売却に向く会社と向かない会社 ~仕組みで儲ける会社と属人的な技術やノウハウで儲ける会社~[税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務]
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[税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務]
第7回:売却に向く会社と向かない会社
~仕組みで儲ける会社と属人的な技術やノウハウで儲ける会社~
〈解説〉
Q、デザイン会社を営む顧問先の社長からM&Aによる会社売却を検討していると相談されましたが、留意点を教えてください。
A、社長の能力に依存している会社は第三者に売りにくい側面があります。また、デザイン会社の場合、デザイナーの離反などにも留意が必要です。一般論としては、仕組みで儲ける会社は売りやすく、属人的な技術やノウハウで儲ける会社は売りにくいです。
M&Aによる外部売却は、向いている業種と向いていない業種があるため、留意が必要です。特定の個人の能力に依存している会社は売りにくく、スタッフ個々人の能力というよりはビジネスモデルが確立されている会社は売りやすいです。この点、会計事務所の売却をイメージ頂くとわかりやすいと思いますが、所長の専門的能力や人脈に依存する事務所は、売却により所長が引退すると顧客も離れてしまうと考えるのが自然です。また、エース格の税理士が業務の大半をコントロールしているような事務所もM&Aを機に独立されてしまう可能性があり、買手にとってはリスクがあります。
一方で、記帳代行など業務アウトソースをメインとする会計事務所はスタッフ個人の能力というよりも仕組みで儲けるモデルであり、顧客離反のリスクが低いためM&Aに適していると考えられます。
このような観点で考えると我々税理士のような士業、エンジニアを多く抱えるIT企業、デザイン等アート系の会社など専門職が活躍する事業は人材流出リスクを考慮の上、手続きを進める必要があります。
筆者の経験でもオーナー同士の合意で事業を買収したものの、実権を握っているナンバー2が離反してM&A後に役職員の大量退職が生じてしまった事案がありました。会社の売買は株主との合意のみで行えますが、M&A を成功させるにはなかで働く役職員のモチベーションをいかに保つことができ、また高めることができるかが重要になります。
(「税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務」より)