[初級者のための入門解説]

中小企業におけるM&Aの利用方法は? ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」⑤~

 

M&A実務の基礎ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『M&A超入門』」シリーズ

今回は、中小企業のM&Aを「売り手の目的」「買手の目的」を再確認しながら、整理しながら、「M&A仲介会社とマッチングサイトの使い分け」について解説いたします。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

売り手サイド


M&Aによる「売り手の目的」としては、「選択と集中によるノンコア事業の売却」、「事業再編」「事業売却による資金調達」「事業の売却によるリタイヤ」などがありますが、最近は「事業承継がらみのケース」が多く発生しております。

 

事業承継でM&Aを選択するのは、親族や役員・従業員の中に後継者がいない場合に、事業自体をM&Aで売却するときに利用されます。

 

我が国経営者の平均引退年齢は70歳超と言われていますが、その中小企業経営者は245万人(全中小企業者の60%)で、その半数の127万人が廃業を予定していると言われています。廃業予定の理由としては、そもそも後継者がいない、あるいは後継者がいても継いでくれない、が多数を占め、更に残念なことは廃業予定者のうち30%程度は健全な会社が存在することです。

 

いわずもがな我が国経済は中小零細企業によって支えられていると言っても過言でなく、中小零細企業の減少はやがて日本株式会社の終焉を意味する大問題です。

 

他方、いつの時代にもやる気のある起業家や元気な企業が存在することも事実であり、かれらとうまくマッチングできれば廃業を免れることも可能となるのです。

 

 

 

買い手サイド


M&Aの買い手は、一昔前はファンドが多かったようですが、今日では事業会社や個人起業家など、プレーヤーが多様化しています。

 

それでは「買い手の目的」は、何でしょうか。一般的には以下のように言われております。

 

①新規の事業目的

既存の企業が事業を多角化しようとする場合、あるいは、事業ポートフォリオの組み換えをする場合、ゼロから事業を始めるよりも既に得意先やスタッフを抱えた事業を取得する方が容易です。特に、参入障壁が高い事業領域ではM&Aでないと参入できないケースがあります。

例)ソフトバンクによるボーダフォンジャパン買収による携帯電話事業への参入

 

②関連事業の拡大目的

川上又は川下への参入(アパレルによる小売事業への参入)、商品やサービスの拡充を目的としたM&Aがあります。

例)家電量販店ビックカメラによるコジマの買収による広い地域での店舗展開

 

③ブランド、許認可目的

ブランドや許認可の取得は容易ではないので、保有する企業自体を取得するM&Aがあります。

例)コンビニエンスストアのローソンによる成城石井の買収により、成城石井ブランドにより富裕層地域への出店

 

④人員目的

ますます雇用の確保が難しくなってきており、優秀な人員の確保を目的としてM&Aをする例が多くなっています。

例)IT技術者の雇用確保を目的としたM&A

 

M&A仲介会社とマッチングサイトの使い分け


M&Aをする場合、検討すべき項目として「費用」「手間」があります。

 

M&A仲介会社に依頼すると500万円~2000万円以上の費用がかかるので、費用の捻出が難しい場合や売り手企業の事業規模が小さい場合には、日本税理士会連合会の運営する「担い手探しナビ」、国が営む「事業引継ぎ支援センター」、トランビ等の「民間のマッチングサイト」の利用が検討されます。

 

しかしながら、M&Aに際して、「M&A仲介会社」を利用するのは一般的な方法です。M&A仲介会社は、M&Aマーケットに広いネットワークを有しているので、売り手、買い手共に短時間のうちに相手先を探してもらうことができ、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション、売買契約までフルパッケージでしっかりと支援してもらえる場合が多いと言えます。他方で、専門家をフルに活用するのでそれなりの費用がかかり、今日まで中小企業のM&Aが活性化してこなかった理由が費用面にあると言っても過言ではありません。

 

「マッチングサイト」とは、主にインターネット上で、売り手と買い手がそれぞれM&A情報を掲載し、手軽に、かつ安価なコストで、自分自身で相手先を探せる場所(サイト)です。端的に言うと、売り手は、まずノンネームといわれる情報(対象会社が特定できないように、業種、地域、おおよその年商のみ)を掲載して買い手からの応募を待ち、買い手は、業種や地域を絞った上で希望するM&A候補を探すことができます。売り手と買い手がうまく出会えた場合は、次のステップとして更に詳細な情報を交換して、お互いの希望がマッチすれば売買条件を詰め、最終的に売買契約(M&A)に至りますが、専門家の関与が少なければ少ないほどコストは安価ですむので、中小企業のM&Aに適していると言えます。そうはいっても、多くの中小企業者はM&Aの経験が無く知見が足りない場合が多いので、マッチングサイトを提供する会社や組織は、公認会計士・税理士やM&Aアドバイザリー等、各種専門家と提携していて、マッチングの場の提供だけでなく、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション業務を支援するケースもあります。

 

日本税理士会連合会の運営する「担い手探しナビ」は、マッチングサイトの一種ですが、誰でも参加できるわけでなく、税理士を通して行う点に特徴があります。もともとは北陸税理士会が行っていたサービスを好評につき全国版に拡大し2018年10月から運用を開始したもので、システム利用料も無料のため、利用の拡大が期待されています。「担い手探しナビ」は、クライアントを良く知る税理士が関与することで安心感が得られ社会的にも大きな意義があります。また、日本M&AセンターはM&A仲介会社として知名度の高い会社ですが、中小企業向けのマッチングサービスとして「Batonz」を始めており、注目を集めています。

 

M&Aアドバイザリー(仲介会社やマッチングサイト)のそれぞれの特徴と費用のイメージは以下のとおりです。

 

 

M&Aはだらだら時間をかけてするものではありません。期限を設けて迅速に行う必要があるので、上記の複数の方法によってM&Aを行う場合もあります。

[初級者のための入門解説]

会社を半年で売却できる?-M&Aのスケジュール- ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」③~

 

M&A実務の基本ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『M&A超入門』」シリーズ。

今回は、「全体スケジュール」「従業員や関係者への伝え方」について考えてみたいと思います。「M&Aで相談先は?」「M&Aではどれくらいの期間で売却できる?」「従業員にはいつ伝える?」など、皆さまの疑問にお答えます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

 

M&Aをすると決めたら


①M&Aの動機

M&Aによる事業売却の動機としては、従前は選択と集中によるノンコア事業の売却、事業再編、資金調達、リタイヤによる事業の売却ケースなどがありましたが、最近は事業承継がらみのケースが多いように感じます。事業承継でM&Aを選択するのは後継者がいないケースが多数です。つまり、親族や役員・従業員の中に後継者がいない場合、事業自体をM&Aで売却する方法が選択されております。

 

 

②M&Aの相談先

M&Aをしようとする場合、先ずはどこに相談したらよいか悩むところです。M&Aの相談先としてまず思い浮かぶのは、顧問の「公認会計士や税理士」です。日本税理士会連合会は、「担い手探しナビ」を運営していて、税理士経由で「担い手探しナビ」に登録することで、売り手であれば買い手を、買い手であれば売り手を探すことができます。しかし、一般的な会計事務所はM&Aの知見が乏しい場合が多いので、この「ZEIKEN LINKS(ゼイケンリンクス)」を使ってM&Aに詳しい会計事務所を探すのも一法です。

 

③M&A仲介会社の利用

また、「M&A仲介会社」を利用するのは一般的な方法です。M&A仲介会社は、M&Aマーケットに広いネットワークを有しているので、売り手、買い手共に短期間のうちに「相手先を探し」てもらうことができ、「売買交渉」「デューデリジェンス」「バリエーション(価値評価)」「売買契約書の作成」までフルパッケージでしっかりと支援してもらえます。他方で、専門家をフルに活用するので最低でも数百万円の費用がかかります。

 

④M&Aマッチングサイトの利用

「マッチングサイト」を使って、基本的なことは自分で対応する方法も、最近は流行っております。マッチングサイトとは、主にインターネット上で、売り手と買い手がそれぞれ「M&A情報」を掲載し、手軽に、かつ安価なコストで、自分自身で「相手先を探せる場所(サイト)」です。

 

端的に言うと、売り手は、まず「ノンネーム」といわれる情報(対象会社が特定できないように、業種、地域、おおよその年商のみ)を掲載して買い手からの応募を待ち、買い手は、業種や地域を絞った上で希望する「M&A候補を探す」ことができます。売り手と買い手がうまく出会えた場合は、次のステップとして、さらに「詳細な情報を交換」して、お互いの希望がマッチすれば「売買条件」を詰め、最終的に「売買契約(M&A)」に至ります。

 

専門家の関与が少なければ少ないほどコストは安価ですむので、中小企業のM&Aに適していると言えます。そうはいっても、多くの中小企業者はM&Aの経験と知見が不足している場合が多いので、マッチングサイトを提供する会社や組織は、公認会計士・税理士やM&Aアドバイザリー等、各種専門家と提携していて、マッチングの場の提供だけでなく、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション業務を支援するケースもあります。

 

⑤M&Aアドバイザリーの特徴と費用感

「M&Aアドバイザリー(仲介会社やマッチングサイト)」のそれぞれの特徴と費用のイメージは以下のとおりです。

 

 

M&Aの全体スケジュール


M&Aの一般的な流れは、以下のとおりです。まずは「相手先探し」から始まり、相手先の候補が見つかると「秘密保持契約」を交わして相手先を調査します。興味があって双方が先に進みたいと思う場合は「トップ面談」し条件面を調整し「基本合意書」を締結します。その後、「買手によるデュ―デリジェンス」と交渉を経て最終的に合意した場合、「売買契約書」を締結します。

 

M&Aに要する時間は、売却理由や売却条件等にも左右されますが、順調に進むケースでは「2、3ケ月」で完結することもありますが、長いケースだと「年単位」でかかることもあります。

 

 

従業員や関係者への伝え方


①従業員への説明のタイミング

M&Aは極めてセンシティブな事柄ですから、M&Aに関与する者は経営者・経営企画担当等に限定し、秘密裏に進めるのが基本です。なぜなら売り情報が漏れた場合の信用不安の拡大、うまくいかなかった時のダメージが大きいためです。そこで、幹部従業員への説明は、「基本合意書の締結」のタイミングが、一般の従業員への説明は売買契約を締結する直前あるいは契約締結日」に説明するのが一般的です。

 

②従業員説明の方法

説明の仕方としては、幹部従業員はキーマンとなる人が多いので経営者が個別に面談し退職されないように留意します。その他の従業員一同を集めた説明会を開催する方法が一般的かと思います。

従業員はM&Aによって、引き続き働けるのか給与条件等の待遇はどうなるのかなど不安を持つのが普通なので、買手側と十分に協議した上で、従業員への説明を行うべきです。

 

③関係者への説明

金融機関や主要な取引先には、経営者が直接訪問して説明した方がよいですし、特に重要な取引先には売買契約締結前に説明をしておいた方がよいと思います。それ以外の取引先や関係者にはクロージング後に送付する挨拶書面で連絡するのが一般的です。