【Q&A】事業譲渡があった場合に譲受法人が支払う引受従業員への退職金の課税関係[税理士のための税務事例解説]
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[税理士のための税務事例解説]
事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。
今回は、「事業譲渡があった場合に譲受法人が支払う引受従業員への退職金の課税関係」についてです。
[関連解説]
[質問]
事業譲渡法人A社の株主と事業譲受法人B社の株主は親族であるため、兄弟会社になります。A社は、債務超過の法人であったため、平成29年9月、事業譲渡法人A社、事業譲受法人B社とする事業譲渡が行われました。その際、A社が保有する債権債務、従業員もすべてB社が引き継ぎました。その後、A社は解散し、平成30年9月に清算結了しました。A社は、債務超過の状態であり、従業員に退職金を支給する原資がなかった為、事業譲渡の際には従業員に退職金を支給しておりませんでした。
この度、A社から引き継いだ従業員甲がB社を退職することになりました。従業員甲は、B社では勤続年数が4年ほどですが、A社では勤続期間は30年ほどあります。長い間の功労として退職金を支給する予定ですが、退職所得控除額を計算するうえで、勤続年数はB社で働いた勤続期間になるのでしょうか。それともA社での勤続期間を合わせた勤続年数となるのでしょうか。
[回答]
結論から申し上げますと、ご照会の従業員甲に係る勤続年数が、いずれの勤続期間になるかは、B社の退職金支給規程の定め方次第ということになります。
すなわち、所得税法施行令第69条第1項第1号ロの規定に「退職所得者(甲)が退職手当等の支払者(B社)の下において勤務しなかった期間に他の者(A社)の下において勤務したことがある場合において、その支払者(B社)がその退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間(4年+?年)のうちに当該他の者(A社)のもとにおいて勤務した期間(30年)を含めて計算するときは、当該他の者(A社)において勤務した期間(30年)を勤続期間に加算した期間(34年)により勤続年数を計算する。」旨の定めがあります。
従って、この規定が適用できれば、従業員甲の退職金に係る勤続年数は、34年ということになります。ただし、この規定を適用するには、一定の条件があります。
その条件とは、所得税基本通達30-10に定める条件をいいます。
具体的には、こうした他の者の下で勤務した期間を加算して勤続年数を計算できるのは、「法律若しくは条例の規定により、又は所得税法施行令第153条若しくは旧法人税法施行令第105条に規定する『退職給与規程において他の者の下において勤務した期間—を含めた期間により退職手当等の支払金額の計算をする旨が明らかに定められている場合に限り適用する』ものとする。」とされていますので、この条件を満たす規程を支給者であるB社が有するか、或いは制定し得るかということに懸かっていることになります。
このような取扱いになっているのは、引受者のうち特定の者だけを通算対象とし、他の者は自社の勤続期間だけで計算するという偏った取り扱いが行われるといった弊害を排除するためのものであり、事業譲渡法人元A社の従業員の全てを、普遍的、一律に取り扱うことを期待した条件といえます。
税理士懇話会事例データベースより
(2021年2月4日回答)
[ご注意]
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