非上場株式の贈与税の納税猶予(特例措置)の当初5年間の納付期限の確定事由
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[解説ニュース]
非上場株式の贈与税の納税猶予(特例措置)の当初5年間の納付期限の確定事由
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)
1.はじめに
表題の納税猶予を選択するかどうかの判断においては、その適用後に猶予されている税額の納付期限が確定=猶予金額を一定の利子税(今年の率は年0.7%)とともに納付しなければならなくなる一定の’事由’が法定されていること(措法70の7の5③⑥⑧、同70の7③④⑪)を知っておくことも重要です。
今回は、表題の特例措置の適用により納税が猶予されている税額について、その贈与税の申告書の提出後の特例贈与経営承継期間(例外的なケースを除き、その申告期限の翌日から5年間。下記「2」ではその5年間を前提に記述します。)中に納付期限の確定を招くことになる事由を整理します。「2」で挙げる事由は、相続税の納税猶予の特例措置でも、また、贈与税・相続税の納税猶予の一般措置でもほぼ同様ですが、一般措置の場合は、贈与時の雇用の8割以上をその5年間の平均で維持できなかった場合(*)が加わります。
なお、以下「受贈者」とは、表題の特例を適用した受贈者を意味し、「対象会社」とは同特例の対象になっている株式の発行会社を意味します。
2.5年間の納付期限の確定事由
(紙幅の関係上、各事由の例外的取り扱いは一部を除き割愛しています。)
次の各事由(場合)に該当すると、該当することになった日から2カ月後が猶予されている税額(全額)を納付しなければならない日となります。
(1)その受贈者が対象会社の代表権を有しないこととなった場合(身体障害者手帳の交付を受けた場合などやむを得ない理由があるときを除く。)
(2)その受贈者及びその受贈者と政令で定める特別の関係がある者(親族がほとんどですから、以下「親族等」といいます。)の有する対象会社の株式の議決権の数の合計が議決権総数の50%以下となった場合
(3)受贈者の親族等のうちいずれかの者が、その受贈者が有する対象会社の議決権の数を超えるその議決権を有することとなった場合
(4)その受贈者が対象会社の株式の一部又は全部の譲渡又は贈与をした場合
(5)対象会社が会社分割をした場合で、その会社分割に際して吸収分割承継会社の株式を配当財産とする剰余金の配当があつた場合
(6)対象会社が解散(合併を除く。)をした場合
(7)対象会社が資産保有型会社又は資産運用型会社のうち一定のものに該当することとなった場合
(8)対象会社の事業年度における総収入金額(主たる事業活動から生ずる収入の額)が零となった場合
(9)対象会社が会社法の規定により資本金の額の減少をした場合又は準備金の額の減少をした場合(資本金と準備金の間で振替によるものや欠損金の額までの準備金の額の減少を除く。)
(10)その受贈者が納税猶予の適用を受けることをやめる旨の届出書を所轄税務署長に提出した場合
(11)対象会社が合併(措法70の7③13の「適格合併」は除く。)により消滅した場合
(12)対象会社が株式交換等(同項14の「適格交換等」を除く。)により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合
(13)対象会社の株式が上場株式となった場合
(14)対象会社又は議決権総数の50%超が同会社に保有されているその子会社などが風俗営業会社に該当することとなった場合
(15)対象会社が発行する拒否権付き株式(黄金株)をその受贈者以外の者が有することとなったとき
(16)株式会社である対象会社がその株式の全部又は一部の種類を株主総会において議決権を行使することができる事項に制限のある株式に変更した場合
(17)持分会社である対象会社が定款の変更により受贈者が有する議決権の制限をした場合
(18)贈与者が対象会社の代表権を有することとなった場合
(19)贈与税の申告書の提出期限の翌日から一年経過する毎に、その5カ月後の日までに、引き続いて納税猶予の適用を受けたい旨及び対象会社の経営に関する所定の事項と書類を記載・添付した届出書を所轄税務署長に提出しなかった場合
前記1の*の場合、特例措置では、それ自体は納付期限の確定事由となりませんが、都道府県知事へその理由等の報告を行い、その「確認」を受けることとなっています(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則20①外)。もし、その理由等によりその「確認」が得られず、知事から「確認書」が交付されないと、それは上記届出書の要添付書類の一つである(措令40の8の5⑳外)ため、適法な届出書の提出ができないことになります。
税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/03/18)より転載