[用語の意味がわかりやすい!M&A・事業再生・企業再生 用語入門解説]
事業再生・企業再生の金融支援・再生手法・破産清算に関する用語入門解説が追加されました。
<追加用語>
■特例リスケ
特例リスケとは、新型コロナウイルスの影響を受けて売上高が減少している等一定の場合に、既存の借入に最大1年間返済猶予を行う特例支援である。従来のリスケであれば、事業計画の策定を行い、事業改善の見通しがある場合にのみ実施されていたが、特例リスケでは、このような条件はなく、コロナの影響で業況が悪化した事業者の当面の資金繰りを確保する目的で実施されるため、事業者としては使い勝手の良い制度である。支援の窓口は中小企業再生支援協議会となっている。
■リスケ(リスケジューリング)
リスケジュールは、リスケとも呼ばれ返済期限を延長するなど返済条件を変更することによる金融支援である。債務の減免を伴わないため、基本的には資金繰りや事業面での支援であり、財務面の改善効果は期待できない。従って一時的な事業の下振れが生じた場合など、比較的財務面の傷みが小さい早期再生の場面で実施されることが多い金融支援である。事業再生の実務で最も活用されている手法がリスケジュールである。
■DDS(デット・デット・スワップ)
DDS(デット・デット・スワップ)は、債権者が債務者に対して有する既存の貸付債権を他の貸付債権に劣後する、劣後ローンに変更する再生手法である。一定の貸付債権を通常ローンから劣後ローンにすることにより一定期間返済の猶予を受けることができ、資金繰りが安定する効果がある。再生企業にとっては債権放棄と比較すると効果は限定的であるが、金融機関にとっては自己査定において、劣後ローンを資本とみなすことができる等のメリットがあるため利用される手法である。
■DES(デット・エクイティ・スワップ)
DES(デット・エクイティ・スワップ)は、既存債務を株式に転換する再生手法である。DDSと異なり、決算書上も負債が資本に振り替わるため、負債が減少し、自己資本が充実することから、債権放棄に近い抜本的な再生手法であるといえる。ただし、DESを導入する場合には、会社法上のさまざまな手続が必要となるため、種類株式の設計等を含め、弁護士、公認会計士および税理士等の専門家を交えて協議することが必要となる。
■債権放棄
債権放棄とは、債権者が債務者に対して債権の一部を放棄する手法である。再生手法として最も一般的で理解のしやすい方法である。法的整理手続において策定される再生計画(または更生計画)は、直接債権放棄を内容とすることが一般的である。しかし、私的整理においては、債権者側の金融機関にとって税務上費用処理できないリスクがあり、再生企業にとっても債務免除益課税の問題が発生するため、あまり活用されない手法である。
■サービサー(債権回収会社)
サービサーは(債権回収会社)は、金融機関等から不良債権のような回収が困難な債権の買取りと、管理・回収を主な業務とする金融サービス会社である。サービサーは、債権の買取り金額よりも再生企業からの回収額を増やすことで利益を獲得する仕組みとなっている。
事業再生の場面においても、金融機関からの借入金がすでにサービサーに売却されており、バンクミーティングにも金融機関は出席せず、サービサーが出席するケースも存在する。
■金融機関の債務者区分
金融機関が返済可能性に応じて融資先を格付けしたもので、「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分かれる。各金融機関が金融庁の金融検査マニュアルや独自の信用リスク格付け制度などに基づき、自主的に定めている。金融機関は、これらの区分に応じて貸付先企業への対応を決めている。赤字が続くなど経営成績が好ましくない状況であれば要注意先等にランクダウンとなり、新規の融資が難しくなる等の対応がなされるケースが多い。
■プロラタ方式
プロラタ方式とは、「比例配分できる(Proratable)」の略称で、企業が複数の金融機関から借入をしている場合に、返済額を借入残高等に応じて比例的に決めて返済する方式のことである。このような方式がとられるのは、リスケの際に複数の金融機関の間で不公平が生じないようにするためである。会社更生や民事再生等の法的整理の場合は、債権放棄の金額(割合)を、総債権額から担保権(別除権や更生担保権)によって担保された債権額を控除した金額を基準として、プロラタ方式により決定することが一般的である。私的整理の場合は、債務者と債権者間および債権者相互の私的な話し合いの中で、金融支援が決定されるものであるため、必ずしも法的整理と同様の方法がとられるわけでなく、担保権を考慮しない純粋な借入残高プロラタ方式を用いられる場合や、金融機関によって割合に差を設ける場合等がある。
■保証責任
中小企業の場合、金融機関からの借入について、経営者が連帯保証となっていることが一般的である。また、経営者以外の第三者が連帯保証となっているケースも存在する。保証人に資力がある場合、金融機関からの金融支援がなされる際には、保証人の保証履行の検討は必要となる。経営者責任の観点からも私財提供等の保証責任の履行は必須となる。一方で、保証人に資力がなく、保証履行が見込めないことが明らかである場合には、債権放棄をするにあたって、同時に保証を解除するというケースが多い。
■倒産
日常的に使用する倒産という言葉は、法律用語ではない。一般的には、債務者が弁済期にある債務の弁済ができなくなり、そのために経済活動を続けることができなくなった状態を倒産という。具体的には以下の6項目のいずれかに該当すると認められた場合を倒産と定め、これが事実上の倒産の定義となっている。
①2回目の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けたとき
②不渡りや法的整理によらず、任意の整理を行ったとき
③裁判所に会社更生法の適用を申請したとき
④裁判所に民事再生法の手続き開始を申請したとき
⑤裁判所に破産の申請をしたとき
⑥裁判所に特別清算開始の申請をしたとき
■破産
破産手続きは、清算型法的倒産手続きであり、自然人または法人等について、支払い不能または債務超過という破産原因がある場合に、利害関係人の申し立てにより裁判所の決定で開始される手続きである。債務者が経済的に破綻した場合、その総資産を換価・処分し、これを配当原資として総債権者にその優先順位と債権額に応じて配当することを目的とする。また、破産した債務者の財産の適正かつ公平な清算を迅速に図り、債権者、債務者その他の利害関係人の利害、および権利関係を適切に調整するとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的としている。
■特別清算
特別清算手続きは、会社法に規定される清算型の倒産手続きであり、清算中の株式会社について、清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情、または債務超過の疑いがある場合に、裁判所の命令により開始され、その監督の下で行われる特別の清算手続きをいう。
会社が、合併、破産以外の事由で解散すると清算手続に入り、清算手続を経た後会社の法人格は消滅する。しかし、清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情や債務超過の疑いがある場合、通常の清算手続では、公正な清算手続の遂行に支障が生じる恐れがある。そこで、会社の全財産を換価し、全債権者へ公平な分配を行うため、通常の清算手続に比べ強い拘束力を持つ特別清算手続により、清算手続が行われることとなる。
■DIPファイナンス
DIPファイナンスとは、民事再生法、会社更生法等の事業再生の手続申立後から手続終結までの間に行う融資をいう。その手法には、民事再生手続等の申立直後から計画認可決定までの期間において、再生会社等が運転資金を調達できず事業の継続が困難となった場合に、この事業の価値を維持させる一時的な運転資金を融資するケースと、再生計画等の認可決定以降に、再生計画等実施に必要となるリストラ資金の融資、設備投資に向けた中長期の融資、再生計画実施中の別除権の買い取りなどを含むケースがある。一般的にDIPファイナンスは、事業再生の手続き申立時の借入よりも優先して返済をすることとなる。
■偏頗弁済
偏頗弁済とは特定の債権者のみに弁済したり担保を提供したりする行為のことである。通常事業再生において、公平性の観点から、金融機関等の債権者への返済をストップするタイミングは同一の日に揃える必要がある。返済をストップするタイミングを超えて特定の債権者にのみ返済をすることは他の債権者との間で公平性に反するため、事業再生の返済計画等で、その特定の債権者への返済は偏頗弁済した金額について遅らせる等の対応をするケースが多い。