【Q&A】税理士法人の出資持分の評価[税理士のための税務事例解説]

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「税理士法人の出資持分の評価」についてです。

 

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[質問]

<前提条件>

①  弊社:税理士法人(決算8月)

② A社員税理士は令和4年8月31日に退職したため、A社員税理士の出資持分の全部をB社員税理士へ贈与した。(贈与日:令和4年9月1日)

③ 定款には「当法人の社員は、その持分の全部又は一部を他人に譲渡するには他の総社員の承諾を得なければならない」旨の規定があるが、承諾済みである。

④ 弊社の会社規模は「小会社」

⑤ 弊社の出資持分の評価については以下のように認識している。

・税理士法人は持分会社であり、その社員税理士は無限責任社員である。

・その無限責任社員の退社時の出資の評価については、持分承継の規定があるかどうかによって変わる。

・持分承継の規定がある場合は「取引相場のない株式」の相続税評価に準じる。

・持分承継の規定がない場合は払戻請求権になるので、純資産価額(法人税等相当額を控除しない)での評価。

 

<質問>

以上のような認識のもと、今回の持分贈与は持分承継の規定があるため、通常の取引相場のない株式評価となり、「小会社」として類似業種比準価額が50%使えると考えてよろしいでしょうか。

 

 

 

 

[回答]

1 税理士法人とは

税理士法人は、社員を税理士に限定した、商法上の合名会社に準ずる特別法人です。合名会社とは、出資者が「出資持分」という形で財産権を保有する持分会社の一種であり、株式会社のように株式を発行することはできません。

 

税理士法人の「出資持分」は、「社員は、他の社員の全員の承諾があれば、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる」などの定めを定款におけば、他者に譲渡することができます(税理士法48条の21第1項、会社法585条)。ただし、税理士法人の社員は税理士でなければならないとされているため(税理士法48条の4第1項)、税理士法人の「出資持分」は個人税理士に対してのみ譲渡することができます。

 

 

2 持分会社の退社時の出資の評価

合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称します。)の社員は、死亡によって退社するとされていることから(会社法第607条第1項)、原則として「出資持分」は、出資として相続人に引き継がれません。

 

したがって、その持分について払戻しを受ける場合には、会社法第611条第2項に「退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない」と規定されていることから、持分の払戻請求権として評価します。その価額は、評価すべき持分会社の課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の合計額を控除した金額に、持分を乗じて計算した金額になります。

 

ただし、「出資持分」の相続について定款に別段の定めがあり、その持分を承継する場合には、出資として、取引相場のない株式の評価方法に準じて評価します(国税庁ホームページ/法令等/質疑応答事例/財産評価「持分会社の退社時の出資の評価」参照)。

 

なお、税理士法人の社員が死亡した場合には、たとえ社員の相続人が税理士であっても、社員の資格を相続することはできず、単に死亡した社員の持分払戻請求権等を相続することになります。これは、持分の相続に関する定款の定めについて規定した会社法608条《相続及び合併の場合の特則》が税理士法では準用されていないため、「出資持分」を相続により承継することができないからです(税理士法48条の21第1項)。

 

 

3 質問事例における出資持分の評価方法

譲渡は他人に財産を「譲る」ことであり、譲渡には無償譲渡と有償譲渡があります。そして、有償譲渡は対価を伴うもので、無償譲渡は対価を伴わないものであり、無償譲渡は贈与と同じ意味になります。

 

したがって、ご質問事例が記載されている前提条件である場合には、贈与により承継された「出資持分」は、出資として、取引相場のない株式の評価方法に準じてその価額を評価します(財産評価基本通達194)。すなわち、評価する税理士法人の会社規模が「小会社」に当たる場合は、類似業種比準価額と純資産価額との併用により評価することができます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2022年12月19日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。