[解説ニュース]

相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

1.相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税

相続時精算課税は、その年の1月1日時点で20歳以上である個人が、その年の1月1日時点で60歳以上である父母又は祖父母から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」その他一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる税制です(相続税法21条の9等)。

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与をした者(以下「特定贈与者」)が死亡した場合、相続時精算課税の適用を受けた受贈者(以下「相続時精算課税適用者」)の相続税額は、その死亡の時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の贈与時の価額と、特定贈与者から相続又は遺贈(以下「相続等」)により取得した財産の評価額と合算して相続税額を計算し、既に課された相続時精算課税に係る贈与税を控除して算出します(同21条の14、21条の15)。この場合において、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを、特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(同21条の16第1項)。

2.個人が非上場株式を発行会社に譲渡した場合の税務

(1)みなし配当課税となる部分

個人が所有する非上場株式をその発行会社に譲渡する場合には、その会社はその時の株式の価額を対価として株主に支払います。この場合に、個人株主が発行会社への株式の譲渡対価として取得した金銭等の額のうち、[その譲渡株式に対応する発行会社の資本金等の額]を超える額は”発行会社からの配当”とみなされ(みなし配当)、配当所得の金額の収入金額とされます(所得税法25条1項5号)。この配当所得の金額は総合課税の対象となり、他の所得と合算されて最高 55.945%の税率(所得税+復興特別所得税+住民税)で課税されます(所得税法89条等)。

 

(2)株式譲渡所得となる部分

個人株主が非上場株式を譲渡した場合、通常その譲渡対価が譲渡所得の金額の総収入金額となりますが、発行会社による自己株式の取得の場合、(1)の通り譲渡対価の形で受領した金銭の一部は配当とみなされ、その配当とみなされる部分を譲渡対価から控除した残額が譲渡所得の金額の総収入金額となります。その総収入金額から取得費と譲渡費用を差引いて、譲渡所得の金額が計算されます。この譲渡所得は他の所得と分離され、20.315%の税率で課税されます(租税特別措置法(措法)37条の10第1項等)。

 

(3)相続等により取得した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合のみなし配当課税の特例

相続等により非上場株式を取得(相続税法および租税特別措置法の規定により、相続等による財産の取得とみなされるものを含む)した個人のうち、その相続等につき納付すべき相続税額のあるものが、その相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、その相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、一定の手続の下で、その譲渡対価の全額が株式に係る譲渡所得として課税されます(措法9条の7第1項、第2項)。

3.相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

個人が相続時精算課税の適用を受けて生前贈与により非上場株式を取得したものの、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合には、その者が他の要件を全て満たすときであっても、上記2(3)の「みなし配当課税の特例」の適用が受けられないのではないかという疑問が生じます。

 

この点については、2(3)の太字の通り、相続等による財産の取得には相続税法の規定により相続等による財産の取得とみなされるものを含むとされます。また、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、相続税法21条の16第1項により、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合でも、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(1の下線部参照)。ゆえに表題の場合においても、一定の手続の下、2(3)の特例の適用を受けることができます。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/04/08)より転載