【Q&A】持分の定めのある社団医療法人の解散と課税関係
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[解説ニュース]
持分の定めのある社団医療法人の解散と課税関係
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(飯田 美緒/税理士)
【問】
医療法人にてクリニックを経営しています。後継者もいないため、医療法人を解散しようかと考えています。当法人は出資持分の定めのある社団医療法人です。医療法人の解散手続きと、課税関係について教えてください。
【回答】
1.社団医療法人の類型
社団医療法人は、その定款に出資持分に関する定めがあるかないかで「出資持分のある社団医療法人(以下、「持分あり法人」といいます。)」と「出資持分のない社団医療法人(以下、「持分なし法人」といいます。)」に区分されます。「出資持分」とは社団医療法人に出資した者が、その医療法人の財産に対し、出資額に応じて有する財産権をいいます。
2.解散事由
医療法第55条おいて、医療法人の解散事由を次のように定めています。
①定款をもって定めた解散事由の発生
②目的たる業務の成功の不能
③社員総会の決議
④他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。)
⑤社員の欠亡
⑥破産手続き開始の決定
⑦設立認可の取消し
恣意的な解散を防ぐ趣旨から、②③については都道府県知事の認可が必要とされています。①⑤については都道府県知事への届出を要します。
3.解散手続き
2.③の社員総会の決議により解散する場合には、定款に別段の定めがない限り、総社員の4分の3以上の賛成が必要です。解散の認可申請書(仮申請)には、解散理由書、社員総会議事録、財産目録、貸借対照表、残余財産処分方法、清算人就任予定者などを記載した書類を添付(医療法施行規則第34条)して、都道府県へ提出し、事前審査を受けます。書類の不備等を修正し、本申請となります。その後都道府県医療審議会の諮問を経て認可/不認可の処分となります。
医療審議会は年に2回程度しか開催されないため、場合によっては事前審査から認可/不認可の処分まで1年近くかかる場合もあります。株式会社と違い、認可がおりなければ解散の効力が発生しないので注意が必要です。認可がおりたら解散の登記を行い、清算手続きに入ります。残余財産の処分が完了したら、清算決了の登記、都道府県知事への届出を行い、法人格が消滅します(医療法第56条の2)。
4.課税関係
(1)医療法人に対する課税
解散の日の翌日以降も、その所得計算は通常の事業年度と変わらず、損益法により法人税の申告を行い、課税されます。残余財産確定の日に終了するいわゆる最後事業年度についても同様に損益法により申告を行います。申告期限は、残余財産確定の日から原則1ヶ月以内です。これらについては通常の株式会社と変わりありません(法人税法第74条2項)。
(2)出資者に対する課税
解散した医療法人に残余財産があれば、残余財産を定款の定めに基づき処分します。持分あり法人であれば、定款において、出資者にその出資額に応じて分配すると定めているものが一般的です。解散による残余財産の分配が個人である出資者にされた場合、その分配された金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が、持分あり法人の資本金等の額を超える部分の金額は、利益の配当又は剰余金の配当とみなすと規定されています(所得税法第25条1項)。よって、みなし配当課税となるため、総合課税の配当所得として、超過累進税率が適用され所得税が課税されます。
医療法改正により平成19年4月1日以後、持分あり法人の新規設立はできないことになりました。現在設立し得る持分なし法人の定款においては、残余財産の帰属先は国、地方公共団体、医療を提供する者であって厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるよう定められています。これにより、解散時の残余財産が出資者に帰属しないよう整備されました。持分あり法人については、平成19年4月1日施行改正医療法附則第10条第2項に規定される医療法人(経過措置医療法人)に位置付けられ、当分の間、解散時の残余財産の帰属先について定款の変更は強制されず、出資者に対し、残余財産を出資額に応じて分配するとされています。
税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/07/20)より転載