[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「非上場株式の売買とみなし譲渡課税 ~社長が買い取る場合、会社が買い取る場合~」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡に当たっての適正価額について

■【Q&A】事業を譲り受けた場合に営業権の計上について

 


[質問]

同族会社で親族に株が分散しています。

 

①社長が買い取る場合(中心的株主)→原則法
②会社が買い取る場合       →

②の場合、自己株式の取得となり、資本の払戻しとみなし配当が生ずると思いますが、そもそも買取価格は税務上どのように決めたらよいのでしょうか。

 

[回答]

ご照会の内容については、多くの課税上の要素を含んでおりますので、課税上問題のない取引価額とする際に留意すべき点についてご説明します。

 

 

〔説明〕
非上場株式をどのような価額で取引するかということは、本来、税法で決めるべきことではなく、利害関係の相反する当事者が適正な交渉によって決めた価額であれば、それが時価と考えられるため、通常、課税上特殊な問題は生じません。

 

しかし、非上場株式の取引の多くは親族間等、利害関係の相反さない者の間で行われるため、各税法・通達等の内容を参考にして適正な価額を算定し、課税上の問題が発生することを回避することが求められます。

 

 

1 個人間の取引について

個人間で非上場株式を取引する場合に多く発生する問題は、時価より低い価額で売買したため、買主に経済的な利益が生じ、贈与税が課税されることです(相法7条)。

 

贈与税における非上場株式の時価は、財産評価基本通達により評価した価額であり(相法22条、評基通1(1))、具体的には評基通178~189-7により評価した価額となります。ご照会のケースでは「社長が買取る」とされていますので、買取り後の社長の議決権数を基に評価方式を判定する必要があり、原則的評価方式により評価することになると思われます。したがって、原則的評価方式による評価額で売買すれば、贈与税の問題は発生しませんが、当該評価額を下回る価額で売買した場合には、その差額は買主が贈与により取得したものとみなされます。

 

 

2 法人・個人間の取引

法人が絡む取引の場合も、適正な時価で取引すれば通常、課税上の特殊な問題は生じませんが、時価の算定に当たっては、評価の安全性等を考慮した相続税評価額をそのまま適用することは適当ではありません。

 

(1) 所得税法上の考え方
所得税の法令・通達のうち非上場株式の価額の算定の参考となるものとしては、所基通23~35共-9が挙げられます。同項では、「最近の売買実例で適正と認められる価額」や「比準すべき類似法人の株価」などがない場合の価額の算定は、「その株式の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」によることとされています(所基通23~35共-9(4)ニ)。

 

また、所得税法59条≪贈与等の場合の譲渡所得等の特例≫(いわゆる「みなし譲渡課税」)の適用に当たっての通達として、所基通59-6があります。同項では、「その時における価額」について、所基通23~35共-9に準じて算定した価額によるとし、更に、所基通23~35共-9(4)ニについて、一定の条件を加えた上で、評基通178~189-7までの例により算定した価額とすることとされています。

 

一定の条件については、所基通59-6の内容を十分ご確認いただきたいと思いますが、特に、譲渡者の議決権数については、「株式の譲渡又は贈与直前」の議決権数により財産評価基本通達における評価方式の判定を行うことにご留意ください。

 

(2) 法人税法上の考え方
法人税の法令・通達のうち非上場株式の価額の算定の参考となるものとしては、法基通9-1-13及び9-1-14が挙げられます。ここでは、「当該事業年度終了の日前6月間の売買実例のうち適正と認められる価額」や「比準すべき類似法人の株価」などがない場合の価額の算定は、一定の条件を加えた上で、評基通178~189-7までの例により算定した価額によることを認めています(法基通9-1-14)。

 

法基通9-1-14は非上場株式の譲渡価額について規定したものはありませんが、法人税基本通達逐条解説(税務研究会出版局)において、「なお、本通達は、気配相場のない株式について評価損を計上する場合の期末時価の算定という形で定められているが、関係会社間等において気配相場のない株式の売買を行う場合の適正取引価額の判定に当たっても、準用されることになろう。」と述べられており、非上場株式の売買においても指針となる通達であると考えられます。

 

 

3 法人による自己株式の取得について

法人が個人株主から自己株式を買い取る場合について、個人株主側から見れば、上記2(1)でお示ししたところにより算定した価額で売買すれば、所得税法上の問題は生じないと思われます。自己株式の取得に係る所法59条の適用に関しては、措通37の10・37の11共-22の注書きにおいて「当該自己株式等の時価」は、「所基通59-6により算定するものとする。」とされており、所基通59-6により算定した価額の1/2を下回る価額で売買した場合には、時価で譲渡したものとみなされることとなります(所法59、所令169)。この場合の時価は、個人株主の譲渡直前の議決権数により判定した評価方式が原則的評価方式となるのか、特例的評価方式(配当還元方式)となるのかにより異なることとなります。

 

なお、付言すれば、譲渡後に譲渡株主以外の株主の株価(相続税評価額)が大きく上昇するような取引とならないよう、相続税法9条(みなし贈与)の適用について考慮しておくことも必要と思われます。

 

法人側から見た場合には、上記2(2)でお示ししたところにより算定した価額が、適正な価額ということになりますが、仮にそれを下回る価額で売買されたとしても、自己株式の取得は資本等取引であるため、法人に課税上の特殊な問題は通常発生しないと思われます。

 

 

4 まとめ

ご照会の自己株式の取得については、上記2(1)でお示しした算定方法をベースとして取引価額を設定することが、課税上の問題を発生させない現実的な方法と思われます。

 

なお、算定に当たっては、通達の示す条件(相続税評価額と異なる点)に十分ご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2021年5月27日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い②

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い①

■譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

 

1.自宅の敷地のみを譲渡した場合に3,000万円控除の適用が受けられる場合


前回の解説では、個人が自宅の敷地のみを譲渡した場合であっても、譲渡所得の3,000万円控除の適用が認められる場合について解説をしました。

 

前回の解説内容は、以下のとおりです。

 

自宅敷地に対する3,000万円控除の適用は、災害により自宅家屋が滅失した場合を除き、原則として、自宅家屋とその敷地を一体で譲渡する場合に認められます。ただし、租税特別措置法通達(措通)35-2では、所有者が居住の用に供している家屋(または居住の用に供されなくなった家屋)を取壊し、その敷地の用に供されていた土地等を譲渡した場合において、その土地等の譲渡が以下に掲げる要件のすべてを満たしているときは、居住用財産の譲渡に該当するものとして3,000万円控除の適用を認めています。

 

(1)その土地等の譲渡契約が、その家屋を取壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住用に使用しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。
(2)その家屋の取壊し後、譲渡契約の締結日まで貸付けその他に使用していない土地等の譲渡であること。

 

2.敷地の譲渡契約を締結後に家屋を取壊した場合の3,000万円控除の適用(私見)


措通35-2の(1)の要件は、土地上の家屋を取壊し、その後に土地の譲渡契約を締結する前提で定められています。では、先に家屋の取壊しての引渡しを定める土地の譲渡契約を締結し、その後、その土地上の家屋を取壊して土地の譲渡をした場合、その土地の譲渡が居住用財産の譲渡に該当するものとして、3,000万円控除の適用が認められるのでしょうか。この疑問について、筆者の私見を以下のとおり述べます。

 

措通35-2の(1)は「その土地等の譲渡契約が、その家屋を取壊した日から1年以内に締結され」と規定されているので、家屋の取壊し日よりも前に土地の譲渡契約を締結した場合、形式的には要件を満たさないことになります。ただし、租税特別措置法通達逐条解説(譲渡所得関係)によれば、措通35-2が発遣された趣旨は、「買主から家屋を除去したうえで土地のみ売ってほしいという条件が付いたため、家屋を取壊して土地だけを譲渡した場合に、3000万円控除が受けられないことになると、不動産取引の実態にそわない結果となる」を認め、そのようなケースに適用を認めないことが法令の趣旨から外れた結果となると考え、そのような事態を回避することにあります。この趣旨からすれば、「不動産取引の実態」においてありうる土地の譲渡で、措通35-2(1)と(2)の要件と同レベルの内容を有するものについても、3,000万円控除の適用対象となる居住用財産の譲渡に該当すると思われます。

 

措通35-2の要件のうち(1)は、家屋の取壊しが先行し、その後に土地の譲渡契約が行われるという前提に基づいていますが、買主と売主の力関係等の個別事情により、先に土地の譲渡契約を締結し、その後に土地上の家屋を取壊すことも不動産取引ではありうることです。家屋の取壊しと譲渡契約の順序が通達の前提とは逆になった場合でも、それが「不動産取引の実態」の一つであり、譲渡時に居住用財産(であった)という属性が保たれていれば、措通35-2と同様の取扱いが認められるべきです。

 

したがって、先に土地の譲渡契約を締結し、その後、その土地上の家屋を取壊した場合でも、その取引が措通35-2(1)と(2)の要件と遜色ない内容となっているときは、その通達の要件を満たす土地の譲渡と同様に、3,000万円控除の適用が認められると考えます。

 

たとえば、土地の譲渡契約後にその譲渡契約の条件としてうたわれているべき合理的な期間内(措通35-2(1)とのバランスから最長1年が妥当でしょう。)に家屋が取壊され、かつ、措通35-2(1)の後半で規定する「その家屋をその居住用に使用しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の 12月31日までに」土地の譲渡(引渡し)が行われた場合で、その譲渡した土地が譲渡契約の締結後、家屋の取壊しを経て引渡しまでの間に、貸付けその他の用に供していないものであるときは、その土地の譲渡について3,000万円控除の適用が認められるものと考えます。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/3/8)より転載

[解説ニュース]

個人が共有持分を分割した場合の所得税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■共有物の分割で不動産取得税がかかるとき

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

 

 

 

【問】

甲と弟の乙は、昨年に父から相続した東京都内の土地(X土地)を持分2分の1で共有しています。甲と乙は、X土地を分割して共有を解消したいと考えていますが、この場合の税務上の取扱いについて次の通り質問します。

 

【問1】X土地を甲と乙が単独で所有する2筆の土地に分割した場合、甲が乙に、乙が甲に、それぞれのX土地の持分の譲渡があったものして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。なおX土地は遊休地であり、何ら使用されていません。

 

【問2】甲と乙は、X土地以外に、15年前に父から相続した神奈川県内の土地(Y土地)を持分2分の1で共有しています。X土地の価額とY土地の価額がほぼ同額であることから、甲のY土地の持分と乙のX土地の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有にすることも検討していますが、この場合にはX土地の持分とY土地の持分の譲渡があったものとして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。

 

【回答】

1.【問1】について


(1)共有物の分割に係る所得税の譲渡所得の課税

二以上の者が一の土地を共有している場合において、その土地をそれぞれの共有持分にて現物分割し、それぞれ単独所有の土地としたときは、判例上、共有者相互問において、共有各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行われることであって、各共有者が取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではないといわれています(最判、昭42.8.25民集21巻 7号1729頁、平成29年版所得税基本通達逐条解説194頁)。

 

したがって、共有の土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、①その法律的性格に着目すれば、その共有持分の交換(交換も「譲渡」の一種です。)があったことになるので、その譲渡による利益について所得税が課税されるのではないかという疑問が生じます。

 

しかし、共有関係にある一の資産を現物で分割するということは、②その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていないということもできます。

 

そこで、国税庁は所得税基本通達(所基通)33-1の7により、個人が他の者と共有している土地について、その持分に応ずる現物分割があったときには、税務上は①の考え方によらず、②の考え方に基づき、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとして、所得税の譲渡所得の課税関係を生じさせないこととして取扱うこととしています。

 

なお、現物分割された土地の面積の比と共有持分との比が異なる場合がありえますが、そのような場合であっても、その分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分の割合におおむね等しいときは、その分割はその共有持分に応ずる現物分割に該当することとされます(所基通33-1の7(注)2)

 

(2)結論

甲と乙が共有しているX土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、前述(1)より、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとされ、所得税の課税関係は生じません。

 

 

 

2.【問2】について


ご質問のように、東京都所在のX土地の乙の持分と、神奈川県所在のY土地の甲の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有とした場合には、交換する持分が別の土地の持分であるため、前述1(1)②で述べたような「その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていない」とはいえません。したがって私法上の関係通り、甲と乙において、それぞれX土地の持分とY土地の持分の交換(譲渡)があったものと認められることから、甲と乙にそれぞれ所得税が課税されます。

 

ただし、X土地とY土地の持分の交換において、一定の要件を満たす場合には、固定資産の交換に係る所得税の特例(所得税法58条)の適用により”譲渡がなかったもの”とみなすことができます。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/28)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】株式移転により個人株主が保有株式を新設法人に譲渡した場合の譲渡所得の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(中坂 克司/税理士)

 

【問】

当社グループは、個人株主Xが各社の株式を100%保有する同族会社グループです。主要事業を営むA社、B社とも業績は順調で今後も拡大が見込まれ、新興事業として研究開発を続けてきたC社についても、ようやく大量生産・市場投下できる見込みが立ちました。

 

そこで当社としては、効率的なグループ経営及び更なるグループ事業の拡大を目指し、下記の事項を検討しています。株主Xの課税関係はどのようになるでしょうか。

 

①株式移転の方法により持株会社P社を組成し、現在各社で行っている総務・経理機能を持株会社P社に集約(株式移転に際してXはP社株式のみの交付を受ける)
②①の後、スピーディーなシェア確保が求められるC社については、ファンドから出資を受け入れることにより生産規模を大幅に拡大

 

【回答】

1.結論


株主Xについて、P社に対するA社、B社、C社(以下「子法人」)株式の譲渡がなかったものとみなされ、譲渡所得に係る所得税は課税されません(所法57の4②)。

 

2.解説


(1)株式移転

株式移転とは、1社又は複数の会社が発行済株式の全部を新たに設立する株式会社(「株式移転完全親法人」)に取得させる会社法の手法をいいます(会社2三十二)。通常、既存会社の株主は取得させた既存会社の株式の代わりに、新設会社の株式の交付を受けるため、資金負担を掛けずに持株会社体制に移行する方法として利用されています。

 

(2)株式移転により個人株主が保有株式を株式移転完全親法人に譲渡した場合の譲渡所得の特例

 

①原則
個人株主が保有株式を株式移転完全親法人に譲渡した場合は、その譲渡益は譲渡所得等とされ、個人株主に所得税が課税されます(所法33①)。

 

②特例
個人株主が、保有する株式の発行法人の行う株式移転により株式移転完全親法人(株式移転により他の法人の発行済株式の全部を取得し設立された法人。 法法2十二の六の六)に株式を譲渡した場合で、株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されない株式移転であるときは、その株式の譲渡はなかったものとみなされます(所法57の4②)。この場合において、個人株主が新たに取得した株式移転完全親法人の株式の取得価額は、旧株の取得価額とされます(所令167の7)。

 

(3)本件への当てはめ

質問の場合には、株主Xは子法人の行った株式移転により子法人株式を譲渡していますが、P社(株式移転完全親法人)株式のみの交付がされる株式移転のため、それぞれの子法人株式の譲渡はなかったものとみなされ、譲渡所得に係る所得税は課税されません。なお、株主Xが新たに取得したP社株式の取得価額は子法人株式の取得価額の合計となります。

 

3.法人税法上の適格株式移転との関係


(1)適格株式移転

法人税法上、一定の要件を満たす株式移転は「適格株式移転」として、基本的に課税関係を発生させない取り扱いになっています。本件の場合、子法人間には、株主Xによる完全支配関係(100%保有)があるため、以下の要件を満たせば、適格株式移転に該当します(法法2十二の十八、法令4の3)。

 

①株主Xに親会社となるP社株式以外の資産が交付されないこと
②株式移転後に株主XとP社の間で完全支配関係が継続することが見込まれること
③株式移転後に株主Xと子法人の間で完全支配関係が継続することが見込まれること

 

(2)本件の判断と株主Xの課税関係

本件については、株式移転後にファンドからの出資を受け入れた場合、上記(1)③株主XとC社間の完全支配関係が継続しないこととなります。従って、株式移転時に完全支配関係が継続することが見込まれるかどうかにより、「適格株式移転」に該当するか判断が異なります。ただし、株主Xの課税関係については、2.(2)②の通り、適格かどうかにより課税関係が異なるところではありません。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/05/22)より転載

[解説ニュース]

民法における養子の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田 房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■相続税法における養子の取扱い

■民法改正 ~特別の寄与~

 

 

1. 「普通養子縁組」と「特別養子縁組」


民法上、養子縁組には、実の血族との親族関係が終了しないいわゆる「普通養子縁組」と、実の血族との親族関係が終了する「特別養子縁組」とがあります。それぞれの主な違いをまとめると次表のとおりです。

 

 

※1 ただし、配偶者のある者が未成年者(2022年4月1日以降は18歳未満の者)を養子とするには、配偶者とともにしなければならない(配偶者の嫡出子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合を除く)。また、配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意が必要(配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合を除く)。
※2 未成年者(2022年4月1日以降は18歳未満の者)を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要(自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合を除く)。
※3 2022年4月1日以降も同じ。「18歳以上」とはならない。

 

 

2. 普通養子縁組における、養子の子(F)と、養子の親(A・B・C・D)との関係


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3. 節税目的でされた養子縁組の効力


節税目的でされた養子縁組の効力に関し、最高裁の平成29年1月31日判決においては、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るとされ、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について無効とはならないとされました。

 

 

4. 最後に


本稿では、民法における養子の主な取扱いをご紹介しました。上記1の表「親の死亡時(相続)」に記載のとおり、養親が死亡した場合には、その養子縁組が普通養子縁組であったとしても特別養子縁組であったとしても、民法上は、養子はその養親の相続人(子)として取り扱われ、その相続分は実子と変わりません。
一方、税務上は、養子の数を増やすことで公平性が損なわれること等があるため、普通養子縁組やいわゆる孫養子の場合には一定の規定が設けられています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/03/23)より転載

[解説ニュース]

被相続人が相続開始直前に老人ホームに入居していた場合の「相続した空き家の敷地に係る譲渡所得の特別控除」

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

1. 特例の概要


相続の開始の直前において、被相続人のみが主として居住の用に供していた家屋で、昭和56年5月31日以前に建築されたも(区分所有建築物を除く。以下「被相続人居住用家屋」)及びその敷地の両方を相続又は遺贈により取得した個人が、被相続人居住用家屋を取壊した後にその敷地を譲渡した場合は、一定の要件を満たすことにより、所得税の計算上、譲渡所得の金額から最大3,000万円を控除できる特例が設けられています(租税特別措置法(措法)35条第3項2号、4項、措法施行令23条6項。以下この特例を「本特例」といいます)。

 

 

 

2. 被相続人居住用家屋の意義


この特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、次の①~③のすべての要件を満たす家屋をいいます(措法35条4項)。

 

①相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていた家屋であること。
②昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除きます。)であること。
③相続の開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること。

 

 

 

3. 被相続人が相続開始の直前に老人ホームに入居していた場合の本特例の適用


(1) 被相続人居住用家屋とその敷地の対象の拡大

上記2①より、「被相続人居住用家屋」は相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋であることが要件とされ、老人ホームに入居中に 相続が開始した場合は、被相続人が入居前に住んでいた自宅は相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていないことから、被相続人居住用家屋に該当しません。しかし高齢者が自宅を離れ老人ホームに入居後に元の自宅に戻る場合や、元の自宅を家財置き場等として使用する場合があり、生活の本拠が完全に老人ホームに移ったとは言えないケースもあります。そこで被相続人が相続開始の直前に老人ホームに入居したときでも、一定の要件を満たす場合には元の自宅が「被相続人居住用家屋」に該当するものとして、本特例の適用が認められています。

 

具体的には、本特例の適用対象となる被相続人居住用家屋およびその敷地として、「”『対象従前居住の用』に供されていた”被相続人居住用家屋およびその敷地」が含まれることとされています。 (措法35条4項、措法施行令23条7項、6項)

 

(2)「対象従前居住の用」の意義

「対象従前居住の用」とは、 [1]次の①~③の要件を満たし、かつ[2]下記(3)の特定事由により相続の開始直前において家屋が被相続人の居住の用に供されていなかった場合における、その特定事由により居住の用に供されなくなる直前のその被相続人の居住の用をいいます。

 

①特定事由により、被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続き被相続人居住用家屋がその被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと
②特定事由により、被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、その被相続人居住用家屋が事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
③被相続人が、(3)①の有料老人ホーム等に入居等をした時から、相続開始の直前までの間において、被相続人の居住の用に供する家屋が2以上ある場合には、これらの家屋のうち、その施設等が、被相続人が主としてその居住の用に供していた一の家屋に該当するものであること。

 

(3) 特定事由の意義

特定事由は、次の①又は②の事由をいいます。

 

①介護保険法の要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅等に入居等をしていたこと。
②一定の障害者区分の認定を受けた被相続人が、障害者支援施設等に入居等をしていたこと。

 

(注)上記の要介護認定等を受けていたかどうかは、特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において判定します。

 

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/03/16)より転載

[解説ニュース]

譲渡所得税の最近のトラブル事例集

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■借地人の建物を地主が取壊した際の費用をめぐる税金トラブル

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.はじめに


所得税の確定申告時期で申告手続きの最盛期を迎えています。そこで、譲渡所得税に関係する最近の裁決事例から、少し変わったトラブル事例を集めてみました。

 

2.スーパーカーの売却益は譲渡所得?


1台8,000万円もする限定生産のフェラーリなどのスーパーカーの売却益を巡って納税者と税務署の間で争いになった事例がありました(国税不服審判所令和元年6月18日裁決)。

 

裁決書によると、この争いは、納税者が「自己保有していたスーパーカーは生活の用に供する動産であるから、その売却益は非課税になる」との考えから、税務署が行った譲渡所得として課税の取消し等を求めたものです。

 

自家用車の売却益については、その自家用車が例えば通勤用なら、非課税とされます。生活に要する資産と認められるからです(所法9①九、所令25)。逆に売却損が出たとしても、損失はなかったものとされます。これに対し、自家用車が個人のレジャー用などの場合は、その利益は譲渡所得に区分され、課税対象となります。

 

さて、国税不服審判所は、この納税者が「平成22年6月から平成29年5月までの間に、少なくとも15台の車両を購入しており、特に、平成25年及び平成26年には、それぞれ1年聞に3台の車両を購入するなど、同時に複数台の車両を保有している」等の事実関係を認定。こうしたことを受けて、国税不服審判所は、売却された限定生産のスーパーカー3台は、500台以下の生産数しかなく、「購入者が限られる上、(中略)購入時の車両 本体価格がいずれも8,000万円を超える高級車であること等を考慮すると、各限定車が通常の社会生活を営むのに必要とされる動産であるとは認められない。(中略)各限定車は、「生活に通常必要な動産」に該当しない」と判断、納税者の言い分を退けています。

 

3.予め特例を変更できるようにしていたつもり?


譲渡所得の申告で、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の2、以下、優良住宅地特例という。)と特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税 の特例(措法37、以下、買換え特例という。)の適用を受けるべく申告書に書き、一方の特例が受けられなかったことから、修正申告で変更しようとしたところ、税務署が認めなかったため争いとなった事例があります(国税不服審判所裁決平成30年1月25日)。

 

裁決書によると、納税者は、夫から相続し、花の栽培など事業の用に供していた市街化区域内の土地を2億円余りで売りました。

 

譲渡所得税の申告の際には、上記の両特例の適用を受ける旨の申告書に書いたうえ、マンションに買い換えることを予定し、税額は買換え特例の定めに則って計算して申告していました。

 

ところが、買い換えが出来なかったため、改めて優良住宅地特例で税額を計算し直して修正申告をしたところ、税務署から更正処分されたため、争いとなったものです。

 

納税者は「当初の申告で買換特例の適用を受けたとしても、その後の修正申告で買換特例の適用を受けないなら、買換特例と優良住宅地特例の重複適用を認めない法の趣旨(両特例の重複適用が屋上屋を重ねることとなり適当ではないというもの)に反しないから、修正申告で優良住宅地特例の適用を認めるべき」と主張しました。

 

 

国税不服審判所は、「措法第31の2④」について次のように解釈。

 

いわく同項は「買換特例の適用を受けるときは、その土地の譲渡は、優良住宅地等のための譲渡に該当しないものとみなす旨規定し、優良住宅地特例の適用を排除している。この「規定の適用を受けるとき」とは、当初の申告において、その有する土地につき、将来買換資産を取得する見込みであるとして買換特例の適用を受けた(同法37④)が、その後、買換資産を所定の期間内に取得しなかったため、義務的修正申告書を提出した場合を含むもの」。

 

このため「納税者が、当初の申告において、(中略)買換特例の適用を選択した場合には、その譲渡は、その後、買換資産を所定の期間内に取得せず、義務的修正申告書を提出したとしても、同法第31の2④により、優良住宅地等のための譲渡に該当しないとみなされて、その納税者は、義務的修正申告書において、買換特例に代えて本件特例の適用を受けることができないものと解される」と判断、義務的修正申告書において買換特例に代えて優良住宅地特例の適用を受けようとすることは、当初の確定申告における買換特例の適用を撤回することになるが、瑕疵なく確定申告した以上、これを自由に撤回することができないとして、納税者の主張を認めませんでした。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/03/09)より転載