2020.11.24

父から相続した建物を父の事業に従事していた者に低額譲渡した事例に対するみなし贈与課税の適用について【税理士のための税務事例解説】

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「父から相続した建物を父の事業に従事していた者に低額譲渡した事例に対するみなし贈与課税の適用について」についてです。

 

 

※このページでは「質問」のみご紹介いたします(回答は本文ページにてご覧ください)

 

 

 

[質問]

個人で診療所を経営している甲医師(以下「甲」という)は、甲の叔父が所有している土地を賃貸借契約して賃借し、その土地に建物を建て、診療所を経営していました。土地の賃貸料は安く相当の地代に満たないそうです。

 

甲は2月に病気になり入院したため休診にしていましたが、病気が完全に治るという可能性がないこと、また甲の子も医師ですが、甲の診療所を利用して開業する意思がないため、甲は廃業して建物を解体する予定でした。しかし4月に病状が急変し死亡しました。

 

相続人になる甲の子(以下「乙」という)も、建物を解体しようと考えていましたが、甲の診療所に勤務している従業員の子で、他の病院に勤務している勤務医がおり、従業員と勤務医をしている子が乙に診療所を承継したい旨を話すと、乙も快諾しました。乙としても建物を解体しても費用がかかること、また廃業するためにはいろいろな面倒な手続きがあること、また承継を望んでいる従業員の子の開業の助けになればと考えたそうです。

 

診療所の建物は、診療所専用で鉄筋造りの2階建てで、総床面積は600㎡です。入院設備はありません。

 

建物の固定資産償却額は6,000万円ですが、乙は診療所を承継してもらえるならと500万円で譲る考えです。

 

乙に対しては建物の相続税評価額6,000万円に対して、また借地権に対して相続税が課税されますがその課税については了解しています。

 

500万円という値段については、甲が生前に入院中、他人からもし診療所を廃業して建物を売却する考えがあれば500万円で売ってほしいという話がもとになっているようです。

 

この建物を有効に活かせる人から見れば3,000万円あるいは4,000万円の値段がつくかもしれません。

 

乙と従業員は親族関係にはなく他人のため、固定資産税評価額6,000万円の建物と借地権を500万円で売却しても従業員に対してみなし贈与は発生しないと考えますが、いかがでしょうか。

 

また、みなし贈与以外に何か課税上問題が発生するでしょうか。

 

なお、建物の帳簿価額は6,400万円です。