[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「廃業・清算を選択した場合の検討すべき方策」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?⑨~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題したテーマの最終回となる今回は、前回に引き続き、第1回でご紹介したタイプD(健全性が低く親族内後継者がいない会社)に着目します。前回(令和元年5月第3号)は廃業・清算という選択に至る前に事業存続に向けて検討すべき方策を説明いたしましたが、今回は後継者不在や厳しい将来性等からやむを得ず廃業・清算という選択をした場合に、検討すべき方策について紹介いたします。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 山田隆寛/公認会計士

 


【廃業・清算を選択した場合の検討すべき方策】

廃業をする場合、取引先・従業員・金融機関等多くの関係者に多大な影響を及ぼし、また場合によっては経営者の個人資産への影響を及ぼすため、廃業に向けた事前の準備が必要となります。会社の財産状況によって廃業の手続や対応が異なってくるため、会社の財産状況の把握(『資産超過』か『債務超過』かの判断)が重要となります。財産状況の把握において、資産については個々の資産を簿価ではなく処分価額で評価することになります。また、負債については賃貸借契約の違約金等の貸借対照表に現れない簿外債務の検討が必要になるため、専門家の利用が有効と考えられます。

 

【会社の財産状況に応じた清算の流れ】

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※ 経営者保証に関するガイドラインとは
中小企業の経営者が金融機関等と締結している個人保証(経営者保証)について、保証契約を検討する際や、金融機関等の債権者が保証履行を求める際における、中小企業・経営者・金融機関の自主的なルールを定めたもの。

 

いずれのケースにおいても会社が赤字の場合は、事業が長引くほど会社の財産が目減りしていくことになりますので、できるだけ早期の廃業を目指すことが有効になります。特に、『経営者保証に関するガイドライン』による保証債務整理をする際には、早期に債権者の同意を求めることで、個人資産を手許に残せる可能性が高くなります。

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年6月20日)より再編集のうえ掲載

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「事業存続に向けて検討すべき方策」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?⑧~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した8回目の今回は、前回に引き続き、第1回でご紹介したタイプD(健全性が低く親族内後継者がいない会社)に着目します。 前回は最終的に会社が廃業・清算を選択した場合の手続の流れを説明いたしましたが、今回は廃業という選択に至る前に事業存続に向けて検討すべき方策について紹介いたします。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 前田俊/公認会計士

 


【検討すべき方策】

タイプDの会社に限らず、承継に向けては、①経営状況・経営課題等の把握(見える化)をし、②事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)を進める必要があります。これは専門家を活用することでより効率的・効果的に実行することができます。

 

①では、外部専門家を活用し、先入観を除外した第三者の視点でより詳細な分析を行うことで、経営状況や課題等をより適切に把握することができます。今まで会社では認識できていなかった収益源泉や強み(人材、取引先、技術、知的財産等)を認識する機会になり得ます。

 

①を基に、②として競争力強化のための「強み」を作り、「弱み」を改善する取り組みを策定・実行していくことで経営改善(収益力の改善)を進めていきます。ここでも外部専門家による知見はより効果的な改善に向けて有益となります。①②のような取り組みだけで財務の健全化が図れない場合、金融支援による再生(私的整理)という選択肢もあります。

 

 

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また、上記のような対応により財務健全性を高めることで、M&AやMBOも選択肢になります(タイプDからタイプBへのポジション移行)。上記①で認識した強みが、事業の買手にとって魅力となり得ることがあります。

 

 

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なお、健全性を高めることが出来れば、健全性が低いことを理由に事業承継に消極的であった親族(ご子息等)に対して親族内事業承継を再検討する可能性も生じます(タイプDからタイプAへのポジション移行)。

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年5月21日)より再編集のうえ掲載

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「廃業・清算」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?⑦~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した7回目の今回は、前回に引き続き、第1回でご紹介したタイプD(健全性が低く親族内後継者がいない会社)に着目します。 但し、現状がタイプDの会社であると判断しても、会社の健全性を高めて他のタイプの事業承継を選択する可能性もあり得ますので一度、外部専門家のコンサルティングを受けることも有用と考えられます。最終的にやむを得ず廃業・清算を選択する場合は以下のような手続きになります。なお、清算の際に債務超過である場合の取り扱いに関しては次回ご紹介いたします。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 三好誠司/公認会計士

 


【廃業・清算手続】

一般的な廃業・清算手続きの流れを簡単に図示しています。廃業の手続きは様々な手続きが必要となりますので、廃業を決断して即廃業できる訳ではありません。

 

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【廃業時の留意点】

①取引先への告知

廃業日を決めたら取引先に迷惑をかけないように廃業を伝えるあいさつを行うため廃業挨拶状を出します。廃業手続きは2~3か月程度かかるため廃業によって迷惑が掛からないように早い段階で行うことが望ましいです。

 

②従業員への通知

従業員は会社と雇用契約を締結しています。雇用先である会社が消滅すると従業員は解雇となりますが、解雇の場合には30日前に通知する必要があります。30日前に通知することが困難な場合は30日に満たない期間の給与支払いが必要となります。

③上記以外の関係者

・店舗や土地を賃借している場合、廃業に伴い物件の明渡しが必要となります。期限前の契約解除の場合は、契約内容に従った手続きが必要となりますので敷金や保証金、原状回復義務等についてあらかじめ条件を確認しておく必要があります。
・リース契約について中途解約は残期間までのリース料又はそれに相当する違約金を支払う必要がある契約が多いので資金面の手当てが必要になります。

 

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年4月22日)より再編集のうえ掲載