより得られる経済的利益と②将来、底地の取引形態として通常である借地契約の当事者間での売買(借地権者による底地の買取等)が行われるであろうことを前提に、その売買により制限のない完全所有権に復帰することになるという経済的利益の二つ(の現在価値)を考慮すべき、ということになります。この考え方は、実は、鑑定評価基準における底地の価格の考え方とも基本的に一致しています。

 

以上により、将来的にも完全所有権への復帰がおよそ考え難いような特別な事情がある場合はともかく、借地契約終了後に完全所有権に復帰することが予定される通常の借地契約に係る底地の時価は、同契約存続中の地代等の純収益に基づく収益還元法による価値のみで捉えるべきではなく、同契約の終了後の借地権の負担のない所有権に対応する価値をも含むものとして捉えるべきということになります。上記の地代等による収益還元法による価値のみでは、底地の客観的交換価値=時価の全てを適切に表すとはいえない一方、その時点の自用地としての価額から借地権の価額を控除した価額とする方法は、その時価に接近する方法として相応の合理性があるといえます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/13)より転載

[解説ニュース]

不動産の財産分与があった場合の不動産取得税

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■離婚に伴い自宅を財産分与する場合の税務上の取扱い等-1/2 ~財産分与をする側~

■特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

 

1.財産分与とは


財産分与とは、相手方の請求に基づき、離婚した者の一方から相手方に財産を渡すことをいいます(民法768)。

 

2.不動産の財産分与があった場合の不動産取得税


離婚に伴う財産分与が以下の2要件を満たす場合には、「形式的に財産権の移転が行われることはあっても、当然の所有権の帰属を確認する趣旨にすぎず、これによって実質的に財産権の移転が生じるものではない」ため不動産取得税は課税されません。

 

しかし、これ以外の財産分与の場合には、「これによって実質的にその不動産所有権の移転が生じる」として不動産取得税が課税されます(東京地裁昭和45年9月22日判決、大阪高裁昭和51年1月27日判決、東京都「不動産取得税課税事務提要(平成30年3月30日改正)」)。

 

◆要件1  その財産分与が、実質的に夫婦の共有財産の分割と認められるものであること(下記3. (3)参照)

◆要件2  その財産分与が、婚姻中の財産関係を清算する趣旨のものであること(下記4. (1)参照)

3.夫婦の財産関係の分類


夫婦の財産関係は、次の3つに分類されます。
このうち、上記2.の要件1を満たすのは 下記(3)の実質的共有財産を財産分与の対象とした場合です。したがって、下記(1)のように夫婦の一方が相続や贈与によって取得した不動産や、婚姻前から所有していた不動産等を財産分与の対象とした場合、又は下記(2)のように夫婦の共有名義で登記されている不動産を財産分与の対象とした場合には、特段の事情がない限り、不動産取得税が課税されます(東京都「不動産取得税課税事務提要(平成30年3月30日改正)」第2章第3節1(3)エ、東京都「不動産取得税質疑応答集(平成28年4月1日改正)」6-⑩)。

 

 

4.財産分与の分類


財産分与は、次の3つに分類されます。
このうち、上記2.の要件2を満たすのは財産分与が下記(1)の清算的財産分与と認められる場合です。したがって、財産分与が慰謝料や離婚後の扶養料に相当する不動産の取得と認められる場合(下記(2)や(3)の場合)は、不動産取得税が課税されます。

 

5.具体例


(1) 婚姻期間中に夫婦で取得した不動産(登記名義:夫100%)を、財産分与により妻が取得した。
→ 上記4.(1)の清算的財産分与に該当すれば、不動産取得税は課税されない。

 

(2) 婚姻期間中に夫婦で取得した不動産(登記名義:夫1/2、妻1/2)の夫の持分1/2を、財産分与により妻が取得した。
→ 夫婦の共有持分割合が登記上明示されており、民法の規定により共有と推定される「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」(上記3.※印参照)ではないため、不動産取得税が課税される(ただし、納税者からの申し立て等により登記上の持分が実態と異なると推定される場合は、別途認定が行われる可能性がある)。

 

(3) 婚姻期間中に夫婦及び妻の父で取得した不動産(登記名義:夫6/10、妻の父4/10)の夫の持分6/10を、財産分与により妻が取得した。
→ 上記4.(1)の清算的財産分与に該当すれば、不動産取得税は課税されない。

6.最後に


財産分与が上記2.に記載する2要件を満たさない場合には、その財産分与により取得した不動産については、原則として、「固定資産税評価額(宅地は、固定資産税評価額×1/2)×3%」の不動産取得税が課税されます(地法73の15、73の21①、地法附11の2①、11の5①)。

 

ただし、財産分与の対象となった不動産に、その不動産を取得した者が居住する場合には、一定要件を満たせば、中古住宅を取得した場合の不動産取得税の軽減措置の適用を受けることができます。

 

離婚に伴い財産分与を受ける場合には、将来の税負担も考慮してどのような財産で分与を受けるか等、事前に検討し交渉する必要があると思われます。税負担の詳細については、税理士にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/04/22)より転載

[解説ニュース]

相続税法64条1項の同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用要件

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

1. はじめに


相続税法64条1項は、「同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合においてはその株主若しくは社員又はその親族その他これらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、相続税又は贈与税についての更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、課税価格を計算することができる。」と規定しています(赤字は筆者)。

 

この規定が適用されると、私法上は有効に行われた同族会社の行為等を税務上は否認した状態(なかったものとしたり、別の行為等に置き換えたりすること)に基づき評価通達によって相続財産の相続時の時価=課税価格を(申告より高く)評価することになります。

2. 上記1の否認規定の適用要件


表題の適用要件は次の通りです。

 

①対象となる法人は同族会社等(法人税法上の同族会社の外、特殊な要件を満たす法人も含みますが、後者の法人は稀です。)であること

②対象となる行為・計算は、同族会社等の行為・計算であること

③容認した場合(←そのまま否認しない場合、ということです。)、同族会社等の株主等の相続税等の負担を減少させる結果となること

④その税負担の減少が不当と認められること

 

このうち、①から③の判定は難しくありませんが、④の「税負担の減少が不当」か否かの判断は何をもって「不当」とするのか明確ではありません。

3. 裁判例が示す「不当」性の判断基準


以下では、相続税法64条1項の適用による否認の当否が争われた事件(同族会社のオーナー経営者(被相続人)が、癌によって死去する一月前に、時価をはるかに上回る価額でその同族会社の所有する土地・建物を買い取った行為が同項により否認、つまり、税務上なかったことにできるかが争われたもの)の裁判の大阪高裁平成19年4月17日判決で示された、同項の「不当」性の判断基準を示します。

 

同判決では、「確かに、…、相続税法 64条1項の同族会社の行為又は計算が相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるかどうかは、経済的、実質的見地において、当該行為又は計算が純粋経済人の行為として不自然、不合理なものと認められるか否かを基準として判断すべきもの」であるが、同項が、「同族会社が同族会社の株主等の租税負担回避行為に利用されやすく、これを放置すれば税負担の実質的な公平を図ることができないから、実質的な税負担の公平を図るために設けられた規定であり、この趣旨、目的に照らすと、ここでいう純粋経済人の行為として不自然、不合理なものかどうかは、同族会社の利益を図るという同族会社の株主ないし経営者としての立場に重きを置くのではなく、個人としての合理性を中心に考えるべきものである」と判示しました(赤字は筆者)。

 

そして、本件の時価をはるかに上回る価額で同族会社の所有物件を購入する行為については、「同族会社にとっては利益をもたらすもの(筆者注:株主ないし経営者としての立場に重きを置くと同族会社の利益が図られており、その意味で合理的)であるとしても、個人としては極めて不合理なものといわざるを得ない」と判示しました。つまり、「純粋経済人の行為として不自然、不合理なものと認められるか否か」についての判断は、この否認規定の趣旨に照らし、同族会社と取引行為を行った被相続人が、その同族会社と特殊な・親密な関係のない(と仮定した)一個人とした場合で判断するべきだ、ということです。換言すると、「独立当事者間」であるとした場合に通常行われうる取引といえるか、ということです。この判断基準は、この否認規定の制定趣旨に整合し妥当なものと思われます。

 

「不当」性につきこのように判断するということは、上記の経済的合理性を見る対象を、株主やその親族等を相手に上記のような取引を行った同族会社に限定しないということです。つまり、同族会社には経済的利益をもたらすものであっても、それだけではこの規定の適用を免れる理由にはならず、その取引自体の経済合理性、その相手にとっても不自然・不合理ではないかという点もチェックする、ということです。

4. 終わりに


この否認規定の適用の当否に係る裁判例はあまり多くないようですが、裁判例の数は否認例の数とイコールではありませんから、否認されない節税を考える際は、上記の不当性の判断基準に注意を払うことが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/04/15)より転載

[解説ニュース]

相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

1.相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税

相続時精算課税は、その年の1月1日時点で20歳以上である個人が、その年の1月1日時点で60歳以上である父母又は祖父母から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」その他一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる税制です(相続税法21条の9等)。

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与をした者(以下「特定贈与者」)が死亡した場合、相続時精算課税の適用を受けた受贈者(以下「相続時精算課税適用者」)の相続税額は、その死亡の時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の贈与時の価額と、特定贈与者から相続又は遺贈(以下「相続等」)により取得した財産の評価額と合算して相続税額を計算し、既に課された相続時精算課税に係る贈与税を控除して算出します(同21条の14、21条の15)。この場合において、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを、特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(同21条の16第1項)。

2.個人が非上場株式を発行会社に譲渡した場合の税務

(1)みなし配当課税となる部分

個人が所有する非上場株式をその発行会社に譲渡する場合には、その会社はその時の株式の価額を対価として株主に支払います。この場合に、個人株主が発行会社への株式の譲渡対価として取得した金銭等の額のうち、[その譲渡株式に対応する発行会社の資本金等の額]を超える額は”発行会社からの配当”とみなされ(みなし配当)、配当所得の金額の収入金額とされます(所得税法25条1項5号)。この配当所得の金額は総合課税の対象となり、他の所得と合算されて最高 55.945%の税率(所得税+復興特別所得税+住民税)で課税されます(所得税法89条等)。

 

(2)株式譲渡所得となる部分

個人株主が非上場株式を譲渡した場合、通常その譲渡対価が譲渡所得の金額の総収入金額となりますが、発行会社による自己株式の取得の場合、(1)の通り譲渡対価の形で受領した金銭の一部は配当とみなされ、その配当とみなされる部分を譲渡対価から控除した残額が譲渡所得の金額の総収入金額となります。その総収入金額から取得費と譲渡費用を差引いて、譲渡所得の金額が計算されます。この譲渡所得は他の所得と分離され、20.315%の税率で課税されます(租税特別措置法(措法)37条の10第1項等)。

 

(3)相続等により取得した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合のみなし配当課税の特例

相続等により非上場株式を取得(相続税法および租税特別措置法の規定により、相続等による財産の取得とみなされるものを含む)した個人のうち、その相続等につき納付すべき相続税額のあるものが、その相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、その相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、一定の手続の下で、その譲渡対価の全額が株式に係る譲渡所得として課税されます(措法9条の7第1項、第2項)。

3.相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

個人が相続時精算課税の適用を受けて生前贈与により非上場株式を取得したものの、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合には、その者が他の要件を全て満たすときであっても、上記2(3)の「みなし配当課税の特例」の適用が受けられないのではないかという疑問が生じます。

 

この点については、2(3)の太字の通り、相続等による財産の取得には相続税法の規定により相続等による財産の取得とみなされるものを含むとされます。また、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、相続税法21条の16第1項により、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合でも、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(1の下線部参照)。ゆえに表題の場合においても、一定の手続の下、2(3)の特例の適用を受けることができます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/04/08)より転載

[解説ニュース]

小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等の規制強化

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

■配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例・物納の取扱い

 

1.はじめに


相続税の合法的な節税につながる制度として、一般に知られている「小規模宅地等の特例」について、またしても行き過ぎた節税に規制が入ります。平成31年度税制改正大綱により、明かになりました。この小規模宅地等の特例に規制が入るのは、昨年度に続くものです。

2.小規模宅地等の特例とは?


小規模宅地等の特例とは、被相続人等の商売の敷地(特定事業用宅地等)や自宅の敷地(特定居住用宅地等)、貸家の敷地(貸付事業用宅地等)を親族が相続した場合に、一定要件のもと、その土地の課税価格の一定割合が減額される税制上の特典です。主な宅地の種類と上限面積、減額割合は次の表とおりです。

 

この特例が設けられた趣旨は、居住や事業を継続する相続人の生活基盤となっている財産については納税のため売却せずに済むように守るためといわれています。

 

最近のデータによると、相続税増税が実施された平成27年以降、年間3,000件程度の適用件数となり、直近の平成28年は特定事業用宅地等による小規模宅地等の特例の適用件数は、3,895件、適用した相続人は4,772人でした。

 

特定事業用宅地等による小規模宅地等の特例の適用ケースのうち、相続税を支払ったケースは3,074件、その相続人は3,786人、減額される金額は約292億円でした。反対に小規模宅地等の特例の適用等により、相続税の支払いがなかったケースは821件、その相続人は986人、減額される金額は約78億円でした。

3.規制の内容


平成31年度の税制改正では、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等を除外することとされました。

 

ただし、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合は、特定事業用宅地等の範囲に入ることとされます。要するに、相続直前に事業を開始した形にして節税するのを規制するということです。

 

この改正は、平成31 年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用され、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用しないこととされています。

昨年度の税制改正では「貸付事業用宅地等」の改正が行われ、相続開始前3年以内に貸付事業を開始した宅地は貸付事業用から除外する改正が行われましたが、今回の改正もほぼ同様です。

4.今後のこと


ただ、平成31年度与党税制改正大綱では、制度の趣旨から逸脱した節税に対し今後さらなる規制強化を検討することも次の通り書き込まれています。

 

「現行の小規模宅地特例について、貸付事業用の小規模宅地特例の例にならい、節税を目的とした駆け込み的な適用など、本来の趣旨を逸脱した適用を防止するための最小限の措置を講ずる。その上で本特例については、相続後短期間での資産売却が可能であること、債務控除の併用等により節税の余地があること、事業を承継する者以外の相続人の税額に効果が及ぶことなどの課題があることを踏まえ、事業承継の支援という制度趣旨を徹底し、制度の濫用を防止する観点から同様の課題を有する貸付事業用の小規模宅地特例と合わせて、引き続き検討を行っていく」(第一 平成31年度税制改正の基本的考え方、②デフレ脱却・経済再生、地方創生の推進⑵中堅・中小・小規模事業者の支援)。

 

現在、多額の借入れにより賃貸マンションを購入し相続を迎え相続税申告したケースで、賃貸マンションの土地等について、国税庁の財産評価基本通達に従い、貸家建付地等であることに伴う評価減の適用をめぐり、行き過ぎた節税だとして評価減が否認された事例が裁判になっています。このケースでは、否認後の賃貸マンションの敷地の評価額は時価とされましたが、小規模宅地特例の適用は認められており、争点とはなっていません。しかし、このような事例が行き過ぎた節税との見方が政府内で固まれば、早晩更なる規制をかけることを大綱がほのめかしたものとみることができます。今後の改正動向に注意が必要になっています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/04/01)より転載

[解説ニュース]

非上場株式の贈与税の納税猶予(特例措置)の当初5年間の納付期限の確定事由

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

 

1.はじめに

表題の納税猶予を選択するかどうかの判断においては、その適用後に猶予されている税額の納付期限が確定=猶予金額を一定の利子税(今年の率は年0.7%)とともに納付しなければならなくなる一定の’事由’が法定されていること(措法70の7の5③⑥⑧、同70の7③④⑪)を知っておくことも重要です。

 

今回は、表題の特例措置の適用により納税が猶予されている税額について、その贈与税の申告書の提出後の特例贈与経営承継期間(例外的なケースを除き、その申告期限の翌日から5年間。下記「2」ではその5年間を前提に記述します。)中に納付期限の確定を招くことになる事由を整理します。「2」で挙げる事由は、相続税の納税猶予の特例措置でも、また、贈与税・相続税の納税猶予の一般措置でもほぼ同様ですが、一般措置の場合は、贈与時の雇用の8割以上をその5年間の平均で維持できなかった場合(*)が加わります。

 

なお、以下「受贈者」とは、表題の特例を適用した受贈者を意味し、「対象会社」とは同特例の対象になっている株式の発行会社を意味します。

2.5年間の納付期限の確定事由

(紙幅の関係上、各事由の例外的取り扱いは一部を除き割愛しています。)


次の各事由(場合)に該当すると、該当することになった日から2カ月後が猶予されている税額(全額)を納付しなければならない日となります。

 

(1)その受贈者が対象会社の代表権を有しないこととなった場合(身体障害者手帳の交付を受けた場合などやむを得ない理由があるときを除く。)
(2)その受贈者及びその受贈者と政令で定める特別の関係がある者(親族がほとんどですから、以下「親族等」といいます。)の有する対象会社の株式の議決権の数の合計が議決権総数の50%以下となった場合
(3)受贈者の親族等のうちいずれかの者が、その受贈者が有する対象会社の議決権の数を超えるその議決権を有することとなった場合
(4)その受贈者が対象会社の株式の一部又は全部の譲渡又は贈与をした場合
(5)対象会社が会社分割をした場合で、その会社分割に際して吸収分割承継会社の株式を配当財産とする剰余金の配当があつた場合
(6)対象会社が解散(合併を除く。)をした場合
(7)対象会社が資産保有型会社又は資産運用型会社のうち一定のものに該当することとなった場合
(8)対象会社の事業年度における総収入金額(主たる事業活動から生ずる収入の額)が零となった場合
(9)対象会社が会社法の規定により資本金の額の減少をした場合又は準備金の額の減少をした場合(資本金と準備金の間で振替によるものや欠損金の額までの準備金の額の減少を除く。)
(10)その受贈者が納税猶予の適用を受けることをやめる旨の届出書を所轄税務署長に提出した場合
(11)対象会社が合併(措法70の7③13の「適格合併」は除く。)により消滅した場合
(12)対象会社が株式交換等(同項14の「適格交換等」を除く。)により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合
(13)対象会社の株式が上場株式となった場合
(14)対象会社又は議決権総数の50%超が同会社に保有されているその子会社などが風俗営業会社に該当することとなった場合
(15)対象会社が発行する拒否権付き株式(黄金株)をその受贈者以外の者が有することとなったとき
(16)株式会社である対象会社がその株式の全部又は一部の種類を株主総会において議決権を行使することができる事項に制限のある株式に変更した場合
(17)持分会社である対象会社が定款の変更により受贈者が有する議決権の制限をした場合
(18)贈与者が対象会社の代表権を有することとなった場合
(19)贈与税の申告書の提出期限の翌日から一年経過する毎に、その5カ月後の日までに、引き続いて納税猶予の適用を受けたい旨及び対象会社の経営に関する所定の事項と書類を記載・添付した届出書を所轄税務署長に提出しなかった場合

 

前記1の*の場合、特例措置では、それ自体は納付期限の確定事由となりませんが、都道府県知事へその理由等の報告を行い、その「確認」を受けることとなっています(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則20①外)。もし、その理由等によりその「確認」が得られず、知事から「確認書」が交付されないと、それは上記届出書の要添付書類の一つである(措令40の8の5⑳外)ため、適法な届出書の提出ができないことになります。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/03/18)より転載

[解説ニュース]

配偶者居住権等の評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例・物納の取扱い

■配偶者居住権が消滅した場合の相続税・贈与税の取扱い

 

 

1.はじめに


民法改正により、2020年4月1日以後の相続から、被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺産分割又は遺言によって、「配偶者居住権」を取得することができるようになります(新民法1028①)。

本号では、配偶者居住権等の評価につき、改正法案をもとに、具体的な事例にて解説します(以下、わかりやすさを優先し、算式等を簡略に記載しています)。

2.事例の前提


◇夫は、自宅の建物につき、遺言により、妻に配偶者居住権を、長男にその建物の所有権を取得させた。
◇存続期間は妻の終身であり、夫死亡時、妻は80歳。
◇建物は、軽量鉄骨造(骨格材の肉厚3.5㎜)であり、耐用年数の1.5倍は60年(図表1参照)、築後経過年数は15年、残存耐用年数は45年
妻の平均余命は11年、これに応じる法施行日現在の法定利率による複利現価率は0.722(図表2参照)。
◇建物(自用)の評価額は10,000千円、土地(自用)の評価額は30,000千円。

3.建物の評価の考え方(新相法23の2①②)


(1) 長男が取得した配偶者居住権付建物の所有権

①考え方
配偶者居住権の存続年数経過時における建物の評価額※の現在価値をその評価額とする。
(= 建物(自用)の評価額÷残存耐用年数(図表1c×存続年数経過後の残存耐用年数(図表1e)×複利現価率
※建物は残存耐用年数にわたり減価する前提で計算。

②評価額
10,000÷45年×34年×0.722=5,455千円

 

(2) 妻が取得した配偶者居住権

①考え方
建物(自用)の評価額から、長男が取得した上記(1)②の評価額を控除した残額。

②評価額
10,000-上記(1)②=4,545千円

4.土地の評価の考え方(新相法23の2③④)


(1) 長男が取得した配偶者居住権付建物の敷地の所有権

①考え方
配偶者居住権の存続年数経過時における土地の評価額※の現在価値をその評価額とする。
(= 土地(自用)の評価額×複利現価率
※土地は残存耐用年数において減価しない前提で計算。

②評価額
30,000×0.722=21,660千円

 

(2) 妻が取得した配偶者居住権に基づく敷地の利用権

①考え方
土地(自用)の評価額から、長男が取得した上記(1)②の評価額を控除した残額。

②評価額
30,000-上記(1)②=8,340千円

5.最後に


本事例の場合、長男は合計27,115千円(上記3(1)②+上記4(1)②)、妻は合計12,885千円(上記3(2)②+上記4(2)②)、2人合計で40,000千円の評価額の財産を取得することになります。

 

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税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/03/25)より転載

 

[解説ニュース]

遺産分割に伴う相続税更正請求時の自社株評価で税金裁判

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

1.はじめに

相続税の更正の請求の特則を巡る税金裁判で、東京地裁は異例の判決を下しました(平成30年1月24日)。争点となったのは、主に相続財産である製造業グループの不動産管理会社(中会社)の非上場株式の評価が、遺産の未分割状態での当初申告と異なる評価額により行うことが認められるかどうかでした。ただ問題となった製造業グループ中心の大会社の非上場株式の評価について、以前に税務訴訟が提起され、納税者側が勝訴していたことが事態を複雑にしたようです。

 

その裁判では、主たる争点の1つにおいてグループ中心の大会社の保有資産の金額に占める株式の金額の割合が25%以上だからといって同社を株式保有特定会社と認定するのは時代にあわないとして、更正処分で採用された純資産価額を反映させた評価額ではなく、類似業種比準方式による評価額が認められています。これにより、同じく相続財産であった同社の子会社である不動産管理会社(中会社)の株式については、親会社の株式を70%以上保有して「株式保有特定会社」であったため、純資産価額方式で評価され、正しく計算し直した評価額が認定されていました(東京高裁平成25年2月28日・確定)。

 

これにより、国税庁は後に、株式保有特定会社と認定する株式の保有割合を25%以上から50%以上に変更する財産評価基本通達の改正を行ったことはよく知られています(「財産評価基本通達における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準の改正について」国税庁平成25年5月)。

 

 

2.相続税の更正の請求の特則とは

相続税では、未分割の財産の相続税の計算については、とりあえず各相続人が法定相続分で相続したものとして課税価格や税額を計算することになっています(相続税法55条)。その後分割されていなかった財産の分割協議が成立し、実際に相続する割合が変わって当初申告時の課税価格と異なる場合がでてきます。こうして課税価額が減額した場合には、このことを知った日の翌日から4か月以内に限り、その分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、その相続人は更正の請求(特則)をすることができるとされています(相続税法32条)。

 

 

3.争いの内容

上記の東京地裁異例判決の事案では、納税者が法定相続分で当初申告していた相続税につき、その際の税務訴訟でグループ中心の大会社の評価で類似業種比準方式が認められたことから、この評価を前提に正しく計算し直して認定した不動産管理会社(中会社)の株式の評価額を利用して遺産分割協議が調ったことに伴う更正の請求をしていました。というのも、上記の財産評価基本通達の変更という後発的な事由により更正の請求をするにしても、法定申告期限等から5年を経過している場合には法令上、減額できなかったからです。しかし当局が当初申告の株評価で請求すべきだとして更正処分をしたため争いになったわけです。

 

 

4.裁判所の判断

東京地裁は判決で、更正の請求の特則について「原則として、遺産分割によって財産の取得状況が変化したこと以外の事由、すなわち申告または従前の更正処分における個々の財産の価額の評価に誤りがあったこと等を主張することはできない」と解されると説示しました。

 

ただし、東京地裁はこの事案における相続税の更正の請求の特則の適用に当たり次のような問題点を指摘しました。①以前の裁判の判決が「課税価格および納付すべき税額につきその更正処分における金額と異なる金額を認定し、更正処分の一部を取り消すこととなった場合には、後の相続税法32条1号に基づく更正の請求(中略)の際の計算において、従前の更正処分における個々の財産の価額のうち判決によって変更を受けたものをそのまま計算の基礎にすべきではない」。②しかし「その価額を申告における価額と置き換えることもその価額が従前の更正処分によって変更を受けている以上、判決がその変更前の価額を相当とする旨を判示しているのでない限り、相当ではない」。このため東京地裁は、「争点となった個々の財産の評価方法や価額に係る認定・判断ならびにこれらを基礎として算定される課税価格および相続税額に係る認定・判断に、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定および法律判断として行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力が生じている(中略)、後の相続税法32条1号に基づく更正の請求(中略)に係る事件についても同一の被相続人から相続により取得した財産に係る相続税の課税価格および相続税額に関する事件であることに変わりがない以上、行政事件訴訟法33条1項にいう「その事件」として、上記の拘束力が及ぶものと解するのが相当」と判断、過去の税務訴訟で認定された株式の評価額も税務当局を拘束するとしています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2018/12/03)より転載

[解説レポート]

従業員承継 ~株式買取資金不足時の問題点~

 

[解説]

税理士法人山田&パートナズ 税のシンクタンク事業部 天木雪絵

 

[内容]
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.従業員承継における株式買取資金~統計からみる自社株評価額~
Ⅲ.後継者の資金力不足への対応策
Ⅳ.経営権の移譲のみが行われる場合の問題点
Ⅴ.対策
Ⅵ.結び

Ⅰ.はじめに 

『今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3割)が後継者未定。』

『現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性。』(出典:経済産業省「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」平成29年10月)との試算が経済産業省から発表された。

こうした後継者不足の背景には、従来、経営者の子を中心とした親族へ事業を承継する「親族内承継」が圧倒的多数を占めていたものの、近年では経営者が世襲制に拘らず、子どもの職業に対する自由選択を尊重するようになったこと、また、経営環境が激しく変化する中で自社事業の将来性に対する不安から、親族内で後継者のなり手が減少していることが大きく影響していると考えられる。このままでは後継者がみつからずに廃業の危機を迎える企業が多数生じてしまうことになる。

しかし、後継者不足が叫ばれる一方、ここ最近における特徴的な動きとして「親族外」の承継が増えている。従来多数を占めていた親族内承継は約7割から約4割まで減少し、代わりに「親族外」の承継が約6割を占めるようになった(図表1)。

「親族外」への事業承継と一口にいっても、社内昇格として親族外の従業員に事業を承継(従業員承継)する場合もあれば、取引先などの外部から招聘して事業を承継する場合、さらには全くの第三者に対しM&Aにより事業承継を行う場合もある。

 

 

 

“親族内に後継者がいない”場合、親族外の中でも真っ先に後継者候補にあがるのは、やはり社内の役員・従業員であろう。中小企業の事業承継においては、それまで企業内で培ってきたノウハウや風土を十分に理解し、引き継いでいくことが非常に重要であると考えられることから、その企業の中で育った従業員が承継する場合には、企業のDNAをしっかり引き継げる可能性が高くなる点で、優れている方法といえる。また、親族に限らず広い範囲で優れた人材を選ぶことができるという点で親族内承継よりも優れている。先代経営者にとっても、よく見知った人材に引き継ぎを行うことの安心感などもあるだろう。

しかし、従業員承継については、それまではサラリーマンに過ぎない従業員が後継者となるため、現経営者からオーナー権を引き継ぐための株式購入資金を準備したり、購入資金を借り入れた場合の返済金の工面について問題となるケースが多いとの調査結果がでている(図表2赤枠)。

そこで、2017年発表の法人企業統計にもとづき、従業員承継における株式購入のための資金がどれ位必要とされるかを試算の上、その資金が不足する場合におきやすい「経営権(代表権)のみの移譲が行われる場合」の問題点と対策について検討する。

 

 

 

Ⅱ.従業員承継における株式買取資金 ~統計からみる自社株評価額~

(1)従業員後継者が100%の株式を買い取ると仮定した場合の必要資金を試算

事業承継では、2つの地位の移行の検討が必要となる。先代経営者から後継者への①経営権(代表取締役としての地位)の移行と、②オーナー権(株主としての地位)の移行である。①の経営権の移行は、株主総会や取締役会での「選任決議」と「登記」という代表取締役の変更手続きにより実現する。しかし、②のオーナー権の移行は、一般に先代経営者から後継者への株式の移転として行われるため、贈与等による場合を除き、後継者が株式買取資金を用立てし、先代経営者から買い取ることが必要となる。

 

では、後継者がオーナー権として株式を買い取るといった場合、購入資金としていくら用意したらよいか。

 

①株価算定法

第三者との間で行われるM&Aでは、株価算定法としてよく利用されるものとしてDCF法や時価純資産法(*1)などが広く紹介されている。M&Aでは通常、独立した第三者間で成立した「売買価格」によって取引がおこなわれる。そしてこれは市場原理が働いた交渉の末の客観的な売買価格である。そして、税務上もこれを以て適正な時価と考えることが多い。

しかし従業員承継では、先代経営者と後継者の間に特別な関係が生じやすいため、税務上は両者間で決めた「売買価格」には、恣意性が介入しているとされる可能性があることから、税務上で定められている計算方法により算出された時価をベースに価格を算定することが多い。そこで、ここでは、個人間の株式譲渡を相続税法上の時価をベースに行うものと仮定した場合に必要となる株式買取額を、財務省の法人企業統計調査の財務数値を用いて試算する。(前提:会社所有資産に含み損益はないものとする。)

 

(*1)中小企業庁のマニュアルにおいては、企業価値算定方法の例として「時価純資産+のれん代(経常利益2年分)」と紹介されている。

 

②役員退職金支給の加味について

多くの会社では社長や会長が役員を退任するという場合には、役員就任期間中の功績に報いる形で役員退職金(役員慰労金)が支給されることが多い。役員退職金は高額に及ぶことが多く、その支給により株価に引き下げ効果をもたらすことが多いため、本レポートで自社株評価を行うに当たっては、役員退職金支給を加味した上で試算を行うものとする。

なお、試算で採用する役員退職金の額は、税務研究会による「役員給与・役員退職給与の実支給額調査(2014年実施・2017年実施)」のアンケート結果に基づいて算定した、下記資本金規模別の支給実績の平均値を採用している。

 

 

 

③主な業種別の自社株評価の試算結果(1社当たり)

下記図表4は、上記①及び②の前提を踏まえ、いくつかの主要な業種について、資本金階級別に法人企業統計調査の財務数値に基づいて、役員退職金支給後の1社あたりの自社株評価額の算出を試みたものである。

自社株評価については、個別の会社ごとの事情により全く違う結果をもたらすが、おおよその傾向を掴むことはできるのではないだろうか。

 

 

多くの業種において、資本金1000万円未満の母集団については、役員退職金を支払えば、株価を限りなくゼロに近づけることが可能との結果となった。この場合には後継者の買取資金について大きな課題となる場面は少ないと考えられる。

しかし、資本金が1000万円を超えて5000万円未満の母集団では、その1社あたり平均評価額は2000万円~1億円程度となっており、更に資本金が5000万円超~1億円未満の母集団では、その1社あたり平均評価額は約2億~6億円に達している。あくまでも平均値であることを考えれば、実際の評価がもっと高くなる企業もあろう。ここまで株価が高くなると、後継者の自己資金だけですべての株式を購入することはかなりの困難を伴うと考えられる。

 

Ⅲ.後継者の資金力不足への対応策

(1)株式取得資金不足時の具体的対応策

上記Ⅱで確認したように、中小企業といえど大きく成長した企業については、後継者が自己資金のみで先代経営者から株式の買い取りを行うことは難しいと思われる。

これを解決するための株式取得の手法として下記のような対応策が検討されることが多い。

 

① 金融機関を活用したMBO

金融機関を活用したMBOは、①後継者が自己資金を元手に法人を新たに設立し、②その法人が金融機関から借り入れを行い、③その借入れた資金をもって法人が先代経営者から株式を購入する方法である。

法人が事業収入で得るキャッシュフローを返済原資として返済を行っていくこととなる。事業規模が大きくなるにつれ、弊社が関与した直近の事例をみてもこの金融機関を活用したMBOの利用率は高い傾向があるが、それでも資金が足りないときは、投資ファンドなどからの出資を検討することになる。

 

② 日本政策金融公庫による融資
個人は通常公庫の融資対象とはならないが、経営承継円滑化法(*2)における都道府県知事の認定を前提に、後継者個人が株式取得資金の融資を受けることができる制度が設けられている。あくまでも個人での借入であることから役員報酬や配当金収入の手取り等から返済することとなる。

 

(*2)経営承継円滑化法・・・ 「中小企業における経営の承継円滑化関す法律」 の略

 

③ 事業承継税制を活用した贈与
贈与税にかかる非上場株式の納税猶予制度といい、一定の要件を満たすことで、後継者は先代経営者から贈与税の負担なく贈与により株式を取得できる制度である。平成27年1月1日以降の贈与から適用対象者が拡大し、親族外承継による株式の贈与についてもこの納税猶予制度の適用を受けることができるようになった。

 

(2)対応策の限界と経営権の移譲

上記(1)に掲げた対応策は、いずれも外部金融機関や先代経営者の協力をもって成立する。すなわち、上記①及び②はいずれも金融機関の審査を通過できて初めて利用が可能となる点で、ハードルがある。また、③の納税猶予制度も、無償での株式移転を前提とすることから、先代経営者が創業者利益等を受け取りたいという希望を有している場合には実現が難しい。こうした状況では、上記のいずれの対応策も利用ができず、株式の移転がほとんど出来ないケースが発生しうる。

それではせっかく社内に事業を引き継ぎたいと思う後継者がいるにもかかわらず、後継者に株式を買い取る資金力がないため、従業員承継をあきらめるしかないのか、というとそういうわけでもない。この場合、経営権の移譲が先行して行われることがある。つまり社長の交代だけが行われ、後継者が「雇われ社長」の状態となる。

 

※東京商工会議所が経営者に対して行ったアンケートでは、「Q.(後継者を従業員、社外から登用とする場合において)株式の承継をどうする予定ですか。」との問いに、約30%の経営者が「経営者一族が引き続き保有」する予定と回答し、先代経営者一族が保有を続ける可能性を示唆している。(図表5)

“資金調達ができるまで”なのか、”恒久的に”なのかは不明であるが、経営権のみの移譲が行われる可能性がある。

 

 

Ⅳ.経営権の移譲のみが行われる場合の問題点

経営権の移譲のみが行われた場合、株主≠社長となり、いわゆる所有と経営が分離した状態となる。この状態においては、どのような問題が生じうるであろうか。下記に問題点を挙げる。

 

① 雇われ社長は長期的視点に立った株式価値増大のための経営を行うことが難しい

雇われ社長は、株主総会において議決権を持たず、役員の選任権・解任権を持たないことから、常にオーナーの意向を気にかけなければならない。そのため、目の前の利益を優先する短期的視点にたった経営を強いられたり、自己の経営方針に沿った“自由な経営”や“機動的な意思決定”を行うことが難しい立場に置かれる可能性がある。また、株式が自己の財産ではないことから、リスクを負った上での組織変革や事業再編等への敷居が高く、革新的な取り組みが難しい場面も考えられる。こうした要素が現実化した場合には、長期的には先代経営者が高めた株式の価値を喪失してしまうリスクがある。

 

② 雇われ社長の利益と、オーナーの利益が一致していないことによる経営基盤の弱体化の可能性

後継者とオーナー間の関係が、これまでの雇用的関係から委任関係に移行するにあたり、コミュニケーションが不足すると報酬や待遇に関して両者の間で認識のズレが発生しやすく、両者の信頼関係が崩れた場合には、経営基盤の弱体化につながる可能性がある。

 

③ 相続税の納税資金確保の問題

経営権のみの移譲をすることで、先代経営者の手元には、売却して換金することが難しい財産が残ってしまう。高額財産を保有し続けることになり、多額の相続税の納税資金の確保の問題が残る。また経営者と株式の所有者が異なる為、事業承継税制も使えない。

 

④ 株式分散のリスクが高い

社長以外の者が株式を所有することで、株式集約の管理が難しくなり、特に先代経営者の相続を迎えるタイミングで、株式が分散するリスクが高まる。また、株主の交代が起きた場合において、新しい株主から急な経営方針の変更を迫られ、経営に混乱をきたす危険性もある。

 

Ⅴ.対策 

これらの問題を解決するためには、オーナー(先代経営者)が、自身の相続税の納税資金の確保を行うとともに、企業の継続的な成長に向け、経営権交代後にあっても後継者に所有権を円滑に集中させるための協力を惜しまないことが必要となる。所有と経営の一致を実現にむけて、具体的には下記のような対策が考えられる。

 

①後継者の議決権確保への協力

段階的な株式移転、株式買取資金の調達に向けた役員報酬の増額、無議決権株式等の種類株式への変更承認、議決権確保に向けた計画の作成協力等、後継者と共に議決権確保への道筋を計画し、共有する。

 

②後継者と先代経営者による話し合い

社長交代後の報酬や待遇、個人保証の引継ぎ等についての各種条件の取決めや、経営方針についての確認等を社長交代までに話し合い、明確にしておくことで、後継者と先代経営者の良好な関係を維持する。

 

③株式分散のリスクの回避への対策

安定株主の確保のための従業員持株会の導入や金庫株への協力、相続人等に対する売渡請求を導入するための定款変更への承認等が考えられる。

 

Ⅵ.結び

中小企業において、円滑な経営を行う為には所有と経営は切っても切り離せない関係にあり、経営権だけを移転すればよいと割り切れるものではない。しかし実際には経営権の移譲が先行し、株式移転できないままのケースが多く発生すると思われる。所有と経営が不一致である状態により問題が生じやすい点について、社長の交代により初めて向き合うことも多いだろう。

こうした問題について周知があまりされていないように思う。経営の安定化に向けて、役員の選・解任権が与えられる議決権割合50%超の保有となる株式移転をめざし、もしくは、それよりも少ない株式保有であっても効果的な議決権を確保できる体制をめざして、計画的に、そして確実に実現していけるよう、先代経営者も後継者も前向きに取り組んでいくべきと考える。

 

【参考文献】

・「経営者のための事業承継マニュアル」中小企業庁 2017年3月

・報告書「事業承継の実態に関するアンケート調査」東京商工会議所 平成30年1月

・レポート「親族外承継に取り組む中小企業の現状と課題」日本政策金融公庫総合研究所 2018年6月

・記事「最強オーナー社長の知恵」週刊ダイヤモンド 2018年4月14日号

・「事業承継に活かす従業員持株会の法務・税務(第3版)」中央経済社 牧口晴一・齋藤孝一著 2015年12月

・「非公開株式譲渡の法務・税務(第5版)」中央経済社 牧口晴一・齋藤孝一著 2017年6月

・「資産・事業承継対策の現状と課題」大蔵財務協会 品川芳宣著 2016年12月

・「事業承継・相続対策の法律と税務(五訂版)」税務研究会出版局 PwC税理士法人編 2018年8月

・論文「中小企業における所有と支配の分離」-経営者保証による最終決定権の確立- 嘉悦大学大学院 津島晃一著 2016年

 

 

 

 

 

税理士法人山田&パートナーズ

レポート『従業員承継 ~株式買取資金不足時の問題点~』(平成30年9月25日付)より転載

[解説レポート]

組織再編税制における適格要件の緩和

 

〈解説〉

税理士法人山田&パートナーズ(南里 征興)

 

 

~~スピンオフ税制の概要と税制改正の影響~~

免許や許認可等が必要な事業についても
円滑なスピンオフの実施が可能になりました。

 

税制改正の趣旨

平成29年度税制改正により創設された「スピンオフ税制」により、株主への配当や法人の譲渡損益について課税が繰り延べられることになりました。また、スピンオフによる効果として、以下のような経営の独立、資本の独立、上場の独立の効果による企業価値の向上が期待されていました。

 

[経営の独立]
元の会社の経営者が中核事業に専念することが可能になる。
スピンオフされた会社が迅速、柔軟な意思決定が可能になる。
[資本の独立]
スピンオフされた会社の独自の資金調達により、従来は埋没していた部分への投資が可能になる。
[上場の独立]
それぞれの事業のみに関心のある投資家を引き付けることが可能になる。

 

ただし、スピンオフの準備のための組織再編において適格再編に該当するのは、単独新設分社型分割と単独新設現物出資に限定されていたため、実務として分離が困難な事業もありました。平成30年度税制改正によりこの部分が改善されたことにより、企業が事業環境の変化に合わせ、限られた経営資源を適切に配分し、より効率的な事業形態を選択できるような環境が整っています。

 

制度の概要

スピンオフとは株主に対し子会社の株式を交付(適格株式分配)することにより、「特定事業」又は「子会社」を切り離し独立させる組織再編です。完全支配関係がある法人間で組織再編(会社分割・現物出資・株式交換・株式移転)を行った後に、適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、組織再編の適格要件(完全支配関係の継続要件)が緩和され、適格株式分配の直前までの関係により判定することになりました。これによって、免許や許認可等が必要になる事業であっても、100%子会社を設立し、そちらで事業に必要な免許等を準備し、吸収分割を行った上で適格株式分配を行うという手順を踏むことで円滑なスピンオフの実施が可能になりました。

 

 

 

 

税理士法人山田&パートナーズ 情報誌「Message 2018年秋号」より転載

[解説ニュース]

遺留分制度を潜脱する意図で利用された信託(東京地裁H30.9.12)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■遺留分侵害額の請求があった場合の税務上の取扱い

■2次相続の申告後に、1次相続に係る遺留分侵害額請求に基づく支払額が確定した場合

 

 

1.はじめに

父(H27.2.18死亡)がその死亡の13日前に締結した信託契約で、父死亡後の受益者である長男に遺留分相当の受益権を付与したものについて、信託財産の内容等から、信託の一部を無効とし、また有効な部分に対する遺留分減殺請求の対象は信託財産ではなく受益権であるとする東京地裁判決がありました。

 

2.家族構成・事件当事者・長男の遺留分

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3.主な時系列・事実関係

4.長男の請求

(1)主位的請求
H27.2.5に信託された不動産の所有権移転・信託登記の抹消、遺留分減殺請求に伴う所有権一部移転登記、共有持分権の確認他。

(2)予備的請求
H27.2.1の死因贈与契約に係る遺留分減殺請求他。

 

5.被相続人の主な財産・裁判所の判断

裁判所は、下記③の不動産について、これらから得られる経済的利益を分配することは信託当時より想定していなかったと認めるのが相当であるとし、また、これらを信託の目的財産に含めたのは、外形上、長男に対して遺留分割合に相当する割合の受益権を与えることにより、これらの不動産に対する遺留分減殺請求を回避する目的であったと解さざるを得ない等とし、次の判断をしました。

 

 

また、裁判所は、信託契約による信託財産の移転は、信託目的達成のための形式的な所有権移転にすぎないため、実質的に権利として移転される受益権を遺留分減殺の対象とすべきと判断しました。

 

6.終わりに

遺留分制度を潜脱する(遺留分制度による規制を免れる)意図のある信託については、このように後になって信託の有効性が争われるリスクがあります。そして、遺留分減殺がされた場合には、その後の信託の運営がうまくいかなくなる可能性もあります。遺留分権利者が受ける経済的利益にも配慮して信託設計をしたり遺言書を作成したりする必要があると考えます。

 

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税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2018/12/25)より転載

 

[解説レポート]

事業承継税制 ~「個人資産の株式化」とその規制~

 

[解説]

税理士法人山田&パートナーズ 税のシンクタンク事業部 天木雪絵

 

[目次]

1.はじめに
2.非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度の概要
3.個人資産の会社への移転(個人資産の株式化)
4.納税猶予の趣旨と、個人資産の株式化に対する規制
5.規制の具体的内容
(1) 現物出資等に関する規制
(2) 資産管理型会社に関する規制
(3) 外国会社株式等を猶予税額計算の対象から除く規制(納税猶予額算定段階での規制)
6.個人資産の株式化の例
7.同族会社等の行為計算否認規定、組織再編成に係る行為計算否認規定の適用の可能性
8.結び

 

〔凡例〕
円規  中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則
措法  租税特別措置法
措令  租税特別措置法施行令
措規  租税特別措置法施行規則
措通  租税特別措置法関係通達

 

1.はじめに

平成30 年度税制改正では、新事業承継税制として非上場株式についての相続税・贈与税の納税猶予制度の対象が拡充され、適用要件(猶予継続要件)が大幅に緩和された。これまでの事業承継税制としての措置に加え、10 年間の特例措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総議決権数の3 分の2 まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)、雇用継続要件である5年平均80%維持の実質的な撤廃等が盛り込まれた。
これを契機に事業承継の検討に本腰を入れる経営者が増えることも予想される。そしてその検討にあたっては、後継者の経営基盤を盤石のものとするため、事業用財産を承継会社に集約し、その上で納税猶予を活用する事案も増加することが考えられる。例えば個人所有の事業関連会社が多数存在してしまっているケース、個人所有のままである事業用資産についてそのままでは遺留分対策などで後継者の支配権が及ばなくなる危険性が高いケースなどである。

しかし、納税猶予制度については今回の税制改正で主要な要件の緩和が図られているとはいえ、依然として数多くの要件が設けられている。特に、先代経営者の個人所有財産を承継会社に移転し、代わりに承継会社発行の株式として所有すること(個人資産の株式化)で事業用財産の集約を図る場合には、猶予対象財産を肥大化させ相続税の負担を回避しうることから、行き過ぎた節税が行われないよういくつかの規制が置かれている。
事業承継を進めるにあたり、承継会社への事業用財産の集約を検討する場合には、事業遂行上必要であるにもかかわらずこうした規制に掛かってしまい、納税猶予が受けられなくなる、ということがないよう十分留意して進めなければならない。本稿では、この個人資産の株式化に関する規制について、整理・検討する。

 

 

2.非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度の概要

非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度とは、「後継者が、贈与又は相続等により、都道府県知事の円滑化法(*1)の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者から取得し、その会社の事業を承継して経営していく場合には、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもとその納税を猶予し、後継者の死亡等により猶予額が免除される制度」をいう。

 

ある経営者がオーナーとして自社株式をそのまま有していると、その経営者の相続発生時には有価証券として相続税が課税されるが、その自社株式を後継者へ事業の承継とともに贈与又は相続により引き継いだ場合には、その承継した自社株式に係る贈与税又は相続税は、後継者がその株式を所有して事業を継続している限りその納税を猶予される。さらに後継者がその死亡の時まで株式を所有して事業を継続した場合(もしくは次の世代に贈与税の納税猶予制度を適用して株式を贈与した場合)には、猶予されていた税額の全額の免除を受けることができる。免除されるまでに特例の適用を受けた自社株式を譲渡をしたり、事業が継続されなかった場合には猶予税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要がある点はリスクとなるが、事業の承継が成功した場合には、後継者が先代経営者からの世代交代時に支払うはずであった自社株式にかかる相続税を支払わずにすむ、という画期的な仕組みとなっている。

 

なお、この制度は、下記4 つの制度で構成される
① 相続時に自社株を承継する場合に適用を受ける「非上場株式等についての相続税の納税猶予制度(措法70 条の7 の2、措法70 の7 の6、参考条文14、18)」
② 贈与時に自社株を承継する場合に適用を受ける「非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度(措法70 の7、措法70 の7 の5、参考条文7、17)」

③ 上記②の贈与者が死亡した場合にみなし相続につながる「非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例(措法70 の7 の3、措法70 の7 の7、参考条文15、19)」
④ 上記③のみなし相続時に継続して納税猶予制度を選択できるよう設けられた「非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度(措法70 条の7 の4、措法70 条の7 の8、参考条文16、20)」

 

(*1)円滑化法・・・中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律

 

 

3.個人資産の会社への移転(個人資産の株式化)

事業承継税制は自社株式の後継者への移行を強力に促進するものとして期待される制度ではあるが、この先代経営者の有する自社株式に係る相続税が事業承継により猶予される仕組みを利用し、相続税の負担を軽減しようとの発想もでてこよう。すなわち個人資産を承継会社へ出資し、株式に変えてしまうことで相続税の負担を減らすことが可能となる。極端な話をすれば、先代経営者の個人資産をすべて承継会社に持たせることができれば相続税をすべて猶予の対象とし、ゆくゆくは免除を受けることも可能となるのである。
そのため、相続税では、この制度の趣旨を超えてまで個人資産の株式化が行われることがないよう各種規制を置いている。

 

 

4.納税猶予の趣旨と、個人資産の株式化に対する規制

(1)事業承継税制の趣旨
事業承継税制は、日本経済の重要な部分を占める中小企業の事業承継を円滑に進め、地域経済の活性化と雇用創出を図ることを目的として、下記2つの視点を踏まえて制度設計がされている。
①事業承継に当たり重い負担となっている相続税の負担を軽減し、税金が払えないなどの理由により株式が分散し、経営が不安定になることを回避する。
②計画的に事業承継に取り組むことで、相続紛争をできうる限り回避し、また、単なる財産としての承継ではなく、経営として有機的一体をなす事業としての早期の確実な承継を可能とする。

 

(2)規制の内容
これらの制度趣旨を超えた個人資産の株式化による租税回避が行われないようにするため、下記3つの個別的な規制が設けられている。
①現物出資等に関する規制
②資産管理型会社(資産保有型会社及び資産運用型会社)に関する規制
③外国会社株式等を猶予税額計算の対象から除く規制

 

個人資産を無制限に会社へ移転することを防ぎ不当に相続税を回避することを防ぐ観点から①の現物出資等に関する規制が設けられている。また、納税猶予制度の趣旨になじまない財産が会社に移転されるのを防ぐ観点から②の資産管理型会社の規制及び、③の外国会社株式等を猶予税額計算の対象から除く規制が設けられている。
以下、上記3つの規制について詳しく確認する。

 

 

5.規制の具体的内容

(1) 現物出資等に関する規制
①概要
先代経営者の個人資産を無制限に承継会社の株式に付け替えることを防止する為、贈与前3 年以内、又は相続開始前3 年以内に後継者及び後継者の同族関係者から承継会社に対して行われる現物出資及び贈与(以下「現物出資等」という。)の価額が、贈与時又は相続開始時における承継会社の総資産の時価に対し、70%以上となる場合には、納税猶予を受けることができない。なお、資産管理型会社の規制(後述(2))ではその判定基準に帳簿価額を使用するのに対し、ここでは時価(財産評価基本通達による相続税評価額)が用いられる。(措法70 の7㉙、措通70 の7-50、参考条文13、23)

 

②判定式

 

(2) 資産管理型会社に関する規制
①概要
納税猶予の制度が、地域経済の活性化・雇用創出を目的としていることから、これらの趣旨になじまない賃貸不動産や投資有価証券などが無制限に納税猶予の対象となることを防ぐため、資産管理型会社に該当する場合には、納税猶予の規定は受けられない。資産管理型会社は、さらに資産保有型会社と資産運用型会社に分類され、前者は財産面から、後者は損益面から規制されているが、納税猶予の制度を受けるためには、いずれにも該当しないことが必要となる。

 

②資産保有型会社に該当しないこと
承継会社の総資産の帳簿価額に対し、賃貸不動産や投資有価証券等の「特定資産」の帳簿価額が70%以上となる場合には納税猶予制度は受けられない(円規1⑫、円規6①七ロ、措法70 の7②八、措法70 の7②一ロ、参考条文2、4、10、8)。ただし、一定の事業実態を有する会社(後述④)については資産保有型会社にはあたらないものとみなされる(円規6②、措令40 の8⑥、参考条文5、21)。

 

 

「特定資産」とは、具体的には下記のものが該当する。
(ア) 有価証券(金融商品取引法第二条第一項に規定する有価証券及び同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利)であって、当該会社の特別子会社の株式又は持分以外のもの(注1)
(イ) 当該会社が現に自ら使用していない不動産(不動産の一部分につき現に自ら使用していない場合は、当該一部分に限る。)
不動産とは、土地、借地権、建物、建物と一体不可分の付属設備及び建物と同一視できる構築物が該当する。自ら使用している例としては、本社、支店、工場、従業員宿舎等が挙げられるが、自ら使用していない例としては、販売用土地、賃貸マンション、役員住宅、遊休地等が挙げられる。
同一の土地・建物の中に自社利用している部分とそうでない部分があるときは、床面積割合など合理的な方法により按分することとなる。
(ウ) ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
ゴルフクラブ会員権、リゾート利用権などが該当し、ゴルフ会員権販売事業者が保有する在庫などは特定資産からは除かれる。
(エ) 絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産、貴金属及び宝石(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
宝石販売事業者が保有する在庫などは特定資産からは除かれる。
(オ) 現金、預貯金その他これらに類する資産(後継者及び後継者と一定の関係のある者に対する貸付金、未収金その他これらに類する資産を含む。)
現金、預貯金のほか、これらと同視しうる積立金なども該当し、当該会社の資産(債権)のうち、後継者及びその同族関係者に対する貸付金、未収金、預け金や差入保証金、立替金なども該当する。

 

(注1)「有価証券であって、当該会社の特別子会社の株式又は持分以外のもの」について
当該承継会社の特別子会社の株式等については、特定資産から除かれる。
ただし、特別子会社の株式等であっても、一定の事業実態(後述④)がなく、資産保有型子会社や資産運用型子会社に該当する場合には特定資産となる(円規6②,参考条文5)。

「特別子会社」とは、会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社(外国会社(会社法第二条第二号に規定する外国会社をいう。)を含む。)の総株主等議決権数の100 の50 を超える議決権の数を有する場合における当該他の会社をいう(円規1⑩、参考条文1)。

 

(注2) 特別特定資産とは特別子会社が有する上記(イ)から(オ)までの資産をいい、特別特定資産からは、当該特別子会社の特別子会社の株式等は一律に除かれている。つまり特別子会社の特別子会社(いわゆる孫会社)の株式等は、特別特定資産の範囲から除かれることになる。

 

③資産運用型会社に該当しないこと
納税猶予を受けようとする承継会社のその事業年度の総収入金額に対し、賃貸不動産や投資有価証券等の「特定資産」に係る運用収入の合計額が75%以上となる場合には、納税猶予制度は受けられない(円規1⑬、円規6①七ハ、措法70 の7②九、措法70 の7②一ロ、参考条文3、4、11、8)。ただし、一定の事業実態を有する会社(後述④)については資産運用型会社にはあたらないものとみなされる。

 

 

(注3) 損益計算書の売上高+営業外収益+特別利益の合計額とする。ただし、期中に固定資産や有価証券などの売却がある場合には、損益に関わらず売却対価に直してから金額を加算する。

 

④事業実態がある場合
上記②又は③で資産管理型会社に該当するような場合であっても、下記事業実態を有する場合には、資産管理型会社には該当しないものとみなされる。また、特別子会社についても同様に事業実態がある場合には、資産保有型子会社又は資産運用型子会社に該当しないものとみなされる。(円規6②、措令40 の8⑥、参考条文5、21)

 

【事業実態を有する場合】(下記要件のいずれも満たすとき)
(1) 常時使用する従業員(後継者及びこれらの者と生計を一にする親族を除く。以下「親族外従業員」という。)の数が五人以上であること。
(2) 親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。
(3) 当該贈与の日又は当該相続の開始の日まで引き続き三年以上にわたり、次に掲げるいずれかの業務をしていること。
イ 商品販売等(後継者やその同族関係者に対する一定のものを除く)
ロ 商品販売等を行うために必要となる資産(上記(2)の事務所、店舗、工場その他これらに類するものを除く。)の所有又は賃借
ハ イ及びロに掲げる業務に類するもの

 

⑤資産管理型会社についての所感
・ 資産運用型会社の判定については、資産を売却した場合には売却対価にて収入金額に計上されるため、特に事業規模が小さい会社では突発的に要件を満たせない可能性もあり、納税猶予制度の検討時には今後の要件維持の可能性について十分留意する必要がある。事業実態要件については従業員数以外には規模は要求されていないため、事業実態要件の充足に係る事業が比較的小さく、特定資産に係る財産・収入規模が大きい場合にも(不動産賃貸業部門が大規模な場合であっても)十分要件を満たす余地がある。

 

・ 特別子会社株式は、その内容によって特定資産となる。一方、孫会社株式は、その内容にかかわらず特別子会社の特別特定資産に含まれないことから、特別子会社による孫会社株式の保有は、資産保有型子会社又は資産運用型子会社の判定上、納税猶予の要件を満たす上で、有利な結果を導きやすい。

 

(3) 外国会社株式等を猶予税額計算の対象から除く規制(納税猶予額算定段階での規制)
承継会社が有する一定の外国会社の株式等、医療法人の出資金、事業実態のある資産管理型会社が有する3%以上保有の上場株式等については、これらを有していないものとして納税猶予額の計算を行う。(措法70 の7②五イ、措令40 の8⑫、参考条文9,22)。

 

 

6.個人資産の株式化の例

承継会社への事業用財産の集約化を行う際に個人資産の株式化が生じる具体的な例としては、次のような行為が考えられる。

 

①金銭出資
先代経営者の個人預金を対象会社へ出資する方法。
先代経営者に余剰資金がある場合に、運転資金や設備購入資金として承継会社に増資を行う場合が考えられる。ただし、増資後に現預金としてそのまま保有し続けた場合には、特定資産に該当することになるので、事業実態要件を満たしていない場合には、注意が必要である。
(預金から承継会社株式への変換)

 

②現物出資
先代経営者所有の動産・不動産などを対象会社へ出資する方法。
特に承継会社で使用している事業用資産としての土地や建物について、そのまま個人名義で所有していると相続により他の相続人等にその所有権が分散していく可能性がある場合に、そのリスクを回避する為、承継会社に土地・建物として出資するケースが考えられる。(動産・不動産等から承継会社株式への変換)
贈与又は相続開始の日前3 年以内に行われた場合には、上記5(1)の現物出資等に関する規制の対象となる。

 

③DES(デットエクイティスワップ)
先代経営者からの役員借入金を資本金に変換する際に株式の発行を受ける方法。先代経営者から見れば貸付金債権による承継会社への現物出資にあたるので、上記②と同様、納税猶予に係る贈与又は相続開始の日前3 年以内に行われた場合には、上記5(1)の現物出資等に関する規制の対象となる。
(承継会社への貸付金から承継会社株式への変換)

 

④株式交換
株式交換とは、会社がその発行済株式の全部を他の会社に取得させる会社法上の組織再編行為で、会社同士が完全な100%親子関係になるための手続きとして利用される。
例えば、先代経営者が承継会社の他に複数の関連会社の株式を有しており、これら関連会社を承継会社の支配下においてから承継を進めたいという場合に、事業関連会社の株式と承継会社の株式を交換して、承継会社を株式交換完全親会社とすることが考えられる。
(他の会社株式から承継会社株式への変換)

 

⑤吸収合併
吸収合併とは、会社が他の会社とする合併で、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させる会社法上の組織再編行為をいう。
先代経営者が複数の会社の株式を有している場合に、承継会社を存続法人として他の事業関連会社の吸収合併を行い、承継会社に他の会社の事業・財産等を集約することが考えられる。
(他の会社株式から承継会社株式への変換)

 

⑥吸収分割
吸収分割とは、会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させる会社法上の組織再編行為をいい、会社が事業部門を他社へ移す際に利用される。
たとえば、先代経営者が複数の会社の株式を有している場合に、他の会社の関連事業部門を承継会社の事業部門として移すということが考えられる。
(他の会社株式から承継会社株式への変換)

 

上記はいずれも個人資産が(承継会社の)株式に変換されるケースであるが、このうち、現物出資にあたる上記②及び③を行った結果、現物出資等に関する規制により判定基準の70%以上に該当する場合は、納税猶予を受けられない。
現物出資等に関する規制の対象とはなっていない①④⑤及び⑥であっても、資産管理型会社に該当する場合には、納税猶予は受けられない。また、下記7 にみる行為計算否認規定の適用の可能性を検討する必要がある。

 

 

7.同族会社等の行為計算否認規定、組織再編成に係る行為計算否認規定の適用の可能性

上記でみたように、個人資産の株式化については、現物出資及び贈与については規制が設けられているが、その他の金銭出資や、組織再編については、個別具体的な規定による規制は設けられていない。しかし、これらの行為は、租税特別措置法70 条の7 第14 項等で準用される相続税法第64 条第1 項(同族会社等の行為計算否認規定)や第4 項(組織再編成に係る行為計算否認規定)により、相続税や贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものについては、否認される可能性がある(措法70 の7⑭、相法64 の読替、参考条文12、6)。

 

 

8.結び

このように個人資産の株式化については、いくつかの個別具体的な規定で直接的に規制されたうえで、同族会社等の行為計算否認や組織再編成に係る行為計算否認の規定の準用により広く規制されている。ただし、行為計算否認の規定は「税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」であるとの認定を経てはじめて適用されるという意味ではワンクッションがおかれて規制されている。
過度に厳格な税法の規定が、円滑な事業承継を進める上で必要となる事業再編の足枷にならないように配慮されているものと考えることもできる。平成30 年度税制改正では思い切った事業承継税制の抜本拡充がなされ、大幅な要件緩和がされたが、円滑な事業承継を進め、地域経済の活性化や雇用創出を目指すという制度に込められた想いを踏まえ、事業承継税制を運用していくことが肝要と考える。

 

以上

 

 

 

 


【参考条文】※赤字は筆者が色を加えた。
代表的な法令として非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除に関するものを参考として掲載する。

 

 

参考条文1【特別子会社の定義について】
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則 第1 条 第10 項
10  この省令において「特別子会社」とは、会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社(外国会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第二号に規定する外国会社をいう。以下同じ。)を含む。)の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有する場合における当該他の会社をいう。

 

参考条文2【資産保有型会社の定義・特定資産の定義について】
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則 第1 条 第12 項
12  この省令において「資産保有型会社」とは、一の日において、第一号及び第三号に掲げる金額の合計額に対する第二号及び第三号に掲げる金額の合計額の割合が百分の七十以上である会社をいう。
一  当該一の日における当該会社の資産の帳簿価額の総額
二  当該一の日における次に掲げる資産(以下「特定資産」という。)の帳簿価額の合計額

イ  金融商品取引法第二条第一項に規定する有価証券及び同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利(以下「有価証券」という。)であって、当該会社の特別子会社(資産の帳簿価額の総額に対する有価証券(当該特別子会社の特別子会社の株式又は持分を除く。)及びロからホまでに掲げる資産(イにおいて「特別特定資産」という。)の帳簿価額の合計額の割合が百分の七十以上である会社(第六条第二項において「資産保有型子会社」という。)又は当該一の日の属する事業年度の直前の事業年度における総収入金額に占める特別特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上である会社(同項において「資産運用型子会社」という。)以外の会社に限る。)の株式又は持分以外のもの
ロ  当該会社が現に自ら使用していない不動産(不動産の一部分につき現に自ら使用していない場合は、当該一部分に限る。)
ハ  ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
ニ  絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産、貴金属及び宝石(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
ホ  現金、預貯金その他これらに類する資産(次に掲げる者に対する貸付金、未収金その他これらに類する資産を含む。)

(1) 第一種経営承継受贈者(第六条第一項第七号トの第一種経営承継受贈者をいう。次号及び第六条第一項第七号ハ(3)において同じ。)
(2) 第一種経営承継相続人(第六条第一項第八号トの第一種経営承継相続人をいう。次号において同じ。)
(3) 第二種経営承継受贈者(第六条第一項第九号トの第二種経営承継受贈者をいう。次号及び第六条第一項第九号ハ(3)において同じ。)
(4) 第二種経営承継相続人(第六条第一項第十号トの第二種経営承継相続人をいう。次号において同じ。)
(5) 第一種特例経営承継受贈者(第六条第一項第十一号トの第一種特例経営承継受贈者をいう。次号及び第六条第一項第十一号ハ(3)において同じ。)
(6) 第一種特例経営承継相続人(第六条第一項第十二号トの第一種特例経営承継相続人をいう。次号において同じ。)
(7) 第二種特例経営承継受贈者(第六条第一項第十三号トの第二種特例経営承継受贈者をいう。次号及び第六条第一項第十三号ハ(3)において同じ。)
(8) 第二種特例経営承継相続人(第六条第一項第十四号トの第二種特例経営承継相続人をいう。次号において同じ。)
(9) (1)から(8)までに掲げる者の関係者のうち、第九項第六号中「会社」とあるのを「会社(外国会社を含む。)」と読み替えた場合における同項各号に掲げる者

三  次に掲げる期間において、当該会社の第一種経営承継受贈者、第一種経営承継相続人、第二種経営承継受贈者、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継受贈者、第一種特例経営承継相続人、第二種特例経営承継受贈者又は第二種特例経営承継相続人及びこれらの者に係る同族関係者に対して支払われた剰余金の配当等(株式又は持分に係る剰余金の配当又は利益の配当をいう。以下同じ。)及び給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。第九条第二項第二十一号において同じ。)のうち法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第三十四条及び第三十六条の規定により当該会社の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととなるものの金額
イ  当該会社の代表者が第一種経営承継受贈者、第二種経営承継受贈者、第一種特例経営承継受贈者又は第二種特例経営承継受贈者である場合にあっては、当該一の日以前の五年間(第一種経営承継贈与者
(当該第一種経営承継受贈者に係る当該会社の株式等を贈与した者をいう。以下同じ。)又は第一種特例経営承継贈与者(当該第一種特例経営承継受贈者に係る当該会社の株式等を贈与した者をいう。以下同じ。)からの贈与の日前の期間を除く。)
ロ  当該会社の代表者が第一種経営承継相続人、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継相続人又は第二種特例経営承継相続人である場合にあっては、当該一の日以前の五年間(当該第一種経営承継相続人の被相続人又は当該第一種特例経営承継相続人の被相続人の相続の開始の日前の期間を除く。)

 

参考条文3【資産運用型会社の定義について】
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則 第1 条 第13 項
13  この省令において「資産運用型会社」とは、一の事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上である会社をいう。

 

参考条文4【資産保有型会社・資産運用型会社の非該当について】
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則 第6 条 第1 項 第7 号
七  当該中小企業者が次に掲げるいずれにも該当する場合であって、当該中小企業者の代表者(当該代表者に係る贈与者からの贈与の時以後において代表者である者に限る。以下この号において同じ。)が贈与により取得した当該中小企業者の株式等に係る贈与税を納付することが見込まれること。
イ  省略
ロ  当該贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度の開始の日以後において、資産保有型会社に該当しないこと。
ハ  第一種贈与認定申請基準事業年度(当該贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度及び当該贈与の日の属する事業年度から第一種贈与認定申請基準日(次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める日をいう。以下同じ。)の翌日の属する事業年度の直前の事業年度までの各事業年度をいう。以下同じ。)においていずれも資産運用型会社に該当しないこと。
(1) 当該贈与の日が一月一日から十月十五日までのいずれかの日である場合((3)に規定する場合を除く。) 当該十月十五日
(2) 当該贈与の日が十月十六日から十二月三十一日までのいずれかの日である場合 当該贈与の日
(3) 当該贈与の日の属する年の五月十五日前に当該中小企業者の第一種経営承継受贈者又は第一種経営承継贈与者の相続が開始した場合 当該相続の開始の日の翌日から五月を経過する日
二~ヌ 省略

 

参考条文5【事業実態要件について】
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則 第6 条 第2 項
2  前項第七号から第十四号の規定の適用については、中小企業者の第一種経営承継贈与者、第二種経営承継贈与者、第一種特例経営承継贈与者若しくは第二種特例経営承継贈与者からの贈与の時又は中小企業者の第一種経営承継相続人、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継相続人若しくは第二種特例経営承継相続人の被相続人の相続の開始の時において、当該中小企業者が次に掲げるいずれにも該当するときは当該中小企業者は資産保有型会社及び資産運用型会社に該当しないものとみなし、当該中小企業者の特別子会社が次に掲げるいずれにも該当するときは当該特別子会社は資産保有型子会社及び資産運用型子会社に該当しないものとみなす。
一  当該中小企業者の常時使用する従業員(第一種経営承継受贈者、第一種経営承継相続人、第二種経営承継受贈者、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継受贈者、第一種特例経営承継相続人、第二種特例経営承継受贈者又は第二種特例経営承継相続人及びこれらの者と生計を一にする親族を除く。以下この項において「親族外従業員」という。)の数が五人以上であること。
二  当該中小企業者が、親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。

三  当該贈与の日又は当該相続の開始の日まで引き続き三年以上にわたり、次に掲げるいずれかの業務をしていること。
イ  商品販売等(商品の販売、資産の貸付け(第一種経営承継受贈者、第一種経営承継相続人、第二種経営承継受贈者、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継受贈者、第一種特例経営承継相続人、第二種特例経営承継受贈者又は第二種特例経営承継相続人に対するもの及びこれらの者に係る同族関係者に対するものを除く。)又は役務の提供で、継続して対価を得て行われるものをいい、その商品の開発若しくは生産又は役務の開発を含む。以下同じ。)
ロ  商品販売等を行うために必要となる資産(前号の事務所、店舗、工場その他これらに類するものを除く。)の所有又は賃借
ハ  イ及びロに掲げる業務に類するもの

 

参考条文6  相続税法第64 条の準用(措置法第70 条の7第14 項の指示による読み替え後)
読替後の第1 項 (→同族会社等の行為又は計算の否認)
措置法第70 条の7 第2 項第1 号(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除)に規定する認定贈与承継会社の行為又は計算で、これを容認した場合においては同上第1 項の経営承継受贈者又は同行の贈与者その他これらの者の同族関係者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、非上場株式等に係る贈与税の納税猶予及び免除の規定の適用に関し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、納税の猶予に係る期限を繰り上げ、又は免除する納税の猶予に係る贈与税を定めることができる。
読替後の第2 項 (→他の税法の準用)

前項の規定は、租税特別措置法第七十条の七第二項第一号に規定する認定贈与承継会社の行為又は計算につき、法人税法第132 条第1 項(同族会社等の行為又は計算の否認)若しくは所得税法第157 条第1 項(同族会社等の行為又は計算の否認等)又は地価税法(平成3 年法律第六十九号)第32 条第1 項(同族会社等の行為又は計算の否認等)の規定の適用があつた場合における認定贈与承継会社の租税特別措置法第七十条の七第一項の経営承継受贈者の納税の猶予に係る期限の繰り上げ又は贈与税の免除について準用する。

読替後の第4 項 (→組織再編成に係る行為又は計算の否認)

合併、分割、現物出資若しくは法人税法第2 条第12 号の5 の2 に規定する現物分配又は同条第12号の16 に規定する株式交換等若しくは株式移転(以下この項において「合併等」という。)をした法人又は合併等により資産及び負債の移転を受けた法人(当該合併等により交付された株式又は出資を発行した法人を含む。以下この項において同じ。)の行為又は計算で、これを容認した場合においては当該合併等をした法人若しくは当該合併等により資産及び負債の移転を受けた法人の株主若しくは社員又はこれらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、租税特別措置法第70 条の7 の規定の適用に関し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、納税の猶予に係る期限を繰り上げ、又は免除する納税の猶予に係る贈与税を定めることができる。

 

参考条文7【非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除について】
租税特別措置法 第70 条の7 第1 項
第70 条の7 認定贈与承継会社の非上場株式等(議決権に制限のないものに限る。以下この項において同じ。)を有していた個人として政令で定める者(当該認定贈与承継会社の非上場株式等について既にこの項の規定の適用に係る贈与をしているものを除く。以下この条、第七十条の七の三及び第七十条の七の四において「贈与者」という。)が経営承継受贈者に当該認定贈与承継会社の非上場株式等の贈与(経営贈与承継期間の末日までに贈与税の申告書(相続税法第二十八条第一項の規定による期限内申告書をいう。以下この条において同じ。)の提出期限が到来する贈与に限る。)をした場合において、当該贈与が次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める贈与であるときは、当該経営承継受贈者の当該贈与の日の属する年分の贈与税で贈与税の申告書の提出により納付すべきものの額のうち、当該非上場株式等で当該贈与税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(当該贈与の時における当該認定贈与承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に限る。第一号において同じ。)の総数又は総額の三分の二に達するまでの部分として政令で定めるものに限る。以下この条、第七十条の七の三及び第七十条の七の四において「対象受贈非上場株式等」という。)に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、政令で定めるところにより当該年分の贈与税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の贈与税額に相当する担保を提供した場合に限り、同法第三十三条の規定にかかわらず、当該贈与者(対象受贈非上場株式等の全部又は一部が当該贈与者の第十五項(第三号に係る部分に限り、第七十条の七の五第十一項において準用する場合を含む。)の規定の適用に係るものである場合における当該対象受贈非上場株式等に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、この項又は第七十条の七の五第一項の規定の適用を受けていた者として政令で定める者に当該対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の非上場株式等贈与をした者。次項第六号、第三項第二号及び第十五項において同じ。)の死亡の日まで、その納税を猶予する。
一  当該贈与の直前において、当該贈与者が有していた当該認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額が、当該認定贈与承継会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の三分の二から当該経営承継受贈者が有していた当該認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額を控除した残数又は残額以上の場合 当該控除した残数又は残額以上の数又は金額に相当する非上場株式等の贈与
二  前号に掲げる場合以外の場合 当該贈与者が当該贈与の直前において有していた当該認定贈与承継会社の非上場株式等の全ての贈与

 

参考条文8【資産保有型会社・資産運用型会社の非該当について】
租税特別措置法 第70 条の7 第2 項 第1号ロ
2  この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  認定贈与承継会社 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成二十年法律第三十三号)第二条に規定する中小企業者のうち円滑化法認定を受けた会社(合併により当該会社が消滅した場合その他の財務省令で定める場合には、当該会社に相当するものとして財務省令で定めるもの)で、前項の規定の適用に係る贈与の時において、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう。
イ  省略
ロ  当該会社が、資産保有型会社又は資産運用型会社のうち政令で定めるものに該当しないこと。
ハ~へ 省略

 

参考条文9【外国会社の株式等について、納税猶予額の計算の基礎となる価額から除く規定】
租税特別措置法 第70 条の7 第2 項 第5 号イ
五  納税猶予分の贈与税額 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じイ又はロに定める金額をいう。
イ  ロに掲げる場合以外の場合 前項の規定の適用に係る対象受贈非上場株式等の価額(当該対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別関係会社であつて当該認定贈与承継会社との間に支配関係がある法人(イにおいて「認定贈与承継会社等」という。)が会社法第二条第二号に規定する外国会社(当該認定贈与承継会社の特別関係会社に該当するものに限る。)その他政令で定める法人の株式等(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項に規定する投資口を含む。イにおいて同じ。を有する場合には、当該認定贈与承継会社等が当該株式等を有していなかつたものとして計算した価額。ロにおいて同じ。)を前項の経営承継受贈者に係るその年分の贈与税の課税価格とみなして、相続税法第二十一条の五及び第二十一条の七の規定(第七十条の二の四及び第七十条の二の五の規定を含む。)を適用して計算した金額

 

参考条文10【資産保有型会社の定義について】
租税特別措置法 第70 条の7 第2 項 第8 号
八  資産保有型会社 認定贈与承継会社の資産状況を確認する期間として政令で定める期間内のいずれかの日において、次のイ及びハに掲げる金額の合計額に対するロ及びハに掲げる金額の合計額の割合が百分の七十以上となる会社をいう。
イ  その日における当該会社の総資産の貸借対照表に計上されている帳簿価額の総額
ロ  その日における当該会社の特定資産(現金、預貯金その他の資産であつて財務省令で定めるものをいう。次号において同じ。)の貸借対照表に計上されている帳簿価額の合計額
ハ  その日以前五年以内において、経営承継受贈者及び当該経営承継受贈者と政令で定める特別の関係がある者が当該会社から受けた剰余金の配当等(会社の株式等に係る剰余金の配当又は利益の配当をいう。以下この条及び次条において同じ。)の額その他当該会社から受けた金額として政令で定めるものの合計額
※【現金、預貯金その他の資産であって財務省令で定めるものについて】
租税特別措置法施行規則 第23 条の9 第14 項
14  法第七十条の七第二項第八号ロに規定する財務省令で定める資産は、円滑化省令第一条第十二項第二号イからホまでに掲げるものとする。

 

参考条文11【資産運用型会社の定義ついて】
租税特別措置法 第70 条の7 第2 項 第9 号
2  この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一~八 省略
九  資産運用型会社 認定贈与承継会社の資産の運用状況を確認する期間として政令で定める期間内のいずれかの事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上となる会社をいう。

 

参考条文12【同族会社の行為計算否認の規定等の準用】
租税特別措置法 第70 条の7 第14 項
14  相続税法第六十四条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)及び第四項の規定は、第一項の規定の適用を受ける経営承継受贈者若しくは当該経営承継受贈者に係る贈与者又はこれらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合について準用する。(以下、読み替えの指示については省略)

 

参考条文13【現物出資等に係る規制について】
租税特別措置法 第70 条の7 第29 項
29  第一項の対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が同項の規定の適用を受けようとする経営承継受贈者及び当該経営承継受贈者と政令で定める特別の関係がある者から現物出資又は贈与により取得をした資産(同項の贈与前三年以内に取得をしたものに限る。第二号において「現物出資等資産」という。)がある場合において、同項の贈与があつた時における、第一号に掲げる金額に対する第二号に掲げる金額の割合が百分の七十以上であるときは、当該経営承継受贈者については、同項の規定は、適用しない。
一  当該認定贈与承継会社の資産の価額の合計額
二  現物出資等資産の価額(当該認定贈与承継会社が第一項の贈与があつた時において当該現物出資等資産を有していない場合には、当該贈与があつた時に有しているものとしたときにおける当該現物出資等資産の価額)の合計額

 

参考条文14【非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除】
租税特別措置法 第70 条の7 の2 第1 項
第70 条の7 の2  認定承継会社の非上場株式等(議決権に制限のないものに限る。以下この項において同じ。)を有していた個人として政令で定める者(以下この条において「被相続人」という。)から相続又は遺贈により当該認定承継会社の非上場株式等の取得(経営承継期間の末日までに相続税の申告書(相続税法第二十七条第一項の規定による期限内申告書をいう。以下この条及び第七十条の七の四において同じ。)の提出期限が到来する相続又は遺贈による取得に限る。)をした経営承継相続人等が、当該相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、当該非上場株式等で当該相続税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(当該相続の開始の時における当該認定承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式又は出資に限る。)の総数又は総額の三分の二に達するまでの部分として政令で定めるものに限る。以下この条において「対象非上場株式等」という。)に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、政令で定めるところにより当該相続税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、同法第三十三条の規定にかかわらず、当該経営承継相続人等の死亡の日まで、その納税を猶予する。

 

参考条文15【非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例について】
租税特別措置法 第70 条の7 の3 第1 項
第70 条の7 の3  第七十条の七第一項の規定の適用を受ける同条第二項第三号に規定する経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した場合(その死亡の日前に猶予中贈与税額に相当する贈与税の全部につき同条第三項から第五項まで、第十一項、第十二項又は第十四項の規定による納税の猶予に係る期限が確定した場合及びその死亡の時以前に当該経営承継受贈者が死亡した場合を除く。)には、当該贈与者の死亡による相続又は遺贈に係る相続税については、当該経営承継受贈者が当該贈与者から相続(当該経営承継受贈者が当該贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により同条第一項の規定の適用に係る対象受贈非上場株式等(猶予中贈与税額に対応する部分に限るものとし、合併により当該対象受贈非上場株式等に係る同項の認定贈与承継会社が消滅した場合その他の財務省令で定める場合には、当該対象受贈非上場株式等に相当するものとして財務省令で定めるものとする。次条において同じ。)の取得をしたものとみなす。この場合において、その死亡による相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該対象受贈非上場株式等の価額については、当該贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした対象受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額(第七十条の七第二項第五号の対象受贈非上場株式等の価額をいう。)を基礎として計算するものとする。

 

参考条文16【非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除について】
租税特別措置法 第70 条の7 の4 第1 項
第70 条の7 の4  前条第一項の規定により同項の贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされた対象受贈非上場株式等につきこの項の規定の適用を受けようとする経営相続承継受贈者が、当該相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、当該対象受贈非上場株式等(認定相続承継会社の株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に限る。)で当該相続税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(当該相続の開始の時における当該対象受贈非上場株式等に係る認定相続承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の総数又は総額の三分の二に達するまでの部分として政令で定めるものに限る。以下この条において「対象相続非上場株式等」という。)に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、政令で定めるところにより当該相続税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、相続税法第三十三条の規定にかかわらず、当該経営相続承継受贈者の死亡の日まで、その納税を猶予する

 

参考条文17【非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例について】
租税特別措置法 第70 条の7 の5 第1 項
第70 条の7 の5  特例認定贈与承継会社の非上場株式等(議決権に制限のないものに限る。以下この項において同じ。)を有していた個人として政令で定める者(当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等について既にこの項の規定の適用に係る贈与をしているものを除く。以下この条、第七十条の七の七及び第七十条の七の八において「特例贈与者」という。)が特例経営承継受贈者に当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の贈与(平成三十年一月一日から平成三十九年十二月三十一日までの間の最初のこの項の規定の適用に係る贈与及び当該贈与の日から特例経営贈与承継期間の末日までの間に贈与税の申告書(相続税法第二十八条第一項の規定による期限内申告書をいう。以下この条において同じ。)の提出期限が到来する贈与に限る。)をした場合において、当該贈与が次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める贈与であるときは、当該特例経営承継受贈者の当該贈与の日の属する年分の贈与税で贈与税の申告書の提出により納付すべきものの額のうち、当該非上場株式等で当該贈与税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(以下この条、第七十条の七の七及び第七十条の七の八において「特例対象受贈非上場株式等」という。)に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、政令で定めるところにより当該年分の贈与税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の贈与税額に相当する担保を提供した場合に限り、同法第三十三条の規定にかかわらず、当該特例贈与者(特例対象受贈非上場株式等の全部又は一部が当該特例贈与者の第七十条の七第十五項(第三号に係る部分に限り、第十一項において準用する場合を含む。)の規定の適用に係るものである場合における当該特例対象受贈非上場株式等に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、この項又は同条第一項の規定の適用を受けていた者として政令で定める者に当該特例対象受贈非上場株式等に係る特例認定贈与承継会社の非上場株式等の贈与をした者。次項第七号及び第十一項において準用する同条第十五項において同じ。)の死亡の日まで、その納税を猶予する。
一  特例経営承継受贈者が一人である場合 次に掲げる贈与の場合の区分に応じそれぞれ次に定める贈与

イ  当該贈与の直前において、当該特例贈与者が有していた当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額が、当該特例認定贈与承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に限る。次号において同じ。)の総数又は総額の三分の二から当該特例経営承継受贈者が有していた当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額を控除した残数又は残額以上の場合 当該控除した残数又は残額以上の数又は金額に相当する非上場株式等の贈与
ロ  イに掲げる場合以外の場合 当該特例贈与者が当該贈与の直前において有していた当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の全ての贈与
二  特例経営承継受贈者が二人又は三人である場合 当該贈与後におけるいずれの特例経営承継受贈者の有する当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額が当該特例認定贈与承継会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の十分の一以上となる贈与であって、かつ、いずれの特例経営承継受贈者の有する当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額が当該特例贈与者の有する当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額を上回る贈与

 

参考条文18【非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例】
租税特別措置法 第70 条の7 の6 第1 項
第70 条の7 の6  
特例認定承継会社の非上場株式等(議決権に制限のないものに限る。以下この項において同じ。)を有していた個人として政令で定める者(以下この条において「特例被相続人」という。)から相続又は遺贈により当該特例認定承継会社の非上場株式等の取得(平成三十年一月一日から平成三十九年十二月三十一日までの間の最初のこの項の規定の適用に係る相続又は遺贈による取得及び当該取得の日から特例経営承継期間の末日までの間に相続税の申告書(相続税法第二十七条第一項の規定による期限内申告書をいう。以下この条及び第七十条の七の八において同じ。)の提出期限が到来する相続又は遺贈による取得に限る。)をした特例経営承継相続人等が、当該相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、当該非上場株式等で当該相続税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(以下この条において「特例対象非上場株式等」という。)に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、政令で定めるところにより当該相続税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、同法第三十三条の規定にかかわらず、当該特例経営承継相続人等の死亡の日まで、その納税を猶予する。

 

参考条文19【非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例】
租税特別措置法 第70 条の7 の7 第1 項
第70 条の7 の7  第七十条の七の五第一項の規定の適用を受ける同条第二項第六号に規定する特例経営承継受贈者に係る特例贈与者が死亡した場合(その死亡の日前に猶予中贈与税額に相当する贈与税の全部につき同条第三項において準用する第七十条の七第三項から第五項まで、第七十条の七の五第八項において準用する第七十条の七第十一項、第七十条七の五第九項において準用する第七十条の七第十二項又は第七十条の七の五第十項において準用する第七十条の七第十四項の規定による納税の猶予に係る期限が確定した場合及びその死亡の時以前に当該特例経営承継受贈者が死亡した場合を除く。)には、当該特例贈与者の死亡による相続又は遺贈に係る相続税については、当該特例経営承継受贈者が当該特例贈与者から相続(当該特例経営承継受贈者が当該特例贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により第七十条の七の五第一項の規定の適用に係る特例対象受贈非上場株式等(猶予中贈与税額に対応する部分に限るものとし、合併により当該特例対象受贈非上場株式等に係る同項の特例認定贈与承継会社が消滅した場合その他の財務省令で定める場合には、当該特例対象受贈非上場株式等に相当するものとして財務省令で定めるものとする。次条において同じ。)の取得をしたものとみなす。この場合において、その死亡による相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該特例対象受贈非上場株式等の価額については、当該特例贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした特例対象受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額(第七十条の七の五第二項第八号の特例対象受贈非上場株式等の価額をいう。)を基礎として計算するものとする。

 

参考条文20【非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除の特例】
租税特別措置法 第70 条の7 の8 第1 項
第70 条の7 の8  前条第一項の規定により同項の特例贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされた特例対象受贈非上場株式等につきこの項の規定の適用を受けようとする特例経営相続承継受贈者が、当該相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、当該特例対象受贈非上場株式等(特例認定相続承継会社の株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に限る。)で当該相続税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(以下この条において「特例対象相続非上場株式等」という。)に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、政令で定めるところにより当該相続税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、相続税法第三十三条の規定にかかわらず、当該特例経営相続承継受贈者の死亡の日まで、その納税を猶予する。

 

参考条文21【事業実態要件について】
租税特別措置法施行令 第40 条の8 第6 項
6 法第七十条の七第二項第一号ロに規定する資産保有型会社又は資産運用型会社のうち政令で定めるものは、同項第八号に規定する資産保有型会社又は同項第九号に規定する資産運用型会社(以下この項、第十二項及び第二十四項において「資産保有型会社等」という。)のうち、同条第一項の規定の適用に係る贈与の時において、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
一  当該資産保有型会社等の法第七十条の七第二項第八号ロに規定する特定資産(第二十四項第一号及び第五十項において「特定資産」という。)から当該資産保有型会社等が有する当該資産保有型会社等の同条第二項第一号ハに規定する特別関係会社(以下この号及び第二十四項第一号において「特別関係会社」という。)で次に掲げる要件の全てを満たすものの株式等を除いた場合であつても、当該資産保有型会社等が同条第二項第八号に規定する資産保有型会社又は同項第九号に規定する資産運用型会社に該当すること。
イ  当該特別関係会社が、法第七十条の七第一項の規定の適用に係る贈与の日まで引き続き三年以上にわたり、商品の販売その他の業務で財務省令で定めるものを行つていること。
ロ  イの贈与の時において、当該特別関係会社の法第七十条の七第二項第一号イに規定する常時使用従業員(経営承継受贈者及び当該経営承継受贈者と生計を一にする親族を除く。以下この項及び第二十四項において「親族外従業員」という。)の数が五人以上であること。
ハ  イの贈与の時において、当該特別関係会社が、ロの親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。
二  当該資産保有型会社等が、次に掲げる要件の全てを満たす法第七十条の七第二項第八号に規定する資産保有型会社又は同項第九号に規定する資産運用型会社でないこと。
イ  当該資産保有型会社等が、法第七十条の七第一項の規定の適用に係る贈与の日まで引き続き三年以上にわたり、商品の販売その他の業務で財務省令で定めるものを行つていること。
ロ  イの贈与の時において、当該資産保有型会社等の親族外従業員の数が五人以上であること。
ハ  イの贈与の時において、当該資産保有型会社等が、ロの親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。

 

参考条文22【医療法人の出資金、事業実態のある資産管理型会社が有する3%以上保有の上場株式等については、猶予税額を算定する際の価額から除く規定】
租税特別措置法施行令 第40 条の8 第12 項
12  法第七十条の七第二項第五号イに規定する政令で定める法人は、認定贈与承継会社、当該認定贈与承継会社の代表権を有する者及び当該代表権を有する者と第七項各号に掲げる特別の関係がある者が有する次の各号(当該認定贈与承継会社が資産保有型会社等に該当しない場合にあつては、第一号を除く。以下この項において同じ。)に掲げる法人の株式等(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項に規定する投資口を含む。第一号において同じ。)の数又は金額が、当該各号に定める数又は金額である場合における当該法人とする。
一  法人(医療法人を除く。)の株式等(非上場株式等を除く。) 当該法人の発行済株式(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項に規定する投資法人にあつては、発行済みの同条第十四項に規定する投資口)又は出資の総数又は総額の百分の三以上に相当する数又は金額
二  医療法人の出資 当該医療法人の出資の総額の百分の五十を超える金額

 

参考条文23【現物出資等資産の価額】
租税特別措置法関係通達(措置法第70 条の7 第29 項各号の価額の意義)
70 の7-50  措置法第70 条の7 第29 項第1 号の「認定贈与承継会社の資産の価額」及び同項第2 号の「現物出資等資産の価額」は、特例対象贈与があった時における評価基本通達の定めにより算定した価額をいうことに留意する。(平21 課資2-7 追加、平22 課資2-14、平26 課資2-12、課審7-17、徴管6-25、平29 課資2-14 改正)
(注) 特例対象贈与があった時に措置法第70 条の7 第29 項に規定する現物出資等資産(以下70 の7-50において「現物出資等資産」という。)を認定贈与承継会社が有していない場合でも、当該現物出資等資産を有しているものとして上記により措置法第70 条の7 第29 項第2 号の価額を算定することに留意する。

 

※本資料は平成30年4月1日時点の法律に基づき作成しております。

 

 

 

 

税理士法人山田&パートナーズ

レポート『事業承継~「個人資産の株式化」とその規制~』(平成30年6月15日付)より転載