[解説ニュース]

介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(小泉紀子/税理士)

 

1.はじめに


最近相続税申告で、介護施設で亡くなられた場合の小規模宅地等の特例を適用するケースが増えてきているように思われます。今回は、その適用にあたって留意する点をお伝えします。

 

2.概要


介護施設で亡くなった場合でも、被相続人が入所前に居住していた家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、次の要件を満たすと、小規模宅地等の特例における「被相続人の居住の用」に供していたものとされます(措令第40の2②、③)。

 

①相続開始の直前に、被相続人が「要介護認定」又は「要支援認定」を受けていること
②老人福祉法等に規定する介護施設等に入所していたこと
③被相続人が居住していた家屋は、入所後に事業の用又は新たに被相続人以外の居住の用に供されていないこと

 

3.要介護認定の申請中に死亡した場合


要介護認定又は要支援認定を受けていたか否かの判定時期は、「相続開始の直前」とされています。

では、介護施設に入所していた被相続人が、要介護認定の申請中に亡くなった場合はどうなるのでしょう。

このような場合に、相続開始後に要介護認定があったときには、要介護認定はその申請のあった日にさかのぼってその効力が生ずることとなり、相続開始の直前において要介護認定を受けていた者に該当するものとして取り扱うことが認められています。

 

4.添付書類


被相続人が介護施設に入所していた場合の小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に次の書類を添付する必要があります。

 

①被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)
②介護保険の被保険者証の写しなど、被相続人が要介護認定又は要支援認定を受けていたことを明らかにする書類
③施設への入所時における契約書の写しなど、その介護施設の名称及び所在地並びにその施設が老人福祉法等に規定する介護施設であることを明らかにする書類

 

①~③の書類のうち、実務上入手に困るのが②の書類です。介護保険の被保険者証は、亡くなると市区町村役場へ返却することになっているため、相続税申告にあたりご用意頂く書類を相続人の方へ伝える頃には、市区町村役場へ返却してしまっていることが多いです。市区町村役場に申請して別途要介護又は要支援の状態であったことを証明する書面を出してもらうことも可能ですが、手間がかかりますので、もしお伝えできるタイミングがありましたら、写しをとっておいてもらうことをお勧めします。

 

5.介護施設に入所中に自宅を相続した場合


以下の事例において、被相続人甲の自宅の建物を「本件家屋」、その敷地の用に供されている宅地等を「本件宅地等」とします。

 

被相続人甲はA有料老人ホームの入所前に、本件宅地等を居住の用に供していましたが、A有料老人ホームの入居中に本件家屋及び本件宅地等を配偶者乙から相続し、その後本件家屋に戻ることなく死亡しました。

 

 

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この場合、被相続人甲は、A老人ホーム入居の直前においては本件宅地等を居住の用に供していたものの本件宅地等の所有者ではなく、本件宅地等を取得した後はこれを居住の用に供していないのですが、本件宅地等は、小規模宅地等の特例対象となるのでしょうか。

 

これについては、国税庁の平成30年12月7日付の文書回答事例で次のような見解が認められています。

 

すなわち、「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等が、小規模宅地等の特例対象となる居住用宅地等に該当するか否かは、被相続人が有料老人ホーム等に入所して居住の用に供されなくなった直前の利用状況で判定することとされていますが、その時において被相続人が宅地等を所有していたか否かは、法令上特段の規定は設けられていないことから、小規模宅地等の特例の対象となる宅地等に該当すると解され、特例の適用を受けることができると考えられます。」

 

なお、小規模宅地等の特例の適用判定は難しいため、適用にあたっては十分に要件を確認することが必要です。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/10/15)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「相続税・贈与税の事業承継税制について~資産保有型会社の判定で採用する基準~」についてです。

 

 


[質問]

資産保有型会社の判定において、貸借対照表に計上されている帳簿価額で判定することとされています。

中小企業においては、株式交換等の組織再編を行った場合などには税務基準で会計処理を行うことが一般的だと思われます。しかし、結合会計等の会計基準との金額のかい離が大きいため、どの基準によるかにより結果が大きく異なります。組織再編以外にも中小企業においては税効果会計、減損会計等の会計処理は、通常行われていないように思います。

 

意図的に税務基準、会計基準を使い分けし、要件をクリアにすることも可能な素地があるかと思いますが、あくまでも法人が採用している会計基準で判定するとの理解で良いですか。

 

 

[回答]

1 非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除(の特例)の適用を受けることができない「資産保有型会社」を次のように定義しています(措法70の7②八、70の7の5②三)。

 

資産保有型会社とは、贈与の日又は相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度開始の日から贈与税額又は相続税額の全部につき納税猶予に係る期限が確定する日までの期間(措令40の8⑲)において、次の算式による割合が100分の70以上となる会社をいう、とされています。

 

 

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Aは、その日におけるその会社の総資産の貸借対照表に計上されている帳簿価額の総額

 

Bは、その日におけるその会社の特定資産(現金、預貯金、有価証券、書画骨董、その会社が自ら使用していない不動産、ゴルフ会員権、親族等に対する貸付金等をいいます。)の貸借対照表に計上されている帳簿価額の合計額

 

Cは、その日以前5年以内において、後継者及びその後継者と特別の関係がある者がその会社から受けた剰余金の配当等の額及び損金不算入となる役員給与の額の合計額

 

 

 

2 法令により資産保有型会社の定義を上記のとおりその法人が採用している経理方法による貸借対照表上の計上金額により判定することとされていますので、仮装経理など実体のない計上金額でない限りお尋ねの理解でよいと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年4月25日回答)

 

 

 

[解説ニュース]

相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

1.はじめに


今回は最近の相続税の財産評価をめぐり、家屋の評価で特別の事情が認められるかどうかが問われた裁判例を取り上げます。

 

2.相続税の家屋評価


相続税の計算をする場合には、不動産や株式などの現物の相続財産については、金銭的価値を見積もり評価する必要があります。この際に指針となるのが、国税庁の財産評価基本通達(以下、財基通という)です。

 

財基通の評価の原則1⑵では「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(中略)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」とされています。評価の際には「財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する」(財基通1⑶)ことになっています。

 

さて、家屋の評価は「その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条(固定資産課税台帳の登録事項)の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価」します(財基通89からの引用)。

 

固定資産評価基準(以下、評価基準という)における家屋の評価方法は、建物の構造や設備などの所定の部分について評点数をつけ積算し、建築後の年数に応じた経年減点補正率と評価の年の評点1点当たりの金額を乗じて評価額を求めます。また必要に応じて損耗減点補正、需給事情による減点補正が出来ます(評価基準第2章)。

 

そして、①評価基準及び財基通が、評価方法として合理的であること、②評価基準・財基通の通りに家屋が評価されていること、③明らかに「時価」を超えていないこと、④評価基準・財基通により評価することが適切ではない特別の事情がないこと、この4つを満たす限り、評価基準及び財基通による評価が適正な評価額と推認されるという考え方になっています。

 

3.家屋評価で争いになった裁判例


ここで取り上げる家屋の評価の裁判例は、古い家屋のうち1戸の評価について、「特別の事情」があるため不動産鑑定評価額約300万円で相続税の当初申告、不動産鑑定評価額約400万円で修正申告等をしていた納税者が、税務署から財基通に基づく評価約1,800万円で更正され、争いになった事例です(札幌地裁平成31年3月8日判決、他の争点もありますがここでは割愛します)。

 

4.納税者の主張


納税者は概略「築後約20年から40年が経過したものであり、老朽化が見受けられるものであるから、その評価に際しては、必要な経年減価が行われるべきである。しかし、評価基準及び財基通においては、最低20%という高い補正率(経年減点補正率)が採用されており、減価が不十分なものとなっている」と指摘し、特別の事情があるとしました。

 

そのうえで納税者は「「時価」(中略)の算定方法は評価通達の定める評価方式に限られるものではなく、不動産鑑定評価によってその算出を行うことも可能」との考えで不動産鑑評価額が「客観的な交換価値を反映した評価である」と主張しました。

 

5.裁判所の判断


裁判所は「評価基準により算出された価額を基にして家屋の評価を行う評価通達の定めも、家屋の客観的な交換価値を算出する方法として一般的な合理性を有するもの」と認めました。

 

そのうえで、納税者が「経年減点補正率の下限が20 %と極めて高く、家屋の実際の取引価格との帯離が著しく大きい」ことから評価方法として、一般的な合理性がないと指摘した点について、裁判所は経年減点補正率だけでは適当と認められない場合に個別事情を踏まえた減点補正ができることから「評価基準の一般的な合理性を否定する事情にはならない」としました。

 

また鑑定評価額と財基通に基づく評価額に乖離があることについて裁判所は、「時価を評価する方法として客観的で、一義的なものがあるわけではなく、その評価額にも自ずと一定の幅が生じることは避けられない。(中略)相続財産について評価通達の定める評価方法によって算出した額が不動産鑑定評価基準に則って鑑定した額を上回る場合であっても、それはいずれも合理性を有する異なる評価(の)基準を用いて算出した結果が異なるものであることを意味しているにすぎず、評価通達の定める評価方式によって時価を適切に算定することができない特別の事情があることを推認させるものではない」として納税者の主張を退けています(判決文書からの引用、()括弧内・赤字は筆者加筆)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/09/02)より転載

[解説ニュース]

民法改正 ~特別の寄与~

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

1. はじめに


民法改正により創設された「特別の寄与」について解説します(2019年7月1日以後の相続から適用)。

 

2. 特別の寄与に関する民法規定(民法1050①②⑤)


特別寄与者(下記3.参照)は、相続開始後、相続人に対し、その寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができます。また、その支払いについて当事者間に協議が調わない場合等には、一定期間内に、家庭裁判所にそれに代わる処分を請求することができます。

 

相続人が複数いる場合には、各相続人は法定相続分又は指定相続分に応じて特別寄与料を負担します。

 

3. 特別寄与者の要件(民法1050①)


(1)被相続人の親族(相続人、相続放棄をした者、及び相続権を失った者を除く)であること
(2)被相続人に対して無償で療養看護その他の労務提供をしたこと
(3)上記(2)により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと

 

4. 相続税法における取扱い


(1)特別寄与料の支払確定前

特別寄与料は、当事者間で協議が調うまで、又は家庭裁判所の審判があるまでは、その支払いが確定しません。したがって、その支払確定前は、請求中であったとしても特別寄与料の支払いがないものとして相続税を計算します。

 

(2)特別寄与料の支払確定後 ※1
①特別寄与者

(a) 相続税の計算(相法4②)
特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与料相当額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税を計算します。

 

(b) 相続税の申告期限等(相法29①、33)
上記(a)による計算の結果、納付すべき相続税額がある場合には、特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の期限内申告書を提出し、相続税を納付しなければなりません。

 

②相続人

(a) 相続税の計算(相法13④)
特別寄与料の額が確定した場合には、「各相続人が相続又は遺贈により取得した財産の価額から特別寄与料の額のうちその相続人の負担に属する部分の金額を控除して、相続税を計算します。

 

(b) 相続税の申告期限等(相法27①、32①、33)

5.税務上の留意点等


(1)相続税額の2割加算(相法18)

特別寄与者となり得る者の多くは、相続税額の2割加算の適用対象者でもあるため、特別寄与料の支払いがあった場合には、基本的に、同一の被相続人に係る相続税の納税総額は増加する点に留意が必要です。

 

(2)特別寄与者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産がある場合(相法19)

特別寄与者が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、相続税の計算上、贈与財産の加算と贈与税額控除の適用があります。特別寄与料の額のみを申告すればよいわけではない点に留意が必要です。

 

(3)特別寄与料を金銭ではなく不動産や有価証券等の現物で支払った場合

特別寄与者が有する特別寄与料の支払請求権は、民法上、金銭債権とされています。したがって、相続人がその金銭債権に係る債務を履行するために、特別寄与者に対して不動産や有価証券等の現物を移転した場合には、その相続人が代物弁済をしたものとして取り扱われます(民法482)。

 

税務上、代物弁済があった場合には、その代物弁済により移転する資産の譲渡があったものとして取り扱われます。すなわち、代物弁済により譲渡所得の基因となる資産を移転する場合には、原則として代物弁済により消滅する債務の額(特別寄与料の額)を譲渡所得の総収入金額として譲渡所得を計算することになります。

 

(4)特別寄与料に相当する金額の贈与をする場合

上記(1)に記載のとおり、特別寄与料を加味して相続税申告をする場合には、基本的に納税総額は増加します。

 

また、期限内申告書の提出後に特別寄与料の額が確定したような場合には、あらためて相続税の申告書等を作成しなければならないという実務上の煩雑さもあります。

 

特別寄与料の額、追加で納付することとなる税額、専門家報酬の額等によっては、実務上は、民法の「特別の寄与」の制度によることなく(相続人から特別寄与者への特別寄与料の支払いではなく)、相続人と特別寄与者との合意により、「相続人から特別寄与者への特別寄与料相当額の金銭の贈与」をし、贈与税の申告・納付で解決することもあると考えます。

 

 

※1 特別寄与者は、特別寄与料以外の財産を被相続人からの遺贈により取得していないものとします。
※2 相続人は、相続税の期限内申告・納付をしている場合を前提とします。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/08/26)より転載

[解説ニュース]

配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例・物納の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

1.配偶者居住権の意義


被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺産分割または遺言により、その居住していた建物(以下「居住建物」)の全部につき無償で居住したり賃貸したりする権利(=「配偶者居住権」)を取得することができます(民法1028条第1項)。

 

2.配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例


(1)小規模宅地等の特例の概要

小規模宅地等の特例とは、個人が相続等により取得した宅地(土地又は土地の上に存する権利をいう。以下「宅地等」。)のうち被相続人又は被相続人と生計をーにしていた被相続人の親族(被相続人等)の事業の用又は居住の用に供されていた一定の宅地等(下図の4区分)について、相続税の申告期限までその宅地等を保有し、事業や居住の用に供するなど一定の要件を満たす場合は、被相続人等に係る相続税の計算上、一定の面積(限度面積)までの部分について、その相続税の課税価格を次のとおり減額する特例をいいます(租税特別措置法69条の4)。

 

 

(2)配偶者居住権等と小規模宅地等の特例の適用

配偶者居住権自体は、建物に関する権利であることから、宅地等に係る特例である、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
配偶者が配偶者居住権を取得した場合における、居住建物の敷地の利用権は、前述(1)の「土地の上に存する権利」に該当することから、上図④の特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
居住建物の敷地の所有権についても、その取得者が居住建物に被相続人と同居していた等の要件を満たすことにより、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます(租税特別措置法69条の4第1項、第3項2号・財務省「平成31(令和元)年度税制改正の解説」539頁)。

 

3.配偶者居住権等と相続税の物納


(1)相続税の物納の概要

相続税法は、納税義務者が延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、税務署長の許可を受けることにより、その納付を困難とする金額を限度として金銭以外の一定の財産による納税(物納)が認められています(同41条第1項)。
相続税の物納に充てることができる財産(物納財産)とは、原則、納税義務者の相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産(相続時精算課税の適用を受ける財産を除く。)で、日本国内に所在するもののうち一定のものをいい、譲渡制限が付されている株式など一定の財産は、管理処分に不適格な財産(「管理処分不適格財産」)として物納財産から除外されています(相続税法41条第2項、同施行令18条)。また物納財産が複数ある場合には、相続税法上、物納に充てることができる財産の順位が定められています(相続税法41条第2項、第5項)。

(2)配偶者居住権等と物納の適用

配偶者居住権自体は譲渡が禁止(民法1032条第2項)されていることから、上記3(1)の「管理処分不適格財産」に該当し、物納に充てることができません(相続税法41条第2項)。
配偶者居住権が設定された建物およびその敷地の所有権は、他の財産に比べて物納の順位が後れる「物納劣後財産」とされ、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り、物納に充てることができます(同法第4項)。

 

4.適用時期


上記2(2)と3(2)の取扱いは、配偶者居住権に関する民法の施行日である、令和2年4月1日以後に開始する相続により取得する財産に係る相続税について適用されます(改正法附則1条7号ロ)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/08/13)より転載

[解説ニュース]

令和元年分の路線価公表・地価上昇による相続税への影響

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(厚地満里 /税理士)

 

1.路線価4年連続上昇


国税庁は7月1日、令和元年分の路線価を記載した路線価図を同庁のホームページで公表しました。

http://www.rosenka.nta.go.jp/

 

全国の平均路線価は4年連続で上昇傾向にあり、その上昇率は前年対比で平成30年分の「+0.7%」を上回る「+1.3%」となりました。現在国税庁のホームぺージでは、平成25年分以降の路線価を確認することができます。

 

都道府県別の路線価では、19都道府県で前年より上昇しました。上昇率の上位を見ると、観光客数が増えている沖縄が8.3%と2年連続で全国トップ、2位は東京が4.9%、都市部の再開発が進む宮城が4.4%で3位と続いています。一方、路線価が前年より下落したのは27県で、内22県は下落幅が縮小しているものの、大都市圏や集客力のある観光地と、それ以外の地域との二極化の傾向が続いています。

 

2020年にオリンピック・パラリンピックの開催を控えた東京は、平均路線価が6年連続の上昇中で、訪日外国人の増加に加えて、再開発やホテルの建設が着々と進み、都心部で地価のバブル傾向が続いています。路線価の変動率を見ると、外国人観光客で賑わう浅草・雷門通りの上昇は前年対比で35%上昇と都内最高でした。大学キャンパスの進出が相次ぐ北千住駅前も大きく上昇、複数の路線が乗り入れる利便性の高さから、マンションの建設も続いています。

 

2. 土地の相続税評価額への影響


相続税・贈与税の宅地の評価額は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて算出する地域を除き、基本的には一平方メートル当たりの土地の評価額である路線価に地積を乗じて算出します。つまり路線価の上昇がそのまま相続財産の総額、そして相続税の納税に影響してきます。

 

ここ数年は商業地だけでなく、立地の良い住宅地でも毎年数万円単位で路線価が上昇してきました。現状の路線価ベースで相続税額を試算してみると、何年か前に試算した時より納税額が驚くほど増えていたというケースをよく見かけます。これまで手持ちの金融資産で何とか納税ができそうと考えていた方は、今改めて現状把握をしていただきたいと思います。

 

3.地価の上昇と小規模宅地の評価減の関係


小規模宅地の評価減の特例とは、相続人がその生活を維持するために欠くことのできない被相続人の自宅や事業用の土地を相続した場合に、土地の価額を一定の面積まで50%もしくは80%減額して評価することができる制度です。

 

例えば自宅の宅地の価額が1億円ですと、この制度の適用により価額の80%が減額されますので、相続税の課税対象となる宅地の評価額は2千万円になります。その効果は絶大である上に、現在のように路線価が高い時程、大きな効果を表します。小規模宅地の評価減の適用要件は事前に確認しておきたいところです。

 

4.最後に


空家や空地、その他子供や孫が今後引き継いでいくことが難しい物件があり、いずれは売却をと考えているようでしたら、地価が高騰して市場が動いている時は売却の好機です。相続税の納期限は相続開始から10か月しかありません。相続発生後に、納税のために物件を売却しようとしても、相続人間で話を取りまとめて換金に至るには余りに時間が短く、何よりその時市場が動いていなければ売却の目途が立ちません。問題を先送りしてタイミングを逸してしまわないように、家族でよく話し合い準備しておきましょう。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/08/05)より転載

 [解説ニュース]

 介護施設等に入所後、相続が発生した場合の居住用財産の譲渡所得と相続税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(関口正二/税理士)

 

1.概要


新しい元号となり「人生100年時代」を見据えた生き方に対する対応が必要となっています。
配偶者の死別等により単身の高齢者が増加しています。一人暮らしを続けてきたものの、体調面から介護が必要となり、家族に迷惑をかけたくはない等との理由から自宅から介護施設等に入所するケースが今後も増加していくことが予想されます。
今回は、自宅から介護施設等の入所後に相続が発生した事例での税務上の取扱いを解説します。

 

2.介護施設等入所後、自宅の売買契約中に相続が発生した場合の譲渡所得と相続税の取扱い


【事例】

母は、亡父から相続した自宅の土地建物で一人暮らしをしてきましたが、介護施設の入所(入所時に入所一時金及び敷金支払済)を機に空き家となった自宅土地建物を譲渡するため不動産売買契約を締結しました。

 

不動産売買代金       総額  9千万円
売買契約日(2019年1月) 手付金   2千万円
残金決済日(2019年4月末) 残金  7千万円

 

しかし、残金決済日直前の2019年4月中旬に母に相続が発生しました。居住用財産の譲渡特例及び相続税の取扱いはどうなりますか。

 

【回答】
(1)譲渡所得の取扱い

 

土地建物の譲渡所得の金額の計算上「総収入金額に計上すべき時期」は、納税者の選択により「資産の引き渡しがあった日」または「譲渡契約の効力発生の日」のいずれかとすることができます。

 

「譲渡契約の効力発生の日」を選択して亡母の準確定申告で譲渡所得の申告をした場合には、亡母の居住用財産(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡)として居住用財産の譲渡特例(措法35)の適用が可能となり税務上有利となります。また、譲渡所得に係る個人住民税の納税義務者は譲渡した翌年の1月1日時点で住所地がある方となります。よって、亡母の譲渡所得の住民税は発生しないことになります。

 

また、「資産の引き渡しがあった日(残金決済日)」を選択し相続人の確定申告で所得税に係る譲渡所得の申告をすることも可能です。この場合には、相続人は居住していなかったため居住用財産の譲渡特例(措法35)は適用不可です。しかし、相続財産の譲渡として相続税の取得費加算特例(措法39)の適用は可能です。

 

 

(2)相続財産、相続債務の取扱い

 

売買契約中の土地等及び建物について、売主に相続が開始した場合には、相続等により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権となります。本事例では残金の7千万円が未収入金として相続財産となります。

 

相続財産が土地等ではないため小規模宅地等の相続税の課税価格計算の特例(措法69の4)の適用の検討は不要です。

 

相続発生により介護施設は退去と同様となり、入所時に支払った入所一時金(前払金)の一部及び敷金が相続人に返還されることとなります。この返還された金額は、亡母の金銭債権として相続財産に該当しますのでご注意ください。

 

また、上記(1)において「譲渡契約の効力発生の日」を選択することで亡母の準確定申告において発生した所得税等は、亡母の債務として相続税の債務控除の対象となります。

 

3.老人ホーム入所後の自宅敷地の小規模宅地等の特例


【事例】

母は、7年前に一人暮らしの自宅から介護付の老人ホームに入所しましたが2019年2月に相続が発生しました。自宅は、3年前からマイホームを持っていなかった次男家族が居住しています。
この自宅敷地について特定居住用の小規模宅地等の特例(措法69の4)の適用は可能でしょうか。

 

【回答】

老人ホームに入所したとしても、下記の要件を満たすことにより、従前の自宅敷地は特定居住用の小規模宅地等の特例が適用できます。

 

(1)被相続人が介護保険法等の要介護認定、要支援認定を受けていたこと(措令40の2②一)。
(2)入所施設が老人福祉法、介護保険法等に規定する一定の施設であること(措令40の2②一)。
(3)介護施設等入所後に、従前居住していた家屋を事業の用又は被相続人等以外の居住の用に供していた事実がないこと(措令40の2③)。

 

本事例では、母の施設入所後に自宅が新たに他の者(次男家族)の居住の用に供されているため、上記(3)の適用要件を満たしておらず、小規模宅地等の特例の適用はできません。介護施設等入所後の自宅の用途は、相続税申告において注意を要します。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/27)より転載

[解説ニュース]

相続時精算課税を選択した非上場株式に係る贈与税の納税猶予:贈与者よりも先に受贈者が死亡した場合

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

 

1.相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税


(1)概要

相続時精算課税は、その年の1月1日時点で20歳以上である個人が、同日時点で60歳以上である父母 又は祖父母(原則)から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」その他一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる税制です(相続税法21条の9等)。

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与の贈与者(「特定贈与者」)が死亡した場合、その適用を受けた受贈者(「相続時精算課税適用者」)の相続税額は、その死亡時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の贈与時の価額と、特定贈与者から相続又は遺贈(「相続等」)により取得した財産の評価額と合わせて相続税額を計算し、既に課された相続時精算課税による贈与税を控除して算出します(同21条の14、21条の15)。

(2)相続時精算課税適用者の有していた相続税の納税に係る権利義務の承継

特定贈与者の死亡以前に、その特定贈与者に係る相続 時精算課税適用者が死亡した場合、同適用者の相続人は、同適用者が有していた[相続時精算課税の適用を受けたことによる納税に係る権利又は義務]を承継します(同21条の17第1項)。

 

例えば、特定贈与者のAの死亡前に相続時精算課税適用者の長男Bが死亡した場合、Bの相続人は、Aが死亡した時に長男の代襲相続人としてAから相続で取得した財産の価額に、Bが相続時精算課税の適用を受けたAからの贈与財産の価額(Bが贈与を受けた時の価額)を加えて、Aに係る相続税額を計算します。

 

2.非上場株式等に係る贈与税の納税猶予(一般措置)


(1)概要

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当する会社で、同法による都道府県知事の認定を受けたものの株式について、その会社の代表権を有していた先代経営者(「贈与者」)から贈与を受けた受贈者が、一定の要件を満たすその会社の後継者(「経営承継受贈者」)である場合は、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式 (一定の部分に限る。以下「特例受贈非上場株式」)に対応する額の納税が、その贈与者の死亡の日まで猶予されます(租税特別措置法(措法)70条の7第1項)。

(2)特例受贈非上場株式に係る猶予税額の免除

(1)の猶予税額は、①その贈与者の死亡より先に経営承継受贈者が死亡した場合、②経営承継受贈者より先にその贈与者が死亡した場合のいずれのときにも、その全部又は一部が免除されます(同第15項1号、2号)。

(3)(2)②の場合の特例

(2)②の納税猶予の適用を受けていた場合において、経営承継受贈者より先に贈与者が死亡するなど一定の要件を満たすときは、経営承継受贈者は、(2)②のとおり猶予税額が免除されるものの、贈与税の納税猶予の適用を受けた非上場株式を贈与者から相続等により取得したものとみなされ(措法70条の7の3第1項前段)、相続税の課税対象とされます。
なお、この規定は、(2)①の場合には適用はありません(同かっこ書)。

 

3.贈与者よりも先に経営承継受贈者が死亡した場合(=2(2)①)の相続時精算課税に係る相続税額の計算


相続時精算課税を選択して贈与税の納税猶予の適用を受けた受贈者が贈与者よりも先に死亡した場合には、同適用者(=経営承継受贈者)の相続人は1(2)の適用を受け、贈与者が死亡したときに、同適用者が負う相続時精算課税の義務(特に1(2)の下線部の計算)を負うのではないかという疑問が生じます。

 

この点については、平成31年度税制改正により贈与者よりも先に経営承継受贈者が死亡した場合、2(2)より免除を受けた猶予税額に対応する特例受贈非上場株式については、1(1)の計算規定が適用されず、贈与者に係る相続税額の計算には含まれないこととされました(措法70の7第13項9号)。ただし相続時精算課税の適用を受けた同株式以外の財産には、原則通り1(1)の規定が適用されます。

 

なお「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例措置」(措法70の7の5)においても、上記と同様の取扱いがなされます(同第10項)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/20)より転載

[解説ニュース]

相続税法64条1項の同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用要件

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

1. はじめに


相続税法64条1項は、「同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合においてはその株主若しくは社員又はその親族その他これらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、相続税又は贈与税についての更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、課税価格を計算することができる。」と規定しています(赤字は筆者)。

 

この規定が適用されると、私法上は有効に行われた同族会社の行為等を税務上は否認した状態(なかったものとしたり、別の行為等に置き換えたりすること)に基づき評価通達によって相続財産の相続時の時価=課税価格を(申告より高く)評価することになります。

2. 上記1の否認規定の適用要件


表題の適用要件は次の通りです。

 

①対象となる法人は同族会社等(法人税法上の同族会社の外、特殊な要件を満たす法人も含みますが、後者の法人は稀です。)であること

②対象となる行為・計算は、同族会社等の行為・計算であること

③容認した場合(←そのまま否認しない場合、ということです。)、同族会社等の株主等の相続税等の負担を減少させる結果となること

④その税負担の減少が不当と認められること

 

このうち、①から③の判定は難しくありませんが、④の「税負担の減少が不当」か否かの判断は何をもって「不当」とするのか明確ではありません。

3. 裁判例が示す「不当」性の判断基準


以下では、相続税法64条1項の適用による否認の当否が争われた事件(同族会社のオーナー経営者(被相続人)が、癌によって死去する一月前に、時価をはるかに上回る価額でその同族会社の所有する土地・建物を買い取った行為が同項により否認、つまり、税務上なかったことにできるかが争われたもの)の裁判の大阪高裁平成19年4月17日判決で示された、同項の「不当」性の判断基準を示します。

 

同判決では、「確かに、…、相続税法 64条1項の同族会社の行為又は計算が相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるかどうかは、経済的、実質的見地において、当該行為又は計算が純粋経済人の行為として不自然、不合理なものと認められるか否かを基準として判断すべきもの」であるが、同項が、「同族会社が同族会社の株主等の租税負担回避行為に利用されやすく、これを放置すれば税負担の実質的な公平を図ることができないから、実質的な税負担の公平を図るために設けられた規定であり、この趣旨、目的に照らすと、ここでいう純粋経済人の行為として不自然、不合理なものかどうかは、同族会社の利益を図るという同族会社の株主ないし経営者としての立場に重きを置くのではなく、個人としての合理性を中心に考えるべきものである」と判示しました(赤字は筆者)。

 

そして、本件の時価をはるかに上回る価額で同族会社の所有物件を購入する行為については、「同族会社にとっては利益をもたらすもの(筆者注:株主ないし経営者としての立場に重きを置くと同族会社の利益が図られており、その意味で合理的)であるとしても、個人としては極めて不合理なものといわざるを得ない」と判示しました。つまり、「純粋経済人の行為として不自然、不合理なものと認められるか否か」についての判断は、この否認規定の趣旨に照らし、同族会社と取引行為を行った被相続人が、その同族会社と特殊な・親密な関係のない(と仮定した)一個人とした場合で判断するべきだ、ということです。換言すると、「独立当事者間」であるとした場合に通常行われうる取引といえるか、ということです。この判断基準は、この否認規定の制定趣旨に整合し妥当なものと思われます。

 

「不当」性につきこのように判断するということは、上記の経済的合理性を見る対象を、株主やその親族等を相手に上記のような取引を行った同族会社に限定しないということです。つまり、同族会社には経済的利益をもたらすものであっても、それだけではこの規定の適用を免れる理由にはならず、その取引自体の経済合理性、その相手にとっても不自然・不合理ではないかという点もチェックする、ということです。

4. 終わりに


この否認規定の適用の当否に係る裁判例はあまり多くないようですが、裁判例の数は否認例の数とイコールではありませんから、否認されない節税を考える際は、上記の不当性の判断基準に注意を払うことが必要です。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/04/15)より転載

[解説ニュース]

相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

1.相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税

相続時精算課税は、その年の1月1日時点で20歳以上である個人が、その年の1月1日時点で60歳以上である父母又は祖父母から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」その他一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる税制です(相続税法21条の9等)。

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与をした者(以下「特定贈与者」)が死亡した場合、相続時精算課税の適用を受けた受贈者(以下「相続時精算課税適用者」)の相続税額は、その死亡の時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の贈与時の価額と、特定贈与者から相続又は遺贈(以下「相続等」)により取得した財産の評価額と合算して相続税額を計算し、既に課された相続時精算課税に係る贈与税を控除して算出します(同21条の14、21条の15)。この場合において、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを、特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(同21条の16第1項)。

2.個人が非上場株式を発行会社に譲渡した場合の税務

(1)みなし配当課税となる部分

個人が所有する非上場株式をその発行会社に譲渡する場合には、その会社はその時の株式の価額を対価として株主に支払います。この場合に、個人株主が発行会社への株式の譲渡対価として取得した金銭等の額のうち、[その譲渡株式に対応する発行会社の資本金等の額]を超える額は”発行会社からの配当”とみなされ(みなし配当)、配当所得の金額の収入金額とされます(所得税法25条1項5号)。この配当所得の金額は総合課税の対象となり、他の所得と合算されて最高 55.945%の税率(所得税+復興特別所得税+住民税)で課税されます(所得税法89条等)。

 

(2)株式譲渡所得となる部分

個人株主が非上場株式を譲渡した場合、通常その譲渡対価が譲渡所得の金額の総収入金額となりますが、発行会社による自己株式の取得の場合、(1)の通り譲渡対価の形で受領した金銭の一部は配当とみなされ、その配当とみなされる部分を譲渡対価から控除した残額が譲渡所得の金額の総収入金額となります。その総収入金額から取得費と譲渡費用を差引いて、譲渡所得の金額が計算されます。この譲渡所得は他の所得と分離され、20.315%の税率で課税されます(租税特別措置法(措法)37条の10第1項等)。

 

(3)相続等により取得した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合のみなし配当課税の特例

相続等により非上場株式を取得(相続税法および租税特別措置法の規定により、相続等による財産の取得とみなされるものを含む)した個人のうち、その相続等につき納付すべき相続税額のあるものが、その相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、その相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、一定の手続の下で、その譲渡対価の全額が株式に係る譲渡所得として課税されます(措法9条の7第1項、第2項)。

3.相続時精算課税の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者の、みなし配当課税の特例の適用

個人が相続時精算課税の適用を受けて生前贈与により非上場株式を取得したものの、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合には、その者が他の要件を全て満たすときであっても、上記2(3)の「みなし配当課税の特例」の適用が受けられないのではないかという疑問が生じます。

 

この点については、2(3)の太字の通り、相続等による財産の取得には相続税法の規定により相続等による財産の取得とみなされるものを含むとされます。また、特定贈与者から相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、相続税法21条の16第1項により、特定贈与者の相続の時に全く相続財産を取得していない場合でも、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを特定贈与者から相続等により取得したものとみなされます(1の下線部参照)。ゆえに表題の場合においても、一定の手続の下、2(3)の特例の適用を受けることができます。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/04/08)より転載