2020.11.08

事業再生・企業再生の手法・スキームに関する用語入門解説が追加されました[用語の意味がわかりやすい!M&A・事業再生・企業再生 用語入門解説]

[用語の意味がわかりやすい!M&A・事業再生・企業再生 用語入門解説]

事業再生・企業再生の手法・スキームに関する用語入門解説が追加されました。

 

<追加用語>

■法的整理

■私的整理

■会社更生

■民事再生

■私的整理ガイドライン

■地域経済活性化支援機構

■事業再生ADR

■整理回収機構

■中小企業再生支援協議会

■事業再生ファンド

■事業再生におけるスポンサー

■第二会社方式による事業再生

 

 

■法的整理

法的整理は、債権者または債務者が裁判所に対して、一定の法的手続きを申請し、裁判所の関与・監督の下、法律に則って債務者の再建、または清算手続きが進められる。一定の手続きには、①裁判所に会社更生法の適用の申請、②裁判所に民事再生法の手続き開始を申請、③裁判所に破産の申請、④裁判所に特別清算開始の申請、以上の4つがある。法的整理には、「再建型」の会社更生(会社更生法)・民事再生(民事再生法)と「清算型」の破産(破産法)・特別清算(会社法)がある。

 

■私的整理

私的整理は、破産法・民事再生法・会社更生法等の法的手続きによらず、債権者と債務者との協議により倒産処理を図る手続きである。法的整理と同様に、倒産企業を解体する清算型と、倒産企業の事業継続を図る再建型がある。また、私的整理は法的整理とは異なり、裁判所による関与・監督を受けずに、当事者の合意により自主的に手続きが進められることから、決まった手続方法がないため、「任意整理」や「内整理」とも呼ばれることがある。

 

■会社更生

会社更生法とは、法的整理の中での再建を目的とした倒産手続きである。会社更生法に基づく会社更生手続きの対象は、株式会社に限定され、持分会社や個人企業はその対象とはされていない。主に大規模な株式会社の再建手段として運用されている会社更生手続きであるが、手続きが厳格で再建までに時間がかかりすぎることや、原則的に経営陣は退陣しなければならない等、明確に経営陣へ責任追及が行われる点から、民事再生手続きと比較して事例は少ない。中小企業での会社更生法の活用が進まない理由の一つとして、多くの中小企業は同族企業であり、経営陣が退陣すると事業そのものが成り立たなくなってしまうことが考えられる。

 

■民事再生

民事再生法は、企業倒産手続きの迅速化を目指し、倒産に伴う資産の劣化や従業員の離散を食い止め、企業の早期の再建を促進することを目的として、平成12年4月に従来の和議法の制度的欠陥を是正する形で施行された。

 

民事再生法の特徴は下記のとおりである。

 

①中小企業を主な対象としているが、すべての法人・個人が利用可能

②支払不能や債務超過といった経営破綻状態に至る前に申し立てを行うことが可能

③現在の経営陣は引き続き経営にあたることが可能

④監督委員が再生計画の履行を監督する

⑤再生計画案は再生手続き開始後に提出する

⑥会社更生法と比較して、再生計画案が認可決定されるまでの日数が短い

 

■特定調停

特定調停とは、債務者の申立により、簡易裁判所がその債務者(借主)と債権者(貸主)との話し合いを仲裁し、返済条件の軽減等の合意が成立するよう働きかけ、債務者が債務を整理して生活を立て直せるよう支援する制度であり、事業再生においても活用される。

 

特定調停の特徴は、下記の通りである。

 

①事業価値の毀損が生じにくい私的整理であること

②調停委員の関与があること、公正かつ妥当な解決を図りうること

③比較的小規模な企業を想定

④私的整理と同様に認定支援機関の活用も可能

⑤メインバンク不在でも活用可能

⑥個人事業主の債務整理にも活用可能

⑦一定の税務メリットの享受も可能

 

■私的整理ガイドライン

私的整理ガイドラインは、平成13年9月に全国銀行協会および日本経団連によって作成された「私的整理に関するガイドライン」のことをいい、ガイドライン自体は、法的拘束力を伴うものではない。

 

私的整理ガイドラインは、会社更生法や民事再生法などの手続きによらずに、債権者と債務者の合意に基づき、債務について猶予・減免などをすることにより、経営困難な状況にあるなど一定の企業を再建するためのものであって、一般的な私的整理のうち、主として金融機関に対する債務を整理するための私的整理を想定している。また、このガイドラインによる私的整理は、債権者に債務の猶予や減免などの協力を求める前提として、経営責任・株主責任を明確化し、債務者自身が再建のために自助努力を行うことが要求されている。

 

なお、平成21年11月に発足した事業再生ADRに実質的には移行されており、現在はほとんど利用されていない。

 

■地域経済活性化支援機構

地域経済活性化支援機構(REVIC)は、2008年秋以降の金融経済情勢の急速かつ大幅な悪化等を受けて、我が国の地域経済が低迷を余儀なくされる中、地域経済の再建を図るため、有用な経営資源を有しながら、過大な債務を負っている事業者の事業再生を支援することを目的に、株式会社企業再生支援機構法に基づき、2009年10月に株式会社企業再生支援機構として設立された。2013年3月には、地域経済の低迷が続く中、地域の再生現場の強化や地域経済の活性化に資する支援を推進していくことが喫緊の政策課題になっていること等を踏まえ、事業再生支援に係る決定期限の5年の再延長や、従前からの事業再生支援に加えて、地域経済の活性化に資する事業活動の支援を行うことを目的とする支援機関への改組等が盛り込まれた法改正がなされた。この法改正に伴い、株式会社地域経済活性化支援機構法に法律名が改められるとともに、商号を株式会社地域経済活性化支援機構に変更し、再出発した。

 

地域経済活性化支援機構の役割は以下のとおりである。

 

①REVICの役割は、事業運営の基本方針に沿って地域金融機関の地域活性化への取組みを支援すること。

②地域金融機関が、地域経済・産業の現状・課題を踏まえて、地元企業のライフステージに合わせたソリューションを提供するために行う事業性評価を特定専門家派遣業務でサポートするとともに、ソリューション提供ツールとしてのファンドの設立・運営、事業再生を支援。

③REVICは時限組織であるため、ノウハウの移転を行い、REVICの業務終了後も、地域金融機関による地域活性化への取組みが持続的に行われるよう環境を整備。

 

■事業再生ADR

事業再生ADRは過剰債務企業の問題解決に法的手続によらずに民事上の紛争解決の手段を用いる手法である。私的整理ガイドラインの手続きとほとんど同じであるが、私的整理ガイドラインでは主要金融機関が主体的に手続きに関与する必要があったのに対し、事業再生ADRは、第三者である手続実施者が手続きを主宰する点が相違する。対象企業として中小企業を含んでいるものの、相当の事前準備の必要性や費用面から、実際には上場企業、中堅大企業が対象となっているのが実情である。

 

■整理回収機構

整理回収機構(RCC)は、金融機関から不良債権の買取等を行い、債権回収業務を行う機関であったが、様々な経緯を経て債権者として企業再生に取り組む機関となった。RCCが債権者として取り組む再生スキームと、RCCが主要債権者である金融機関から金融債権者間の調整等受託して行うスキームがあった。費用面においてはRCCに対する手数料が別途発生する等、中小企業再生支援協議会スキームと比較して割高となる。なお、RCC企業再生スキームは、サービサー業務の終了に伴い、現在はあまり利用されていない。

 

■中小企業再生支援協議会

中小企業の事業再生に向けた取り組みを支援する「国の公的機関」(経済産業省委託事業)として47都道府県に設置されており、商工会議所等が受託・運営している。主な役割としては、金融機関それぞれの主張等により金融機関の足並みがそろわず事業再生が滞ってしまう事態にならないように、事業再生が円滑に実施されるよう公正中立な立場で前面に出て調整を行うことである。また、中小企業再生支援協議会スキームの場合、公認会計士や中小企業診断士等の専門家費用の一部が補助される。

 

■事業再生ファンド

事業再生ファンドとは、経営破綻に陥った企業に対して投資をして株主となり、再生を果たした後で企業価値を高めて株式を売却しリターンを得るファンドである。事業再生ファンドは、事業再生を果たす過程で、事業再生ファンドから経営陣も送り込み、事業再生計画を立てて財務内容の改善を目指す。

 

エクイティ型とデット型と呼ばれるスキームがあり、エクイティ型は、再生企業の株式を取得して、事業再生を行い他のスポンサーを探すことや、IPOによって利益を獲得することを目的とする。デット型は、再生企業の負債を額面以下で買取り、債権者として事業再生に入り込み、債権放棄等によって貸借対照表を正常化させ、他の銀行からのリファイナンス等によって回収を図り利益を獲得することを目的としている。

 

■事業再生におけるスポンサー

事業再生におけるスポンサーとは、一般的なM&Aにおける買手企業のことである。M&Aで買手企業は一般的に黒字企業を買収することが多く、赤字や債務超過の会社は敬遠される傾向にある。その中でも事業的なシナジーを見込む場合や、事業再生に対して理解のある企業、事業再生ファンド等がスポンサーとして挙がるケースが多い。事業を継続されることが目的ではなく、土地や建物等の固定資産の取得を目的としたケースもあるため、スポンサーの選定は慎重に行う必要がある。

 

■第二会社方式による事業再生

第二会社方式とは、再生企業の事業の全部または一部を会社分割または事業譲渡により別会社に承継した後、当該債務者企業を特別清算手続き、または破産手続により清算するスキームである。Good事業を別会社に承継し、Bad事業を残した会社を清算する手法となる。対象債権者である金融機関は、分割対価もしくは譲渡代金により返済されない貸付債権または別会社に承継されない貸付債権について、特別清算手続きまたは破産手続きによって債権放棄を行うこととなる。抜本的な再生手法として最も利用されている手法である。