2021.10.04

事業承継のお悩み解決に事業承継・引継ぎ支援センターの活用を【独立行政法人 中小企業基盤整備機構 事業承継・再生支援部より】

独立行政法人 中小企業基盤整備機構 事業承継・再生支援部

 

 

[目次]

1. 事業承継・引継ぎ支援センターの概要と支援内容について

(1)事業承継ネットワークを通じた事業承継ニーズの掘り起し

(2)第三者承継支援

(3)親族内承継支援

(4)事業承継時の経営者保証解除支援

2.事業承継・引継ぎのための手順について

(1)相談のタイミング

(2)顧問税理士との連携

3.相談窓口について、相談方法について

(1)各地の事業承継・引継ぎ支援センター

(2)構成機関の相談窓口

(3)センターでの相談方法

4.終わりに

 

 

 

1. 事業承継・引継ぎ支援センターの概要と支援内容について


事業承継・引継ぎ支援センター(以下「センター」)は、令和3年4月に事業承継ネットワークと事業引継ぎ支援センターが統合して新たにスタートした公的機関で、事業承継全般の相談にワンストップで対応し、内容に応じて適切な支援を行う相談窓口である。センターの最大のミッションは、事業承継の重要性は理解しているが、日常の経営課題の対応に忙殺されて、事業承継を先延ばしにしている中小企業経営者に事業承継の重要性についての気づきを与え、承継に積極的に取り組んでいただくことである。センターの主な活動、支援内容は次の(1) 〜(4)である。特に、センターは公的機関であるため「公正・中立・秘密厳守」に忠実であり、このことは中小企業経営者に事業承継を安心して推進していただくためには大変重要と思われる(センターによくある相談事例は図1参照)。

 

 

 

 

 

 

(1)事業承継ネットワークを通じた事業承継ニーズの掘り起し
各道府県には「事業承継ネットワーク」が設置されている。同ネットワークの主な構成機関は自治体のほか、地域金融機関、商工会・商工会議所等の商工団体、士業団体、公的支援機関等である。各構成機関は自組織の会員や取引先等に「事業承継診断」を実施し、事業承継に関する準備の重要性を経営者に知っていただくこと、また準備を早めに開始するよう経営者の背中を押すお手伝いをしている。
センターではエリアコーディネーター(以下「エリアCO」)を通じてその「事業承継診断」で浮き彫りとなる課題の解決に関して構成機関と共に取り組んでいる。エリアCOは必要があれば、経営者と直接面談をし、センターへの取次ぎを行っている。具体的にいうと、(2)〜(4)で掲げる第三者承継支援等への橋渡しなどである。なお、令和2年度の事業承継診断実績は全国で16万2千者となっている。

 

(2)第三者承継支援
センターは、事業承継診断等に基づく課題整理をし、後継者不在の経営者へのアドバイス、従業員承継もしくは第三者承継の支援をしている。後継者不在企業に対して、譲受の意向のある企業の探索並びに最終契約に至るまでのサポートも実施している。企業の探索にはセンターと連携している地元金融機関、M&A仲介会社、士業法人等からの支援があるほか、センターに直接譲受相談のある企業からも探している。また、連携先として民間プラットフォーマーも加わっており、令和2年度の事業引継ぎ支援センターの実績は相談者数11,686者、成約件数1,379件となっている。

 

(3)親族内承継支援
親族内承継をすることが決定し、センターが支援を必要と判断した場合、支援を行う。具体的には承継に関する課題や承継に向けてのスケジュールの見える化のために、外部専門家による事業承継計画策定の支援や助言を実施している。

 

(4)事業承継時の経営者保証解除支援
事業承継時に課題となる金融機関に差し入れている経営者保証に対して、「経営者保証ガイドライン」の特則に基づき、経営者保証の二重徴求の解除支援を実施している。具体的にはセンターの「事業承継時判断材料チェックシート」の条件を満たす中小企業に対して経営者保証コーディネーターが支援する。必要に応じて相談者と金融機関との交渉時に専門家を派遣することもできる。

 

 

2.事業承継・引継ぎのための手順について


(1)相談のタイミング
事業承継ガイドラインによれば、事業承継には5つのステップがある(図2参照)。少しでも疑問や相談ごとがあれば、いずれのステップでもセンターに相談できる。経営者の中には企業規模が小さいことや財務状態が赤字、債務超過であることを理由に相談を躊躇してしまう方がいるが、そういう状況でも成約した事例はあるので、ぜひご相談いただきたい。経営者からは「いつ、誰に相談したらよいかわからなかった」という声をいただくが、センターでは「なにから手を付けてよいかわからない」という事業承継の初期の段階から「第三者承継で相手先が決まっているが、やり方がわからない」というかなり交渉が進んだ段階まで、幅広く相談を受け付けている。また、後継者不在で悩んでいる経営者が第三者承継や廃業に気持ちが傾いている場合でも、センターへの相談を契機に、再度、親族内承継、役員・従業員承継の可能性を考えてもらうほか、経営者が最終的な事業承継方針を決定するためのサポートを行っている。

 

(2)顧問税理士との連携
顧問税理士は中小企業の経営者にとって一番身近な支援者で相談先である。顧問税理士は顧問先の相談に触れる機会も多いので、直接その中小企業を支援することはもちろん、センターと連携することもぜひ、ご検討いただきたい。例えば、顧問先の経営者がセンター訪問時に帯同する、事業承継計画策定に関与する、担い手ナビ等を含むM&A仲介支援等をするなどが考えられる。

 

 

3.相談窓口について、相談方法について


(1)各地の事業承継・引継ぎ支援センター
全国の都道府県に設置されているセンターにお気軽に直接ご連絡、ご相談いただきたい。ちなみに事業承継のご相談はセンシティブな内容を含むため、必ずご予約の上ご来所いただきたい。全国のセンターの連絡先は中小機構の「事業承継・引継ぎポータルサイト」(https://shoukei.smrj.go.jp/)などで探すことができる。また、ポータルサイトでは事業承継に関する様々な情報やセンターの業務内容、支援事例等について紹介している。

 

 

 

 

(2)構成機関の相談窓口
各道府県に組織されている「事業承継ネットワーク」は、地域金融機関、商工団体等が構成機関となっている。各所相談窓口への問い合わせ、並びにセンターへの紹介を依頼することも可能である。その際に「事業承継診断」を利用すると、現状のおおまかな方向性が認識できる。その上でセンターに相談すると、早期方針決定の手助けとなる。

 

(3)センターでの相談方法
センターでの相談方法は大きく2種類に分かれる。センターに相談する場合には、直接面談が基本である。この面談において、相談者の状況や意向を聞き取り、承継に向けての課題やニーズが整理できる。なお、相談者のお住まいがセンターから遠隔地の場合や、昨今の新型コロナの影響で直接面談が困難な場合には、電話やオンライン面談なども活用できるようになっている。また、構成機関の相談窓口経由でのご相談の場合には、まず、センターのエリアCOと面談していただいた上で、現状把握から課題の整理などを行っている。面談後は、センターのサブマネージャー等が担当し、相談者が決定した承継方針に基づき、外部専門家や登録機関等M&A支援機関を通じて事業承継完了までサポートしている。

 

4.終わりに


今回新たにスタートした「事業承継・引継ぎ支援センター」は事業承継に関する困りごとをワンストップでサポートする相談窓口となっている。「経営者は孤独」とよくいわれるが、事業承継に関する相談は特に他人に相談しづらいテーマであり、ひとりで悩んでいる経営者は数多いと思われる。まずは一度、センターに相談され、現状認識や問題、課題を棚卸することをお勧めする。その結果、自社の事業価値の再確認や適切な事業承継方法を選択し、貴重な経営資源を次世代に残すこと、地域のサプライチェーンとしての役割を維持することが重要である。そのサポートとしてぜひセンターをご活用いただきたい。