[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「個人事業で代替わりする場合の従業員に対する退職金の取扱い」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】従業員である相続人に退職金を支払った場合の債務控除の可否

■【Q&A】個人事業者が事業を廃止した場合の事業用資産に係る課税関係

 


[質問]

今年の12月で個人事業主Aが廃業し、来年1月から子B(生計別)に承継する予定です。この場合に、現在Aに雇用されている従業員(他人)に退職金を支給し、必要経費にすることは可能ですか。従業員はBに引き続き雇用される予定です。

 

相続による承継のケースは、退職金としての必要経費算入はできない旨の相談事例がありましたが、今回のケースも同様ですか。

 

[回答]

所得税法第63条は、事業を廃止した後にその事業に係る必要経費に算入されるべき費用が生じた場合、その費用を事業廃止年分等の必要経費に算入する旨規定し、同法第152条は、かかる場合の更正の請求の特例について規定しています。

 

したがって、親Aが事業を廃止し、子Bが事業を承継した後、親Aの時代から引き続き従業員として勤務していたCが退職したことにより、Cに退職金を支給した場合、親Aに勤務していた期間に係る部分の退職金は、所得税法第63条により、親Aの必要経費に算入することができることになります。これは、親Aが事業を廃止した時点で従業員Cに退職金を支給していない場合ですが、親Aが事業廃止時に従業員Cに退職金を支給していたとすれば、これを親Aの必要経費に算入することができないとする所得税法上の根拠は見出しがたいものと考えます。

 

ただし、ご検討されましたように、相続により事業承継した場合の裁判例(平成27年11月4日広島地裁判決、退職金の支払い事実がなく、承継者が未払費用として処理していたもの)もありますから、退職金を親Aの事業廃止時に親Aから従業員Cに実際に支払うとともに「退職所得の受給に関する申告書」や子Bと従業員Cとの雇用契約書などの書類は整えておくべきものと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年12月10日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「解散をした場合の役員退職金の支給について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与

 


[質問]

12月決算法人で、今年の4月末を目途に法人を清算・解散することを予定しています。社長の退職金を時期について教えてください。4月末を解散事業年度とする場合、その後の清算決了期間がありますが、社長を清算人とした場合、4月末までの解散事業年度で退職金を支払うことは問題があるのでしょうか。
清算決了期間まで待って退職金を支払わないといけないのでしょうか。

 

[回答]

法人が解散した場合において清算事務に従事する清算人も法人税法上は役員でありますので、法人税法上の役員の地位は継続しているとみることもできましょうが、清算人は、現務の結了、債権の取立て等の清算業務の執行を行うものであり、取締役の職務執行とは異なります。

ご照会の件につきましては、国税庁HPに、以下の質疑応答事例が収録されています。

 

 

〇解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与

【照会要旨】
法人が解散した場合において、引き続き清算人として清算事務に従事する旧役員に対しその解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与(下線は筆者)については、法人税法上退職給与として取り扱われますか。

【回答要旨】
退職給与として取り扱われます。

(理由)
法人が解散した場合において、引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与は、所得税法上退職手当等として取り扱われています(所得税基本通達30-2(6))ので、法人税法上も退職給与として取り扱うことが相当と考えられます。

【関係法令通達】
法人税法第34条
所得税基本通達30-2(6)

 

 

したがいまして、解散の決議・清算人の選任を行う臨時株主総会において、併せて役員退職金の支給決議を行い、直ちに支給する場合には、不相当に高額な場合を除き、解散事業年度の損金の額に算入することになると考えます。

なお、所得税基本通達30-2(6)は、次のとおり規定されておりますので、ご確認いただけますでしょうか。

 

 

(引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの)
30-2 引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、次に掲げるものでその給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、30-1にかかわらず、退職手当等とする。
(1)~(5) 省略
(6)  法人が解散した場合において引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年01月27日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。