【Q&A】会社買収により退職した役員が親会社の役員となった場合の退職金[税理士のための税務事例解説]

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「会社買収により退職した役員が親会社の役員となった場合の退職金」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】経営状況が悪化した法人の役員退職金

■【Q&A】会社解散後清算人に就任した代表取締役に対する退職給与

 

 


[質問]

甲株式会社は、乙株式会社のすべての株式を買い取り、子会社にすることを検討しています。甲社と乙社の間には何ら親族関係などはありません。

 

乙社の社長丙は、買収(決済)日に乙社を退職し、その翌日に甲社の役員または使用人として勤務する予定です。乙社は丙に対して退職する当日(決済日)に役員退職金を支給予定です。

 

この退職金は、税務上何か支障がありますか。

 

※法人税基本通達9-2-33、9-2-34には合併法人または被合併法人での退職給与の取扱いがありますが、買収により子会社にする場合の取扱いがありません。

 

丙が乙社を退職することにより受給する退職金なので、翌日甲社に入社しても支障がないと考えますが、いかがでしょうか。

 

 

[回答]

1 役員退職給与

 

(1) 役員退職給与

法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは、損金の額に算入されます。

 

退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、原則として株主総会の決議等により確定した日の属する事業年度とされていますが、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度において損金経理をした場合には、これを認めることとされています(法人税法34、法人税法施行令70、法人税基本通達9-2-28)。

 

役員退職金は、本来、退職時の定時株主総会等で決議しておくべき性格のものでしょうし、退職後最初に開催される株主総会等で退職給与の支給決議が行われるのが一般的であるようです。

 

(2) 役員に対する退職給与の損金算入の時期

法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは、損金の額に算入されます(法人税法34)。その退職金の損金算入時期は、原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度となります(法人税基本通達9-2-28)。ただし、法人が退職金を実際に支払った事業年度において、損金経理をした場合は、その支払った事業年度において損金の額に算入することも認められます(同通達但し書き)。

 

 

2 退職所得

 

(1) 退職所得

退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社又は信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます(所得税法30、31)。

 

(2) 退職手当等の範囲

退職手当等とは、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいう。したがって、退職に際し又は退職後に使用者等から支払われる給与で、その支払金額の計算基準等からみて、他の引き続き勤務している者に支払われる賞与等と同性質であるものは、退職手当等に該当しないことに留意する(所得税基本通達30-1)。

 

また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します(所得税基本通達30-5)。

 

 

3 お尋ねについて

 

お尋ねによれば、「甲社は乙社を買収することとなり、乙社の社長丙は、買収により乙社を退職し、甲社の役員(又は使用人)に就任する予定」とのことで、「乙社は社長丙に対して役員退職金を支給する予定」とのことです。

 

(1) 法人が役員に支給する「退職金」で適正な額のものは、損金の額に算入されます(法人税法34②)。

 

その退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、原則として株主総会の決議等により確定した日の属する事業年度とされていますが、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度において損金経理をした場合には、これを認めることとされています(法人税基本通達9-2-28)。

 

したがって、役員に支給する「退職金」は、①退職給与の額が不相当に高額の場合や②退職の事実がない場合を除き、原則として損金に算入されることになります。

 

 

(2) ところで、お尋ねの場合、甲社の乙社の買収に際して、乙社の社長丙が退任し、甲社の役員に就任するとのことですので、法律上、乙社との委任関係が終了し、新たに甲社との委任関係にいたったということとなります。

 

したがって、事実として社長丙が乙社を退任したのであれば、乙社と甲社は別人格である以上、その退職給与の額が不相当に高額でない限り、損金の額に算入できるものと思われます。

 

なお、法人税基本通達9-2-33《被合併法人の役員に対する退職給与の損金算入》及び法人税基本通達9-2-34《合併法人の役員となった被合併法人の役員等に対する退職給与》の取扱いは、打切り支給の取扱いであり、お尋ねの場合とは直接の関係はありません。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2022年7月19日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。