更正の請求による相続税の還付
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[解説ニュース]
更正の請求による相続税の還付
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)
1.国税通則法上の相続税の更正の請求
相続税の申告書を提出した人が、その申告書に記載した課税価格や税額等の計算について相続税法等の規定に従っていなかったこと、または計算に誤りがあったことにより相続税を納めすぎたときは、法定申告期限から5年以内に限り税務署長に対し、その申告に係る課税価格または相続税額等につき、減額更正の請求をすることができます(国税通則法23条第1項)。例えば、土地の評価を誤って過大に計算し、納税者が相続税を納めすぎた場合には、更正の請求をすることにより納めすぎた税金の還付を受けることになります。
更正の請求をする場合は、その請求に係る更正前の課税価格または税額等、更正後の課税価格または税額等、その更正の請求をする理由、その請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書に、更正の請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」を添付の上、税務署長に提出しなければなりません(同条第3項、同法施行令6条第2項後段)。
2.更正の請求の特例
法定申告期限から5年を経過した後であっても、次のような特段の事情が生じた場合には、更正の請求により相続税の還付を受けることができます。
(1)国税通則法上の特例
法定申告期限から5年経過後であっても、例えば次の事由に該当する場合、その事由が生じた日の翌日から起算して2ヶ月以内に限り、税務署長に対し更正をすべき旨の請求ができます(国税通則法23条2項、同法施行令6条第1項)。
①課税価格または税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解等を含む)により、その事実が計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。
②申告等をした者に帰属するものとされていた相続財産等が、他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正または決定があったとき。
③その申告、更正または決定に係る課税価格または税額等の計算の基礎となった事実にかかる国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈その他の国税庁長官の法令の解釈が、更正または決定にかかる審査請求もしくは訴えについての裁決もしくは判決に伴って変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより、その課税価格または税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなることを知ったこと。
(2)相続税法上の特例
相続の特殊性から上記1の他、相続税の申告書を提出した者または決定を受けた者が、例えば次のいずれかに該当する事由により、その課税価格や相続税額が過大となったときは、その事由が生じたことを知った日の翌日から4ヶ月以内に限り、税務署長に対し更正の請求ができます(相続税法32条、同法施行令8条第2項)。
①未分割財産につき民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていた場合に、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人または包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が、その相続分または包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと。
②民法に規定する認知、相続人の廃除またはその取消しに関する裁判の確定、相続の回復、相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
③遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと。
④遺贈に係る遺言書が発見され、または遺贈の放棄があったこと。
⑤相続もしくは遺贈または贈与により、取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと、その他一定の事由が生じたこと。
⑥相続税の期限内申告書の提出期限において未分割であった財産が分割されたことにより、その分割に基づき配偶者の税額軽減の規定を適用して計算した相続税額が、その時前において配偶者の税額軽減の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなったこと(①に該当する場合を除く)。
税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/02/10)より転載