【Q&A】教育資金贈与に係る贈与税の非課税特例の贈与者が、その贈与の年に死亡した場合の相続税

[解説ニュース]

 

【Q&A】教育資金贈与に係る贈与税の非課税特例の贈与者が、その贈与の年に死亡した場合の相続税

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

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【問】

令和7年10月に交通事故で急死した甲は、同年9月に子のA(19歳。令和6年の合計所得金額0円)に対し、書面により現金1,000万円を贈与していました。Aはその現金について、租税特別措置法(措法)70条の2の2第1項の「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」(以下「本特例」)の適用を受けるため、教育資金管理契約(以下「契約」)に基づきB銀行へ預け入れ、教育資金非課税申告書を提出しました。甲の死亡日時点で1,000万円のうちAの教育資金として支出された金額はありません。甲に係る相続税の計算上、現金1,000万円はどのように取扱われますか。

 

 

【回答】

1.結論


甲に係る相続税の課税価格の合計額が、その相続税につき税務署長等による更正決定等ができないこととなる日(原則、相続税の申告期限から5年を経過する日)前までに5億円を超える場合、現金1,000万円をその相続税の課税価格に加算する必要があります。

 

 

2.解説


(1)本特例の概要

本特例は、30歳未満の個人(前年分の所得税の合計所得金額が1,000万円超の者を除く。以下「受贈者」)が、教育資金に充てるため金融機関等の一定の契約に基づき、受贈者の祖父母等の直系尊属(以下「贈与者」)から書面による贈与により取得した金銭を銀行に預け入れる等の一定の行為をした場合、その金銭等の額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、受贈者が金融機関等の営業所等に教育資金非課税申告書の提出等をすることにより、贈与税が非課税とされる税制です(措法70条の2の2第1項)。

(2)契約期間中に贈与者が死亡した場合の相続税

 

①原則
契約期間中に贈与者が死亡した場合は、原則、 その死亡日における【非課税拠出額*1-教育資金支出額*2】のうち一定の計算をした金額(以下「管理残額」)を、受贈者が贈与者から相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に加算されます(措法70条の2の2第12項2号)。
*1「非課税拠出額」は、教育資金非課税申告書  等に本特例の適用を受けるものとして記載された金額の合計額(1,500万円を限度)をいいます。
*2「教育資金支出額」は、金融機関等の営業所等で、領収書等により教育資金の支払の事実が確認され、かつ記録された金額の合計額をいいます。

 

②相続税が課税されない場合
受贈者が令和3年4月1日以後にその贈与者から金銭等の取得をし、本特例の適用を受けた後に契約期間中に贈与者が死亡した場合において、受贈者が贈与者の死亡日において23歳未満又は学校等に在学している等のときには、①にかかわらず管理残額を相続等により取得したものとはみなされません(措法70条の2の2第13項)。

ただし、受贈者が令和5年4月1日以後に非課税拠出額を取得して本特例の適用を受け、同日以後に贈与者が死亡したときにおいて、その贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるとき(上記①の適用がないものとして計算した相続税の課税価格の合計額で判定)は、上記にかかわらず、その管理残額を相続等により取得したものとみなされ、相続税が課税されます(同ただし書)。この場合の「贈与者に係る相続税の課税価格の合計額」は、その贈与者に係る相続税につき税務署長等による更正決定等ができないこととなる日(原則として、相続税の申告書の提出期限から5年を経過する日)前までに、相続税額の計算の基礎となった財産の価額及び債務の金額を基準として計算されます(措法70条の2の2第14項)。

(3)本問へのあてはめ

本特例の適用を受けてAの贈与税の課税価格に算入されなかった現金1,000万円(=管理残額)は、甲に係る相続税につき税務署長等が更正決定等をすることができなくなる日前までに、甲の相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合、甲から相続により取得したものとみなされ相続税が課税されます。例えば、相続税の当初申告では課税価格の合計額が5億円以下であるため管理残額を相続税の課税価格に加算しなかったが、その申告期限から5年以内に行われた税務調査で財産の申告漏れが発覚し、その後の修正申告において相続税の課税価格の合計額が5億円超となった場合は、管理残額をその修正申告に係る相続税の課税価格に加算する必要があります。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2025/10/27)より転載