１．みなし相続
(1)概要
後継者が贈与者から非上場株式の贈与を受け、その株式につき贈与税の特例措置の適用を受けていた場合において、その納税猶予の全部の打切りの日またはその後継者の死亡の日以前にその贈与者が死亡したときは、猶予されていた贈与税額は免除されます（措法70の7の5⑪、70の7⑮）。また、贈与税の特例措置の適用を受けたその株式を、後継者が贈与者から相続または遺贈（以下「相続等」）により取得したものとみなされ、相続税が課税されます（措法70の7の7①）。

(2)相続税の課税価格に算入する対象株式等の価額
前述(1)の場合において、贈与者の死亡による相続等に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき対象株式等の価額は、その贈与者から贈与を受けた時における価額を基礎として計算します（措法70の7の7①）

２．みなし相続の特例措置
(1)概要
上記１により相続等により取得したものとみなされた対象株式等につき、後継者が都道府県知事の円滑化法の確認を受け、相続税の申告書にその適用を受ける旨を記載し、その提出期限までに一定の担保を提供した場合には、その贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、その非上場株式に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、その後継者の死亡の日まで納税が猶予されます（以下、「みなし相続の特例措置」という。措法70の7の8①、措令40の8の8、40の8の2⑤）。

(2)特例承継期間の引継ぎ
贈与税の特例承継期間内に贈与者が死亡し、後継者がみなし相続の特例措置の適用を受ける場合には、その贈与税の特例承継期間が引き継がれます。すなわち、贈与税の特例承継期間の残りの期間がみなし相続の特例措置に係る特例承継期間となります（措法70の7の8②五）。
また、贈与税の特例承継期間経過後に贈与者が死亡し、後継者がみなし相続の特例措置の適用を受ける場合には、 みなし相続の特例措置に係る特例承継期間は経過したものとされます（措法70の7の8②五）。

(3)手続
みなし相続の特例措置の適用にあたり必要となる主な手続きは以下のとおりです。なお、特例承継期間経過後に贈与者が死亡した場合には、下記①の臨時報告は不要です。

①切替確認申請・臨時報告
みなし相続の特例措置の適用を受けるためには、一定の確認要件に合致することについて、贈与者の相続開始から8か月以内に、都道府県知事に対して確認の申請をする必要があります（措法70の7の8⑤三、措規23の12の5⑬、円滑化規13①）。
また、特例承継期間内に贈与者が死亡した場合には、相続開始から8か月以内に、都道府県知事に対して、納税猶予要件を引き続き満たしている旨の臨時報告が必要となります（円滑化規12⑪）。

②相続税の申告・担保の提供
相続税の申告期限までに、税務署長に対し、みなし相続の特例措置の適用を受ける旨を記載した相続税申告書、切替確認書、臨時報告書、その他一定の書類を提出するとともに、納税猶予額および利子税に相当する担保を提出する必要があります（措法70の7の8①）。

③贈与税の特例措置に係る免除届出
贈与者の相続開始から10か月以内に、税務署長に対し、贈与者が死亡した旨の届出を行い、贈与税の免除を受けます（措法70の7の11、70の7⑮）。

(4)納税猶予税額の計算
後継者が取得した財産がみなし相続の特例措置の適用を受ける非上場株式等のみであると仮定した相続税の総額のうち、みなし相続の特例措置の適用を受ける非上場株式等の価額に対応する後継者の相続税額相当額が、納税猶予税額となります。

(5)打切り・免除
非上場株式等に係る相続税の納税猶予が打ち切られる場合の規定は、みなし相続の特例による納税猶予に係る期限の確定の場合について準用されます（措法70の7の8③、70の7の2③④⑤）。
非上場株式等に係る相続税の納税猶予に係る税額の免除の規定は、みなし相続の特例による納税が猶予された相続税の免除の場合について準用されます（措法70の7の8⑪、70の7の2⑯⑰⑱）。