中小企業で事業承継を行う場合には、一般的には、後継者が借入金の個人保証を行うことになります。親族内で事業承継を行う場合には、経営者の個人資産を相続できることや、心情的な面から、すんなりと後継者が個人保証を承諾する場合もあるのですが、親族外の者に事業承継する場合には、「個人保証」の承継が障害になることが多いです。

特に、会社が債務超過に陥っているなど、会社の経営状況が悪い場合には、後継者が個人保証を行うことに難色を示す可能性が多いです。

また、会社の経営状況が悪い場合には、後継者による連帯保証に加えて、現経営者による個人保証，担保差入の継続を求められる場合があり、現経営者の個人保証が、いつまで経っても解除されないこともあります。

その場合に、経営の見直しを図り、会社の財務内容及び事業内容が改善すれば、金融機関との交渉によって、個人保証を解除できる可能性があります。また、会社の財務内容及び事業内容が良い会社であれば、M&Aによる事業承継が実現できる可能性が高まります。

なお、「経営者保証に関するガイドライン（平成25年12月9日公表）」では、保証契約時などの対応として、①中小企業が経営者保証を提供することなく資金調達を希望する場合に必要な経営状況とそれを踏まえた債権者の対応、②やむを得ず保証契約を締結する際の保証の必要性などの説明や適切な保証金額の設定に関する債権者の努力義務、③事業承継時などにおける既存の保証契約の適切な見直しなどについて規定されており、金融機関に対して経営者保証に依存しない融資の一層の促進が求められています。

下表のとおりに、政府系金融機関（商工組合中央金庫、日本政策金融公庫）の、平成29年度の新規融資の件数のうち34％（金額ベースでは52％）が無保証融資となっています。

また、保証協会では「財務要件型無保証人保証制度」での保証を行っており、この制度を使えば無保証で融資を受けることができます。事業承継を考えている場合には、積極的に無保証融資を使うべきと考えます。

※１　商工組合中央金庫、日本政策金融公庫。

※２　①②③は、日本政策金融公庫（国民生活事業）の個人向け融資を除いた長期融資全体に占める割合、件数、金額をいう。

（出処：中小企業庁ホームページ）