【Q&A】会社解散後清算人に就任した代表取締役に対する退職給与[税理士のための税務事例解説]
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[税理士のための税務事例解説]
事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。
今回は、「会社解散後清算人に就任した代表取締役に対する退職給与」についてです。
[関連解説]
[質問]
1. 支給した役員退職金が、法人税法上も「退職金」として是認されるか。
2. 経緯
①A㈱の代表取締役甲は諸般の事情により、法人を解散することを決断しました。
②A㈱の営業権を譲渡して、1億円の資金を得ることができる予定です。
*営業権の取得価格はありません。
③A㈱を解散し、役員退職金として「6千万円」を受給することとしました。
解散を決議した株主総会で、同時に上記の役員退職金支給を決議します。
④甲は、A㈱の清算人に就任します。
3. 確認したいこと
①甲は、A㈱の取締役は退任しますが、直ちに清算人に就任します。
甲に支給した退職金は「役員退職金」として認識されるのでしょうか。
引き続き「清算人(役員)」に就任することで、退職したとはみなされないのでしょうか。
②資金繰りの関係で、当該退職金の半分は清算中の事業年度において支給します。
支給の時期も、税務上の判断に影響を与えますか。
[回答]
ご承知のように、株式会社が解散した場合、合併による解散の場合及び破産手続開始の決定による解散の場合でその破産手続が終了していないときを除き、清算をしなければならず、清算株式会社は清算の目的の範囲内において清算結了まで存続することとされています(会社法475一、476)。
そして、清算株式会社の清算人は、清算株式会社の業務を執行する機関であり(会社法482①)、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済並びに残余財産の分配を行うことをその職務とされています(会社法481)。
また、清算人は、清算株式会社を代表し(会社法483①)、法人税法上、役員に該当します(法法2十五)。
ところで、法人税基本通達9-2-32《役員の分掌変更等の場合の退職給与》の取扱いがあり、これは、「分掌変更等」の前も後も役員である場合に、その分掌変更等が実質的に退職したと同様の事情にあると認められるときは、その時点での退職給与の打切り支給について損金算入を認めるというものです。
この取扱いは、地位の低下を前提としているので、監査役が取締役になるようなケースは考えられていないとされています(税務研究会「九訂版法人税基本通達逐条通達」P.864)から、ご照会の事例の場合に直接当てはめることは困難ではないかと考えられます。
しかしながら、所得税の取扱いでは、法人が解散した場合において、引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、所得税法上退職手当等として取り扱われています(所基通30-2(6))。
このことからすれば、これを法人税法上も退職給与として取り扱うことが相当であると考えます(国税庁HP 質疑応答事例参照)。
したがって、ご照会の事例の場合も、過大退職金(法法34②)に該当しない限り、退職給与として、支給時の損金とする(法基通9-2-28)ことができるものと考えます。
税理士懇話会事例データベースより
(2021年7月26日回答)
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