[新事業承継税制を理解する!]

「議決権数の考え方の留意点」~新事業承継税制 ポイント解説③~

 

 

北澤淳先生(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)に、新事業承継税制の実務上の留意点を、Q&A形式にてわかりやすく解説していただきます。今回のテーマは「議決権数の考え方と留意点」です。

 

〈解説〉

税理士 北澤淳(税理士法人山田&パートナーズ)

 

 

 

 

Q.事業承継税制(特例措置)には、「同族過半数要件」「同族内筆頭要件」といった「議決権数」に着目している要件があります。これらの考え方の留意点を教えてください。

 

 

A、同族過半数要件、同族内筆頭要件といった要件は、保有している株式数ではなく、行使できる議決権の数を基準に要件を充足しているかどうかを判定しております。下記のようなケースに当てはまる会社は、発行済み株式総数=議決権総数とはならない会社ですので、要件を充足しているかどうかを判断する際に慎重に検討する必要があります。

 

1、自己株式を有している会社

自己株式は、議決権を有しないこととされています(会社法308②)。したがって、発行済み株式総数から自己株式数を除いた数が議決権総数となります。下記のケースにおいては、議決権総数は1,200個(1,600個-400個)であるとして、要件の判定を行います。

 

 

2、株式の持ち合いをしている会社

事業承継税制の適用を受けようとする会社(A社)が他社(B社)の議決権総数の25%以上を有する場合、B社はA社について議決権行使することができません(会社法308①)。この場合、A社の発行済み株式総数からB社が保有する数を除いた数が議決権総数となります。下記のケースにおいては、議決権総数は1,100個(1,300個-200個)であるとして、要件の判定を行います。

 

 

3、単元株制度を導入している会社

定款で定めた一単元ごとに議決権を有することとされていますので、単元未満株式については議決権を有しないものとして取り扱います。下記のケース(10株を一単元としている。)においては、議決権総数は497個であるとして、要件の判定を行います。

 

 

4、種類株式を発行している会社

種類株式のうち、議決権の一部に制限がある株式なのか、議決権の全部に制限のある株式なのかによって、下記の表のとおりに取り扱います。たとえば、一部制限株式を贈与・相続により取得した場合であっても事業承継税制の適用を受けることは出来ませんが、同族過半数要件や同族内筆頭要件の判定にあたっては総議決権数に含めて要件の判定を行うこととなります。なお、いわゆる黄金株は議決権に制限のない株式ですので、完全議決権株式等に含まれることになります。

 

 

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「タイプ別による事業承継対策」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?①~

 

企業経営者にとって、事業承継の問題はいつの時代も悩みの種となっているようです。「次の世代へスムーズに経営権を移譲したい。」経営者であれば誰もが思われることでしょう。

 

ただし、会社の状況によっては「うちは、事業承継を考えるほど儲かってもいないし、後継者もいないから関係ない」とお考えになられてはいないでしょうか。

 

一口に『事業承継』といっても様々なタイプの事業承継が存在し、実はどのようなタイプの会社であっても事業承継の問題には直面する可能性があります。

 

今後、複数回にわたって”コンサルティングという観点からみたタイプ別の事業承継”について、税理士法人髙野総合会計事務所の専門家の皆様にご解説いただきます。

 

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 鈴木哲史/公認会計士・税理士

 

 


【中小企業の事業承継は喫緊の課題!】

今後10年の間に70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定といわれています。

 

事業承継の問題は、会社の健全性が高く、後継者もいる会社(下表のタイプA)以外にも、健全性は高いものの後継者がいない会社(タイプB)や、後継者はいるものの健全性が低い会社(タイプC)、健全性も低く後継者もいない会社(タイプD)のそれぞれにおいて、顛末・方向性は異なるものの直面する問題といえます。

 

そして、事業承継対策は単に相続税を抑えるための対策に留まらず、健全性の低い会社をご子息に引き継がせることのないように健全性を高める、健全性の高い会社をM&A等の手法を用いて外部に高く売却するといったコンサルティング業務も事業承継対策の一環と言えるのです。

 

 

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税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2018年10月22日)より再編集のうえ掲載

 

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

無議決権株式と属人株式の活用(その1) ~事業承継に活用したい手法~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、中小企業の事業承継に活用したい手法について、お伝えしていただきます。今回は、「無議決権株式」「属人株」です。ぜひご参考にしてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 

 


まず、「無議決権株式」ですが、議決権を与えたくないとか、議決権には興味がないといった場合に使われます。よく見かけるのは従業員持株会など社員へのインセンティブに使うパターンですね!
「会社に逆らうことはできないし、配当貰えればいいしといった感じで使われます。」
会社も「インセンティブを上げたいけど、これ以上株主増やしたくないし・・・」
といった形で 言わば相思相愛の形で使われます。
議決権がない代わりに配当は優先的に出るなどという取り決めをする場合も多いですね!

 

もう一つは「種類株式」に似たもので「属人株」というものがあります。会社法に規定されているもので

 

会社法第109条
1.株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2.前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。

 

となっています。

 

なんと、株主ごとに異なる取り決めを定款変更でできちゃうんですね!
さらに登記事項にもなっていないため登記も必要ありません!!

 

では、どんなことが規定できるかというと

 

株主の権利のうち“剰余金配当請求権” “残余財産請求権” “議決権”が会社法105条に規定されています。

 

つまり配当とか議決権とかが決められるんですね!

当社でも属人株を使った事業承継や株主対策を行っています!

 

次回は実際の活用事例をお伝えしましょう!!
「属人株はわかると大変活用できる優れものです!!」

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/02/20号)」より一部修正のうえ掲載

[解説ニュース]

相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

1.相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税

相続時精算課税は、その年の1月1日時点で20歳以上である個人が、その年の1月1日時点で60歳以上である父母又は祖父母から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」その他一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる税制です(相続税法21条の9等)。

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与をした者(以下「特定贈与者」)が死亡した場合、相続時精算課税の適用を受けた受贈者(以下「相続時精算課税適用者」)の相続税額は、その死亡の時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の贈与時の価額と、特定贈与者から相続又は遺贈(以下「相続等」)により取得した財産の評価額と合算して相続税額を計算し、既に課された相続時精算課税に係る贈与税を控除して算出します(同21条の14、21条の15)。この場合において、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを、特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(同21条の16第1項)。

2.個人が非上場株式を発行会社に譲渡した場合の税務

(1)みなし配当課税となる部分

個人が所有する非上場株式をその発行会社に譲渡する場合には、その会社はその時の株式の価額を対価として株主に支払います。この場合に、個人株主が発行会社への株式の譲渡対価として取得した金銭等の額のうち、[その譲渡株式に対応する発行会社の資本金等の額]を超える額は”発行会社からの配当”とみなされ(みなし配当)、配当所得の金額の収入金額とされます(所得税法25条1項5号)。この配当所得の金額は総合課税の対象となり、他の所得と合算されて最高 55.945%の税率(所得税+復興特別所得税+住民税)で課税されます(所得税法89条等)。

 

(2)株式譲渡所得となる部分

個人株主が非上場株式を譲渡した場合、通常その譲渡対価が譲渡所得の金額の総収入金額となりますが、発行会社による自己株式の取得の場合、(1)の通り譲渡対価の形で受領した金銭の一部は配当とみなされ、その配当とみなされる部分を譲渡対価から控除した残額が譲渡所得の金額の総収入金額となります。その総収入金額から取得費と譲渡費用を差引いて、譲渡所得の金額が計算されます。この譲渡所得は他の所得と分離され、20.315%の税率で課税されます(租税特別措置法(措法)37条の10第1項等)。

 

(3)相続等により取得した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合のみなし配当課税の特例

相続等により非上場株式を取得(相続税法および租税特別措置法の規定により、相続等による財産の取得とみなされるものを含む)した個人のうち、その相続等につき納付すべき相続税額のあるものが、その相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、その相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、一定の手続の下で、その譲渡対価の全額が株式に係る譲渡所得として課税されます(措法9条の7第1項、第2項)。

3.相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

個人が相続時精算課税の適用を受けて生前贈与により非上場株式を取得したものの、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合には、その者が他の要件を全て満たすときであっても、上記2(3)の「みなし配当課税の特例」の適用が受けられないのではないかという疑問が生じます。

 

この点については、2(3)の太字の通り、相続等による財産の取得には相続税法の規定により相続等による財産の取得とみなされるものを含むとされます。また、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、相続税法21条の16第1項により、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合でも、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(1の下線部参照)。ゆえに表題の場合においても、一定の手続の下、2(3)の特例の適用を受けることができます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/04/08)より転載

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

事業承継の失敗事例 ~その解決策は?~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、事業承継の失敗事例とその解決策の糸口をご提示していただきます。ぜひご参考にしてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


(事例1)平等に相続させたため、後継者の経営権の確保ができず何も決められなくなった!

(事例2)納税資金の確保ができず、自社株の買い取り請求=会社の財務基盤が大幅に毀損!

(事例3)会長派と社長派に分裂、後継者が追い出されてしまう!

(事例4)社長派と専務派に分裂、専務派の追い出しに多額の資金が!

(事例5)後継者への株式の移転が早すぎて先代社長が追い出される事態に!

(事例6)金融機関に持株会社設立を提案され、多額の借入を起こして後継者に会社を設立させる!

 

 

(事例1)平等に相続させたため、後継者の経営権の確保ができず何も決められなくなった!

〔ケース〕

・相続対策のため、子供にはある程度、平等に相続させた。
・会社に関係のない相続人(主に配偶者)から相続した株式の買い取り請求がきた。
議決権が33%しかないため常にほかの株主の賛成がないと運営できず、後継者の運営に支障が出た。

→何も決められず、M&Aも役員選任も主体的に決められないまま運営に支障が・・・

 

【解決策】

事前に株式の集約や、属人株式や種類株式などで議決権の集約をしておくべき

(事例2)納税資金の確保ができず、自社株の買い取り請求=会社の財務基盤が大幅に毀損!

〔ケース〕

・企業オーナーが、遺言を作成せずに急逝。(妻、長男、長女)
・事前対策が不十分のため、相続財産の大半を自社株と事業資産が占めることに。
・長女が法定相続分での遺産分割を主張
・長男は、無議決権株式の発行を提案するが、長女は現金を要求。
・長男は、代償分配金・納税資金支払いのため自社株の買取を会社請求せざるを
得なくなり、結果として財務内容が急速に悪化することになった。

 

【解決策】

事前に遺言を作成するとともに、相続対策の中での納税資金を生命保険等で確保しておくべきでは?

(事例3)会長派と社長派に分裂、後継者が追い出されてしまう!

〔ケース〕

・社長が急死、後継者の息子が株式の35%しか相続できなかった。
・そもそも社長自身が、会社の株式の40%しか保有していなかった。
・残りの株式は、会長である社長の兄の相続人及び専務である社長の弟と役員及び取引先が保有していた。
・死後専務が会長の遺族・取引先等を取り込み社長に就任。
・最終的に、専務が経営するものの、派閥争いの結果従業員の離反を招くこととなった。

 

【解決策】

兄弟の間で事業承継の道筋をつけ、決めておかないと、叔父甥の関係になった段階では急にもめることも・・・。議決権は少なくとも生前に確保しておくべき

(事例4)社長派と専務派に分裂、専務派の追い出しに多額の資金が!

〔ケース〕

・社長と専務(弟)で、会社の株式をそれぞれ60%と40%の比率で保有
・その後、それぞれの息子が会社に入社。
・社長より専務の方が会社の成長に貢献している状況。
・社長が強硬に自らの息子を社長にしたため、専務は反発しは退任するとともに退職金と株式の買取りを要求した。
・結局純資産価額に近い金額で買い取りをせざるを得なくなり、数億円ものお金が会社から流出し財務内容が大幅に悪化

 

【解決策】

兄弟の間で事業承継の道筋をつけ、決めておかないと、叔父甥の関係になった段階では急にもめることも・・・このケースでは事前に会社分割でそもそも会社を分けることも検討しておくべきでは

(事例5)後継者への株式の移転が早すぎて先代社長が追い出される事態に!

〔ケース〕

・社長が、息子に事業承継しようと社長に据えて経営を任せ、株式の40%を徐々に贈与していった。
・ところが、経営方針をめぐる対立が激しくなり、会長は息子を解任し社長に復帰。
・解任された息子は、社長への復権を要求。
・そのうちM&A案件による事業買収のため第3者割当増資を計画
息子が40%の株式を保有していたため、否決される。
事業拡大のチャンスと対外的な信用を失う

 

【解決策】

財産としての株式は相続対策で事前に渡しても、議決権株式や種類株式で決定権は完全に委譲するまでは確保しておくべき 金の切れ目が…にならないように

(事例6)金融機関に持株会社設立を提案され、多額の借入を起こして後継者に会社を設立させる

〔ケース〕

・業績好調のA社は相続対策を金融機関から薦められ、資産管理会社を設立した。
・資産管理会社は息子名義で、現社長は資産管理会社に時価10億円で株式を売却した。
・売却に際し、持株会社組成費用2000万円、株式の譲渡に対する譲渡所得税2億円を払う。

 

【解決策】

資産管理会社の設立は相続対策として有効ではあるが、譲渡や贈与をするのは株価が下がったタイミングで行うなどタイミングを見計らうことが重要。資産をわざわざ高値でつかませ、必要以上に後継者に借入・返済負担・金利負担を負わせる必要はないと思われます。

 

 

 

全てのパターンに言えますが、今回のコラムのテーマでもあります株式「財産としての株式」「支配権としての株式」という考え方で分けてとらえ「支配権」の確保をどのように実現するかということです。株式自体を動かすことにこだわらず、議決権の確保をし運営権を確保したうえで、株式の移転はその次に考える。もちろん両方を確保できればそれが一番いいのですが・・・。
また、現在の社長が元気のうちには、親族みんな文句を言わないのですが、死後突然不満が爆発ということもありますので、やはり事前の対策が重要ですね。

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2017/06/15号)」より一部修正のうえ掲載

[解説ニュース]

小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等の規制強化

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

■配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例・物納の取扱い

 

1.はじめに


相続税の合法的な節税につながる制度として、一般に知られている「小規模宅地等の特例」について、またしても行き過ぎた節税に規制が入ります。平成31年度税制改正大綱により、明かになりました。この小規模宅地等の特例に規制が入るのは、昨年度に続くものです。

2.小規模宅地等の特例とは?


小規模宅地等の特例とは、被相続人等の商売の敷地(特定事業用宅地等)や自宅の敷地(特定居住用宅地等)、貸家の敷地(貸付事業用宅地等)を親族が相続した場合に、一定要件のもと、その土地の課税価格の一定割合が減額される税制上の特典です。主な宅地の種類と上限面積、減額割合は次の表とおりです。

 

この特例が設けられた趣旨は、居住や事業を継続する相続人の生活基盤となっている財産については納税のため売却せずに済むように守るためといわれています。

 

最近のデータによると、相続税増税が実施された平成27年以降、年間3,000件程度の適用件数となり、直近の平成28年は特定事業用宅地等による小規模宅地等の特例の適用件数は、3,895件、適用した相続人は4,772人でした。

 

特定事業用宅地等による小規模宅地等の特例の適用ケースのうち、相続税を支払ったケースは3,074件、その相続人は3,786人、減額される金額は約292億円でした。反対に小規模宅地等の特例の適用等により、相続税の支払いがなかったケースは821件、その相続人は986人、減額される金額は約78億円でした。

3.規制の内容


平成31年度の税制改正では、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等を除外することとされました。

 

ただし、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合は、特定事業用宅地等の範囲に入ることとされます。要するに、相続直前に事業を開始した形にして節税するのを規制するということです。

 

この改正は、平成31 年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用され、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用しないこととされています。

昨年度の税制改正では「貸付事業用宅地等」の改正が行われ、相続開始前3年以内に貸付事業を開始した宅地は貸付事業用から除外する改正が行われましたが、今回の改正もほぼ同様です。

4.今後のこと


ただ、平成31年度与党税制改正大綱では、制度の趣旨から逸脱した節税に対し今後さらなる規制強化を検討することも次の通り書き込まれています。

 

「現行の小規模宅地特例について、貸付事業用の小規模宅地特例の例にならい、節税を目的とした駆け込み的な適用など、本来の趣旨を逸脱した適用を防止するための最小限の措置を講ずる。その上で本特例については、相続後短期間での資産売却が可能であること、債務控除の併用等により節税の余地があること、事業を承継する者以外の相続人の税額に効果が及ぶことなどの課題があることを踏まえ、事業承継の支援という制度趣旨を徹底し、制度の濫用を防止する観点から同様の課題を有する貸付事業用の小規模宅地特例と合わせて、引き続き検討を行っていく」(第一 平成31年度税制改正の基本的考え方、②デフレ脱却・経済再生、地方創生の推進⑵中堅・中小・小規模事業者の支援)。

 

現在、多額の借入れにより賃貸マンションを購入し相続を迎え相続税申告したケースで、賃貸マンションの土地等について、国税庁の財産評価基本通達に従い、貸家建付地等であることに伴う評価減の適用をめぐり、行き過ぎた節税だとして評価減が否認された事例が裁判になっています。このケースでは、否認後の賃貸マンションの敷地の評価額は時価とされましたが、小規模宅地特例の適用は認められており、争点とはなっていません。しかし、このような事例が行き過ぎた節税との見方が政府内で固まれば、早晩更なる規制をかけることを大綱がほのめかしたものとみることができます。今後の改正動向に注意が必要になっています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/04/01)より転載

[解説ニュース]

非上場株式の贈与税の納税猶予(特例措置)の当初5年間の納付期限の確定事由

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

 

1.はじめに

表題の納税猶予を選択するかどうかの判断においては、その適用後に猶予されている税額の納付期限が確定=猶予金額を一定の利子税(今年の率は年0.7%)とともに納付しなければならなくなる一定の’事由’が法定されていること(措法70の7の5③⑥⑧、同70の7③④⑪)を知っておくことも重要です。

 

今回は、表題の特例措置の適用により納税が猶予されている税額について、その贈与税の申告書の提出後の特例贈与経営承継期間(例外的なケースを除き、その申告期限の翌日から5年間。下記「2」ではその5年間を前提に記述します。)中に納付期限の確定を招くことになる事由を整理します。「2」で挙げる事由は、相続税の納税猶予の特例措置でも、また、贈与税・相続税の納税猶予の一般措置でもほぼ同様ですが、一般措置の場合は、贈与時の雇用の8割以上をその5年間の平均で維持できなかった場合(*)が加わります。

 

なお、以下「受贈者」とは、表題の特例を適用した受贈者を意味し、「対象会社」とは同特例の対象になっている株式の発行会社を意味します。

2.5年間の納付期限の確定事由

(紙幅の関係上、各事由の例外的取り扱いは一部を除き割愛しています。)


次の各事由(場合)に該当すると、該当することになった日から2カ月後が猶予されている税額(全額)を納付しなければならない日となります。

 

(1)その受贈者が対象会社の代表権を有しないこととなった場合(身体障害者手帳の交付を受けた場合などやむを得ない理由があるときを除く。)
(2)その受贈者及びその受贈者と政令で定める特別の関係がある者(親族がほとんどですから、以下「親族等」といいます。)の有する対象会社の株式の議決権の数の合計が議決権総数の50%以下となった場合
(3)受贈者の親族等のうちいずれかの者が、その受贈者が有する対象会社の議決権の数を超えるその議決権を有することとなった場合
(4)その受贈者が対象会社の株式の一部又は全部の譲渡又は贈与をした場合
(5)対象会社が会社分割をした場合で、その会社分割に際して吸収分割承継会社の株式を配当財産とする剰余金の配当があつた場合
(6)対象会社が解散(合併を除く。)をした場合
(7)対象会社が資産保有型会社又は資産運用型会社のうち一定のものに該当することとなった場合
(8)対象会社の事業年度における総収入金額(主たる事業活動から生ずる収入の額)が零となった場合
(9)対象会社が会社法の規定により資本金の額の減少をした場合又は準備金の額の減少をした場合(資本金と準備金の間で振替によるものや欠損金の額までの準備金の額の減少を除く。)
(10)その受贈者が納税猶予の適用を受けることをやめる旨の届出書を所轄税務署長に提出した場合
(11)対象会社が合併(措法70の7③13の「適格合併」は除く。)により消滅した場合
(12)対象会社が株式交換等(同項14の「適格交換等」を除く。)により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合
(13)対象会社の株式が上場株式となった場合
(14)対象会社又は議決権総数の50%超が同会社に保有されているその子会社などが風俗営業会社に該当することとなった場合
(15)対象会社が発行する拒否権付き株式(黄金株)をその受贈者以外の者が有することとなったとき
(16)株式会社である対象会社がその株式の全部又は一部の種類を株主総会において議決権を行使することができる事項に制限のある株式に変更した場合
(17)持分会社である対象会社が定款の変更により受贈者が有する議決権の制限をした場合
(18)贈与者が対象会社の代表権を有することとなった場合
(19)贈与税の申告書の提出期限の翌日から一年経過する毎に、その5カ月後の日までに、引き続いて納税猶予の適用を受けたい旨及び対象会社の経営に関する所定の事項と書類を記載・添付した届出書を所轄税務署長に提出しなかった場合

 

前記1の*の場合、特例措置では、それ自体は納付期限の確定事由となりませんが、都道府県知事へその理由等の報告を行い、その「確認」を受けることとなっています(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則20①外)。もし、その理由等によりその「確認」が得られず、知事から「確認書」が交付されないと、それは上記届出書の要添付書類の一つである(措令40の8の5⑳外)ため、適法な届出書の提出ができないことになります。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/03/18)より転載

[初級者のための入門解説]

いくらで売却できる?-譲渡金額の算出方法-  ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」①~

 

M&A実務の基本ポイントを、実務経験豊富な植木康彦先生(Ginza会計事務所/公認会計士・税理士)にわかりやすく解説していただきます。

今回は、M&Aに携わる皆さまにとって、最も関心のあると思わる「譲渡金額の算出方法」を取り上げます。「中小企業で活用される評価法とは?」「価格交渉はできるの?」など、皆さまの疑問にお答えます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

事業価値評価の考え方は??

M&Aで売買するのは事業そのものですが、多くのケースではその企業が発行する株式を売買の対象とします。すなわち、株式の価値が売買価額の基礎となりますが、企業の株式価値事業価値とでは違いがあるので、まずはその違いを整理しましょう(複雑と感じる方は、違うという認識だけで大丈夫です)。

 

下図のように、企業価値は事業価値(事業資産-事業負債)と非事業資産(図左側)によって構成されます。非事業資産とは遊休資産のように事業価値を生まない資産が持つ価値のことをいい、事業価値は事業自体の持つ価値のことをいいます。

 

M&Aの多くのケースで売買の対象となる株式価値(図右下側の黄色部分)は、事業価値に非事業資産を加え、そこから債権者に帰属する有利子負債(債権者価値)を控除したものをいいます。なお、事業価値を売買対象とするケースもあります。

 

 

 

 

一般的には、まず事業価値を評価します。事業価値の算定方法には、将来のキャッシュフローからアプローチするインカムアプローチ(DCF法など)、貸借対照表の純資産からアプローチするコストアプローチ(純資産価額法など)、類似上場会社の指標からアプローチするマーケットアプローチ(マルチプル法など)があります。

 

 

 

 

なお、税法にも株式評価のルールがあって、非上場株式の評価の方法は国税庁の財産評価通達に示されております。

 

端的に言うと、少数株主の場合は配当還元法(およそ額面価額)支配株主の場合は会社の規模によって純資産価額法と類似業種比準法によって評価します。

 

少数株主か支配株主かの分岐点は、親族グループで議決権割合30%より上か下かで判定します。

 

 

 

中小企業のM&Aで活用される評価基準は??

上場会社やクロスボーダーのM&Aでは、先に説明した将来キャッシュフローから算定するDCF法や類似上場会社の指標に倍率を乗じて算定するマルチプル法がとられます。

 

一方で、中小企業のM&Aは少し違い、時価純資産価額に数年分(3~5年程度)の営業利益を加算した“年倍法”といわれる評価法がとられます。

 

 

 

 

時価純資産価額は、株主から出資を受けた資本(資本金+資本剰余金)に、今まで稼いだ利益の累計額(利益剰余金)、更に資産の含み損益を加減算して求めます。ちなみに資産の含み損益を加減しない方法を簿価純資産価額と言います。年倍法は、直前期の貸借対照表と損益計算書があれば凡その評価額が測定できる簡便な方法です。

 

なお、時価純資産価額によるとその時点の株式価値が算出されますが、企業が将来獲得できる利益は考慮されておりません。そこで、評価に際して将来利益分として営業利益の数年分を加算するわけです。

 


 

 

 

業種特有の評価基準は??

中小企業M&Aで用いられる“年倍法”は極めてシンプルな計算法で、売買価額の基礎とすることが多いのですが、そうはいっても業種によっては他の方法によった方が適切なケースがあります。

 

例えば、不動産賃貸業の場合は、所有している不動産の価値が重視されますし、調剤薬局の場合は、処方箋の枚数や近隣競合店の有無等が重視されます、そのほか、最近の人手不足を反映し、新たに人材をリクルートする場合に年俸の30%~40%かかることから、専門家の人数等から売買価額がアプローチされるケースもあります。

 

 

 

価格交渉はできるの??

売買価額はM&Aにおける最大の交渉条件といえます。M&Aに限った話ではありませんが、売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたいと思うのは自然なことです。

 

売り手側の高く売りたい想いを価格に反映するためには、事業の希少価値面のアピールや買い手のM&Aによるシナジー効果を考慮させる方法があります。一般的に希少な事業新規参入が容易でない事業などは価値が高いですし、同業の買い手の場合にはM&Aによる事業拡大によりマーケットシェアが拡大し、コストのコントロールが可能(重複固定費のカット等により)な場合があるためです。

 

反対に買い手が行うデューデリジェンスによってマイナス材料が抽出された場合には、価格が引き下げられる方向に働くことになります。

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

配偶者居住権等の評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例・物納の取扱い

■配偶者居住権が消滅した場合の相続税・贈与税の取扱い

 

 

1.はじめに


民法改正により、2020年4月1日以後の相続から、被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺産分割又は遺言によって、「配偶者居住権」を取得することができるようになります(新民法1028①)。

本号では、配偶者居住権等の評価につき、改正法案をもとに、具体的な事例にて解説します(以下、わかりやすさを優先し、算式等を簡略に記載しています)。

2.事例の前提


◇夫は、自宅の建物につき、遺言により、妻に配偶者居住権を、長男にその建物の所有権を取得させた。
◇存続期間は妻の終身であり、夫死亡時、妻は80歳。
◇建物は、軽量鉄骨造(骨格材の肉厚3.5㎜)であり、耐用年数の1.5倍は60年(図表1参照)、築後経過年数は15年、残存耐用年数は45年
妻の平均余命は11年、これに応じる法施行日現在の法定利率による複利現価率は0.722(図表2参照)。
◇建物(自用)の評価額は10,000千円、土地(自用)の評価額は30,000千円。

3.建物の評価の考え方(新相法23の2①②)


(1) 長男が取得した配偶者居住権付建物の所有権

①考え方
配偶者居住権の存続年数経過時における建物の評価額※の現在価値をその評価額とする。
(= 建物(自用)の評価額÷残存耐用年数(図表1c×存続年数経過後の残存耐用年数(図表1e)×複利現価率
※建物は残存耐用年数にわたり減価する前提で計算。

②評価額
10,000÷45年×34年×0.722=5,455千円

 

(2) 妻が取得した配偶者居住権

①考え方
建物(自用)の評価額から、長男が取得した上記(1)②の評価額を控除した残額。

②評価額
10,000-上記(1)②=4,545千円

4.土地の評価の考え方(新相法23の2③④)


(1) 長男が取得した配偶者居住権付建物の敷地の所有権

①考え方
配偶者居住権の存続年数経過時における土地の評価額※の現在価値をその評価額とする。
(= 土地(自用)の評価額×複利現価率
※土地は残存耐用年数において減価しない前提で計算。

②評価額
30,000×0.722=21,660千円

 

(2) 妻が取得した配偶者居住権に基づく敷地の利用権

①考え方
土地(自用)の評価額から、長男が取得した上記(1)②の評価額を控除した残額。

②評価額
30,000-上記(1)②=8,340千円

5.最後に


本事例の場合、長男は合計27,115千円(上記3(1)②+上記4(1)②)、妻は合計12,885千円(上記3(2)②+上記4(2)②)、2人合計で40,000千円の評価額の財産を取得することになります。

 

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税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/03/25)より転載

 

[新事業承継税制を理解する!]

「中小企業の範囲等」~新事業承継税制 ポイント解説②~

 

新事業承継税制の実務上の留意点を、制度創設に関わった中小企業庁元担当官の北澤淳先生(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)に、Q&A形式にてわかりやすく解説していただきます。

 

〈解説〉

税理士 北澤淳(税理士法人山田&パートナーズ

 

 

 

Q.事業承継税制(特例措置)の適用を受けることができるのは中小企業の株式等ですが、そもそもの「中小企業」の範囲について教えてください。士業法人や医療法人はどのような取り扱いになるのでしょうか。

 

 

A. 事業承継税税制(特例措置)の対象となる「中小企業」は、経営承継円滑化法において規定されています。

 

 

1. 原則

中小企業者の判定は、その会社の資本金又は従業員の数が、業種ごとに定められた資本金の額又は従業員の数以下であるかどうかにより行います。なお、資本金又は従業員数のいずれかの基準を満たしていれば中小企業者と判定します。

 

2. 有限会社の取り扱い

会社法施行前に設立された有限会社については、会社法上の会社とみなすこととされています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2①)。したがって、有限会社であっても、その他の要件を充足していれば事業承継税制(特例措置)の適用を受けることができます。

 

3. 士業法人の取り扱い

税理士法人や弁護士法人といった士業法人は会社法の合名会社の規定を準用しているものの、会社法に定める「会社」(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)ではないため、事業承継税制(特例措置)の適用を受けることができません(租税特別措置法第70条の7①二)。

 

(参考)租税特別措置法第70条の7①二
二 非上場株式等 次に掲げる株式等をいう。
イ 当該株式に係る会社の株式の全てが金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されていないことその他財務省令で定める要件を満たす株
ロ 合名会社、合資会社又は合同会社の出資のうち財務省令で定める要件を満たすもの

 

4. 医療法人の取り扱い

医療法人は、会社法に定める「会社」(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)ではありませんので、適用を受けることは出来ません。