[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「M&Aに伴う手数料の処理」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】非上場株式の譲渡に当たり交渉支援、契約内容の検討等を依頼した弁護士費用等について

■【Q&A】税理士事務所の事業承継と一時払金の処理

 

 

 


[質問]

甲社は、コンサルタント会社A社から話を持ちかけられ、B社の株式取得を検討することとなりました。甲社は、A社と情報収集・仲介・株式取得に向けた諸手続・B社従業員等へのフォロー・新たな体制づくりのフォローを含め、総合的なコンサルタント契約を結びました。株式取得が行われなかった場合は、その時点で契約終了となり、A社へ手数料を支払い、費用処理を行いますが、株式取得を行う場合、前述の各種業務を引続きお願いすることとなり、契約で定めた期間満了時に手数料を支払う予定です。

 

この場合の手数料の処理は、期間満了時に属する事業年度の損金として差し支えないでしょうか。或いは、株式の取得価額に含めるべきものとして資産計上すべきでしょうか。

 

[回答]

ご高尚のことかとは存じますが、企業が、いわゆるM&A取引を行った場合、その仲介者等に支払う手数料等の、いわゆる助言費用等に関し、その取扱いに関しては、企業会計上は、従来の暖簾勘定等への計上処理から、IFRS基準による一時損金の費用化が図られつつあるものと承知いたしております。

 

具体的には、平成25年9月13日公表の「企業結合に関する会計基準」等の改正(原則:平成27年4月1日以後開始事業年度から適用)により、企業買収の際に外部のアドバイザー等に支払う取得関連費用の会計処理が変更され、投資銀行、証券会社等のファイナンシャルアドバイザー(FA)に関する報酬、ビジネス、会計・税務、法務等のデューデリジェンス(DD)費用といったアドバイザリーフィーは、連結財務諸表上では、原則として発生した事業年度の費用となり、買収対象会社の株式の取得費用として取得原価に含めることができなくなりました。

 

一方、税務上の取扱いは、これら会計上の処理に即応する形での改正は行われていないものと存じます。
原則的には、取得する株式等に関する法令の規定は法人税法施行令第119条第1項各号に定める取得態様に応じた取得価額の算定が予定され、これらによって課税関係が律せられるものと考えていますが、そこでは、例えば、購入した有価証券等の額は、その購入代価に購入手数料その他購入のために要した費用の額を加えた額であるとされているため、原則的には『購入のために要した費用は全て取得価額を構成する』という理解があり、単に通信費や名義書換料等についてはその金額が少額であるところから、これを取得価額に算入しないことができる旨を定めているに過ぎないとされています(㈱税務研究会版「法人税基本通達解説」法人税基本通達2-3-5の項の記載事項参照) 。

 

他方、法人税法第62条の8(非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等)の規定がこのような非適格事業譲受けの形態に対応する規定として存在することも理解しておく必要があるように思います。

 

すなわち、同条の規定では、引継受入資産と引継受入負債との差額が生ずる場合には、当該差額を超える金額が支出されるときには当該超過額は資産調整勘定の額として、不足額が生ずるときには当該不足額は負債調整勘定の額として(一時に課税関係を律するのではなく)、将来にわたって損益調整を行うこととされているところから、いわゆる正の暖簾と負の暖簾によって課税の平準化が図られているといえるものと考えています。

 

会計の場合のように、直截に助言費用の資産計上を否定するという方法を採り上げるのではなく、総額的に時間(5年間)をかけて時価との調整を図ることが税制の考え方であるともいえると考えられます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年4月9日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「子が事業を引き継いだ場合の引き継いだ資産に係る減価償却」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】税理士事務所の事業承継と一時払金の処理

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

個人事業主の父が廃業して息子が事業を引き継ぎました。父が事業で使用していた機械装置をそのまま息子が使用しているのですが、この場合、使用貸借の扱いで、息子がその機械を減価償却して経費にすることは可能でしょうか。
※息子の機械引継ぎの仕訳 機械装置(帳簿価額)/事業主借(帳簿価格)

 

[回答]

所得税法第56条は、「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が、居住者の営む・・・・・・事業から対価の支払を受ける場合には、・・・・・・その親族の対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る・・・・・・所得の金額の計算上、必要経費に算入する。」と規定していることから、その親族が対価の支払を受けていない場合には、形式的には、配偶者その他の親族の有する資産に係る必要経費に算入されるべき金額は、事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費にされないことになります。

 

しかしながら、所得税法第56条の規定が事業に係る所得における世帯単位課税を考慮した規定であることに着目し、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族の有する資産を事業主が無償で使用している場合であっても、その対価の授受があったものとしたならば所得税法第56条の規定により事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入される金額(その親族の各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額)を事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することができることとされています(所基通56-1)。

 

したがいまして、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が所有する資産を事業主が無償で事業の用に供している場合であっても、その資産に係る固定資産税、修繕費、減価償却費等については、事業主の事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することができることになります。

 

ご照会の事例につきましては、父親と息子が生計を一にするか否かが明らかではありませんが、父親と息子が生計を一にしているのであれば、父親の所有する機械装置を息子が使用貸借(無償)で事業の用に供している場合には、その機械装置に係る減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができると考えられます。

 

一方、父親と息子が生計を一にしていないのであれば、所得税法第56条及び所得税基本通達56-1の適用がありませんので、その機械装置に係る減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと考えられます。

なお、上記の検討は、息子が父親の事業を引き継いだが、父親の所有していた機械装置は息子に引き継がれず、息子は父親から使用貸借で事業の用に供している場合を想定しています。ご照会には、「息子の機械引継ぎの仕訳 機械装置/事業主借」と記載されていますので、事業の引継ぎに際して機械装置も引き継がれている(息子が購入している)のであれば、息子の所有する機械装置を息子が事業の用に供していることになりますので、その機械装置の減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができると考えられます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年4月9日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。今回は、事業承継税制(特例措置)の適用要件の一つである「先代経営者等である贈与者」の要件についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~

■【Q&A】相続税・贈与税の事業承継税制について~資産保有型会社の判定で採用する基準~

 


[質問]

事業承継税制におけるこのたびの特例措置を適用したく、作業を進めています。その適用要件のなかで、「先代経営者等である贈与者」の要件について以下の3つを定めています。

 

(1) 会社の代表権を有していたこと
(2) 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係が有る者で総議決権数の50%超の議決権を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと。
(3) 贈与時において、会社の代表権を有していないこと。

 

当社は、「先代経営者等である贈与者」にあたる者が、取締役に就任しているものの、代表取締役に過去に一度も就任しておりません。
そのため、これから代表取締役になるべく定款変更(共同代表取締役)し、就任しようと思っています。このスキームで(1)の要件を満たすでしょうか。

 

[回答]

1 租税特別措置法第70条の7の5(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例)に規定する「特定贈与者」について、同法施行令第40条の8の5第1項第1号は「・・・特例認定贈与承継会社(略)の代表権(制限が加えられた代表権を除く。イ及びロにおいて同じ。)を有していた個人で、・・・」と規定しています。

 

2 したがって、贈与の前に会社の定款を変更して贈与予定者を共同代表取締役に就任させ、その旨を登記した後に、特例承継計画を都道府県に提出して経営承継円滑化法の確認を受け、その後、株式等の贈与前に共同代表を辞任すれば適用要件の「会社の代表権を有していたこと」に該当します。この場合、定款等において贈与予定者の代表権に制限を加えないことが必要です。

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年6月15日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

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