[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第4回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」こそ専門家選びが重要!

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

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(1)ネットM&Aの世界は文字でしかない

後継者不在などの理由で、「廃業」ではなく「第三者承継(M&A)」を売り手社長が選択したとします。年商2億円以下のスモール企業(中小零細企業)であれば、「対面(リアル)」でお相手を探す銀行やM&A仲介業者には高額な費用の面で頼むことができません。

 

そこで、前々回お伝えしましたように、バトンズやトランビのようなM&Aマッチングサイトに無料登録を試みようとします。当然ですが、会社が特定されないノンネーム状態の会社概要のような感じでの登録となりますが、そのノンネーム状態の会社概要に、買い手の興味を引くような、もっといえば条件に合った買い手が現れるような情報を書き込まないといけません。

 

買い手からしてみると、最初は対面の説明など一切なく、また写真や動画ももちろんなく、文字オンリーでの情報で、買いたいか買いたくないかを判断する必要があります。そこに単に、「関西、製造業、従業員3名、売上6,000万円、赤字、安定した売上が特長」とだけ書かれていて、買い手が買いたいと思うでしょうか。

 

逆に、下記のような会社概要であれば、買い手はどう感じ、どのように行動するでしょうか。

 

超極細ばねから太物まで!バネの総合メーカー

【事業内容】

金属製スプリングの製作並びに販売 お客様からご注文をいただいた際は原材料・部品の購入から完成品として出荷されるまでの工程の各段階での、管理特性や管理方法を記載した表を使いご提案。その上で15社ほどの生産協力会社の中から適合性の高い先を選定し、製品の生産を依頼しています。 出来上がった製品を検査データとともに受け取り、当社にて受入検査を行ったのち、梱包・出荷をいたします。

【譲渡希望額】

1,000万円〜2,000万円

【会社概要】

[事業形態]法人

[都道府県・地域]××県

[設立年月]10年以上

[従業員数(正社員数、パート・アルバイトの合計)]1人〜4人

【財務概要】 ※ 公開日、または更新日から起算した直近期の財務概要です。

[売上高]5,000万円〜1億円

[売上総利益]2,000万円〜5,000万円

[営業利益]-100万円〜0円

[役員報酬総額]1,000万円〜2,000万円

[減価償却費]0円〜100万円

[現預金等]300万円〜500万円

[売掛金等]500万円〜1,000万円

[金融借入金]1,000万円未満

[純資産]1,000万円〜2,000万円

【M&A譲渡概要】

[譲渡希望額]1,000万円〜2,000万円

[譲渡対象]会社譲渡

[M&A交渉対象]すべて(個人も含む)

[その他希望条件]連帯保証の解除, 従業員雇用継続, 車を引き取りたい
【補足】借入金500万円の連帯保証の解除をお願いします。

 

[譲渡に際して最も重視する点]想いを継いでくれること

[譲渡理由]後継者不在

[支援専門家の有無]あり

【事業概要】

●商流(仕入先、販売先やエンドユーザー、モノの流れ)

 

[顧客、エンドユーザーについて]

家電や航空業界に使われるバネを販売。またばねの総合メーカーともお取引がございます。

 

[仕入れ先の特徴や関係性について]

長年の付き合いがあり、安定したお付き合いを続けています。

 

 

●アピールポイント(商品・サービス、資産・立地、会社の歴史等の強み)

 

[商品・技術・サービスの特徴や魅力]

15社ほどの生産協力会社との独自ネットワークを築き上げております。そのため一般的なスプリングの生産は勿論のことながら、特殊製品にも対応し数多くの商品を取り扱っています。

 

[当事業の歴史や創業の背景、想い]

社長は元々サラリーマンとして同業界の企業にお勤めでしたが、2002年、定年を機に当社を創業。長年の経験で得た知識・ネットワークを生かし、自ら営業活動を行ってまいりました。順調に仕事を増やしてきましたが、次を担う後継者がいらっしゃらないことからこちらへ掲載をすることになりました。社長は譲渡を急いでいるわけではなく働ける限りは現場にて業務に取り組みたいというお気持ちです(経理と荷造り担当の妻も同様)。 お客様のどんなニーズにもお応えすることがモットーです。

 

[事業の強み、発展性]

売上先が安定しております。 また、新規開拓をしていないため、売上向上の余地があります(見込先一覧表あり)。 品質には自信ありです。

 

 

以下、省略


(M&A総合支援プラットフォーム バトンズhttps://batonz.jp/より転載、一部修正)

 

 

 

 

M&Aという性格上、多数の優良な買い手にアピールしたいと思う反面、秘密保持にはそれ以上に注意を払わないといけません。そのため、売り手が特定されるような情報は載せられませんので、当然ながら写真等も基本的には掲載不可となります。

 

つまり、売り手は最初、「ほぼ文字だけの情報で、秘密を守りながら買い手へのアピール」を行わなければなりません。文章が得意な社長であればまだいいのですが、そうでなければ、文章力や表現力が豊富なマッチングサイトでのM&Aに特化したアドバイザーに頼まれた方がいいでしょう。文章作りは得意という方でも、「買い手目線で」会社概要を書かないといけないということと、買い手の数より質を高めることが重要でそのため「条件に合う良質な買い手を集める」という視点でも書かないといけませんので、やはり、売り手の方は、最初からこういったM&Aマッチングサイトの特性をよく知ったアドバイザーに頼んだ方がいいでしょう。

 

因みにですが、買い手が現れたらアドバイザーを入れようとするのはタイミングとして間違いです。不動産の売り案件と一緒で、一般的には最初に来る客が一番良い客であることが多いですので、最初のM&Aマッチングサイトに載せるところからアドバイザーに相談されることをお勧めします。

 

 

(2)買い手も最初からM&Aマッチングサイトに精通したアドバイザーを付けるとスムーズ

一方、買い手においては、サイト上で売り案件を見て、興味のあるものに対して、サイト上でメールを送るような感覚で、質問や実名開示依頼を行っていきます。

 

前回の解説で説明しましたが、M&Aマッチングサイト初心者の買い手がよくやる落とし穴は、「自己紹介や購入理由等の記載が何もなく、また売り手への配慮が無い言葉で質問のみ」を実行して、その後、売り手や売り手アドバイザーから「音沙汰なし」又は「返信はあるが素っ気ない」対応をされてしまうことです。

 

いずれは変化があると思いますが現在では、M&Aマッチングサイトは、買い手9割売り手1割の世界です。特に優良な売り案件には、20人以上の買い手が当然のように手を挙げます。M&Aマッチングサイトでは、買い手は、多数の買い手から売り手やそのアドバイザーにまずは選んでもらないといけないということを、常に念頭において交渉を進めないといけません、特に最初が肝心です。

 

弊社では過去に多数の売り手アドバイザーをしてきています。その結果、多数の買い手からのオファーをネット上で買い手同士の文章比較をしながら見ていますが、「よく売り手の立場を考えて練られた文章を送ってくる買い手や買い手アドバイザー」と「それ以外」は明白です。いくら、買い手に知名度や資金力があっても、M&Aマッチングサイトでは選ばれる買い手にならないと優良な売り案件にはその交渉の場にすらたどり着くことができません。過去にどれほど大きなディールに取り組まれていようが、「M&AマッチングサイトにはM&Aマッチングサイトなりの流儀やお作法」というものが存在します。そういった意味では、買い手も最初から、M&Aマッチングサイトに明るいM&Aアドバイザーを付けてその方に交渉をお任せした方が良いでしょう。

 

 

(3)全国の会計事務所に立ち上がって欲しい

私自身も会計事務所(税理士事務所)を経営していますが、顧客の8割は年商2億円以下のスモール企業です。もっと具体的にいえば、「年商8,000万円、従業員3名、トントンか赤字」といった感じの規模感等です。

 

会計事務所や税理士事務所の皆さん、このようなメイン顧客の社長が70歳を超えて後継者不在の場合、どんなアドバイスや支援をされてきましたか?高齢の社長より、「息子が継ぎたくないっていっているけど、この先どうしよう?」と言われて、どんな励ましの言葉をかけることができましたか、どんな対策を提案されてきましたか?

 

既存のM&A仲介業者や銀行等に頼むと、最低手数料1,000万円からと言われますので、ご紹介すらできませんし、先方も引き受けてくれません。

 

今までこのような顧問先にできることといえば、粛々と廃業に向けての「会社の終活支援」や「廃業支援」くらいではなかったでしょうか?さらにいえば、これらの支援すらしてあげられなかったのが、多くの会計事務所の実態ではないでしょうか。

 

同業者ですからご容赦願う前提でストレートに言わせていただければ、今までの会計事務所の後継者不在スモール企業への対応は、「ほったらかし」でした。もしその顧問先の年間顧問料が50万円で、20年のお付き合いがあれば50万円×20年=1,000万円、40年のお付き合いがあれば50万円×40年=2,000万円を、今まで頂戴してきたにも関わらず、最後にできることは、「ほったらかし」です。

 

これでいいのでしょうか?こんな無策で、本当に間違っていないのでしょうか?こんな仕事のやり方で、子供世代に会計業界について自信をもって説明できますか?

 

「M&Aマッチングサイトを使ったスモールM&A」では、このような後継者不在企業に、平均して7社の買い手候補を、無料で連れてきてくれます。「M&Aマッチングサイトを使ったスモールM&A」の仕組みを顧問先に伝えることは、会計事務所の使命ではないかと思います。

 

例えばですが、バトンズというM&Aマッチングサイトでは、無料登録が可能で更には登録サポートも無料になっています。社長やその親族等に、「バトンズとネット検索してみて」などとお伝えしてみてはいかがでしょうか。

 

できれば、会計事務所の方が登録の仕方やネットを使ったスモールM&Aの仕組みを理解して、登録代行等をしてあげるとなお良いでしょう。M&Aマッチングサイトを通じてマッチングをしてきた買い手の情報を顧問先にお持ちすると、それこそ飛び上がって喜ばれることもあります。「廃業しかないと思っていたのに、継いでくれる可能性のある人が現れるとは!」、と。

 

今まで廃業しか選択肢が無かった、特に地方のスモール企業に、第三者承継という手段を与えたという意味で、控えめにいって、プラットフォームとも呼ばれるM&Aマッチングサイトは、「革命」を起こしたと言えるでしょう。廃業であれば、650万人の雇用と22兆円のGDPが喪失する可能性がありますが、廃業ではなく第三者承継が実現すれば、取引先や雇用が継続されます。売り手社長自身にとっても、廃業より手残りが多くなるでしょう。

 

M&Aマッチングサイトを革命の第1章とすれば、革命の第2章は、全国の会計事務所や税理士事務所が立ち上がって、後継者不在の顧問先をマッチングサイトに多数登録していくような状況をいうのではないかと考えています。全国には、127万者の後継者不在企業等がありますが、まだまだM&Aマッチングサイトを見る限りそれらの一部しか登録がされていません。廃業予備軍ともいえる多数のスモール企業に、M&Aマッチングサイトを使ったM&Aの世界がまだまだ認知されていないからです。これら全国のスモール企業にリーチできるのは、全国の会計事務所しかありません。そう考えると、革命の第2章の主役は、全国の、特に地方の会計事務所や税理士事務所ではないでしょうか。全国の会計事務所や税理士事務所の皆さん、共に立ち上がり、革命第2章を共に歩みましょう。

 

 

 

 

 

 

[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第3回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」で、選ばれる買い手になるために

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

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(1)ユーザーの9割は買い手という現実

前回の解説にてスモール企業(中小零細企業)の売り手目線の選択肢として、「廃業」ではなく「ネットを使った第三者承継、(M&A)」を、弊社がサポートした実例を踏まえて説明をしましたが、いかがだったでしょうか。

 

前回の末尾に、サラリーマンを含めて買い手が多数いることについても少し触れました。 M&Aマッチングサイトをスマホやパソコンで見てみると、トップページにユーザー数が表示さています。そのマッチングサイトを使っているユーザーの数のことですが、一般的には約9割が買い手といわれています。つまり、10人いれば、1人が売り手で9人が買い手という感じです。

 

多数の買い手がマッチングサイトには存在しているのですが、それら買い手の成り立ちや業種業態、規模感などは多種多様です。一般的によくあるのは、今までM&Aを検討したことはあるのだけれど、売買価格や専門家費用が高く、なかなか実現できなかったようないわゆる中小零細企業の方々です。売上規模でいうと、3億円未満でしょうか。

 

他にも、過去に数億円ほどのM&Aを実現したことがあるような売上規模でいうと30億円未満の中小企業も多数います。中には、上場企業が買いくるケースもあり、弊社でもM&Aの成約実績があります。

 

一方で、自身もスモール企業といえるような売上2億円未満の企業も、売上拡大や昨今のコロナ禍でのリスクヘッジを買収理由として、マッチングサイトでのM&Aに積極的です。

 

さらには、冒頭申し上げたサラリーマンの方がいずれの起業や副業目的で、主婦の方やリタイヤメント世代が第二の人生に向かう1つの手段として、M&Aマッチングサイトに買い手候補として個人登録をしています。

 

また、買い手の業種業態や本社等のエリアは、マッチングサイトという性格も相まって、あまり偏りがなくあらゆる業種業態やエリアの方々がいます。

 

マッチングサイトを活用したM&Aの最前線でアドバイザーとして仕事をしていて、最近強く感じるのは、中国などのアジアを中心とした買い手企業が多数出てきていることです。マッチングサイトは日本語オンリーであることが多いので、日本語がある程度できるということ(また、形式上は日本企業ということでもあります)ですが、日本のスモール企業の魅力は日本人以上に外国の方々の方が強く感じているのかもしれません。

 

一方で、本連載の第1回で、「事業者数381万者のうち、3者に1者に当たる127万者が経営者70歳以上かつ後継者不在で廃業の危機にある」と説明しました。これら127万者の廃業が日本経済に与えるインパクトは、「650万人の雇用喪失、22兆円のGDP喪失」です。そのため、国は2019年12月20日に「第三者承継支援総合パッケージ」を、2020年3月31日に「中小M&Aガイドライン」をそれぞれ公表しました。これら政府資料では、127万者のうち黒字廃業率49.1%をかけた60万者を、今後10年間でM&Aを実現していく、との目標を掲げています。つまり、今後は圧倒的な売り案件がマッチングサイトに出てくるはずです。しかし、現状ではまだまだ、売り手の社長自身が自分の会社が第三者に売れるとは考えていないことなどもあり、圧倒的に買い手の方がマッチングサイトのユーザーとなっています。この部分については次回に説明したいと考えていますが、全国の会計事務所が立ち上がって、今まで救えなかった廃業間近の顧問先への情報提供や、M&Aマッチングサイトを利用するお手伝いをして欲しいと、強く思っています。

 

 

(2)ほとんどの買い手がハマる「落とし穴」

マッチングサイトに登録している買い手候補は、こういった買い手9割という実情をあまり知らないようです。場合によっては、「買い手がお金を出すのだから」と上から目線で交渉に臨んでいるケースもあります。

 

M&Aマッチングサイトに買い手が初めて登録して、この案件に少し興味あるなと思って、質問をしたり、前回、説明した実名開示依頼をしたりした時に、ほとんどの方がハマる「落とし穴」があります。

 

それは、メッセージを送ったのに、「何も返信がない」または「返信はあるが素っ気ない」ということです。このコラムをお読みの方でも、ご経験あるのではないでしょうか。

 

理由は明確です。現在のM&Aマッチングサイトでは、圧倒的な買い手過多なのです。また、人気案件は誰が見ても興味を引くものですから、1つの売り案件に、10件、20件買い手候補が現れることも珍しくありません。弊社も売り手アドバイザーをしていて、多数の買い手候補が現れているときに、「スマホからメール文言のチェックもせずに片手でよこしてきたな、しかもこの時間であれば飲み屋からか?」とわかるようなメールには、なかなか時間をかけて返信することはできません。

 

ネットの世界というのは、これはM&Aに限らずですが、リアルに会っているわけではありませんから相手の顔色など全く不明で、基本的にネット情報やメール文章のみで、判断をすることになります。過去にM&Aを多数実行してきた名の知れた大企業が買い手であっても、そこは同じです。実際に、弊社で過去成約した事例を振り返ると、規模も大きく知名度のある買い手候補が必ずしも、優良な売り案件の成約を実現できておらず、意外な伏兵ともいえるような小企業や時には個人が数多ある買い手候補をねじ落とし、売り手の心を射止めています。

 

 

(3)選ばれる買い手になるためには

先ほど「相手の顔色など全く不明で」と書きましたが、実は、文章というのは、思いっきり顔色が出ます。これを知っているかどうかは、M&Aマッチングサイトで選ばれる買い手になるためには重要です。

 

メールのやりとりを続けていくと、相手がどんな状況でこのメールを書いているのかまでわかりますし、もちろんどれくらいの熱意で書いているのかもわかります。残念なのは、本当はすごく熱意もあるし、もちろんそのための準備としての資金なども潤沢にあるにも関わらず、最初の売り手やそのアドバイザーとのやり取りを、疎かにされてしまうケースです(メール含めたネット音痴の方も含みます)。最初のメールで、「挨拶や買い手自身のことを何も書かずに、一方的な買手目線で、質問のみする」というのでは、十中八九上手くいかないでしょう。どんな交渉事でもそうだと思いますが、相手つまり売り手の立場に立って、常に発言をされることが大事です。この辺り、不得意と言うことであれば、少し費用は発生しますが、こういったM&Aマッチングサイトの交渉に長けたアドバイザーを、最初から付けられることをお勧めします。せっかくの貴重な売り案件を逃すことになりますから。

 

選ばれる買い手になるためには、「常に売り手の立場に立つ」ということは重要ですが、他にも、「売り手の条件を満たしている」ことをきちんと説明することも必要です。ケースによっては許認可や業種などが条件になっていることもありますが、多くの売り案件に共通する条件は、「価格」です。その価格を買い手はきちんと用意できるのかです。

 

つまり、選ばれる買い手になるためには、買収価格を例えば自己資金で用意しているとか、既に銀行に話をしていて内諾を得ているなどであれば、かなりのアピールになるでしょう。当然ですが、買収価格はその後に交渉していく前提で決して売り手が最初に提示した価格で購入するということではありませんが、とにかく最初は多数の買い手候補から売り手やそのアドバイザーに選んでもらわないと交渉のステージにすら進めないわけですから、資金手当ての話は重要なこととなります。

 

 

 

 

 

[中小企業のM&A・事業承継 Q&A解説]

第6回:M&Aの仲介契約とFA契約の違い

~仲介契約とアドバイザリー契約の違いとは?報酬体系は?~

 

[解説]

宇野俊英(M&Aコンサルタント)

 

 

 

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[質問(Q)]

後継者を探しましたが、親族内、役員・従業員にも適任者が見当たりません。ついてはM&Aで事業継続を図りたいと思いますが、現在候補先にあてがない状態です。候補先を探索する場合、誰に相談したらよいですか。

 

 

[回答(A)]

一般的には決まった相手先がいない場合には仲介者若しくはアドバイザーからの支援を受けることが一般的です。仲介者・アドバイザー(以下、「仲介者等」といいます)の選択は、業務範囲や業務内容、活動提供期間、報酬体系、ディール実績、利用者の声等をホームページや担当者から、確認した上で複数の仲介者等に打診、比較検討して決定することが望ましいです。また、公的相談窓口として事業引継ぎ支援センターにご相談いただいても、信頼できる仲介者等を紹介してもらうことができます。

 

 

 

1.信頼できる仲介者等の選任


信頼できる仲介者等を選任することが重要です。仲介者等はM&Aを支援する機関で、候補先は民間のM&A事業者、金融機関、税理士を含む士業専門家等です。身近な相談先として顧問税理士や取引金融機関も挙げられます。主な契約は2 種類でそれぞれの機関ごとの指針や取引状況により契約体系が大きく異なる仲介契約とアドバイザリー契約があります。選定の際には仲介者等の担当者との相性や信頼関係の構築ができそうかという点も重要なポイントになります。

 

また、契約を締結する際は調印前に充分な説明を納得がいくまで受けることも重要です。特に契約内容や報酬等については後程問題になるケースもあることから確認が必須となります。もし、契約内容等に疑義がある場合には、必要に応じセカンドオピニオンを受けることが有効です。

 

 

 

2.仲介契約とアドバイザリー契約の違い


仲介契約仲介者と譲渡企業、譲受企業との間の契約です。双方の間になって中立・公平の立場から助言を行うため、交渉が円滑に進みやすいという特徴を持っています。

 

アドバイザリー契約アドバイザーが譲渡企業又は譲受企業の一方との間で締結する契約です。契約者の意向が交渉に全面的に反映されるという特徴があります。

 

中小企業のM&Aでは仲介契約が一般的であることが多いと推察されますが、契約者に対する利益相反の観点からアドバイザリー契約のみに限定している支援者もいます。また、弁護士は弁護士法で双方代理は認められていないため、自動的にアドバイザリー契約となります。

 

 

3.仲介者等の役割


一般的には以下のような支援をすることが多いです。

 

また、以下の一部のみサービスを提供している仲介者等もいます。

 

①事業評価
②候補先選定サポート
③交渉サポート
④基本合意締結サポート
⑤デューデリジェンスサポート
⑥最終契約締結・クロージングサポート

 

 

4.報酬体系


一般的な報酬は以下のとおりです。別途交通費等の実費やデューデリジェンスの費用が必要な場合があります。また、着手金やリテーナーフィー、基本合意時の報酬は不要として成功報酬のみとしている仲介者等もいます。

 

● 対応開始時:着手金
● 対応中:リテーナーフィー(月額報酬)
● 基本合意締結時:中間的な報酬で、成功報酬の一定割合としている仲介者等もいます。
● 成約時(決済時):成功報酬、レーマン方式といわれるM&Aで一般的に使用される方式を採用しています。一方、最低報酬額を別途定めている仲介者等も多く存在します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第2回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」では、買い手候補が7社以上

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

▷売上1,000万円程度からの「スモールM&Aお任せサービス」受付開始!M&A仲介業者への依頼に至らない規模の小さい案件も依頼しやすい手数料で。まずはお気軽にご相談を。

 

(1)誰にとってもモッタイナイ状況

本連載の第1回にも書きましたが、親族外の役員従業員承継という一時しのぎを除けば、後継者不在の会社の行く末は、2つしかありません。つまり、「廃業」か「第三者承継(M&A)」です。さらに、後継者不在の年商2億円以下のスモール企業(中小零細企業)に限っていうと、買い手候補を連れてきてくれるM&A仲介業者が費用対効果の関係でほぼ存在しないことから、実質、「第三者承継(M&A)」の選択肢はありませんでした(唯一あるとすれば、売り手社長ご自身が、知り合いの会社などお相手を見つけてくることができた稀なケースです)。ということは、スモール企業は、後継者を見つけられなかった場合は、基本的に「廃業しか選択肢がない」というのが、残念ながら今までの日本のスモール企業の現状でした。

 

何十年と商売を続けてくると、どんな会社でも、何某かの「経営資源」を築いていることが多いです。例えば、「自社オリジナル製品やサービス」、「技術力」、「得意先や仕入先、外注先の数と質」、「ビジネスの仕組みそのもの」、「育成コスト含めた従業員の数と質」等です。長く続けてきた会社の経営資源は、客観的に誰が見ても評価されるものもあれば、ある特定の企業や起業家から見たときに、それを一から築き上げることとの比較で評価されさることもあります。

 

このような経営資源のあるスモール企業が「後継者不在」というたった一つのトリガーで廃業しか選択できないというのは、売り手にとっても買い手にとっても、さらには日本経済にとっても勿体ないことだと思います。

 

しかし、この問題を打破できる可能性の秘めたものが一つあります。それは、「M&Aマッチングサイト」です。政府の資料では、「プラットフォーマー」などといわれています。

 

 

(2)実例「今まで廃業しか選択肢がなかった年商数千万円の会社が売れる!?」

では実際、M&Aマッチングサイトに後継者不在企業が登録(ほとんどのマッチングサイトでは無料で登録することが可能で、マッチングサイトによっては無料登録サポートが付いているところもあります)したケースで、その後どのようになったのかを弊社がサポートした事例でご紹介します。

 

最初、後継者不在企業がマッチングサイトに仮登録をされ、その後弊社とアドバイザリー契約をした上でトータルサポートをさせて頂きました。

 

 

(後継者不在企業の概要)

■業種:金属製品製造業

■売上高:6,000万円

■営業利益:△290万円

■総資産:1,900万円

■有利子負債:300万円

■純資産:900万円

■従業員数:3名、妻(経理、梱包発送)、従業員A(仕入担当)、従業員B(梱包発送、雑務)

 

 

マッチングサイトに正式登録をして2~3日のうちに、「4~5件」の買い手候補から「質問」や「実名開示依頼(買い手候補が自社の売上等の説明を記載した上での正式な手続き)」がサイト上で行われました。因みにこの反応数は、一般的な数字よりやや多いぐらいで、それほど特筆すべき数字ではありません。例えばマッチングサイトに登録して1週間たっても何も反応がなければ、マッチングサイトに掲載した紹介文などの表現が伝わりにくい、または、価格含めた条件面が相場とかけ離れている可能性が高いと思われますので、修正後に再アップされると良いでしょう。こういったトライアンドエラーを繰り返せるのが、ネットの良さですね。

 

さてその後、質問などの引き合い件数は「23件」、その中で本気度の高い実名開示依頼件数が「12件」、買い手の会社概要などから売り手が実際に実名開示を了承した件数が「7件」でした。売り手が実名開示を承諾すると、ネット上で秘密保持契約を締結した上で、買い手は売り手の決算書など詳細な資料を見ることができます。

 

そして、その7件のうち「6件」が弊社との買い手面談へと進みましたので、実名開示承諾で決算書などを見て実際の案件の中身が良かったのだと思います。

 

その中で買い手の意向と売り手の希望などを考えて、「2社」とトップ面談をして、そのうちの同業である「1社」と基本合意、最終契約となりました。

 

 

≪成約までの経緯≫

引き合い件数「23件」⇒実名開示依頼数「12件」⇒実名開示数「7件」⇒買い手面談数「6件」⇒トップ面談数「2件」⇒基本合意数「1件」

 

 

 

ちなみに、買い手企業の概要は下記となります。

 

≪買い手企業の概要≫

■業種:同業

■売上高:20,000万円

■従業員数:20人

■予算:2,000万円

 

 

 

売り手企業を振り返ると、年商6,000万円で赤字、従業員数は社長の奥様含めて3人というM&AマッチングサイトのスモールM&Aではよくある規模感等でした。気になる承継対価は1,600万円、マッチングサイト登録から引き渡しまでの期間は4ヶ月弱で、雇用の継続はもとより、得意先や仕入先、外注先すべて継続されることになっていました。

 

買い手は社長である父とその息子が交渉窓口だったのですが、父にとって今回のM&Aは、息子がいずれ本体を承継するための一つのステップとしての側面もあったようです。

 

 

 

(3)M&Aマッチングサイトを使えば、買い手候補が7社以上

いくつかのM&Aマッチングサイトがありますが、弊社が使っているバトンズというサイトでは、通常、売り手がサイトに登録すると、平均して7社の買い手候補が現れます。もちろん全く現れないことも稀にありますが、20社以上が候補企業として現れるようなこともあります。

 

M&Aマッチングサイトでアドバイザーとして買い手候補からのアプローチなどを見ていて、しばしばびっくりさせられることがあります。何にびっくりさせられるのかというと、「この売り案件にこの買い手がよくマッチングをしてきたな」という、そのマッチング自体にです。売り手及び買い手のマッチングの例をいくつかご紹介します。

 

 

●(売り手)東京の従業員0名の映画製作業×(買い手)大阪の従業員50名の広告業

●(売り手)関西の従業員6名の企業食堂×(買い手)関西の従業員20名の製造業

●(売り手)関東の従業員2名の製造業×(買い手)都内のサラリーマン

●(売り手)関東の従業員5名の塗装業×(買い手)関東の従業員10名の不動産業

●(売り手)関東の従業員1名の鋼管材卸業×(買い手)関西の従業員15名の塗装業

 

 

エリアも業種もバラバラで、買い手にサラリーマンが出てくるところも、M&Aマッチングサイトを使ったスモールM&Aの特徴です。

 

日本に事業者数は381万者あるといわれていますが、そこにサラリーマンまで買い手候補の可能性があるとなると、どんな優秀なM&A専門会社や専門家が頑張っても、上記のようなマッチングを成立させることは不可能でしょう。M&Aマッチングサイトだから実現できた第三者承継(M&A)といえるでしょう。もちろん、売り手も買い手も、引いては日本経済にとってもハッピーとなります。

 

「M&Aマッチングサイト」というのは、今まで廃業しか選択肢がなかったスモール企業に、第三者承継(M&A)という新たな希望のある選択肢を与えたという意味で、また、買い手にも事業拡大の新たな手法を与えたという意味で、控えめに言って「革命」を起こしたのではないかと感じています。

 

 

 

 

[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第1回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」が活況なワケ~コロナも追い風~

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

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(1)4つの数字「381」「127」「650」「22」からみる中小M&Aの今

日本の高齢化率は世界一ですが、同様に中小企業経営者も高齢化しています。具体的な数字を挙げると、全国における事業者数は、会社も個人事業主も含めて約「381」万者。そのうち、経営者の年齢が70歳以上の数は245万者で、そのうち後継者未定の数は「127」万者となっています(2025年予測値)。

 

つまり、日本にある製造業や建設業、飲食店や町のお豆腐屋さんなどすべての事業主のうち、3分の1は、「経営者年齢70歳以上かつ後継者未定」なのです。

 

 

ではこの127万者は、将来どうなるのでしょうか?

 

 

実は、最終的な選択肢は2つしかありません。1つは、「M&Aで第三者承継先に譲渡する」、もう1つは、残念なことではありますが、「廃業」です(親族外の従業員や役員に承継するというのも稀にありますが、単に代表者が変わるだけが大半で、きちんと株主が変わり銀行保証も精算されるケースは極めて少ないです)。

 

さらには、127万者のうち8割である約100万者は、いわゆる中小企業ではなく小規模企業です。小規模企業の場合、M&Aで第三者承継先を探そうとしても、売買対価が低額で十分な手数料が支払えないことから、M&A仲介業者や銀行等に依頼する案件としては相応しくありません。つまり、これまでは、小規模企業の場合は第三者承継先を探そうにも相談者がおらず、結果的に「廃業」しか選択肢がなかったといえます。

 

 

 

この廃業しか選択肢がなかった小規模企業に、「第三者承継」という選択肢を与えてくれるのが、このシリーズの主題である「マッチングサイトを使ったスモールM&A」なのです。

 

 

 

(2)第三者承継支援総合パッケージで「M&Aマッチングサイト」に言及

このまま放置しておくと日本経済に与えるマイナス要素が大き過ぎるため、中小企業庁は、2019年12月20日に、中小企業支援策として、「第三者承継支援総合パッケージ」を発表しました。「第三者承継=M&A」ですから、この資料には親から子へといった従来政府が推し進めてきた「親族内承継」の言葉はありません。親族内承継だけでは、日本経済は救えないと国がはっきりと方針を打ち出したようにも思います。

 

 

では国は、経済的に日本が沈没してしまうのを回避するために、先ほど見た127万者すべてに支援の手を差し伸べてくれるのでしょうか?

 

 

答えは、「ノー」です。昨今政治も新政権に変わり、「自助・公助・共助」を掲げられ、また、政権ブレーンであるイギリス出身日本在住の経営者デービッド・アトキンソン氏の影響も大きく、「廃業止む無し、生産性向上のためM&Aを推進」の方向性のようです。

 

第三者承継支援総合パッケージによると、2025年までに、70歳以上となる後継者未定の中小企業約127万者のうち、黒字廃業の可能性のある約60万者の第三者承継を促すことを目標としています。60万者のM&Aを10年間かけて実現するということですから、1年間で6万者のM&Aを実現させるということです。

 

 

ではこの国の目標に対して、現在、どれくらいのM&Aが行われているのでしょうか?

 

 

実は、公表ベースですが、年間たったの「4,000件」です。毎年増加しているとはいえ、この数字です。年間6万件と比較すると、15倍の開きがあります。これは対面(リアル)で人がいくら頑張っても実現できる数字ではありません。特に、お相手を探してくるというとても時間と費用の掛かる作業を対面(リアル)で行うことを想定すると、どのようなやり方をしようが実現は不可能でしょう。そこで国は、民間プラットフォーマーとの連携など、ネットを使ったM&Aに大きくシフトしていこうとしているのです。

 

国は年間6万件のM&A実現へ向けて、2015年に作成された「事業引継ぎガイドライン」を、マッチングサイトを使ったM&Aや専門家向けへの記述を加え全面改訂し、コロナ禍の最中である2020年3月31日に「中小M&Aガイドライン」を作成公表しました。

 

また、2020年7月には、マッチングサイトを使ったスモールM&A向けといっても過言ではない、「経営資源引継ぎ補助金」が創設され、M&Aにおける着手金や成功報酬に対して最大200万円が支給されることになりました。ちなみにこの補助金は、売り手も買い手も中小企業であれば対象となっています。

 

 

このように、マッチングサイトを使ったスモールM&Aを、あの手この手で国が支援してくれているのが現状なのです。

 

 

(3)意識の変化や金融緩和で案件増加!(コロナも追い風)

スモールM&Aが活況な理由は、他にもあります。現場に出ていて最近特に顕著に感じるのは、売り手や買い手における「意識の変化」です。

 

今どきの売り手では、例えば父親経営者は、たとえ承継候補となる息子や娘がいても、自ら継がそうとしないケースが増えてきました。それこそ一昔前の特に地方では、父親の会社を承継するというのはある種、運命みたいな部分があったかもしれませんが、それを父親自身がストップをかけるのです。

 

しかし自分事としてこの父親経営者のことを想像してみると、納得がいきます。今までそれこそ四六時中仕事のことを考え、時に従業員との確執なども乗り越えてきて、この先この会社を息子に承継させるとなれば、それこそ死ぬまで会社の心配や不安をぬぐうことはできないでしょう。もしこれを第三者に売却(M&A)できれば、老後はゆっくりと趣味や奥様との時間に何の心配もなく過ごすことができます。老後を不安なく自由に暮らしたいと考える父親経営者は、思いのほか増えています。さらにこのコロナで、立ち止まり考える時間も増えたため、コロナがトリガーとなり、M&Aを決心する経営者が増加しているように思われます。

 

 

息子のほうも、田舎にある父親の会社を引き継げといわれても、都会暮らしを手放したくない、妻の反対や子供の学区のこともある、などでM&Aを父親に自ら提案することも多いようです。

 

 

また、買い手においては、特にこのコロナ禍で、従来のような同業種や類似業種へのM&Aだけではなく、全く異なる分野へのM&Aを検討されるケースが増えています。背景にあるのは、事業におけるリスク分散だと考えられます。リスク分散としてのM&Aを考えるとき、いきなり大きな買い物はしにくいですから、「スモールM&A」が向いているのです。他にも、金融緩和で資金が余っていることもM&Aの追い風となっています。

 

 

このような理由により、現在、スモールM&A、特に手軽に始められる「マッチングサイトを使ったスモールM&A」がかつてない活況を見せているのです。

 

 

 

[参考資料]

第三者承継支援総合パッケージ(中小企業庁、2019年12月20日)

https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191220012/20191220012-1.pdf

 

 

 

 

[M&A担当者がまず押さえておきたい10のポイント]

第3回:売却するならどこがいい? -同業他社?大企業?ファンド?-

 

[解説]

松本久幸 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

大和田寛行 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

 

 

▷第2回:売却したいけれどどうしたらいい?  -会社を売却すると決めたら-

▷第4回:「事業譲渡と株式譲渡」どっちがいいの?-M&Aのスキーム-

▷第5回:実際に売却するときの留意点は?-DDの受入れや価格交渉-

 


会社を売却することを決めて、買い手候補先を探す場合に、どういった先がよいでしょうか?

 

前章にあったように、懇意にしている取引先がいて、そこが買い手候補先となってくれるというようなケースは、事業の内容もよくわかっているでしょうし、従業員もあの取引先であればと安心するでしょう。

 

しかし、そのような身近なところに買い手候補先があるケースは稀です。そうなると、顧問税理士や取引銀行、またはM&A仲介会社等にある程度幅広く買い手候補を探してもらうことになります。その場合にまず聞かれるのが、どういった先に売却することが、会社として、または、会社オーナーとして望ましいと考えるか、ということです。

 

 

会社の事業を継続して従業員や取引先も今まで通りの関係を継続して、ということになると、同業者や近い事業をしている事業会社が望ましい、ということになります。その場合に、買い手候補先の規模が小さ過ぎたり、資金力がなかったり等、何らかの不安があるような会社であれば買い手候補先としては不十分となってしまうでしょう。

 

最近の傾向としては、資金力もあって事業運営もしっかりしていて、人材も経営資源も豊富な上場会社が、自社の事業と近い事業を営む会社を買収するということが多くなっています。ですので、まずは自社と近い事業を営んでいる上場会社(またはそれに準ずる企業)から探してみる、ということが最初に考えられるステップです。

 

 

また、事業会社ではないものの、近年は様々な企業を買収して、種々の施策を打ってより良い会社にしていくことを目的とするファンドに売却するケースも増えています。事業会社では事業面や資金面での様々な制約があって売買条件が納得いくものとはならないようなケースであっても、ファンドであればそのような制約を乗り越えて納得のいく条件を提示してくれる、というケースもあります。

 

また、一昔前までは、ファンドという響きに対してネガティブなイメージもありましたが、最近はファンドもM&Aの有力な受け皿であるということが一般的に認知されてきておりますし、ファンド自体もそういったイメージを払拭しようとしていますので、以前ほどファンドに売却することを躊躇うケースは減っているのではないかと思われます。

 

そのため、まずは同業や近い業種の比較的規模の大きな事業会社を買い手候補先として探しながら、条件次第ではファンドにも接触する、というようなケースが多く見受けられるようになってきています。

 

 

 

 

どちらに売却するにしても、売却する側としては、会社が将来に向かって発展していくことを望むでしょうから、買い手候補先の将来のビジョンや当該M&Aの目的について、きちんと説明を受けた上で、売却する相手先を決めることが必要となります。