Q-21 M&Aにおける事業譲渡(営業譲渡)のメリット・デメリットは?株式譲渡との違いは?

Q-21  M&Aにおける事業譲渡(営業譲渡)のメリット・デメリットは?株式譲渡との違いは?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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Q-21  M&Aにおける事業譲渡(営業譲渡)のメリット・デメリットは?株式譲渡との違いは?

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M&Aの代表的な手法として、実務上は「事業譲渡(旧商法上の営業譲渡)」又は「株式譲渡」が選択されます。なお、「営業譲渡」と「事業譲渡」は基本的には同義です。2006年(平成18年)の会社法施行に伴い、旧商法で用いられていた「営業譲渡」という呼称が、「事業譲渡」に改められたもので、現在の実務では「事業譲渡」という表現が一般的に用いられています。

 

一方、M&Aにおいて最も一般的な手法は株式譲渡であり、会社そのものの支配権を移転する方法となります。

 

今回は事業譲渡を中心に、そのメリット・デメリットや株式譲渡との違いをみていきましょう。

 

1.事業譲渡(営業譲渡)とは

事業譲渡とは、会社が営む事業の全部または一部を、他社へ譲渡する取引をいいます。

株式譲渡が「会社そのもの」を引き継ぐのに対し、事業譲渡では、譲渡対象となる資産・負債・契約等を個別に選択することが可能です。

そのため、譲受側にとっては、必要な事業のみを取得しやすいという特徴があります。

 

2.営業権(のれん)の考え方

事業譲渡においては、「営業権(のれん)」の評価が重要な論点となります。

営業権とは、社会的信用、顧客との継続的取引関係、技術力・ノウハウ、ブランド力、立地条件など、企業が有する無形の財産的価値を指します。一般的に、事業譲渡価格は以下の考え方により算定されます。

事業譲渡価格 = 時価純資産額 + のれん価値

ここでいう「時価純資産額」とは、現預金、売掛金、固定資産、棚卸資産等を時価評価したうえで、負債を差し引いた純資産額をいいます。

また、「のれん価値」の評価方法としては、実務上、利益年倍法が用いられるケースが多く、概ね以下のように算定されます。

のれん価値 = 平均純利益 ×年数

年数については、業種特性や顧客継続性等を踏まえ、一般的には1年~5年程度の範囲で交渉されるケースが多く見られます。

 

3.譲渡側の主なメリット

(1)不採算事業からの撤退

譲渡企業が事業譲渡を検討する理由の一つとして、業績不振事業による経営圧迫があります。経営悪化が深刻化する前に事業を売却することで、資金確保、本業への経営資源集中、多角化事業の整理、人員整理、事業承継などを図ることが可能となります。

(2) 減損リスクの回避

上場企業等では、不採算事業について減損会計の適用が問題となる場合があります。事業譲渡を行うことで、含み損資産の整理、バランスシートの健全化、損失計上による税効果などを期待できるケースがあります。

 

4.譲受側の主なメリット

(1)既存事業の拡大

同業種またはシナジー効果が期待できる事業を取得することで、既存事業の拡大を加速させることが可能となります。

(2)新規事業への迅速な参入

ゼロから新規事業を立ち上げるよりも、既存事業を取得することで、顧客基盤、人材、ノウハウ、設備などを一括して取得でき、短期間で市場参入できるメリットがあります。

(3)税務上のメリット

事業譲渡により発生した「のれん」は、税務上「資産調整勘定」として取り扱われ、5年間で均等償却することが認められています。そのため、譲受企業においては、将来的な節税効果が期待できる場合があります。

 

5.事業譲渡(営業譲渡)のデメリット

(1) 譲渡益に対する課税

譲渡側には、譲渡益に対して法人税等が課税されます。実質的には、「時価純資産額」と「簿価純資産額」の差額、および「のれん相当額」に対して課税関係が生じることになります。

また、事業譲渡では一定の資産について消費税の課税対象となります。主な対象は、建物・機械装置等の有形固定資産、営業権・商標権等の無形固定資産、棚卸資産などです。なお、売掛金・買掛金等の債権債務は、原則として消費税の課税対象外となります。

(2)契約・雇用関係の再構築

事業譲渡では、契約や従業員について個別承継が必要となります。そのため、取引先との契約再締結、従業員の転籍同意、雇用契約の再締結、関係者への説明など、多くの実務負担が発生します。

小職も、営業権譲渡において売り手サイドの実務に携わった経験がありますが、取引先や関係者、従業員に対する事業売却の説明、異動の可否、退職勧奨、さらには継続雇用を希望する従業員の転籍同意など、多くの調整が必要となりました。

これらは最終的に「営業権譲渡価格」にも影響する重要な要素であり、実務上、精神的負担の大きい業務であったことを記憶しています。

 

6.事業譲渡と株式譲渡の比較

事業譲渡と株式譲渡の特徴を対比的にまとめますと以下の通りとなります。

項目 事業譲渡(営業譲渡) 株式譲渡
譲渡対象 事業の全部または一部 会社そのもの
契約関係 個別承継が必要 原則そのまま継続
従業員 転籍同意が必要 原則継続雇用
簿外債務リスク 限定しやすい 引き継ぐ可能性あり
消費税 課税対象となる場合あり 原則非課税
手続負担 多い 比較的簡便
のれん償却 可能 原則不可
適したケース 一部事業のみ取得したい場合 会社全体を承継する場合

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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