【Q&A】非上場株式の相続税評価における類似業種比準価額計算上の業種目判定

[解説ニュース]

 

【Q&A】非上場株式の相続税評価における類似業種比準価額計算上の業種目判定

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

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【問】

甲株式会社(甲社)の代表取締役のAさんは、不動産賃貸業を営む甲社の発行済株式の全部を保有していましたが、令和6年12月に死亡しました。甲社は平成20年に設立され、同年にAさんが発行済株式の全部を保有していた株式会社乙(乙社)の株式の全部と、乙社の事業の用に供される不動産を、Aさんから買取っています。甲社は、100%子会社の乙社への不動産賃貸のみを事業として行い(売上は乙社からの賃貸料のみ)、事実上、事業会社である乙社の持株会社となっています。

 

上記の場合において、Aさんに係る相続税の計算上、甲社株式を類似業種比準価額で計算する場合に使用する業種目は、「不動産賃貸業・管理業」に該当すると考えて問題はないのでしょうか。あるいは実態を踏まえて、「持株会社」に該当するものとして取扱うべきでしょうか。

 

 

【回答】

1.結論


甲社は、乙社の発行済株式の全部を保有し、乙社からの不動産の賃貸収入以外の収入がないため、日本標準産業分類上「純粋持株会社」に該当し、下記2の「対比表」より、その株式の類似業種比準価額の計算で使用する業種目は、「その他の産業」に該当するものと考えられます。

 

 

2.理由


(1)類似業種比準価額計算上の業種目の判定

 

類似業種比準価額は、類似業種の株価並びに1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額(帳簿価額ベース)を基に計算します(財産評価基本通達180)。この類似業種の判定のための業種目は、国税庁が総務大臣の公示する「日本標準産業分類」の分類項目に基づき分類し、「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」として毎年公表しています(同通達181及び逐条解説)。

 

実務上は、評価しようとする株式の発行会社の、課税時期の直前期末以前1年間の取引金額により、その会社の日本標準産業分類上の分類項目を調べ、これを基に国税庁が公表する「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(平成29年分)」(以下「対比表」・下記(2)②参照)により、業種目を判定します。

 

 

(2)純粋持株会社における類似業種比準価額計算上の業種目の考え方

 

①純粋持株会社の意義

(1)の日本標準産業分類には、「細分類番号7282純粋持株会社」という項目があり、その意義として次の説明がされています。「経営権を取得した子会社の事業活動を支配することを業とし、自らはそれ以外の事業活動を行わない事業所をいう。ただし、子会社からの収益を得ることは事業活動とはみなさない。」

 

(参考:「日本標準産業分類」(第14回改定)433頁、434頁)https://www.soumu.go.jp/main_content/000941216.pdf

 

 

②純粋持株会社の業種目

 

日本標準産業分類における純粋持株会社を(1)の対比表の区分に当てはめると、その類似業種比準価額計算上の業種目については、「専門サービス業(純粋持株会社を除く)」とされており、専門サービス業には該当しません。他の業種目においても純粋持株会社に該当するものがないことから、分類不能となり、類似業種比準価額計算上の業種目は「その他の産業」に該当することになります。

 

(参考:「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表」19頁、22頁)

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/170613/pdf/05.pdf

(3)本問へのあてはめ

 

甲社は、乙社の発行済株式の全てを保有して同社の経営権を有し、不動産賃貸業を営むものの、その売上は100%子会社乙社からの賃貸料のみです。日本標準産業分類では、純粋持株会社を(2)①の通りに定義し、子会社(乙社)からの収益(賃貸料)を得ることは事業活動とはみなされないとしていることを踏まえると、甲社の業種は不動産賃貸業・管理業ではなく、純粋持株会社に該当するといえます。

 

以上により甲社は、日本標準産業分類の分類項目上、純粋持株会社に該当し、その株式の類似業種比準価額計算上の業種目は「その他の産業」に該当するものと考えられます。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/1/16)より転載